Webマーケターに英語は必要か|英語力で広がる求人と年収

職種:Webマーケター |更新日 2026/7/4

Webマーケターにとって英語力は、採用の必須条件というよりも「市場価値の幅を決める変数」として機能する。国内市場を対象とした求人であれば、英語が読み書きできなくても第一線で活躍するマーケターは多い。しかし、外資系企業・グローバル事業・SaaS領域に目を向けると、英語力の有無が求人の選択肢数、年収レンジ、キャリアパスの広がりに対して無視できない差を生む構造がある。

この記事では「英語は必要か否か」という二項対立を超えて、英語力がどのような実務局面で求められ、どの程度のスキルレベルから求人の幅が広がり始めるのかを具体的に整理する。

英語力が求められる実務局面

Webマーケターの実務における英語の必要性は、担当する事業の市場とチャネル構成によって大きく異なる。以下の局面では英語力が直接的に業務品質に影響しやすい。

海外ツール・プラットフォームのドキュメント読解

Meta Ads・Google Ads・HubSpot・Salesforce Marketing Cloudなど、マーケターが日常的に扱うプラットフォームのヘルプドキュメントや新機能リリースノートは、英語で先行公開されることが多い。日本語の公式翻訳が出るまでにタイムラグが生じるため、情報感度を高めるうえで英語の読解力は実務上の優位性になる。

グローバルチームとのコミュニケーション

外資系企業や、国内スタートアップでも海外拠点を持つ企業では、マーケティング戦略の承認プロセスや予算策定が本社・地域統括と連携する形になっていることが多い。この場合、英語でのスラック・メール対応、週次レポートの英文作成、英語会議への参加が求められる。口語コミュニケーションのスムーズさが評価基準になることも少なくない。

海外向けコンテンツ・広告の制作・品質確認

海外市場を対象にしたSEOコンテンツ、リスティング広告のコピー、SNS運用などを担当する場合、英文ライティングの質を判断する読み手としてのリテラシーが不可欠になる。ネイティブライターのアウトプットを確認・フィードバックする立場であっても、英語力がなければ品質管理が成立しない。

グローバルケーススタディ・リサーチの活用

最新のマーケティング事例やB2Bファネル設計の研究は、英語圏の情報が圧倒的に豊富かつ先行している。英語で一次情報にアクセスできることは、戦略立案の質に差をもたらす傾向がある。

英語レベル別・求人の広がり方

英語力を評価する指標として、実務では「読む・書く・話す・聞く」の4技能に加えて、TOEICスコアやビジネス英語経験の有無が参照されることが多い。以下は、一般的な求人市場における英語レベルと求人選択肢の関係性の目安を示したものである。

英語レベルの目安TOEIC参考スコア主な適合求人年収レンジ感
英語不問(日本語完結)問わず国内向けEC・メディア・中小SaaS400〜600万円前後
読解・メール対応レベル600〜730点前後国内外資系のオペレーション系、英語資料を扱う事業会社500〜700万円前後
ビジネス会話レベル730〜860点前後外資系マーケター、グローバルSaaS、海外向け事業担当600〜900万円前後
高度な英語運用力860点以上・ネイティブ水準グローバルポジション・Head of Marketing・APAC統括など800万円〜(管理職水準)

※上記の数値はあくまで市場相場の目安であり、企業規模・職責・専門性によって大幅に前後する。TOEICスコアは採用の一要素に過ぎず、実務経験・成果の裏付けが伴うことが前提となる。

スコアよりも「どんな英語業務を経験してきたか」を重視する企業は多く、外資系でも日系グローバル企業でも、実際の業務遂行経験が評価軸の中心にある点は押さえておく必要がある。

英語力が特に有効に働くキャリアパス

外資系デジタルマーケティングポジション

外資系企業のマーケティング職は、本社と連携する業務比率が高い傾向がある。戦略のローカライズ、ROI報告、グローバルキャンペーンへのアライン作業が頻繁に発生するため、英語でのコミュニケーション能力は実質的に業務遂行の前提条件となるケースが多い。この領域では、英語力がベースになった上でWebマーケティングの専門性(SEO・MA・広告運用など)がかけ算で評価される。

B2B SaaSのグローバル展開担当

国内SaaS企業が海外展開を進める局面では、マーケティング担当が英語で現地エージェンシーや海外パートナーとやり取りしながら、チャネル設計やコンテンツ戦略を推進するケースが増えている。英語力はこの種の役割において選考優位性に直結しやすい。

フリーランス・副業での海外クライアント対応

英語でサービスを提供できるフリーランスマーケターは、クライアントの候補が国内に限定されない。海外企業のSEOコンテンツ制作、広告運用サポート、デジタル戦略のアドバイザリーを英語で受託できると、単価設定の幅が広がりやすい。

ケーススタディ:英語力を加えることでキャリアが動いた典型的な例

プロフィール像 国内のEC企業でデジタルマーケティング(SEO・広告運用)を3年経験し、Webマーケターとして実務能力は一定水準に達していたが、年収の天井感を感じていた。TOEICは650点程度で、英語業務の経験はほぼなし。

取り組み 転職活動の6ヶ月前から業務時間外に英語学習を再開し、Meta AdsやGA4の英語版ドキュメントを日常的に読む習慣をつけた。並行して、英語での簡単なレポーティング業務を前職で自ら申し出る形で経験を積んだ。TOEICスコアは750点台まで向上。

転職の結果 グローバルに展開するSaaS企業の日本法人マーケティング担当として採用。英語の読み書きと基礎的な会話が可能なレベルで、年収は前職比で15〜20%程度の改善となった(絶対額は本人の元年収・職責によって異なる)。採用決定の理由として、「英語業務への意欲と一定の実務経験があること」が評価された。

このケースから見えるのは、英語力が「ゼロから一定水準に達するだけで、選択可能な求人の種類が変化する」という構造的な現実である。高い英語力がなくても、ビジネス英語に対応できる水準に到達することで、転職市場での競争優位は変わりやすい。

英語学習に取り組む優先順位の考え方

英語力は確かに市場価値を広げるが、Webマーケターとしての専門性(SEO・MA・CRM・データ分析など)が土台になければ、英語力だけでは評価されない。特に転職活動においては「何ができるマーケターか」の説明が先行する。

実務優先度の観点から整理すると、以下の順序が一般的な方向性となりやすい。

  1. マーケティングの専門スキルを実績で示せる水準に育てる
  2. 英語の読解力(ドキュメント・ツール対応)を最低限整備する
  3. 目指すポジションに応じて会話・ライティングを強化する

英語を最初から高い優先度で追いかけるより、専門性と並走しながら段階的に習得していくアプローチが、実務への転用・評価の観点からも合理的なことが多い。

よくある質問

Q1. 英語が話せなくてもWebマーケターとして転職できますか?

はい、国内市場を対象とした求人であれば、英語力は求められないケースが大半です。ただし、外資系企業や海外向け事業を扱う求人では英語対応が前提条件になることが多いため、志望するポジションの種類によって判断することが現実的です。

Q2. TOEICスコアはどの程度あれば外資系に通用しますか?

採用においてTOEICスコアは参考値の一つに過ぎず、スコアだけで合否が決まることはほぼありません。外資系でも社内公用語が英語かどうか、日常的に英語会議があるかは企業によって異なります。「730点以上+英語業務の実経験」があると、書類選考の通過率が上がりやすい傾向はあります。

Q3. 英語学習とマーケティングスキルの習得はどちらを優先すべきですか?

マーケティングの専門性を先に整備することが多くの場合で合理的です。英語力はキャリアの幅を広げる変数ですが、採用の土台となるのはマーケターとしての実績です。専門スキルを磨きながら、英語は読解力から順に積み上げていく形が実務への接続しやすさという観点で現実的です。

Q4. フリーランスのWebマーケターに英語力はどの程度必要ですか?

国内クライアントを中心に活動するなら必須ではありません。ただし、海外クライアントの案件を受けたい場合や、英語圏向けのSEO・コンテンツ業務を受託したい場合は、読み書き能力が直接的に業務品質に影響します。単価の高い案件に参入しやすくなるという点では、英語力は投資対効果が出やすいスキルのひとつといえます。

まとめ

Webマーケターにとっての英語力は、業務の必須条件ではなく「キャリアの選択肢を広げる乗数」として機能する。国内向けの求人では英語不問のポジションが多数存在する一方、外資系・グローバルSaaS・海外展開企業のマーケティング職では英語力が実質的な参入要件となる構造がある。英語の読解力から始め、担当したいポジションの要件に応じてレベルを積み上げていくアプローチが、専門性と英語力を両立させるうえで現実的な方向性になりやすい。現在の英語力とマーケターとしての専門性が、市場でどのように評価されるかを客観的に把握したい場合は、キャリアの棚卸しを専門のアドバイザーに相談してみることも有効な選択肢のひとつである。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)