事業開発の働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情
事業開発(BizDev)の働き方は、担当フェーズ・会社のステージ・パートナー先との関係性によって大きく異なる。「激務」というイメージが先行しやすい職種だが、その実態は一様ではなく、同じ会社の中でも担当案件によって忙しさの質が変わりうる。本記事では、残業・リモート・業務の波など、実務に近いレベルで事業開発の働き方を整理する。
事業開発の業務特性を理解することが働き方の前提になる
事業開発は、自社と外部との接点を設計する職種だ。新規パートナーシップの締結、アライアンス戦略の立案、M&Aの検討、新規事業の立ち上げ支援など、その担当領域は会社によって幅広い。ただし、どの業務においても共通しているのは「社外との交渉・調整が生じる」という点であり、これが働き方の特性を大きく規定する。
社外のスケジュールに引っ張られやすいため、自分だけで業務ペースをコントロールしにくい局面が多い。相手方の意思決定者のスケジュール、法務・財務の確認期間、経営会議のサイクルなど、外部要因によって仕事の密度が上下する。この「波のある働き方」を事前に理解しているかどうかが、入社後の体感に直結する。
激務度の実態:フェーズと局面によって変わる
フェーズ別の忙しさの傾向
事業開発の負荷は、担当している案件の「進捗フェーズ」によって大きく異なる。
| フェーズ | 主な業務内容 | 忙しさの傾向 |
|---|---|---|
| 探索期(ソーシング) | 相手探し・情報収集・初期ヒアリング | 比較的ゆるやか。件数は多い |
| 検討期(デューデリジェンス・条件協議) | 資料作成・社内調整・交渉 | 負荷が集中しやすい |
| 締結前後 | 契約確認・プレス対応・社内展開 | 短期的に高負荷 |
| 推進期(実装・KPI管理) | パートナーとの定例・実績管理 | 安定するが件数が多いと圧迫 |
複数案件を同時並行で持つことが一般的なため、それぞれのフェーズが重なるタイミングが最も負荷が高くなる。経験のある事業開発人材の多くが「案件が一気にクロージングに向かうと2〜3週間は集中する」と述べる傾向にある。
スタートアップと大企業での差異
スタートアップにおける事業開発は、戦略立案から契約交渉、実装支援まで一気通貫で担うことが多い。担当者が意思決定者に近く、スピード感はある反面、専門チームによるサポートが薄いため、業務の幅が広がりやすい。深夜対応や休日の急対応も起きやすい環境だ。
一方、大企業・大手IT企業における事業開発は、法務・財務・広報などの専門部署との連携が前提となる。業務は分業されている分、スピードが遅くなりやすいが、個人への集中負荷は相対的に小さくなる傾向がある。ただし、社内調整のコミュニケーション量が増えるという別の負担が生じることも多い。
残業の実態:月間の目安と発生パターン
事業開発の残業時間は、担当するフェーズや会社ステージによって月20〜60時間程度の幅があるとみるのが実態に近い。コンサルや外資金融と比較すると恒常的な深夜業務は少ない傾向にあるが、案件が重なる時期には連続して長時間働く局面がある。
残業が発生しやすいパターンとして以下が挙げられる。
- 経営報告・取締役会前後:意思決定のための資料作成・内部承認が集中する
- 交渉のクロージング前:相手方のコメントへの対応、条件の再調整が深夜まで続く
- 新規事業の立ち上げ直後:役割が未整備なためオーナーシップが広がりやすい
- 複数案件の締結が重なる時期:チームの人的リソースが需要に追いつかない
一方で、交渉の合間・相手方の検討期間中など、業務が落ち着く時期も定期的に存在する。コンサルや営業のように毎月均一な高負荷がかかる職種とは異なる波型の働き方である点は、事業開発を目指す上で正確に把握しておきたい。
リモートワークの実態:対面要件との兼ね合い
事業開発はリモートと対面が混在する職種だ。業務の性質上、完全リモートが難しい場面と、リモートで十分な場面が明確に分かれやすい。
対面が求められやすい場面
- 初めての相手との信頼構築(特に大企業・金融機関との交渉)
- 重要な条件交渉・クロージング面談
- 社内の経営層・関連部署との合意形成
- M&A・資本提携の最終段階
リモートで完結しやすい場面
- 既存パートナーとの定例ミーティング
- 資料作成・社内ドキュメント整備
- オンライン商談(IT・SaaS業界では普及が早い)
- 海外パートナーとの定例連絡
IT・SaaS領域の事業開発は、業界全体にオンライン商談が定着しているため、リモートワークの比率が高い傾向にある。一方で、製造業・インフラ・金融との提携案件を多く担う場合は、定期的な対面出張が発生しやすい。
現在の転職市場における求人を見ると、「週2〜3日出社」のハイブリッド体制が最も多く、「フルリモート可」の求人は職種の性質上、少数にとどまる傾向だ。
ケーススタディ:SaaS企業の事業開発担当者の典型的な1週間
プロフィール概要:従業員200名規模のSaaS企業に所属。パートナーシップ2社を並行して担当。交渉中のアライアンスが1件あり、現在は検討期の中盤にある。
| 曜日 | 主な業務 |
|---|---|
| 月 | 週次社内ミーティング(事業開発チーム)。先週の進捗共有・週の優先事項確認 |
| 火 | 交渉中パートナーとの条件協議(対面、先方オフィスへ)。帰社後に法務チームへ論点共有 |
| 水 | リモート勤務。提案資料の修正・内部レビュー依頼。既存パートナーの定例(オンライン) |
| 木 | 経営会議用の報告資料作成。新規案件のソーシング候補リスト整理 |
| 金 | リモート勤務。パートナー先からの返答確認・メール対応。翌週の準備 |
この週は比較的安定した週の例だ。火曜の対面商談と法務への連携が重なっているため、その日だけ帰宅が20時前後になっている。木曜の経営会議準備も残業が発生しやすい場面だが、2〜3時間程度の作業で収まっている。
クロージング前の週になると、火曜の対面商談が夜間まで続いたり、先方からの大量コメントへの対応が水曜深夜まで続くなど、負荷の質が変わりやすい。
よくある質問
Q1. 事業開発はコンサルタントと比べてどちらが激務ですか?
コンサルタント(特に戦略系・大手総合)は、プロジェクトがある限り高強度の業務が継続する傾向が強く、恒常的な残業が構造的に発生しやすい職種です。事業開発は負荷の波が大きい一方で、案件の隙間に比較的余裕が生まれる時期もあります。どちらが「激務か」は単純に比較しにくいですが、均一な高負荷が続く環境を好まず、メリハリのある働き方を求める人には事業開発が合いやすい傾向があります。
Q2. 転職先を選ぶ際に、働き方の実態を確認する方法はありますか?
面接の質問で「直近のクロージング案件で最も忙しかった時期の業務量」「チームの人員構成と案件数の比率」を具体的に尋ねると実態が見えやすくなります。また、入社者の口コミプラットフォームや、転職エージェント経由で現場情報を確認することも有効です。求人票に記載の平均残業時間は、繁閑の平均値である点を念頭に置き、ピーク時の状況を個別に確認することが望ましいです。
Q3. 事業開発はリモートワークを希望する人に向いていますか?
IT・SaaS業界に限れば、週2〜3日程度のリモート勤務が実現しやすい環境は増えています。ただし、対面コミュニケーションが信頼構築に直結する局面があるため、「完全リモートを前提にしたい」という希望とは必ずしも相性が良くない職種です。どの業界のパートナーを相手にするかによって対面要件が変わるため、担当する案件領域も含めて確認することが重要です。
Q4. 残業が多い時期に備えて、どのようなスキルが役立ちますか?
案件の優先順位づけと社内外への期待値調整のスキルが実務上の鍵になります。具体的には、複数案件の進捗を可視化して自分とチームが同じ認識を持てる状態を維持すること、相手方に対してタイムラインの確認・合意を早期に取っておくことが、負荷の集中を緩和しやすくします。ExcelやスプレッドシートによるトラッカーやPMツールの活用経験は、転職先でも即戦力として評価されやすい素養です。
まとめ
事業開発の働き方は、担当フェーズ・会社規模・業界の組み合わせによって実態が大きく異なり、「激務かどうか」という問いへの回答は一様ではない。残業の発生は恒常的というより波型であり、クロージング前後の局面に集中しやすい構造を持っている。リモートワークはIT・SaaS領域であれば一定程度実現しやすいものの、対面の関係構築が不可欠な場面も残るため、完全なリモート希望とは相性を確認する必要がある。入社後のミスマッチを防ぐには、求人票の数値だけでなく、担当案件の規模・チーム構成・繁忙期の実態を面接段階で具体的に確認することが重要だ。自分のキャリアステージや働き方の優先事項と照らし合わせながら、現在の市場価値を専門家に確認することも、納得感のある転職判断につながりやすい。