FASアナリストの年収相場|転職で押さえるべきポイント

FAS・会計財務コンサルタント 年収相場 更新日 2026/8/10

FASの年収は、公開統計より一段高いところにある

FASアナリストの年収を調べると、いくつもの数字が出てきて、どれを基準にすればよいか分かりにくくなります。FASという職種そのものの公的な統計は独立して整備されていないため、近い区分の数字を組み合わせて相場観をつかむのが現実的です。

手がかりになるのが、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に載る、公認会計士とM&Aアドバイザーの区分です。公認会計士の平均年収は810.8万円、M&Aマネージャー・コンサルタント・アドバイザーの区分は1,134.6万円(いずれも令和7年賃金構造基本統計調査)とされています。

FASの実際の水準は、この2つの間から上にかけての帯に位置することが多いとされています。この記事では、これらの数字の読み方と、年収を決めている要素を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

3つの公的区分を並べて相場観をつかむ

job tag に掲載されている、FASに近い3区分を並べます。

区分平均年収求人賃金(月額)有効求人倍率平均年齢
M&Aアドバイザー等1,134.6万円28.3万円0.5739.4歳
公認会計士810.8万円40.9万円0.3242.2歳
証券外務員664.5万円24.4万円2.7940.4歳

平均年収は令和7年賃金構造基本統計調査、求人賃金と有効求人倍率は令和6年度の数値です。

ここから読み取れることが3つあります。

M&Aアドバイザー区分の年収は高いが、幅が広い — この区分は「M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント・M&Aアドバイザー」をまとめたもので、経験を積んだ層を含みます。1,134.6万円は、アナリストとして入った直後の水準ではありません。

公認会計士は、求人賃金が高い — 月額40.9万円は3区分で最も高く、専門職として入口から一定の水準が示されています。FASは会計の専門性が効くため、この求人賃金の高さが参考になります。

有効求人倍率の低さは、募集の少なさを意味しない — 公認会計士0.32、M&Aアドバイザー0.57と低めですが、これは専門職の採用がハローワーク経由に表れにくいためです。実際には人材紹介や直接応募が中心になります。

エージェントベストの見解

公開されているM&Aアドバイザー区分の平均年収1,134.6万円は、そのまま受け取ると見誤ります。この数字は、統計上の区分の都合で、M&Aアドバイザー以外の金融・保険の専門職と同じ賃金カテゴリーにまとめられており、経験を積んだ層まで含んだ平均です。アナリストとして入った初年度の水準とは、かなり離れています。FASの年収を見るときは、平均値ではなく、等級ごとの帯で捉えるのが実態に近くなります。アナリスト、シニアアナリスト、その上のマネージャーと、役職が上がるごとに水準が段で変わる構造だからです。転職時に確認すべきは、提示された等級が何で、その等級の一般的なレンジがどこかです。求人票の上限額は、多くの場合、数年先の到達点を示しています。入口の水準と、伸びた後の水準を分けて見てください。

年収の構造:固定・等級・賞与

FASの報酬は、大きく次の要素で構成されるのが一般的です。

1. 基本給(等級で決まる)

大手グループのFASは、アナリスト、シニアアナリスト、マネージャーといった等級を持ちます。基本給は、この等級でおおよそ決まります。入社時にどの等級で迎えられるかが、初年度の水準を左右します。

2. 賞与

会社や部門、個人の業績に連動します。案件の状況によって振れるため、固定部分と賞与を分けて見ておく必要があります。

3. 昇格による段差

一つ上の等級に上がると、水準が段で変わります。年次の積み上げより、等級が上がるかどうかが年収を大きく動かします。

仲介の成功報酬型とは異なり、FASは等級を基盤にした設計が中心です。個人の案件成約が即座に大きな報酬になる仕組みとは、構造が違います。M&Aアドバイザーの年収FASコンサルタントの年収とあわせて読むと、違いが見えてきます。

年次別の目安と、上がるタイミング

具体的な金額は会社と等級により幅がありますが、上がり方には共通の傾向があります。

段階状態年収の動き
アナリスト財務精査・評価の実務を担う入口の水準。ここは求人賃金が参考になる
シニアアナリスト一部を任され、後輩を指導する等級が上がり、段で変わる
マネージャー案件を統括するさらに段差。区分平均に近づく

年収が動くのは、年次を重ねたときではなく、等級が上がったときです。同じアナリストのまま年数だけ経過しても、水準は大きくは変わりません。昇格の条件を早く把握し、それに向けて実績を作ることが、年収を上げる近道になります。

年収が上がる要因、頭打ちになる要因

上がる要因

頭打ちになる要因

2つ目は、キャリアの面でも影響します。作業の担い手として便利に使われる状態が続くと、昇格の材料が積み上がりません。任される範囲を意識して広げていく必要があります。詳しくはFASアナリストのキャリアパスで整理しています。

大手グループとブティックで構造が違う

大手グループFAS独立系ブティック
決まり方等級制度に沿う個別性が高い
入口の水準等級で標準化案件と役割で変わる
伸び方昇格に連動貢献と会社の状況に連動
賞与の振れ部門業績で調整案件次第で大きく動くことがある

大手グループは、等級制度が整っているぶん、入口と伸び方が読みやすくなります。ブティックは個別性が高く、入口の水準や賞与の振れ幅が会社ごとに異なります。FASコンサルタントの会社規模による違いも判断の参考になります。

提示条件を確認するときの観点

  1. 等級 — 提示されたのはどの等級か。その等級の一般的なレンジはどこか
  2. 固定と賞与の割合 — 提示額のうち、変動する部分はどれだけか
  3. 昇格の条件 — 次の等級に上がるための基準と、標準的な期間
  4. 賞与の連動先 — 会社業績か、部門か、個人か
  5. 上限額の意味 — 求人票の上限は、何年目の到達点か

1つ目と5つ目は、数年後の水準を推測する手がかりになります。入口の額だけで比較すると、伸び方を見落とします。

エージェントベストの見解

年収で行き違いが起きやすいのは、求人票の上限額を入社時の水準と受け取ってしまうケースです。1,000万円超という数字を見て入ったところ、それはマネージャー相当の到達点で、アナリストの入口はそこから相応に下だった。これは、FASの報酬が等級ごとの段で決まる構造を知らないために起きます。防ぐには、オファーの段階で、提示された等級と、その等級のレンジ、そして次の昇格までの標準的な期間を聞いておくことです。答えにくい質問ではありません。あわせて、賞与が何に連動するかも確認する価値があります。案件の繁閑で部門業績が動くと、同じ等級でも受け取る額が年によって変わるからです。入口の額と、伸びた後の額、そして振れ幅の3つを分けて見れば、他社の提示とも正しく比べられます。

平均値ではなく、中央値と分布で見る

M&Aや財務アドバイザリーの領域は、平均年収がトップ層に引っ張られやすい特徴があります。大型案件を統括するマネージャー以上の水準が平均を押し上げるため、平均値だけを見ると、入口の実感とずれます。

見るべきは、中央値と分布です。同じFASアナリストでも、会社や等級によって受け取る額は幅を持ちます。求人票に載る年収例は、多くの場合レンジの上限に近い数字です。その額に何人が到達しているのか、どのくらいの期間で届くのかまで確認しないと、自分の場合の見込みは立ちません。平均や上限の額を鵜呑みにせず、自分が入る等級の帯がどこかで判断することが、後悔の少ない選び方につながります。

隣接職種との比較

まとめ

FASアナリストの年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業や業界の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. FASアナリストの初年度年収は、いくらくらいですか。

A. 会社と入社時の等級により幅があります。区分平均の1,134.6万円は経験層を含む数字であり、入口の水準ではありません。公認会計士の求人賃金月額40.9万円などが、専門職としての入口の目安になります。

Q. 平均年収の統計は、そのまま信じてよいですか。

A. 傾向をつかむには役立ちますが、区分の都合で他の専門職と同じカテゴリーにまとめられている点に注意が必要です。平均値ではなく、等級ごとの帯で捉えるほうが実態に近くなります。

Q. 大手グループとブティックで、年収は大きく違いますか。

A. 決まり方の構造が違います。大手は等級で標準化され、伸び方が読みやすい一方、ブティックは個別性が高く、賞与の振れも会社ごとに異なります。入口だけでなく、伸び方と振れ幅を確認して比較することをおすすめします。

出典

本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)