事業再生の年収相場|転職で押さえるべきポイント

事業再生 年収相場 更新日 2026/8/11

事業再生の年収は、コンサルティング領域のなかでも高い水準にあります。ただし公的統計と実際の開示を並べると、その差の理由は能力ではなく事業の構造にあることが見えてきます。この記事では、算出根拠が明示された官公庁統計と有価証券報告書の数値だけを使い、報酬の構造を整理します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

上場ファームが開示している実額

先に実額を示します。事業再生とM&Aを主要領域とする上場企業の有価証券報告書の記載です。

項目内容
会社山田コンサルティンググループ株式会社
対象事業年度第37期(2026年3月期)
提出会社の従業員数898人(63)
平均年齢38.1歳
平均勤続年数7.2年
平均年間給与9,750,086円
平均年間給与の対前事業年度増減率2.7%

括弧内は臨時従業員数の年間平均人員です。平均年間給与には賞与及び基準外賃金が含まれる旨が注記されています。

平均年間給与975万円は、これまで本メディアで扱ってきたコンサルティング関連企業のなかでも高い水準です。参考として、組織人事領域では約697万円、データ領域では約761万円という開示がありました。

もうひとつ注目したいのが、平均勤続年数7.2年という数値です。コンサルティング領域では3年前後の企業が珍しくないなかで、比較的長い部類に入ります。案件の期間が長く、担当が途中で変わりにくい業務の性質が影響していると考えられます。

公的統計との関係を読む

職種側の水準は、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト job tag で確認できます。

項目経営コンサルタント
平均年収1,134.6万円
平均年齢39.4歳
月間労働時間162時間
時間給(一般労働者)5,497円
就業者数82,920人
求人賃金(月額)28.3万円
有効求人倍率0.57

平均年収・平均年齢・月間労働時間・時間給は令和7年賃金構造基本統計調査、就業者数は令和2年国勢調査、求人賃金と有効求人倍率は令和6年度ハローワーク求人統計にもとづく数値です。

統計値1,134.6万円に対し、開示された975万円は約160万円下回ります。平均年齢は39.4歳と38.1歳でほぼ同じです。

この関係は、これまで扱った多くの領域と逆になっています。他の領域では開示のほうが統計を上回る例が多かったのですが、経営コンサルタント区分の統計値は戦略領域や独立して高単価の案件を扱う層まで含むため、水準が高く出ます。

したがって、統計値をこの領域の相場として読むと期待が過大になります。組織に所属して働く場合の水準は、開示されている数値のほうが実態に近くなります。

事業の構え方が報酬を規定する

この領域の報酬を考えるうえで、事業の構え方を見ておく必要があります。

山田コンサルティンググループの有価証券報告書では、連結の従業員数1,089人(65)のセグメント別内訳として、コンサルティング事業が988人(45)、投資事業が15人(2)、全社(共通)が86人(18)と記載されています。

助言を担う人員が大半である一方、投資事業にも人員が配置されています。自己資金を入れて再生に関わる体制です。助言のみの案件と、投資を伴う案件では、収益の構造が違います。前者は稼働に応じた報酬、後者は投資の成果に連動する部分を持ちます。

また同社は、使用人等のみに対して新株予約権を付与している旨も記載しています。株式報酬制度を持つファームでは、現金給与だけでは報酬の全体像が見えません。

応募先が助言専業か投資を伴うかで、提示条件の構成が変わります。この点は選考の段階で確認しておく価値があります。

エージェントベストの見解

公開されている経営コンサルタントの平均年収1,134.6万円を、この領域の相場として受け取ると期待が過大になります。この数値は戦略領域や独立して高単価案件を扱う層まで含んだ平均です。組織に所属して働く場合の水準は、開示されている975万円前後のほうが実態に近くなります。ここで見誤りやすいのは、その差を「評価が低い」と受け取ってしまうことです。面談で確認しているのは提示額そのものより、担当できる案件の規模と、実行段階まで関与できるかの2点です。この領域は案件の規模で報酬が動くため、入り口の額より、数年後にどの規模を任されるかを見たほうが判断を誤りません。

報酬が動く場面

この領域で提示額が変わる要因は、いくつかに整理できます。

担当する案件の規模。 対象企業の年商規模と有利子負債の規模が、案件のフィーを規定します。これが最も直接的に効きます。

関与する工程の深さ。 財務デューデリジェンスまでか、計画策定までか、実行に伴走するかで評価が変わります。実行まで担える人材は限られます。

金融機関との折衝経験。 再生案件では金融機関の同意が要になります。条件変更の交渉に関与した経験は、代替が利きにくい能力です。

投資案件への関与。 自己資金を入れる案件を担当できる人材は母集団が小さくなります。

入社時の職位。 等級制度が敷かれている会社では、レンジは職位に紐づきます。入社後の昇給より、入社時の評価の影響が大きくなる傾向があります。

業種の知見。 再生案件では、対象企業の業種固有の事情が結果を左右します。製造業の設備、小売の在庫、建設の工事進行基準など、業種特有の論点を理解している人材は限られます。

これらのうち、転職前に動かしやすいのは工程の深さの見せ方です。分析で終わった案件と実行まで見た案件を区別して書くだけで、評価の入り口が変わります。関与が薄かった案件でも、その後の経過を知っていること自体が材料になります。

提示条件を見るときの軸

オファーの段階で整理しておきたい点を挙げます。

固定給と賞与の内訳。開示される平均年間給与には賞与及び基準外賃金が含まれます。提示額と比較する際は、内訳を揃えて見る必要があります。

株式報酬の有無。前述のとおり、使用人等に新株予約権を付与している会社があります。付与時点の評価額と実際に価値が確定する時期は異なるため、現金部分と分けて評価します。

担当予定の案件規模。この領域は案件の規模で報酬が動くため、入社後にどの層を担当するかで数年後の水準が変わります。

稼働時間の前提。前掲の職種統計では月間労働時間が162時間と示されていますが、これは当該分類全体の平均です。再生案件は期限が切られる局面が多く、計画提出前や金融機関との協議期には稼働が集中する傾向があります。

複数社から提示を受けている場合は、金額だけでなく、担当予定の案件規模と実行段階への関与度をそろえて比較します。

エージェントベストの見解

書類の段階で想定レンジが変わるのは、案件の規模を数値で書けているかどうかです。この領域の職務経歴書で最も多いのは、「経営改善計画の策定支援」という一行です。読み手は水準を判断できません。必要なのは、対象企業の年商規模、従業員規模、有利子負債の規模、そして関与した工程です。金融機関出身の方であれば、担当した与信先の規模と条件変更交渉への関与を書きます。この情報があるだけで、提示される等級が変わります。守秘に配慮が必要な場合でも、桁数や範囲での表記は可能です。

現職との比較で見落としやすい点

転職の判断では、提示額と現職の年収を並べるだけでは足りません。この領域特有の見落としがあります。

案件の獲得に関与するかどうかです。ファームによっては、コンサルタントが新規案件の獲得にも関わる設計を持ちます。この場合、報酬に受注連動の要素が入ることがあります。評価指標に何が含まれるかを確認しておくと、入社後の動き方が定まります。

昇格の速度も見ておきたい項目です。前掲のとおり、この領域の平均勤続年数は7.2年と比較的長く、案件の期間も長くなります。担当できる案件の規模が上がるまでに時間がかかる構造があるため、数年単位で見た報酬の伸び方を確認する価値があります。

そして稼働の波です。前掲の職種統計では月間労働時間が162時間と示されていますが、これは当該分類全体の平均です。再生案件は期限が切られる局面が多く、計画提出前や金融機関との協議期には稼働が集中します。年収を時間で割った水準は、平時と繁忙期で大きく変わります。

まとめ

事業再生の年収は、コンサルティング領域のなかでも高い水準にあります。上場ファームの開示では平均年間給与9,750,086円、平均年齢38.1歳、平均勤続年数7.2年です。

一方、職業情報提供サイト job tag の経営コンサルタント区分の平均年収1,134.6万円と比べると約160万円下回ります。統計値には戦略領域や独立層まで含まれるため、組織に所属して働く場合の実態は開示のほうが近くなります。

自分の場合いくらになるかは、担当する案件の規模と、実行段階への関与の深さで決まる部分が大きくなります。助言専業か投資を伴うかという体制の違いも、報酬の構成に影響します。

よくある質問

Q. 事業再生の年収は他のコンサル領域より高いですか。

開示されている数値で見ると高い部類に入ります。上場ファームの平均年間給与は9,750,086円で、組織人事領域の約697万円やデータ領域の約761万円を上回ります。ただし個別の提示額は職位と担当案件で決まるため、一律の比較はできません。

Q. 統計の1,134.6万円は目指せますか。

この数値には戦略領域や独立して高単価案件を扱う層が含まれます。組織に所属する場合の水準としては、開示されている975万円前後のほうが実態に近くなります。管理職以上や投資案件を担う立場では、これを上回る可能性があります。

Q. 中小企業案件と大企業案件で報酬は変わりますか。

案件のフィーが対象企業の規模に連動するため、担当する層によって差が生じます。中小企業案件は件数を重ねる形になりやすく、大企業案件は一件あたりの期間と関与が深くなります。どちらを主戦場とするファームかによって、報酬の伸び方も変わります。

Q. 未経験で入る場合、年収は下がりますか。

下がる場合があります。この領域は担当できる案件の規模で報酬が動くため、実態調査から始まる立場では提示額が抑えられる傾向があります。ただし前掲のとおり平均勤続年数は7.2年と比較的長く、数年単位で見た伸び方を含めて判断する必要があります。

Q. 公的枠組みに関わる案件は報酬が低いですか。

一律には言えません。中小企業活性化協議会が関与する案件では、支援の枠組みが制度で定められています。ファーム側の収益構造は個別の契約によるため、応募先に確認する必要があります。

Q. 株式報酬はどう評価すべきですか。

現金部分と分けて評価することをおすすめします。付与時点の評価額と実際に価値が確定する時期は異なるため、年収に単純に足し合わせると手取りの見込みがずれます。現金部分だけで生活が成立するかを先に確認してください。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)