建設・不動産DXの年収相場|転職で押さえるべきポイント

建設・不動産DX 年収相場 更新日 2026/8/11

現場側とIT側で、209.9万円の差がある

建設・不動産DXの年収を考えるとき、この業界には2つの給与水準が同居しているという前提から入る必要があります。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の数値を並べます。

区分平均年収有効求人倍率就業者数
建築施工管理技術者679.1万円8.56242,580人
ITコンサルタント889.0万円0.89656,770人

差は 209.9万円。そして有効求人倍率は逆転しています。人が足りない側のほうが、年収は低いという状態です。

通常であれば、人手不足は賃金を押し上げます。それが起きにくいのは、建設の受注構造が価格を規定しているためです。工事の価格が先に決まり、そこから人件費が配分されます。

この記事では、この構造のなかで自分の年収がどう決まるのかを分解します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の条件は各社公式サイトをご確認ください。

時給換算にすると、差の見え方が変わる

年収だけを見ると209.9万円の差ですが、労働時間を織り込むと様相が変わります。

job tagの数値では、時間当たり賃金は 建築施工管理技術者が3,092円、ITコンサルタントが4,026円。労働時間は前者が月 166時間、後者が月 173時間 とされています。

読み取れること

労働時間はITコンサルタントのほうが7時間長いにもかかわらず、時給は934円高くなっています。つまり、年収の差は稼働の長さから来ているのではなく、単価そのものの差です。

転職時の含意

現場側からDX側の職種に移ると、時給が上がる可能性があります。ただし、この統計は調査区分全体のものです。個々の会社では、建設業界向けの製品を扱うIT職種が、一般のIT職種より低く設定されることがあります。

確認すべき点 — 応募先の給与テーブルが、建設業界の水準に寄っているのか、IT業界の水準に寄っているのか。ここが年収を最も左右します。

会社のタイプで、寄る水準が変わる

会社のタイプ寄りやすい水準補足
ゼネコン・デベロッパーのDX部門建設業界の水準全社の給与テーブルに乗ります
ITベンダー・SIerの建設向け部門IT業界の水準業界特化でも社内基準が適用されます
建設テック・不動産テックのスタートアップ会社によって幅が大きい資金調達の段階に左右されます
外資系のソフトウェアベンダーIT業界の水準の上位席が限られます
不動産会社のDX部門不動産業界の水準会社ごとの差が大きい領域です

1つ目が、意外に見落とされます。ゼネコンやデベロッパーのDX部門は、その会社の給与テーブルに乗ります。DX担当だけ別基準ということは通常ありません。

3つ目は幅が大きい領域です。ストックオプションを含めた提示になることがあり、現金部分だけで判断すると見誤ります。

現場経験は、どこで金額に変わるか

施工管理の経験を持つ方が、DX側に移ったときに評価される経路は限られています。

直接には効きにくい

「現場が分かる」ことは価値ですが、給与テーブル上の等級に直結する形にはなりにくいのが実情です。多くの会社では、IT職種としての経験年数で等級が決まります。

効いてくる3つの経路

  1. 橋渡しの役割で採用される場合 — 現場とプロダクトの間に立つ職種は、業界知識が要件になります。ここでは経験が等級に反映されます
  2. 顧客対応の役割 — 導入支援やカスタマーサクセスでは、現場の言葉が使えることが直接の武器になります
  3. プロダクトの意思決定に関わる場合 — 何を作るかを決める立場では、業界知識が判断の質を決めます

逆に効きにくい場合

純粋な開発職として応募すると、現場経験は加点材料に留まります。プログラミングの経験年数で等級が決まるためです。

判断の要点 — 現場経験を金額に変えたい場合、開発職より橋渡しや顧客対応の職種を選ぶほうが、短期的には有利になります。

平均年齢43.4歳という数字の意味

job tagの建築施工管理技術者の区分では、平均年齢が 43.4歳 とされています。ITコンサルタントの区分は 38.3歳 です。

年収への影響

日本の給与体系では、年齢とともに水準が上がる設計が残っています。平均年齢が5.1歳高いことは、平均年収を押し上げる方向に働きます。

それでも建築施工管理技術者の平均年収679.1万円がITコンサルタントの889万円を下回っているということは、同じ年齢で比べればさらに差がある可能性を示唆します。

若手の場合

現場側では、若手の水準が抑えられやすくなります。求人賃金は月額 33.3万円(令和6年度)とされており、平均年収679.1万円との差は、年次を重ねた層が押し上げていると読めます。

ただし求人倍率8.56 — 人が足りないため、若手の採用条件は改善する方向に動きやすくなります。国土交通省が令和6年4月16日に策定した「i-Construction 2.0」が2040年度までの省人化3割を掲げているのも、人が増える前提を置いていないためです。

エージェントベストの見解

現場側からDX側に移る方には、いつもお伝えしていることがあります。転職直後の年収は、下がることがあるという点です。理由は等級の判断にあります。施工管理で10年やってきた方でも、IT職種としての経験年数はゼロと見なされることがあります。ここで諦める必要はありません。確認していただきたいのは、上がるまでの年数です。橋渡しの役割で入り、2〜3年で製品側の判断に関わる立場に移れる設計であれば、数年で追いつきます。逆に、現場対応の担当として固定される設計だと、そこが天井になります。オファーの場で「この職種から次にどの職種に移った人がいるか」を聞いてみてください。事例が出てくる会社と、出てこない会社があります。それが答えになります。

資格が金額に効く場面と、効かない場面

建設業界には資格が数多くあります。DX側に移るとき、それが年収にどう効くのかは分かれます。

効きやすい場面

現場に近い席では、資格が直接の要件になることがあります。施工管理技士や建築士は、業務上の位置づけがあるためです。導入支援で客先の現場に入る職種では、資格保有者であることが信頼につながる場面もあります。

効きにくい場面

プロダクト開発や企画の席では、資格そのものが等級を動かすことは多くありません。評価されるのは、資格の学習を通じて得た業務の理解のほうです。

説明のしかたで変わる

「1級建築施工管理技士を保有」とだけ書くと、資格の一覧として流されます。「原価管理と工程管理の実務を通じて取得し、工程の遅延要因を数値で説明できる」と書けば、製品の設計に使える知識として読まれます。

学習中でも書く価値がある

job tagの建築施工管理技術者の区分では、入職前訓練は「1か月超〜6か月以下」が最多(20.9%)とされています。短期間で得られる知識ではないため、着手していること自体が姿勢の裏づけになります。

オファーで確認すること

4つ目が、この業界では実際の手取りを左右します。job tagの区分では労働時間が月166時間とされていますが、これは調査区分全体の数字です。工期の終盤や検査の前は稼働が集中します。

5つ目も確認する価値があります。導入支援の職種では、現場に張り付く期間が発生します。交通費と手当の扱いが会社によって違います。

近い領域の水準は不動産テック業界の年収物流DXの年収相場もあわせてご覧ください。

エージェントベストの見解

有効求人倍率8.56という数字を見て、条件交渉が有利に進むと考える方がいます。実際には、そう単純ではありません。この倍率は施工管理そのものの数字であり、DX側の席では0.89に近い競争があります。ただし、交渉の材料になる場面はあります。現場を知っていて、なおかつITの言葉が使える人材は、統計に表れないほど少数です。この2つを兼ねていることを具体的に示せると、等級の判断が変わることがあります。示し方としては、前職で開発側と何を握ったか、要件をどう文書にしたかを出すのが効きます。「現場の要望を聞いた」ではなく「要望を要件に翻訳し、開発側と仕様を合意した」まで書けると、橋渡しができる人材だと判断されます。ここが、この業界で年収を上げる最も現実的な道筋です。

まとめ

建設・不動産DXの年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 施工管理からDX側に移ると、年収は上がりますか。

A. 上がる場合も、入社時は下がる場合もあります。IT職種としての経験年数がゼロと見なされることがあるためです。統計上は時給で934円の差がありますが、個別の等級判断が結果を決めます。上がるまでの年数を確認するほうが実態に近づきます。

Q. ゼネコンのDX部門と建設テックのスタートアップ、どちらが高いですか。

A. 一律には言えません。ゼネコンのDX部門は全社の給与テーブルに乗るため、水準は安定します。スタートアップは資金調達の段階で幅が大きく、ストックオプションを含む提示になることがあります。現金部分だけで比べると見誤ります。

Q. 有効求人倍率8.56は、交渉材料になりますか。

A. 現場に近い席では効きます。DX側の席では、競争の状況が違うため直接の材料にはなりにくくなります。効くのは、現場を知っていてITの言葉も使えるという希少性を具体的に示すことです。

Q. 平均年収679.1万円は、若手も含んだ数字ですか。

A. 区分全体の平均です。同じ区分の求人賃金は月額33.3万円とされており、入口の水準はこちらに近くなります。平均年収は年次を重ねた層が押し上げていると読むのが妥当です。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)