SaaS営業の働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情

職種:SaaS営業(フィールドセールス) |更新日 2026/7/3

SaaS営業(フィールドセールス)の働き方は、従来型の法人営業と比較して構造的に異なる点が多い。目標管理の方式、顧客接点の設計、報酬体系いずれもSaaS特有のロジックで動いており、「激務かどうか」「リモートがどの程度機能しているか」という問いへの答えも、その構造を理解した上で判断する必要がある。

本記事では、SaaS営業の働き方を規定する構造的な要因を整理した上で、激務度・残業実態・リモート事情の三軸で実態に近い形を解説する。転職検討時の判断軸として活用してほしい。


SaaS営業の働き方を規定する3つの構造的要因

① KPIの設計がアクティビティ管理を生む

SaaS企業の多くは、売上を「MRR(月次経常収益)」「ARR(年次経常収益)」で管理する。単発の受注金額ではなく継続課金の積み上げが事業の根幹にあるため、営業のKPIも「受注件数」「受注ARR」「パイプライン件数」「商談化率」など多層的になりやすい。

この構造が営業担当者に何をもたらすかというと、日次・週次での進捗可視化が習慣化しやすい。商談をCRMに入力し、ファネル別の進捗を上長と確認するサイクルが週単位で回るため、業務の密度が高くなりやすい。ただしこれは「長時間労働」と直結するわけではなく、時間当たりの思考密度が高いという意味合いに近い。

② 職種分業(The Model型)が業務範囲を限定する

SaaS企業の多くが採用している「The Model型」の営業分業体制では、フィールドセールスはマーケティング・インサイドセールス(IS)が創出した商談を引き受け、クロージングまでを担う。カスタマーサクセス(CS)にバトンを渡した後の既存顧客フォローは原則としてCSが担う。

この設計により、フィールドセールスの業務範囲は「商談〜受注」に集中しやすい。一方で、商談の質や数がISとの連携精度に依存するため、社内コミュニケーションコストが発生する点は見落としやすい。

③ 目標達成・未達の透明性が高い

SaaS営業ではCRMのデータが整備されていることが多く、個人の達成率が組織内でリアルタイムに可視化される傾向がある。これはパフォーマンスへのプレッシャーを一定以上生むが、同時に「何をすべきか」の判断基準が明確になるという側面もある。達成水準が透明であるがゆえに、自律的にタスクを設計しやすい環境とも言える。


激務度・残業・リモート事情の実態

SaaS企業の規模・フェーズ・ポジションによって働き方の実態には幅がある。以下に、規模・フェーズ別の傾向を整理する。

フェーズ残業の目安(週あたり)リモート対応業務密度
アーリー〜シリーズA20〜30時間超になりやすい制度はあっても出社圧力が生じやすい非常に高い
シリーズB〜C(成長期)10〜20時間程度が多い傾向ハイブリッドが主流高い
上場企業・大手SaaS5〜15時間程度の場合が多い職種・チームによって異なる中〜高
外資系SaaS裁量が広い分、個人差が大きいリモートフレンドリーな場合が多い個人差が大きい

※いずれも業界平均・一般的傾向として示すものであり、個社・個人によって大きく異なる。

激務度について

「SaaS営業は激務か」という問いに対して、業界全体として一律に答えることは難しい。ただし、次のような構造的な傾向は指摘できる。

残業の実態

残業時間の実態は「会社が何を求めているか」よりも「個人がどこに時間をかけるか」によって変動しやすい職種でもある。商談件数の不足を補うために夜間や週末にアウトバウンドをかける営業担当者もいれば、IS連携が機能していて商談が自然に積み上がる環境では、定時前後で業務が完結するケースもある。

制度面では、SaaS企業の多くがフレックスタイム制や裁量労働制を採用しており、「いつ働くか」の自由度は従来型の営業職に比べて高い傾向がある。ただし、裁量労働制のもとでは長時間労働が「見えにくくなる」リスクも存在するため、選考時に「平均的な業務時間帯」を確認することを推奨する。

リモート事情

SaaS業界ではツール活用が浸透しており、商談のオンライン化が一般化している。これにより、フィールドセールスがかつてのような毎日外出を伴う職種ではなくなりつつある。

一方で、完全リモートが定着しているかどうかは企業文化・フェーズによって分かれる。成長初期のフェーズでは、メンバーが同じ空間で知見を共有する機会を重視する文化が根付きやすく、出社頻度が高めになりやすい。上場後や一定規模以上の組織では、週2〜3日出社のハイブリッドが多い傾向にある。

外資系SaaS企業については、本国の働き方文化が反映されやすく、成果主義・リモートフレンドリーな制度設計になっている場合が多い。ただし、その分パフォーマンス評価の基準が明確で、達成水準を維持できないと内部ポジションへの影響が生じやすい点は理解しておく必要がある。


ケーススタディ:SaaS企業のフィールドセールス、28歳・転職1年目の一週間の型

以下は、シリーズBフェーズのSaaS企業にコンサル出身者が転職した場合に想定される、典型的な一週間の業務構成のモデルである。実際の業務は個人・組織によって異なるが、構造の理解に役立てていただきたい。

この構成を見ると、「外出中心」ではなく「オンライン商談・社内連携・データ管理」が業務の中心にあることがわかる。顧客折衝のスキルに加えて、情報整理・関係者調整・仮説構築の能力が求められる職種像に近い。


よくある質問

Q. SaaS営業は体育会系・詰め文化の職場が多いですか?

企業ごとの文化差が大きく、一概には言えません。数値管理が徹底されている分、達成状況が可視化される環境ではあります。ただし、「詰め」の文化があるかどうかはマネジメント層の方針と組織のフェーズに強く依存します。選考時にマネージャーのマネジメントスタイルを直接確認することが、ミスマッチを防ぐ上で有効です。

Q. 子育て中でも活躍できるポジションですか?

フレックス制・リモートワーク可能な環境が整っているSaaS企業は増えており、時間の融通は利きやすい傾向があります。一方で、Q末の業務集中や顧客都合によるスケジュール変動は生じやすいため、「完全に読める予定で動ける」かどうかは個社・チームの実態を確認する必要があります。育児との両立実績があるメンバーが在籍しているかを選考時に聞けると、リアルな情報が得られやすいです。

Q. フィールドセールスとインサイドセールス、働き方の違いはどこにありますか?

IS(インサイドセールス)は見込み顧客の初期アプローチ・ヒアリング・商談化が主業務であり、架電・メール対応の比重が高くなります。フィールドセールスは商談後半のプレゼン・提案・クロージングが中心で、一件ごとの関与深度が深くなりやすい分、提案資料作成・社内調整のコストも増えます。ISの方がルーティン的な業務サイクルが明確になりやすく、フィールドセールスは商談の性質によって業務の波が生じやすい傾向があります。

Q. インセンティブはどの程度働き方に影響しますか?

SaaS企業の多くはインセンティブ制度を設けており、達成率によって月収・年収が変動する設計が一般的です。インセンティブ比率が高い(固定給の30〜50%以上に相当する場合もある)ポジションでは、達成率へのモチベーションが業務量の裁量判断に影響しやすくなります。「稼ぐために稼働を増やす」か「効率化で同等の成果を出す」かは個人のスタイルによりますが、いずれにせよインセンティブの設計は働き方の強度に連動しやすい点として理解しておくとよいでしょう。


まとめ

SaaS営業の働き方は、職種分業・KPI構造・組織フェーズの三つの要因によって大きく規定される。「激務かどうか」は業界全体で一律に判断できるものではなく、担当商材の単価帯、組織のフェーズ、マネジメントスタイルによって実態が分かれる。リモート対応については業界全体として進んでいる傾向はあるものの、企業文化・フェーズとの兼ね合いで判断が必要になる。残業時間についても、裁量労働制の設計上「見えにくい」ケースがある点に留意すると良い。こうした構造的な理解を持った上で個社の実態を見極めるためには、自身の市場価値の確認とともに、実態に詳しいキャリアアドバイザーへの相談も選択肢の一つとなる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)