事業企画の働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情
事業企画職の働き方は、所属企業の業種・規模・事業フェーズによって大きく異なる。「激務」という印象を持たれることが多い職種だが、その実態はひとくくりにできない。本記事では、業務負荷の構造・残業の発生メカニズム・リモートワークの実情を整理したうえで、働き方を左右する要因を実務的な観点から解説する。
事業企画の業務負荷を決める構造的要因
事業企画の業務量は、担当者個人の能力よりも「組織の置かれた状況」に左右されやすい。具体的には以下の4つの要因が業務強度を規定する。
①事業フェーズ スタートアップや新規事業部門では、経営判断の速度に合わせて資料作成・分析・社内調整が同時並行で走ることが多い。一方、大企業の既存事業を管掌する事業企画部門では、中期計画や予算策定といった「サイクル型」の業務が中心となり、閑繁差が生じやすい。
②組織内の権限と役割定義 事業企画が「経営直下の参謀機能」として位置づけられている組織では、社長・役員からのアドホックな依頼が多くなりやすい。意思決定サポートの性質上、依頼のタイミングが読みにくく、突発的な業務が発生しやすい構造になっている。
③管理対象の幅 KPI管理・予算管理・新規施策の企画・他部門との調整・経営報告資料の作成まで、事業企画が担う業務範囲はしばしば広範にわたる。役割が明確に分化されていない企業では一人当たりの負荷が高まりやすい。
④意思決定サイクルの速さ 四半期・月次・週次でレビューが行われる企業ほど、資料更新や数値の精査が恒常的なタスクとして積み重なる傾向がある。
残業の発生パターンと実態
事業企画における残業は、「常態的に長い」というよりも「特定のタイミングに集中する」ケースが多い。代表的な繁忙期と背景を以下に整理する。
| 繁忙タイミング | 主な業務内容 | 残業の発生しやすさ |
|---|---|---|
| 予算・中計策定期(年1〜2回) | 複数部門のデータ集約・数値調整・経営説明資料 | 高い(数週間単位で続くことも) |
| 月次・四半期レビュー前後 | 実績分析・差異説明・翌期施策の立案 | 中程度(1〜2週間) |
| 新規事業・M&A検討期 | 市場調査・モデリング・ステークホルダー調整 | プロジェクト次第で高い |
| 通常期 | 定例資料更新・部門間連携・会議対応 | 比較的低い |
月平均残業時間は、企業・役割・フェーズによって幅があり、20〜60時間程度の分布が多く見られる傾向にある。ただし、大企業の管理部門寄りのポジションと、ベンチャーの経営直下ポジションとでは同じ「事業企画」でも性質が大きく異なるため、残業時間のみを基準に比較することには注意が必要だ。
リモートワークの実情
事業企画職のリモートワーク適応度は、職種の特性上「高い」とは言いにくい。理由は以下の通りである。
対面での調整が求められる場面が多い
事業企画は、経営層・営業・マーケティング・エンジニアリングなど、複数の部門と日常的に折衝する。数値の解釈を巡る議論や、施策の優先順位を決める場面では、非公式なコミュニケーション(いわゆる「根回し」や「すり合わせ」)が意思決定の質を左右することが多い。こうした調整業務は、フルリモート環境では難易度が上がりやすい。
企業規模・文化による差異
| 企業の特性 | リモート適応度の傾向 |
|---|---|
| テック系・SaaS企業 | 高め。非同期コミュニケーションが文化として定着していることが多い |
| 大手メーカー・金融・インフラ系 | 低め。経営会議への物理的な出席が求められやすい |
| スタートアップ(シリーズB以前) | 低め。経営との物理的な近さを重視する文化が多い |
| コンサルティングファーム出身者が多い組織 | 中程度。クライアント業務との兼ね合いによる |
2020年代以降、多くの企業でリモートと出社のハイブリッド運用が定着しつつある。週3出社・週2リモートのような形態が現時点では標準的な目安となっており、フルリモートは一部のテック企業に限られる傾向がある。
ミドルマネジメント以上では出社頻度が上がりやすい
マネージャー以上の事業企画職になると、経営会議への参加・役員との非公式な意見交換・チームマネジメントのために出社頻度が高まりやすい。個人貢献者(IC)のポジションのほうが、リモート活用の自由度が高い場合が多い。
ケーススタディ:大企業の新規事業部門における事業企画の1週間
以下は、従業員数1,000名規模のIT企業に所属する事業企画担当者(経験5年・マネージャー職)の一週間の業務パターンの一例として参考にしていただきたい。
月曜日:週次KPIダッシュボードの更新、営業部門との進捗確認MTG(30分)、経営報告資料のドラフト開始
火曜日:事業部長との1on1(週次)、競合動向に関するリサーチ、来月の施策案のたたき台作成
水曜日:マーケティング部門との施策すり合わせ(1時間)、経営報告資料のレビューサイクル(上司確認→修正)、財務部門との予算差異確認
木曜日:経営会議(月2回のうちの1回)、会議後のフィードバックを受けた資料修正、翌週分のアジェンダ設計
金曜日:週次振り返りと翌週タスク整理、部門横断プロジェクトの進捗確認、採用候補者との面接(兼務的に担当する場合)
このパターンでは、定常業務のみであれば残業は週に数時間程度に留まることが多い。ただし、月次・四半期レビューの前後、経営陣から急なテーマ設定が入った週などは、残業時間が大幅に増加しやすい構造になっている。
働き方を改善するうえで見るべきポイント
転職や社内異動を検討する際、事業企画の働き方を評価するために確認すべき項目を以下に整理する。
- 意思決定サイクルの頻度:週次レビューが義務付けられているか、月次・四半期かによって資料作成の頻度が変わる
- 事業企画の機能定義:「経営参謀」型か「KPI管理」型か「新規事業開発」型かで業務性質が異なる
- チーム人数と一人当たりの担当範囲:少数精鋭型は負荷が高まりやすく、一方でレバレッジが大きい経験も積みやすい
- 経営との距離:CFO・CEOとの距離が近い組織では、突発依頼の頻度が上がりやすい
- ツール・プロセスの整備状況:データ基盤や資料テンプレートが整備されているかどうかで、実作業の負担感が大きく異なる
よくある質問
Q. 事業企画は残業が多い職種ですか?
一概に「多い」とは言えない。繁忙期(予算策定・四半期レビュー等)に集中する傾向があり、通常期は比較的落ち着くことが多い。また、企業規模・事業フェーズ・組織文化によって差が大きく、入社前の情報収集が重要になる。
Q. フルリモートで働ける事業企画のポジションはありますか?
存在しないわけではないが、多数派ではない。テック系・SaaS系の企業で、非同期コミュニケーションが文化として定着している組織であれば、フルリモートまたはそれに近い運用をしているケースも見られる。ただし、マネージャー職・経営直下ポジションでは出社を求められるケースが多い。
Q. 事業企画の働き方は、コンサルタントと比べてどう違いますか?
コンサルタントはクライアントごとのプロジェクト単位で業務が動くため、デリバリー直前の業務集中が顕著になりやすい。事業企画はサイクル型の業務が多く、繁忙期が予測しやすい反面、「自社の意思決定に伴走する」という性質から、経営の意向次第でアドホックな業務が入りやすい。ワークライフバランスの安定性は、概ねコンサルよりも高い傾向があるが、組織環境に強く依存する。
Q. ワークライフバランスを重視しながら事業企画を続けることはできますか?
可能であるが、ポジション選定が重要になる。大企業の既存事業を管掌する事業企画部門、または業務プロセスが整備されたテック企業のBizOps・企画職などは、比較的バランスを保ちやすい。自身のキャリア目標と「どの段階の事業に関わりたいか」を明確にしたうえで選択することが、長期的な充実につながりやすい。
まとめ
事業企画の働き方を左右する最大の要因は、担当業務の性質よりも「事業フェーズ・組織設計・経営との距離」という構造的な環境にある。残業は常態的というより繁忙期に集中しやすく、リモートワークの活用度は企業文化と役職レベルによって大きく異なる。同じ「事業企画」という職種名であっても、大企業の予算管理型とスタートアップの経営直下型では、業務強度も働き方の自由度も実態が異なると考えておくべきだ。転職を検討する際は、求人票の職種名よりも「その企業において事業企画がどう機能しているか」を確認することが、ミスマッチを防ぐうえで有効な判断軸になる。自身の現在の市場価値やキャリアの方向性を客観的に把握したい場合は、専門のキャリアアドバイザーに相談することも一つの手段として検討してみてほしい。