20代で人事に転職する|ポテンシャル採用の実態と狙い目企業

職種:人事(HRBP) |更新日 2026/7/4

20代で人事職へのキャリアチェンジを検討するとき、最大の壁となるのが「人事経験ゼロ」という事実です。しかし実際の採用市場を見ると、人事未経験の20代を積極的に受け入れる企業は一定数存在し、特定の条件を満たす候補者はポテンシャル採用のルートに乗りやすい構造になっています。

本記事では、20代が人事職へ転職できる背景・条件、企業ごとの受け入れ温度差、そして入社後に想定されるキャリアパスまでを実務的な視点から整理します。


20代が人事に転職できる理由と構造的背景

人事職は「経験者採用が基本」というイメージが根強いですが、近年はその前提が緩和されています。背景には主に3つの構造変化があります。

HRBPポジションの急増 事業部門に伴走する「HRビジネスパートナー」の概念が国内企業にも浸透し、採用・育成・組織開発といった機能が分化しつつあります。それに伴い、特にスタートアップ・成長期のSaaS企業では「採用担当」「組織開発担当」「人材開発担当」といった専門職ポジションが細分化され、ポジション数自体が増加しています。

人事DXの推進による新しい業務領域の創出 HRISの整備やタレントマネジメントシステムの導入が進む中、データ分析・プロジェクト管理といったスキルが人事の現場でも求められるようになりました。これらは従来の「人事経験」よりも、IT・コンサル・営業の実務経験が活きやすい領域です。

育成コストを許容できる企業フェーズの存在 採用競争力があり採用ブランドも確立しつつある成長企業では、「即戦力の経験者を取り合う」よりも「自社の文化を体現できる若手を育てる」という発想でポテンシャル採用を行うケースがあります。


ポテンシャル採用が成立しやすい条件

転職市場における「ポテンシャル採用」は万能ではありません。企業が20代未経験者を人事に採用するとき、何らかの代替要素を求めています。

評価されやすいバックグラウンドの傾向

前職・経験評価されやすいポイント備考
採用エージェント・人材紹介求人理解、候補者対応、スカウト文の作成業界知識が高く採用業務に親和性が高い
IT・SaaS営業事業理解、目標管理、数値管理の習慣HRBPや採用企画に転用しやすい
コンサルタント課題構造化、ドキュメント作成、ステークホルダー対応組織開発・制度設計系に親和性が高い
事業会社の総務・労務人事制度の運用経験、法律知識の素地採用・育成への拡張が前提となる
教育・研修業界研修設計、ファシリテーション人材開発・L&D職への転換に向いている

いずれに共通するのは、「ヒトに関わる業務の経験」か「事業課題を構造的に捉える経験」のどちらかを持っている点です。双方を持つ候補者は特に評価されやすい傾向にあります。

転職が難しくなる条件

一方、以下の状況では選考が厳しくなりやすいです。

採用担当者が見ているのは「人が好き」という情緒的な動機ではなく、「組織課題に対してどんな貢献ができるか」という業務貢献のイメージです。この点を言語化できているかどうかが選考の分岐点になりやすいです。


狙い目となる企業の類型

20代のポテンシャル採用に積極的な企業には、ある程度の共通点があります。業種・規模・フェーズの3軸で整理します。

① シリーズB〜DのSaaS・テック系スタートアップ

従業員数が50〜300名程度で急拡大フェーズにある企業は、採用ニーズが爆発的に高まる一方で人事組織が脆弱な場合が多く、実務キャパシティを補う目的でポテンシャル採用を行いやすいです。入社直後から採用業務のオーナーシップを持てるため、経験値の積み上がりが速い環境です。

② HR領域に本気投資している中堅〜大手の事業会社

従業員数1,000名以上で、CHRO(最高人事責任者)が設置され経営陣として機能している企業は、HRBPやHRアナリストのポジションに若手を抜擢するカルチャーを持つことがあります。育成の仕組みが整っているため、未経験からの参入でも一定の学習環境が期待できます。

③ 人材・HR系のサービス企業

リクルーティングエージェント、HR techサービス、研修会社など、人材に関するサービスを提供する企業は、内部人事と外部顧客支援の両面で業務経験を積める場合があります。顧客企業の採用・育成課題を扱いながら自社人事へ異動するケースも一定数見られます。


ケーススタディ:SaaS営業→採用担当の転換モデル

具体的なキャリアの流れとして、SaaS企業での法人営業経験(2〜3年)を持つ25〜27歳がシリーズC期のスタートアップの採用担当へ転換するケースは、比較的成立しやすい類型の一つです。

評価されるポイントの構造

採用活動においては、求人票の作成・候補者へのリーチ・選考過程のプロジェクト管理・クロージングと、営業プロセスとの親和性が高い業務が連続しています。「顧客を理解して提案する」という動作は、「候補者を理解してオファーを設計する」動作と本質的に近いため、営業経験者は採用担当として評価されやすい傾向にあります。

入社後のキャリアパスの目安

入社後1〜2年で採用実務の全体像を習得したのち、採用企画・制度設計・HRBPといった上位ポジションへの移行を目指すルートが一般的です。3〜5年でHRBPや採用マネージャーになれるかどうかは、企業の成長速度と本人の業務領域の広げ方に依存します。

年収の水準感

第二新卒〜26歳程度の採用担当としての転職では、年収400〜500万円台がひとつの目安になりやすいです。スタートアップでストックオプションが付帯するケースもありますが、キャッシュ収入とのバランスは個別に精査が必要です。


よくある質問

Q1. 人事の資格(社会保険労務士など)は取得しておくべきですか?

採用・HRBPを志望する場合、社会保険労務士資格は必須ではありません。労務管理・給与計算を専門とするポジションでは知識の証明として有用ですが、採用や組織開発領域では実務経験・コミュニケーション能力・事業理解が優先される傾向があります。資格取得のために転職活動が遅れるより、実務に近い企業へ早期に転職して現場経験を積む選択肢を検討する価値があります。

Q2. 20代後半(27〜29歳)でも未経験から人事に転職できますか?

可能ですが、25〜26歳と比較すると選考のハードルが上がる傾向があります。年齢が上がるにつれて「なぜこのタイミングか」「3年後にどのような貢献ができるか」を具体的に示す必要性が高まります。前職での具体的な成果と、人事での業務貢献イメージを精緻に言語化することが選考通過のカギになります。

Q3. 最初から大手企業の人事を狙うのは現実的ですか?

大手企業の人事ポジションは異動(内部登用)で充足されることが多く、中途採用枠自体が少ない傾向にあります。未経験からの参入を検討する場合、まず成長企業や中堅企業で実務を積み、3〜5年後に大手へ転職するというルートの方が現実的に成立しやすいです。

Q4. 採用担当とHRBPはどちらを最初に目指すべきですか?

明確な正解はありませんが、採用担当から入る方が求人数が多く、20代の未経験者にとって入口が広い傾向にあります。HRBPは事業理解・組織開発の知見・ステークホルダーマネジメント能力が求められるため、採用担当として実務経験を積んだ後に移行するキャリアパスが現実的です。


まとめ

20代で人事職へ転職するためには、「人事経験がない」という事実を補える代替価値——事業理解・対人スキル・構造的思考——を持っていることが出発点になります。特にSaaS・テック系スタートアップや採用投資に積極的な成長企業は、ポテンシャル採用の受け皿として機能しやすい企業類型です。入口となるポジションとしては採用担当が現実的であり、そこからHRBPや採用企画へ横展開するルートが一般的な軌跡です。志望動機の言語化が選考の分水嶺になりやすく、「なぜ人事か」ではなく「何を解決できるか」という問いへの答えを用意することが準備の核になります。現在の職歴が人事へどう接続できるかを見極めたい場合は、専門のキャリアアドバイザーへの相談を活用することが実務的な判断の精度を高める手段の一つです。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)