スクラムマスターの年収相場|転職で押さえるべきポイント
報酬は、兼ねているもう一方の役割で決まる
スクラムマスターの年収を考えるとき、最初に押さえておくべき事実があります。この職種は専任が少なく、多くの場合は他の役割と兼任している ということです。
そして報酬は、スクラムマスターとしてではなく、兼ねているもう一方の役割の等級で決まります。エンジニアと兼任していればエンジニアの等級、マネージャーと兼任していれば管理職の等級です。
つまり「スクラムマスターの年収を上げたい」という問いは、実際には「どちらの役割で評価されるか」という問いになります。この記事では、その構造と、公開されている数字の読み方を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
近い区分は「管理職」の数字
この職種には、対応する公的な職業区分が用意されていません。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で最も近いのはプロジェクトマネージャ(IT)です。
| 項目 | プロジェクトマネージャ(IT) |
|---|---|
| 年収 | 889万円 |
| 求人賃金(月額) | 39万円 |
| 平均年齢 | 38.3歳 |
| 月間労働時間 | 173時間 |
| 時間当たり賃金 | 4,026円 |
| 有効求人倍率 | 2.1 |
| 就業者数 | 656,770人 |
年収・平均年齢・労働時間・時間当たり賃金は令和7年賃金構造基本統計調査、求人賃金と有効求人倍率は令和6年度、就業者数は令和2年国勢調査の数値です。
ここで注意が必要です。 この区分は、job tag の説明ではプロジェクトチームの責任者として実行計画の作成、予算、要員、進捗の管理などを行う職業とされています。責任を持って管理する立場であり、スクラムマスターとは役割の方向が違います。
889万円という数字を、そのまま自分の相場と考えると判断を誤ります。管理責任を負う対価が含まれた水準だからです。
なお、求人賃金の月額39万円を12倍すると468万円で、年収との差は約420万円あります。在職者に上位の管理職が多く含まれ、募集は担当者層が中心という構造がここにも表れています。
エージェントベストの見解
この職種の報酬について相談を受けたとき、まず確認するのは「どちらの役割で等級が決まるか」です。スクラムマスターという名称で採用されても、社内の等級表にその職種が存在しないことがよくあります。その場合、エンジニアの等級か、管理職の等級のどちらかに当てはめられます。前者なら技術力で、後者なら組織への責任で評価されます。ここを確認せずに入社すると、1年後の評価面談で噛み合いません。支援の働きを評価してほしいのに、コードを書いた量で測られる。あるいは、納期の責任を負っていないのに管理職の基準で見られる。オファーの段階で「評価シートはどの職種のものを使うか」と聞くのが最も確実です。制度を理解している方だと受け取られますし、答えにくい質問でもありません。
会社のタイプで、報酬の決まり方が変わる
| 事業会社(自社開発) | 受託開発 | 支援・コンサルティング | |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 開発組織の一部 | 案件に配属される | 顧客先で支援する |
| 等級の当てはめ | エンジニアまたは管理職 | 職位と単価 | コンサルタントの等級 |
| 報酬の特徴 | 開発職の水準に準じる | 案件単価に連動しやすい | 上限は高いが稼働に左右される |
事業会社 では、開発組織の等級表に当てはめられます。専任の枠がある会社は、開発者が数十人規模以上であることが多く、その分の水準は確保されます。
受託開発 では、顧客に請求する単価が報酬の上限を規定します。スクラムマスターとして単価が立つかどうかは、契約の形と顧客の理解に左右されます。
支援・コンサルティング では、アジャイル導入の支援として顧客に入る形です。単価は高くなりますが、稼働率と契約の継続に収入が連動します。
年収が伸びる要因
- 担当するチーム数が増える。1チームから複数チームの横断へ
- 組織の構造そのもの(評価制度、体制、予算の付け方)に関与する
- 経営層に対して、進め方の変更が事業に与える影響を説明する立場になる
- 管理職として、納期と要員に責任を負う
- 技術的な意思決定にも関与し、開発職としての等級が上がる
4つ目と5つ目は、スクラムマスターとしてではなく、兼ねている役割で伸ばす形です。この職種で報酬を上げる現実的な経路は、多くの場合こちらになります。
伸び悩む要因
- 1チームの支援を繰り返し、組織の課題に踏み込まない
- 兼任しているもう一方の役割で成果を示せない
- 進め方の改善が、事業の数字とどうつながるかを説明できない
- 会議の運営役として扱われ、判断に関与しない
3つ目は、この職種で重要な点です。リリース頻度が上がったことが、売上や顧客満足にどうつながったのか。ここを説明できないと、評価の場で位置づけが弱くなります。
労働時間との関係も見ておく
job tag に掲載されているプロジェクトマネージャ(IT)の月間労働時間は173時間とされています。これまで見てきた他の職種と比べて長めの水準です。時間当たり賃金は4,026円とされています。
スクラムマスターの場合、労働時間の性格が少し違います。
時間が読みにくい要因
- チームの状態が悪いときほど、関与に時間がかかる
- 会議の運営に加えて、その前後の準備と調整が発生する
- 兼任の場合、開発や管理の業務と重なる
- 組織の課題に踏み込むと、他部署との折衝が増える
兼任の場合はとくに注意が必要です。 開発の締切とチーム支援が重なる時期は、どちらも中途半端になりがちです。オファーの段階で、支援に割ける工数の目安を確認しておくと、入社後の想定違いが減ります。
評価の場で使える記録を作る
この職種は成果が見えにくいため、報酬の交渉材料を自分で作る必要があります。在籍中から用意できるものを挙げます。
1. 担当したチームの前提
人数、職種の構成、経験年数の分布、扱っていた製品の性質。前提が分からないと、難易度が伝わりません。5人の新規開発チームと、20人の保守運用チームでは求められる動きが違います。
2. 前後で比較できる数字
定例会議の時間、着手から本番反映までの日数、差し戻しの件数、期間内に終わった作業の割合。厳密な計測でなくても構いません。
3. 事業への接続
その変化が何につながったかを一言で言えるようにしておきます。リリースが早くなり競合より先に機能を出せた、手戻りが減り同じ人数で扱える案件が増えた、といった形です。
4. 変わらなかった事例と、その分析
すべてのチームが良くなるわけではありません。理由を構造で説明できると、判断の質が伝わります。
5. 兼任していた場合の工数配分
支援に週何時間を使っていたか。もう一方の役割で何を担っていたか。これがないと、どちらの成果として評価すべきか読み手が判断できません。
これらは退職後には集めにくくなります。転職を考え始めた時点で記録を取っておく価値があります。
提示条件を確認するときの観点
- 等級の当てはめ — エンジニアか、管理職か、それとも独自の枠か
- 評価シート — どの職種のものを使うか。何が評価項目に入っているか
- 専任か兼任か — 兼任の場合、支援に割ける工数の目安
- 納期の責任 — 遅れたときに誰が説明するか
- 担当チーム数 — 1チームか、複数か
- 受託の場合の契約形態 — 準委任かどうかで進め方が変わります
2つ目が最も実務的です。評価項目を見れば、会社がこの役割に何を期待しているかが分かります。
隣接職種との比較
- プロジェクトマネージャー(PM)の年収、プロジェクトマネージャーで年収1000万円を目指すには
- エンジニアリングマネージャーの年収 — 組織側の水準
- テックリードの年収 — 技術側の水準
- プロダクトマネージャー(PdM)の年収 — 製品側の水準
- PMOの年収、開発ディレクターの年収 — 進行管理側の水準
キャリアの進み方と選考は、スクラムマスターのキャリアパス、スクラムマスターの選考フロー・面接対策をご確認ください。
エージェントベストの見解
報酬で行き違いが起きやすいのは、成果の説明が評価の場でできないケースです。この職種の働きはチームの状態に表れるため、自分の貢献として言葉にしにくい。評価面談で「チームが良くなりました」としか言えないと、判断の材料になりません。防ぐには、在籍中から数字の記録を取っておくことです。定例会議にかけていた時間、リリースまでの日数、差し戻しの件数、メンバーが上位者に確認せず決めた事項の数。厳密な計測でなくても、前後で比較できる形にしておけば十分です。あわせて、その変化が事業の何につながったかを一言で言えるようにしておきます。リリースが早くなったことで、顧客の要望に応える速度が上がった、という接続です。この記録がある方とない方では、同じ働きをしていても評価が変わります。
まとめ
スクラムマスターの年収相場について、押さえるべき点を整理します。
- 専任が少なく、報酬は兼ねているもう一方の役割の等級で決まることが多い
- 近い区分のプロジェクトマネージャ(IT)は管理職の数字。そのまま目安にはできない
- 年収889万円に対し求人賃金は月額39万円で、差は約420万円ある
- 事業会社・受託・支援で、報酬の決まり方が違う
- 伸ばす経路は、複数チーム横断、組織の構造への関与、または兼任側での昇格
- オファー時に、どの職種の評価シートを使うかを確認する
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、この職種そのものを示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. スクラムマスターの平均年収はいくらですか。
A. この職種に対応する公的な職業区分がないため、単一の数字は示せません。近いプロジェクトマネージャ(IT)は889万円ですが、管理責任を負う職業の数字であり、そのままの目安にはできません。
Q. 専任と兼任では、どちらが年収は高いですか。
A. 一概には言えません。兼任の場合はもう一方の役割の等級で決まるため、管理職と兼ねていれば高くなります。専任は開発組織の規模が大きい会社に多く、水準は確保されていることが一般的です。
Q. 資格を取ると年収は上がりますか。
A. 直接的に連動する仕組みを持つ会社は多くありません。資格より、担当したチーム数と、組織の課題にどこまで踏み込んだかが評価に影響します。
本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。