広報/PRの働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情

職種:広報/PR |更新日 2026/7/4

広報・PR職の働き方は、担当する業務の性質上、他の職種と比較してイレギュラーな対応が生じやすい傾向がある。メディアリレーションズ、プレスリリース、社内広報、SNS運用、危機対応など業務領域が広く、それぞれで求められる時間的拘束や精神的負荷が異なる。本稿では、激務度・残業・リモートワーク事情を軸に、広報・PR職の働き方の実態を構造的に整理する。


広報・PR職の業務構造と激務度の関係

広報・PR職の激務度は、所属する組織の規模・業種・フェーズによって大きく異なる。一律に「激務」「楽」と評価することは難しく、変動要因を理解することが実態把握の出発点となる。

大きく分類すると、広報業務は以下の4領域に整理できる。

この4領域のうち、日常の残業量に最も影響しやすいのはメディア対応とクライシス対応である。メディアの締め切りや取材依頼は平日昼間に集中するとは限らず、朝イチの問い合わせや夕方以降の修正依頼が生じやすい。クライシス対応に至っては、発生タイミングがコントロール不能であるため、深夜・休日対応が発生するケースもある。

一方、社内広報やコンテンツ制作を主担当とするポジションは、定常業務の計画性が高く、比較的スケジュール管理がしやすい傾向がある。


企業規模・業種別の働き方比較

以下に、企業規模と業種を軸とした働き方の傾向を整理する。なお、数値はあくまで市場に流通する情報をもとにした目安であり、個別企業によって大きく異なる。

区分残業時間の目安(月)リモート対応担当業務の幅特徴的な負荷
大企業(非IT)20〜40時間限定的〜中程度特化型社内調整の多さ、稟議の複雑さ
大企業(IT・SaaS)20〜35時間比較的高い特化〜中程度リリーススパンの短さ、英語対応
スタートアップ(シリーズA〜B)30〜60時間高い広範一人広報、手段の整備から必要
PR会社(インハウス代替型)40〜60時間中程度クライアント複数担当複数社のリリース対応、締め切り集中
コンサル系広報支援30〜50時間中〜高い戦略寄り成果物の質への要求水準が高い

スタートアップ期の企業では、広報担当が1〜2名というケースも珍しくなく、メディア対応・コンテンツ制作・社内連携・SNS運用を一人で担う構造になりやすい。その分、裁量は広く、上流からの意思決定に関与しやすいという側面もある。大企業では分業が進んでいるが、社内調整・稟議・承認ルートの複雑さが別の負荷として生じる傾向がある。


リモートワーク事情の実態

広報・PR職におけるリモートワークの普及率は、他のバックオフィス系職種と比べると、やや複雑な事情がある。

理由は「対面が必要な局面」が業務上存在するためである。たとえば、経営者や役員の取材同席、社内発表イベントの運営、メディア懇親会の設営などは、オンラインに代替しにくい。また、撮影・動画制作を社内で行う企業では、スタジオや収録環境の準備のために出社が求められることがある。

一方で、以下の業務はリモートとの親和性が高い。

IT・SaaS系企業では、週2〜3日のリモート勤務を標準とする体制が比較的浸透している。PR会社・エージェンシーでは、クライアント訪問や取材同席の頻度によって出社日が変動しやすく、フルリモートは少数派となる傾向がある。


ケーススタディ:SaaS系スタートアップの一人広報担当

以下は、従業員数80名規模のBtoB SaaS企業に在籍する広報担当者(経験5年、一人広報)の1週間の業務構造を例示したものである。実在の個人ではなく、市場の一般的な実態をもとに構成したモデルケースである。

月曜日:週次の広報定例MTG(マーケ・プロダクト・経営との情報共有)、プレスリリース草稿レビュー依頼の受領

火曜日:メディアピッチ送信、取材アポイントの調整、プレスキットの更新

水曜日:取材対応(社内にて記者同席)、撮影立ち会い、取材後のフォローアップ送付

木曜日:SNS投稿スケジュール確認・修正、社内報コンテンツの企画提案、決算関連の広報確認(IR担当と連携)

金曜日:月次の広報レポート作成、翌週のメディアアプローチリスト更新、経営陣へのブリーフィング資料作成

このモデルケースにおける残業は週平均10〜15時間程度となりやすく、月換算では40〜60時間の水準になることが多い。プレスリリースの配信タイミングや取材の集中週には更に増加する傾向がある。一人広報の構造上、体調不良や休暇取得時のバックアップ体制が薄くなりやすい点も、精神的な負荷に影響する要因として挙げられる。


精神的負荷と職種特性の関係

広報・PR職の負荷は、物理的な労働時間だけで語れない部分がある。特に以下の3点は、精神的なプレッシャーとして語られることが多い。

①オンコール的な緊張感の持続 クライシス対応の必要性が潜在的に常に存在するため、「いつ何かが起きるかわからない」という感覚が続きやすい。SNSの炎上モニタリングを担当する場合は、夜間・休日も状況把握が求められることがある。

②記事内容・報道結果のコントロール不能性 取材対応やプレスリリース配信を丁寧に行っても、最終的な報道内容は記者・編集部の判断による。意図と異なるトーンで掲載されるリスクが常に伴い、経営層からの期待と現実のギャップに挟まれやすい構造がある。

③社内外の調整役としてのポジション 広報は、社内情報を整理して外部に届ける役割を担う一方、社内各部門の要望を一手に受ける窓口にもなりやすい。部門間の優先順位の調整、情報の取捨選択における判断負荷が高い。


よくある質問

Q1. 広報・PRは未経験からでも働き方を整えやすい職種ですか?

未経験採用は存在するものの、広報・PR職は即戦力を求める求人が多い傾向がある。特にスタートアップや一人広報のポジションでは、メディアリレーションズの経験や文章の実務スキルが入職初期から必要とされる場合が多い。未経験から入る場合は、PR会社や大企業の広報アシスタントポジションが学習環境として適しやすい。業務に慣れるまでの期間は、精神的な負荷が増加しやすい時期でもある。

Q2. 広報職のリモートワークは今後も普及が続くと見られますか?

IT・SaaS系企業を中心に、リモートワーク対応の間接業務が増加しており、広報業務の一部もその流れに沿いやすい。ただし、メディア対応・取材同席・イベント運営など対面が前提の業務は構造的に残りやすく、フルリモート化が進みにくい業務領域は引き続き存在する。ハイブリッド型(週2〜3日出社)が現時点での一般的な落としどころとなっている企業が多い。

Q3. 広報・PRのキャリアを積む上で、働き方の観点から注意すべきポジションはありますか?

一人広報ポジションは、裁量が広い反面、業務量の上限設定が難しく、長期的な消耗が生じやすい傾向がある。また、PR会社での複数クライアント担当は、締め切りの重複やクライアント間の優先順位調整が常態化しやすい。いずれも成長機会として有効なポジションではあるが、入職前に「バックアップ体制」「広報チームの人員規模」「経営の広報への関与度」を確認することが重要である。

Q4. 広報・PRから他職種への転換はしやすいですか?

コンテンツ・文章の制作スキル、メディアリレーションズの知見、社内コミュニケーション設計の経験は、マーケティング・ブランド・インターナルコミュニケーション・IRといった隣接領域への転換に活かしやすい。一方で、広報固有の「報道対応」「危機管理コミュニケーション」の経験は、代替が難しい専門性として評価されやすく、ポータブルスキルと専門スキルのバランスを意識したキャリア設計が中長期的には有効となる傾向がある。


まとめ

広報・PR職の働き方は、企業規模・業種・担当業務の領域によって大きく異なり、一律に評価することが難しい職種である。残業時間・リモート対応の柔軟性・精神的負荷のいずれも、ポジションの構造を理解した上で判断することが重要となる。特に、一人広報やクライシス対応を担うポジションでは、物理的な時間外労働に加えて、常時対応の緊張感が職務上の特性として存在しやすい。入職前には「チーム規模」「バックアップ体制」「経営の広報への理解度」を確認する視点が、入職後のミスマッチを防ぐ上で有効である。自分のキャリアフェーズと照らし合わせた上で適切なポジションを見極めるためには、市場全体の動向と個別企業の実態を正確に把握することが出発点となり、専門的なキャリア相談を活用することも一つの選択肢として検討に値する。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)