HRテックの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント
HRテックの志望動機は、「HR×SaaSに興味がある」「成長領域だから」で終わってしまうものが多く見られます。これらは領域の説明であって、志望動機にはなりません。この記事では、志望動機を層に分解し、有価証券報告書に記載された事業構成という一次情報から「その会社である理由」を書く方法を整理します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
「HR×SaaS」が志望動機として弱くなる理由
HRテックを志望する動機として、「人と組織の課題を、テクノロジーで解決したい」という表現がよく使われます。方向としては悪くありませんが、これだけでは弱くなります。理由は二つあります。
一つは、多くのHRテック企業に当てはまり、その会社を選ぶ理由にならないことです。もう一つは、HRテックには事業モデルの違いがあり、その区別を踏まえていないと、理解の浅さが伝わることです。人材紹介や求人メディアを主力とする会社と、タレントマネジメントや組織診断のSaaSを提供する会社では、担う仕事も、求められる姿勢も違います。この違いを踏まえた志望動機は、解像度が上がります。
志望理由を3つの層に分解する
説得力のある志望動機は、次の3つの層に答えています。
| 層 | 答えるべきこと |
|---|---|
| なぜHR・人事の領域か | 人と組織の課題に関わりたい、自分の経験に根ざした理由 |
| なぜこのモデルか | 人材紹介か、SaaSか、組織診断か。そのモデルを選ぶ理由 |
| なぜこの会社か | 事業構成や強みを踏まえ、その会社を選ぶ理由 |
多くの人が1つ目の層で止まります。差がつくのは2つ目と3つ目です。人材紹介なら人と向き合い成約を生む仕事、SaaSならプロダクトで多くの企業を支える仕事、組織診断なら組織の状態を可視化する仕事、というように、モデルごとに中身が違います。自分がどのモデルに惹かれるかを、経験に照らして語れるかが問われます。
事業構成を調べると「その会社である理由」が書ける
「その会社である理由」は、有価証券報告書の事業構成を読むと、具体的に書けるようになります。
たとえばリンクアンドモチベーションの有価証券報告書では、組織開発Division(組織診断「モチベーションクラウド」)、個人開発Division(研修・スクール)、マッチングDivision(OpenWork等)という区分が記載されています。組織の状態を可視化する事業に惹かれるなら、この事業構成を踏まえて志望動機を書けます。エス・エム・エスは、医療・介護分野向けのキャリアサービスを中核に据えています。特定の業界に深く入る事業に関心があるなら、この点が「その会社である理由」になります。
会社案内の言葉をなぞるのではなく、事業構成のどこに、自分の経験や関心がつながるかを書くと、志望動機が具体になります。事業ごとの違いはHRテック業界の企業比較でも整理しています。
よくある弱い志望動機と、その直し方
弱い例:「成長しているHRテック業界で、自分も成長したい」
領域と自分の成長願望の説明にとどまっています。→ 人事・採用のどの課題に、自分の経験がつながるかを足します。成長ではなく接続を語ります。
弱い例:「人と組織の課題を解決するプロダクトに携わりたい」
多くのHRテック企業に当てはまります。→ なぜそのモデル、その会社かまで具体化します。事業構成を踏まえます。
弱い例:「御社のプロダクトの導入企業数が多く、影響力が大きいから」
会社の規模の説明になっています。→ その規模が、自分の何とつながるのかを書きます。会社の特徴ではなく、自分との関係を語ります。
共通する直し方は、主語を領域や会社から自分に戻すことです。立派な理由を並べるより、自分の経験と結んだ具体的な理由のほうが伝わります。
エージェントベストの見解
書類で見られるのは、志望動機の立派さではなく、人事・採用という領域と自分の経験のつながりが具体的に書けているかどうかです。ここを具体的に書けているかで、通過率が変わります。「人と組織の課題を解決したい」ではなく、「前職でチームの離職が続いたとき、原因を面談から拾い、配置と評価の運用を変えて定着につなげた。この、組織の課題を構造から捉えて手を打つ作業に関わりたい」。このように、過去の具体的な経験と、この領域の中身を結ぶと、志望動機が一気に具体になります。人事の経験がなくても、チームを動かした経験や、採用に関わった経験は接続の材料になります。書き終えたら、同じ文章が他のHRテック企業にもそのまま使えないかを確認してください。使い回せる志望動機は、まだ自分のものになっていません。とくにHRテックは、人と組織への向き合い方が問われる領域なので、自分の言葉かどうかが面接で見抜かれます。
説得力が出る材料を、どこから集めるか
志望動機の材料は、自分の経験と、会社の一次情報から集めます。
自分の経験から探す
- 採用や育成、評価に関わった経験
- チームや組織の課題を、自分なりに捉えて動いた経験
- 人事データや、人に関する情報を扱った経験
会社の一次情報から探す
- 有価証券報告書の事業構成(どのモデルの事業を持つか)
- 公式サイトのプロダクト情報(どの課題を解くか)
- 公表されている導入実績や、事業の方向
自分の経験と、会社の事業構成が交わる点を見つけると、「その会社である理由」が書けます。
志望動機の骨子を組み立てる
以下は完成文ではなく、組み立ての型です。自分の経験に置き換えて使ってください。
骨子:
前職で〔人・組織・採用に関わった具体的な経験〕をした。この経験から、〔人事・採用のどの課題〕に関わりたいと考えている。HRテックのなかでも〔人材紹介/SaaS/組織診断など〕のモデルを選ぶのは〔理由〕。御社を志望するのは、〔有価証券報告書や公式情報から読んだ事業構成〕が、自分の〔経験・関心〕とつながるからだ。
〔 〕を自分の言葉で埋めることが前提です。埋められない項目があれば、そこはまだ動機が固まっていないサインです。
エージェントベストの見解
志望動機を検討される方は、HRテックと並行して、他のSaaSや人材業界、事業会社の人事を受けていることが多くあります。判断が割れるのは、人と組織の課題にプロダクトで関わりたいのか、当事者として自社の組織を作りたいのか、という点です。ここが整理できていないと、どの応募先でも志望動機が薄くなります。おすすめしているのは、過去に手ごたえを感じた場面を一つ思い出すことです。仕組みやプロダクトで多くの組織を支えることに充実を感じるならHRテックが、一つの組織に当事者として深く関わることに充実を感じるなら事業会社の人事が向きます。志望動機は、なりたい自分を語る場ではなく、これまでの自分の得意と関心を、その仕事の中身と結ぶ場です。得意と仕事が噛み合っている志望動機は、面接官にも自然に伝わります。
面接で深掘りされても崩れない志望動機にする
書類で通った志望動機も、面接で深掘りされると崩れることがあります。崩れないためには、志望動機の各層に、自分の具体的な経験や事実が紐づいている必要があります。
たとえば「組織診断の事業に惹かれる」と書いたなら、なぜ組織診断か、自分が組織の課題をどう感じた経験があるかまで話せる状態にしておきます。「御社の事業構成が自分の経験とつながる」と書いたなら、事業構成のどの部分が、自分のどの経験とどうつながるかを具体的に説明できるようにします。面接官は、志望動機の言葉そのものより、その裏にある経験の具体性を見ています。抽象的な言葉が続くと、借り物だと見抜かれます。逆に、一つでも自分にしか語れない具体的な経験が紐づいていると、深掘りされても揺らぎません。書き終えた志望動機を、各文について「なぜ」と三回問い直してみると、どこが弱いかが見えてきます。
まとめ
HRテックの志望動機について、押さえるべき点を整理します。
- 「HR×SaaS」「成長領域だから」で止めず、なぜこのモデル・この会社かまで進める
- 志望動機は「なぜHR領域か・なぜこのモデルか・なぜこの会社か」の3層に分解する
- 有価証券報告書の事業構成を読むと「その会社である理由」が書ける
- 弱い志望動機は主語が領域・会社にある。主語を自分に戻す
- 人事未経験でも、チームや採用に関わった経験が接続の材料になる
- 使い回せる志望動機は、まだ自分のものになっていない
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. SaaS系と人材紹介系で、志望動機の書き方は変わりますか。
A. 前面に出す軸が変わります。SaaS系では、プロダクトで多くの企業を支えることへの関心や、プロダクトづくりの経験を前に出します。人材紹介系では、人と向き合い、成果を生むことへの意欲や、対人の経験を前に出します。同じ「人と組織に関わりたい」でも、モデルに合わせて重心を変えると、志望の解像度が上がります。応募先ごとに、自分の経験のどの面を前に出すかを決めておくと、面接でも一貫して答えられます。
Q. 志望動機に、自分が受けた採用や評価の体験を書いてよいですか。
A. 有効な材料になります。求職者として採用を受けた経験や、働くなかで評価や配置に感じたことは、人事・採用の課題を当事者として捉えた材料です。その体験を、HRテックのどの事業がどう解こうとしているかと結ぶと、具体的な志望動機になります。
Q. 事業構成は、どこで調べればよいですか。
A. 上場企業なら有価証券報告書のセグメント情報が、事業構成を知る一次情報になります。非上場企業でも、公式サイトのプロダクト情報や事業紹介から、どの課題を解く事業かを読み取れます。会社案内の言葉ではなく、事業の中身を手がかりにすると、志望動機が具体になります。
Q. 人事の経験がなくても、志望動機は書けますか。
A. 書けます。チームを動かした経験、採用に関わった経験、組織の課題を感じて動いた経験が、接続の材料になります。人事という肩書きより、人と組織に向き合った具体的な経験を語れるかが大切です。
Q. どのモデルを志望するか、決められません。
A. 過去に手ごたえを感じた場面から考えると決めやすくなります。多くの組織を仕組みで支えたいならSaaS、人と向き合って成約を生みたいなら人材紹介、というように、自分の得意と関心に近いモデルを選ぶと、志望動機に一貫性が出ます。
Q. 志望動機は会社ごとに変えるべきですか。
A. なぜHR領域かの部分は共通で構いませんが、なぜこの会社かは有価証券報告書の事業構成を踏まえて書き分けます。同じ文章が他社にそのまま使えるなら、その会社を選ぶ理由がまだ言語化されていません。
- 株式会社カオナビ 有価証券報告書(第17期・2025年3月期)
- 株式会社リンクアンドモチベーション 有価証券報告書(第26期・2025年12月期)
- 株式会社エス・エム・エス 有価証券報告書(第23期・2026年3月期)
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。