データサイエンティストの年収相場|転職で押さえるべきポイント
公開されている数字が、2つある
データサイエンティストの年収を調べると、出所の違う数字が並びます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には、この職業について2種類の数値が掲載されています。
一つは、令和7年賃金構造基本統計調査にもとづく年収611.9万円。もう一つは、令和6年度の求人賃金(月額)30.3万円です。後者を12倍しても年収611.9万円には届きません。
この差は誤りではなく、測っているものが違うことから生じます。この記事では、公開されている数字をどう読むか、実際の年収が何で決まるかを整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
2つの数字が食い違う理由
| 数値 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 年収611.9万円 | 在職者の実績。賞与を含む年間の額 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 求人賃金 月額30.3万円 | 募集時に提示された月額 | 令和6年度の求人データ |
在職者と募集の違い — 前者は現在働いている人の実績です。経験を積んだ層が平均を押し上げます。後者は募集時点の提示額で、経験の浅い層向けの求人も含まれます。
賞与の有無 — 年収には賞与や各種手当が含まれます。求人票の月額には、それらが入っていないことがあります。
対象範囲 — 賃金構造基本統計調査は常用労働者を対象とする統計です。厚生労働省の用語説明によれば、常用労働者には期間を定めずに雇われている労働者などが含まれます。役員のうち、一般の労働者と同じ基準で毎月給与が算定されている者は含まれますが、そうでない役員は対象から外れます。
職業区分の広さ — job tag に掲載されている平均年齢は43.9歳です。この区分には、研究開発や既存産業でのデータ解析に携わる方も含まれると考えられます。スタートアップのデータサイエンティストだけを取り出した数字ではありません。
つまり、どちらの数字も自分の年収の目安にはなりません。参照するなら、構造を理解したうえで幅の目安として使うのが実際的です。
エージェントベストの見解
公開されている平均年収611.9万円は、平均年齢43.9歳の層を含む数字です。20代後半から30代前半で転職を検討されている方が、この額を基準に交渉すると噛み合わないことがあります。逆に、求人賃金の月額30.3万円を見て水準が低いと判断するのも早計です。こちらは募集時の提示額で、経験の浅い層向けの求人も含まれます。この職種の報酬を考えるときに実際に効いてくるのは、統計の平均ではなく、扱えるデータの種類と、分析が意思決定に届いているかどうかです。同じ経験年数でも、基盤の整備から本番運用まで通して担当した方と、整った環境で分析だけを担当した方では、提示される条件が変わります。統計は市場の輪郭を知るために使い、自分の水準は担当範囲で説明するほうが交渉は進みます。
年収を決めている4つの要素
提示額の差は、経験年数だけでは説明できません。実務で効いているのは次の4つです。
1. 扱ったデータの性質
業務で発生する実データを扱ったか、整形済みのデータを分析していたか。欠損や定義の揺れがある状態を扱った経験は、そのまま評価に反映されやすくなります。
2. 担当した工程の範囲
分析だけか、データの取得や基盤の整備、本番への実装、運用まで含むか。範囲が広いほど提示は上がる傾向があります。job tag でも、この職業のタスクとして分析目標の設定から実装までが挙げられています。
3. 分析の到達点
レポートで終わったのか、意思決定や施策に使われたのか。事業への接続が説明できるかどうかが、経験年数以上に効きます。
4. 会社の段階と収益構造
同じ役割でも、会社の状態によって払える額が違います。収益が安定している会社ほど固定報酬が高く、初期段階の会社は固定を抑えて株式報酬を組み合わせる設計になることがあります。
会社の段階で、報酬の付き方が変わる
| 会社の段階 | 固定報酬の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 初期のスタートアップ | 抑えめ | 株式報酬が組み合わされることがある。担当範囲は広い |
| 成長期のスタートアップ | 市場水準に近づく | 分析組織を作る役割が加わる |
| 上場企業・大手事業会社 | 制度として安定 | 等級で決まり、個別の交渉幅は小さい |
| 支援・受託の会社 | 案件単価と連動 | 稼働と成果の見え方が報酬に反映されやすい |
初期段階の会社で株式報酬が提示される場合、現金部分だけで比較すると条件を見誤ります。株式部分は、数量、行使価額、行使できる時期、退職時の取扱いを確認したうえで評価する必要があります。これらが示されない段階では比較ができません。
一方、大手事業会社では等級制度に沿って決まるため、個別の交渉余地は限られます。入社時の等級がその後数年の水準を決めるため、入口の設定が重要になります。
求人票の年収レンジをどう読むか
求人票に「年収500万円〜1,000万円」といった幅で書かれていることがあります。この幅の読み方には、いくつか押さえておく点があります。
上限は特定の条件を満たした場合の額です。 提示された幅の中央あたりを想定しておくほうが、実際とのずれが小さくなります。上限に近い額が出るのは、募集している型のなかでも担当範囲が広い場合や、既に同等の役割を担った実績がある場合に限られることが多くなります。
幅が広い求人は、役割が固まっていない可能性があります。 分析専任から基盤構築まで含む形まで、複数の型を1つの募集にまとめているケースです。この場合、面接で担当範囲を確認しないと、どの水準で提示されるかが読めません。
固定残業代が含まれているかを確認します。 月額に一定時間分の残業代が組み込まれている場合、同じ提示額でも実質的な水準が変わります。job tag に掲載されている月間労働時間は159時間とされていますが、これは調査区分全体の数値で、会社ごとの実態を示すものではありません。
賞与の扱いを揃えて比較します。 賞与込みの年収を提示する会社と、月額のみを示す会社があります。前提を揃えないまま複数のオファーを並べると、判断を誤ります。
年収が伸びる人、伸び悩む人
伸びる要因
- 担当工程が広がる。分析から基盤、実装、運用へと範囲が増える
- 分析テーマを自分で設定する立場になる
- 事業側と直接議論し、判断に関与する
- 他の人が繰り返し使える仕組みを作る
伸び悩む要因
- 依頼を受けて処理する立場が続く
- 手法の幅は広がるが、事業への接続が語れない
- 環境が整った場所でしか経験がなく、再現性を示せない
- 社内でしか通用しない指標や運用に習熟してしまう
4つ目は見落とされがちです。同じ会社に長くいると、その会社固有の指標定義に詳しくなります。それ自体は価値がありますが、転職市場では説明が必要な経験になります。job tag によれば就業者数は79,260人で、母集団が大きい職種ではありません。社外の水準に触れる機会を意識して作る価値があります。
提示条件を確認するときの観点
オファーを受けたら、金額以外に次を確認しておくと判断がしやすくなります。
- 担当範囲 — 分析のみか、基盤や実装まで含むか。範囲が広いほど、次の転職での評価も変わります
- 評価の基準 — 何をもって成果とするか。精度なのか、事業指標への影響なのか
- 分析基盤の状態 — 入社後、整備から始めることになるかどうか
- 賞与の設計 — 固定なのか業績連動なのか。job tag の年収には賞与が含まれるため、比較する際は前提を揃える
- 株式報酬がある場合の条件 — 数量、行使価額、行使時期、退職時の取扱い
2つ目は、この職種では確認しておく価値があります。分析の成果は外から見えにくいため、評価基準が曖昧なまま入社すると、貢献が報酬に反映されないことがあります。
隣接職種との比較
近い職種の水準感も、判断材料になります。
- 機械学習エンジニアの年収、AIエンジニアの年収 — 実装寄りの水準
- データアナリストの年収 — 分析寄りの水準
- データエンジニアの年収、MLOpsエンジニアの年収 — 基盤寄りの水準
- データ・アナリティクスコンサルタントの年収 — 支援側の水準
- データサイエンティストの年収 — 同職種の一般的な情報
キャリアの進み方と選考については、データサイエンティストのキャリアパス、データサイエンティストの転職難易度もあわせてご確認ください。
エージェントベストの見解
年収の面で行き違いが起きやすいのは、入社後に担当範囲が想定と違っていた場合です。分析の専門職として採用されたつもりが、実際にはデータ整備と社内の集計依頼への対応が中心だった、という状態です。この場合、本人の成果が見えにくくなり、次の評価でも上がりにくくなります。防ぐには、オファーの段階で分析基盤の状態を聞いておくことです。データウェアハウスがあるか、指標の定義が文書化されているか、直近で本番に載った分析があるか。整備から始まること自体は珍しくありませんが、それを織り込んだうえで評価基準を合意しているかどうかで、1年後の状況が変わります。金額の交渉より先に、何を成果と見なすかを揃えておくほうが、結果的に報酬にも反映されます。
まとめ
データサイエンティストの年収相場について、押さえるべき点を整理します。
- 公開されている数字は2種類ある。在職者の年収611.9万円と、求人賃金の月額30.3万円
- 前者は経験を積んだ層を含む実績値、後者は募集時の提示額。測っているものが違う
- 統計は平均年齢43.9歳の区分全体の数字で、スタートアップに限った値ではない
- 実務で年収を決めるのは、扱ったデータの性質、担当工程の範囲、分析の到達点、会社の段階
- 初期段階の会社では株式報酬が加わることがあり、条件を確認しないと比較できない
- 金額より先に、何を成果と見なすかを合意しておく
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業や業界の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 平均年収611.9万円は、何年目くらいの水準ですか。
A. この数値は在職者全体の平均で、年次別の内訳ではありません。掲載されている平均年齢は43.9歳です。経験年数ごとの目安として使える性質の数字ではない点にご注意ください。
Q. 求人票の月額が統計より低いのはなぜですか。
A. 求人賃金は募集時点の提示額で、賞与や手当が含まれていない場合があります。また経験の浅い層向けの求人も含まれます。年収と比較する際は、賞与の有無を揃えて確認する必要があります。
Q. スタートアップに移ると年収は下がりますか。
A. 会社の段階によります。初期段階では固定部分を抑え、株式報酬を組み合わせる設計が見られます。現金部分だけで比較せず、株式の条件まで確認したうえで判断することをおすすめします。
本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。