セキュリティエンジニアの働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情

職種:セキュリティエンジニア |更新日 2026/7/4

セキュリティエンジニアの働き方は、所属する組織の種類・役割・フェーズによって大きく異なる。「激務で休めない」「オンコール対応が常態化している」といったイメージを持つ方も多いが、実態はより多層的であり、ポジションの設計や企業の成熟度によって労働環境の質は相当に開きがある。本記事では、業務負荷の構造・残業の発生メカニズム・リモートワークの普及状況を具体的に整理したうえで、働き方の選択肢とキャリア設計の考え方を示す。


セキュリティエンジニアの職場類型と働き方の分布

セキュリティエンジニアが働く場は大きく4つに整理できる。それぞれの類型によって、業務の性質・時間帯・裁量度が異なる。

職場類型主な業務残業傾向リモート対応
事業会社(社内セキュリティ)セキュリティポリシー策定・リスク管理・社内教育低〜中程度高い傾向
SOC(セキュリティオペレーションセンター)監視・アラート対応・インシデント初動中〜高。シフト制が多い限定的な場合が多い
コンサルティング・監査診断・助言・報告書作成・顧客対応高い傾向(繁閑差が大きい)中程度(顧客先常駐もある)
セキュリティベンダー・製品開発製品設計・脅威インテリジェンス・研究開発中程度(プロジェクト次第)比較的高い傾向

「セキュリティエンジニア」という職種名は単一の仕事を指すわけではなく、上記の類型をまたいで複数の役割が混在している。転職や就職を検討する際は、職種名ではなく「どの類型のどのポジションか」を正確に把握することが出発点になる。


激務度の構造:残業が発生しやすい場面とその理由

インシデント対応は計画できない

セキュリティ領域の最大の特性は、業務負荷の発生タイミングが予測しにくい点にある。通常業務のサイクルは安定していても、重大インシデントが発生した瞬間に深夜・休日を問わず対応が求められることがある。これは医療や緊急系インフラと共通する構造であり、「インシデントレスポンス(IR)」を主軸とするポジションでは特にその傾向が強い。

ただし、全てのセキュリティエンジニアがIRの最前線に立つわけではない。脅威分析・ポリシー整備・ガバナンス設計を担うロールは、比較的業務時間が安定しやすい。IRと平時業務の分担が整理されている組織では、専任のIRチームを設けており、それ以外のメンバーが深夜呼び出しを受けることは少ない。

SOCのシフト勤務とその負担感

SOCは24時間365日の監視体制を維持する必要があるため、夜間・早朝・休日のシフト勤務が発生する。体力的・精神的な負荷が継続するポジションであり、離職率が高い傾向があることは業界内でも認識されている。

一方、シフト制には「時間の予測可能性」という利点もある。働く時間帯が事前に決まっているため、プライベートの予定を立てやすいという側面もある。深夜勤務手当や休日手当が加算されることも多く、額面上の収入が高くなるケースもある。

コンサルティング領域の繁閑差

セキュリティ診断・ペネトレーションテスト・コンプライアンス対応支援などを主業務とするコンサルタント職では、案件の集中する時期に残業が増える構造になりやすい。特に年度末の監査対応・セキュリティ認証(ISO 27001やSOC 2など)の取得支援は特定の時期に集中する傾向があり、その前後で業務量の落差が生じる。

プロジェクト型の仕事が多いため、スケジュール管理と案件の調整ができる上流職のエンジニアほど、自身の稼働をコントロールしやすくなる。


リモートワーク事情:普及しているが一律ではない

「フルリモート可」と「原則出社」の分断

セキュリティエンジニアのリモートワーク普及率は、他のITエンジニア職と比べると全般的にやや低い傾向がある。理由はいくつかある。

まず、機密性の高い情報を扱うため、作業環境のセキュリティ基準が社外では満たしにくいケースがある。特に政府系・金融系・医療系の案件を扱うポジションでは、システムへのアクセス制御の観点から出社が要件になることが多い。

次に、SOCや監視業務は専用の設備・ネットワーク環境を必要とするため、物理的な出勤が前提となっている組織が多い。

一方で、セキュリティポリシーの策定・教育・コンサルティング・製品開発といった業務は、リモート対応しやすい性質を持つ。SaaS系セキュリティベンダーや外資系企業ではフルリモートを前提としたポジションも増えており、求人を比較する際にはこの点を明示的に確認することが重要になる。

ケーススタディ:事業会社のセキュリティ担当者の一週間

ここでは、中規模SaaS企業のセキュリティ担当者(従業員300名規模・セキュリティ専任2名体制)の一週間のパターンを示す。

このパターンでは、定常業務は通常の勤務時間内に収まりやすく、残業は軽微なインシデントや突発的な問い合わせが重なった週に限られる傾向がある。フルリモートないしハイブリッド勤務を採用している企業であれば、週3〜4日のリモート勤務が実現できているケースもある。

ただしこの構成は、セキュリティ専任ポジションが整備された組織に限られる。兼任での対応を求められるポジションでは、業務量が定義されにくく、残業が常態化しやすい側面がある。


年収・待遇の概観

働き方と密接に連動する要素として、年収レンジをポジション別に整理する。いずれも経験・スキル・企業規模・雇用形態によって幅があるため、あくまで目安として参照されたい。

ポジション経験年数の目安年収レンジの目安
SOCアナリスト(初〜中級)1〜4年400万〜600万円程度
セキュリティエンジニア(事業会社)3〜8年550万〜900万円程度
セキュリティコンサルタント3〜10年600万〜1,100万円程度
CISOやセキュリティマネージャー8年以上900万〜1,500万円以上
セキュリティリサーチャースキル依存600万〜1,200万円程度

待遇の高さと働き方の負荷は比例するとは限らない。事業会社のセキュリティ専任ポジションは、コンサルより残業が少ない傾向がありながら、年収も競争力のある水準に達しているケースが増えている。


よくある質問

Q1. セキュリティエンジニアは常にオンコール対応が必要ですか?

ポジションによります。インシデントレスポンスを専業とするロールや、SOCの中核を担う場合はオンコール体制が設けられていることが多いです。一方、ポリシー管理・教育・コンサルティングを主とするポジションでは、オンコールが業務設計に含まれないケースも多くあります。求人票や面接の段階で「オンコールの頻度と対応範囲」を確認することを推奨します。

Q2. 未経験からセキュリティエンジニアを目指す場合、最初はどの職場が入りやすいですか?

SOCアナリストは未経験・第二新卒の受け入れを行っている組織が比較的多い類型です。ただし、シフト勤務や高い監視負荷が伴う環境も多いため、入口としてのSOCを経験した後に、スキルと志向に合ったポジションへ移行するキャリアパスが一般的に見られます。

Q3. セキュリティエンジニアとして副業・フリーランスは現実的ですか?

脆弱性診断・ペネトレーションテスト・セキュリティコンサルティングの領域では、フリーランスとして活動する専門家が一定数います。一方、機密性の高い情報を扱うポジションでは、本業企業の規定や情報管理上の制約から副業が認められないケースも多いため、個別の確認が必要です。独立を視野に入れる場合は、専門性の深化とポートフォリオの形成が先決になります。

Q4. セキュリティ資格(CISSP・情報処理安全確保支援士など)は待遇に影響しますか?

資格自体が即座に年収を引き上げるというより、採用可否の判断基準やポジション要件の充足として機能することが多いです。特に外資系・コンサルティング系ではCISSPやCISMが要件に含まれる求人が見られます。国内では情報処理安全確保支援士が公的な専門家資格として認知されており、官公庁・金融機関などが取引先となるポジションで有利に働く傾向があります。


まとめ

セキュリティエンジニアの働き方は、職場の類型・担当ロール・組織の成熟度によって大きく異なり、「激務か否か」の一言では表現できない。インシデントレスポンス中心のポジションと、ポリシー・ガバナンスを担うポジションでは、業務負荷の性質も時間の予測可能性もまったく異なる。リモートワークについても、機密性や設備上の制約からフルリモートが難しい職場がある一方、事業会社や製品開発系では柔軟な働き方が実現しやすい環境も増えている。自身の志向と現在のスキルセットに照らして、どの類型のどのロールを目指すかを明確にすることが、納得度の高いキャリア選択につながる。現在の自身の市場価値やポジション選択の方向性については、専門性のあるキャリアエージェントに整理を依頼することも一つの手段として有効です。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)