デジタルマーケターの働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情

職種:デジタルマーケター |更新日 2026/7/4

デジタルマーケターの実務環境は、所属する組織の種別・事業フェーズ・担当領域によって大きく異なる。「クリエイティブで自由な職種」というイメージを持って転職した結果、想定と異なる環境に戸惑うケースは少なくない。本稿では、激務度・残業実態・リモートワークの状況を軸に、職場環境を左右する構造的な要因を整理する。転職・キャリア形成の判断材料として活用してほしい。


デジタルマーケターの働き方を決める「3つの軸」

デジタルマーケターの労働環境を論じる際、「職種全体の平均像」は参考になりにくい。実態を左右するのは、主に以下の3軸である。

  1. 所属組織の種別(事業会社のインハウス、広告代理店・マーケティング支援会社、SaaS/IT企業)
  2. 担当領域(広告運用・SEO・CRM・マーケティング戦略など)
  3. 事業フェーズ(スタートアップの急成長期、上場前後、成熟企業)

この3軸の組み合わせによって、同じ「デジタルマーケター」というタイトルであっても、残業時間・裁量度・リモート可否が大きく分岐する。以下で順に解説する。


組織種別ごとの労働環境比較

広告代理店・支援会社

クライアントの予算・KPIに直接コミットする立場であるため、クライアントのサイクルに業務量が引きずられやすい傾向がある。月末・四半期末の予算消化対応、キャンペーン立ち上げ時の集中的な作業が発生しやすく、残業時間が月30〜60時間程度になる局面も報告されている。

一方で、複数クライアントを同時に担当することで幅広い業界・広告手法に触れられる点は、スキル形成の観点では強みになりやすい。プロジェクト単位で業務が区切られるため、繁閑の波は比較的可視化しやすい。

事業会社インハウス

自社プロダクト・サービスのマーケティングを内製で担うポジションは、近年急速に増加している。クライアント対応がない分、深夜対応が生じにくく、定時前後で業務が完結するケースも多い。ただし、リソースが限られた中小規模企業では「一人マーケター」的な役割を求められることもあり、業務の幅が広がる分、集中投下できるリソースが分散しやすい。

SaaS・ITプロダクト企業

国内外のSaaS企業は、マーケティング組織の整備に積極的な傾向があり、データドリブンな意思決定文化・OKRによる目標管理・フルリモートやハイブリッド勤務の採用が比較的進んでいる。PLG(プロダクトレッドグロース)モデルを採る企業では、マーケティングとプロダクト・CS機能の境界が曖昧になりやすく、関与領域が広い分、学習密度は高くなる傾向がある。


担当領域別の激務度マッピング

担当領域業務量の変動深夜・休日対応リスク裁量の大きさ
広告運用(運用型広告)大(キャンペーン繁閑あり)中(入札変動・緊急対応)
SEO・コンテンツ小〜中(比較的安定)中〜大
CRM・MA運用中(施策ロードマップ依存)
マーケティング戦略・プランニング中(経営・事業計画サイクル依存)低〜中
グロースハック・データ分析中(リリーススプリント依存)

広告運用は、媒体アルゴリズムの変動・入札競合・クリエイティブの疲弊対応など、突発的な対処が求められる場面が多い。SEOやCRMは比較的長期の施策サイクルで動くため、業務量は予測しやすく、深夜・休日の対応が発生しにくい傾向がある。


リモートワーク事情:「職種」より「企業文化」が決め手

デジタルマーケターはPCとデータアクセスさえあれば業務が完結しやすい職種であり、構造的にはリモート親和性が高い。ただし、実際のリモート可否は「デジタルマーケター」という職種属性よりも、企業のリモートポリシーと文化によって決まる部分が大きい。

現状の傾向として、以下のような差が見られる。

転職活動においては「リモート可」という表記のみで判断せず、出社頻度・理由・チームのコミュニケーション設計まで確認することが重要になる。


ケーススタディ:SaaS企業インハウスマーケターの1週間

以下は、社員数100〜300名規模のBtoB SaaS企業でデマンドジェネレーションを担当するマーケター(経験5年程度)の業務サイクルの典型的な例として参照してほしい。

月曜:週次KPIレビュー・施策優先度の確認 前週のMQL(マーケティング起点のリード)・商談転換率をダッシュボードで確認し、営業チームとSlackおよび週次定例でアラインする。

火〜木曜:施策実行フェーズ メールシナリオの改修、広告クリエイティブのA/Bテスト設計、コンテンツ制作ベンダーへのブリーフィングなどを並行で進める。MTGは1日1〜2本程度で、作業時間が確保されやすい。

金曜:翌週の企画・レポーティング 四半期ロードマップとの整合を確認しながら、翌週の施策タスクを整理。月末・月初は経営報告用のレポートを追加で作成する。

残業の傾向:月平均10〜20時間程度。キャンペーンローンチ前後や四半期末に集中しやすい。コアタイムを設けたフレックス制を採用しており、育児・副業との両立を実現している人材も一定数いる。

この例はあくまで一つの典型像であり、チーム規模・事業の成長速度・個人のロール定義によって実態は変わる。


よくある質問

Q1. デジタルマーケターは「激務」なのか?

一概には言えないが、広告代理店・支援会社においてはクライアントの繁閑に業務量が連動しやすく、月単位での残業が多くなる局面は存在する。事業会社インハウスやSaaS系では、施策サイクルが自社内で完結するため、相対的に業務量の予測がしやすくなる傾向がある。「激務かどうか」は職種属性より、組織と役割の設計によって決まる部分が大きい。

Q2. リモートワークを希望する場合、どの環境が最も可能性が高いか?

スタートアップや外資系SaaS企業は、フルリモートまたはフレキシブルな出社設計を採用していることが多い。国内大手企業では、週複数回の出社を前提としたハイブリッド形式が主流になりつつある。希望があれば求人票の「勤務地」「出社頻度」欄だけでなく、選考プロセスで実態を直接確認することを推奨したい。

Q3. 副業・兼業との両立は現実的か?

デジタルマーケティングの業務はプロジェクト単位でのアウトプットが明確になりやすく、フリーランス案件や副業としての請負に構造的に向いている面がある。副業解禁企業への転職を前提に選択肢を絞る求職者も増えており、特にSaaS・IT系企業でその傾向が顕著である。ただし、情報管理・競業避止の観点から企業ごとの規定を確認することは不可欠である。

Q4. スタートアップのマーケターは特に業務量が多いのか?

PMF(プロダクトマーケットフィット)前後の急成長期においては、施策の試行速度が求められるため、一人当たりの業務スコープが広くなりやすい傾向がある。一方で、意思決定の速さ・裁量の大きさ・市場価値向上の速度という観点では、得られるリターンも大きくなりやすい。事業フェーズのリスクと学習機会をセットで評価することが重要である。


まとめ

デジタルマーケターの働き方は、「組織種別・担当領域・事業フェーズ」の掛け合わせによって大きく規定されており、職種名だけで労働環境を判断するのは難しい。広告代理店ではクライアントサイクルへの依存度が高く、事業会社インハウスでは自社の戦略ロードマップに紐づく安定性が高まる傾向がある。リモートワークの可否も職種特性より企業文化に左右される部分が大きく、転職時には求人票の表記にとどまらない情報収集が必要になる。副業解禁・フレックス制・フルリモートといった柔軟な働き方を実現している企業は一定数存在するが、その実態は個社ごとに異なる。現在の市場における自身のポジションや、希望する働き方を実現できる企業の選択肢を具体的に把握したい場合は、実務領域に精通したキャリアアドバイザーへの相談が有効な手段になりうる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)