プロジェクトマネージャーに英語は必要か|英語力で広がる求人と年収

職種:プロジェクトマネージャー(PM) |更新日 2026/7/4

プロジェクトマネージャー(PM)にとって英語力がどれほど重要かは、業種・企業規模・プロジェクト性質によって大きく異なる。ただし、全体的な傾向として、英語力が一定以上あるPMは求人母数が増加し、年収レンジが上振れしやすい。本稿では、英語力の有無がPMキャリアに与える影響を構造的に整理し、転職・スキルアップの意思決定に役立つ情報を提供する。

英語力が求められるPM職の全体像

PMに英語力を求める求人は、大きく4つのカテゴリに分類できる。

  1. 外資系ITベンダー・SaaS企業:本社が海外にあり、グローバルチームとの連携が日常的に発生する。週次の進捗報告を英語でスライドにまとめる、海外ステークホルダーとリモート会議を行うといった業務が標準的に組み込まれている。
  2. 日系グローバル企業の情報システム部門・PMO:海外拠点との横断プロジェクトを担当するポジションで、特に製造・商社・金融において需要がある。ビジネス英語が読み書きできる水準を求められることが多い。
  3. コンサルティングファーム(外資・日系上位):クライアントが外資系企業であったり、海外チームとの協業が発生したりするケースで英語を使う。PMとしてのポジションよりプロジェクトリード・シニアコンサルタントに近い役割でも、英語力は評価対象になりやすい。
  4. 受託開発・SIerのオフショア開発案件:ベトナム・インド・フィリピン等のオフショアチームとのコミュニケーションで英語が必要になる。全会話が英語という訳ではなく、仕様書・チャット・ドキュメントを英語で扱う場面が中心となる傾向がある。

英語力別の求人件数・年収への影響

英語力の目安として、採用市場ではTOEICスコアが一定の指標として使われることが多い。ただし、採用担当者の多くが重視するのはスコアそのものより「業務で実際に使えるか」という実用性である。

英語レベル主な目安(参考)求人の広がり年収レンジの傾向(経験5年前後のPM)
不問〜初歩的TOEIC 600未満国内プロジェクト中心600〜800万円前後が中心
ビジネス基礎TOEIC 700〜800程度日系グローバル・オフショア案件700〜950万円前後まで広がりやすい
ビジネス実務TOEIC 800〜900程度外資系・グローバルPMO850〜1,200万円前後が視野に入る
ネイティブ同等TOEIC 900超・実業務経験グローバルPM・PMDirector1,200万円以上のポジションへアクセスしやすい

※上記は業種・企業規模・個人の経験によって変動が大きい目安であり、特定の年収を保証するものではない。

英語力単体で年収が決まるのではなく、PMとしてのスキルセット(スコープ管理・リスク管理・ステークホルダーマネジメント)と英語力の組み合わせで市場評価が変化する点を把握しておくことが重要である。英語が話せても、PMとしての経験・実績が伴わなければ上位ポジションへの転換は難しい。

英語が「使える」とはどの水準か

PMの採用においては、英語力を以下の3軸で評価することが多い。

読み書き(Reading / Writing)

多くのグローバルプロジェクトで最低限求められる水準。仕様書・要件定義書・週次レポートを英語で作成・読解できる能力が基準となる。TOEIC Readingで高スコアを取れていれば、この軸は比較的クリアしやすい。

リスニング・会議参加(Listening / Speaking in meetings)

外資系やグローバルチームとのリモート会議が多い環境では、ネイティブスピードの英語を聞き取り、自分の見解を発言できる水準が求められる。ノンネイティブ同士のやりとりが多い環境(アジア圏オフショア)では、この水準のハードルは下がる傾向がある。

交渉・折衝(Negotiation / Stakeholder management)

上位の外資系ポジションやグローバルPMOで求められる。予算・スコープ変更・リスク受容に関して、海外ステークホルダーと交渉できるレベルを指す。ここまで求められるポジションは限定的だが、年収・ポジションの上限が大きく広がる領域でもある。

ケーススタディ:英語力を起点に転職した国内SIer出身PMの例

以下は一般的に見られるキャリアパターンの一例として参考にしてほしい。

プロフィール例

転換のプロセス この層のPMが外資系やグローバル環境へ転換するにあたって、まず取り組みやすいのがオフショア開発案件へのアサインである。インド・ベトナムのチームとのやりとりを通じて、「業務で使う英語」の実経験を積む。この段階でTOEIC 750〜800程度に達している場合、日系グローバル企業のPMO案件や外資系企業のハイブリッドポジション(英語必須・日本語対応も必要)への転換が現実的な選択肢として浮上してくる。

転職後の変化 外資系SaaS企業のシニアPMポジションへ転換した場合、年収が100〜250万円程度上昇するケースが観察されやすい。ただしこの変化は、英語力だけでなく、PMとしての実績(納品プロジェクト数・チームサイズ・予算規模)が評価された結果である点に留意が必要である。

英語力を上げるための現実的なアプローチ

転職活動を並行しながら英語力を高める場合、以下の優先順位が実務的である。

  1. ビジネスメール・ドキュメント作成力を先に固める:PMの業務では会話より書面のコミュニケーションが先行することが多い。英語での議事録・ステータスレポート作成を練習することで、実務に直結したスキルを効率よく身につけやすい。
  2. TOEIC対策は700〜800を目標に設定する:スコアが一定水準に達していると、書類選考でのフィルタリングを回避しやすくなる。900以上を目指すより、実務英語の質を高めることに時間を振り向けた方が転職市場での評価に結びつきやすい傾向がある。
  3. オフショア経験・海外拠点との協業実績を積む:現職でオフショア案件や海外拠点絡みのプロジェクトに手を挙げることで、英語の実業務経験として職歴に記載できる材料を得られる。転職先からすれば、スコアより実務経験の方が評価しやすい。

よくある質問

Q1. PMとして英語ができなくても外資系企業に転職できますか?

外資系企業でも、日本市場向けのプロダクト開発や国内クライアント対応が中心のポジションでは、英語使用頻度が限定的なケースがある。ただし、社内会議・ドキュメント・人事評価のプロセスが英語で運用される企業では、読み書き程度の英語力は実務上ほぼ必須となる。事前に「どの言語で業務を進めているか」を確認した上で応募を検討することが望ましい。

Q2. TOEIC何点あれば転職で有利になりますか?

採用市場では700〜750点が一つの目安とされることが多い。この水準を超えていれば、英語力が選考のネックになるケースは減少する傾向がある。ただし、外資系の上位ポジションでは書類審査よりも面接・実際の英語コミュニケーションの質で判断されることが多く、スコアの影響は相対的に小さくなる。

Q3. 英語を使わないPMのキャリアは頭打ちになりますか?

国内市場向けのプロジェクトに特化する形であれば、英語力なしでも大規模プロジェクトのPM・PMOリードとして高い評価を得るキャリアは十分に存在する。ただし、求人母数という観点では英語力があるPMの方が選択肢が広がりやすいことは事実である。どちらが「正解」かはキャリア志向による。

Q4. 英語力とPMとしての専門スキル、どちらを先に伸ばすべきですか?

PMとしての基礎スキル(WBS作成・リスク管理・ステークホルダー調整)が一定水準に達していることが前提となる。英語力のみが高くてもPMポジションへの転換は難しく、逆に英語力がなければグローバルポジションへのアクセスが制限される。現時点でPM経験が浅い場合は、まず国内案件で実績を積み、その後英語力を補完していく順序が現実的と考えられる。

まとめ

PMにとって英語力は必須ではないが、あることで求人の母数が増加し、年収レンジが上振れしやすいことは市場の傾向として確認できる。英語力単体ではなく、PMとしての実績・専門性と組み合わさることで初めて市場評価に反映される点が重要である。求められる英語レベルも「読み書き」から「ネイティブとの交渉」まで幅があり、目指すポジションに応じた水準を把握した上で投資先を判断することが合理的である。特に外資系・グローバルPMO・オフショア領域への転換を検討している場合は、現在の英語力とPM経験を踏まえた上で、自身の市場価値を専門家に確認することが実質的な次のステップとなる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)