マーケティングマネージャーの転職市場動向【2026年】|求人数・採用ニーズの変化

職種:マーケティングマネージャー |更新日 2026/7/4

マーケティングマネージャーの転職市場は、2025年から2026年にかけて構造的な変化の局面を迎えている。求人数の総量は底堅く推移しているものの、企業が求めるスキルセットと評価軸が明確にシフトしており、「マネジメント経験があれば通用する」という前提は成立しにくくなっている。本稿では、採用ニーズの変化を構造面から分析し、市場での競争力をどう高めるかを実務的な視点で解説する。


マーケティングマネージャーの転職市場が「選別化」している背景

景気・SaaS市場との連動

2022年後半から2023年にかけてのテック・SaaS領域での採用抑制は、マーケティング職においても顕著だった。しかし2024年以降、特定の採用ニーズは回復基調に転じている。具体的には、PLG(プロダクト・レッド・グロース)モデルへの移行を図るSaaS企業や、DX投資を継続しているエンタープライズ向けBtoB企業からの求人が増加傾向にある。

一方で、採用の「量」が戻った局面であっても、候補者に求めるレベルは以前より高くなっている。予算削減の経験を経た企業は、「人材を増やして施策の幅を広げる」という発想から、「少数精鋭で成果を出せるマネージャー」へと採用方針を転換する傾向がある。この変化が、転職市場における選別化を加速させている。

企業規模別の採用温度差

マーケティングマネージャーの採用ニーズは、企業規模によって性質が異なる。以下に整理する。

企業フェーズ主な採用ニーズ求められるスキルの重点
スタートアップ(シリーズAB)初期マーケ組織の立ち上げ施策の実行力・チャネル開拓
スケールアップ(シリーズC以降)既存組織の高度化・専門職化データ分析・ROI管理・組織設計
大手・エンタープライズ社内DX推進・デジタル化社内折衝・変革推進力・外部連携
外資系日本法人ローカライゼーション強化英語力・グローバル本社との調整

スタートアップ〜スケールアップ帯では「プレイングマネージャー」として手を動かしながらチームを率いられる人材が評価されやすい。大手や外資ではむしろ、ステークホルダー管理やP&Lへの貢献を証明できるかどうかが問われる傾向がある。


採用ニーズの変化:3つの構造的シフト

シフト1:「施策の実行者」から「収益への貢献者」へ

かつてマーケティングマネージャーの評価軸は、認知拡大・リード獲得数・施策のKPI達成度に置かれることが多かった。しかし現在の採用企業は、営業やCSと連携してパイプライン・受注・LTVに対してどう貢献したかを問うケースが増えている。

面接での質問例として「マーケティング施策がどの程度の受注に寄与したか、どのように数値化していたか」という問いが頻出するようになっている。これは、CMO・VP of Marketingレベルの評価軸が一段下の階層にも浸透してきた結果といえる。

シフト2:チャネルの専門性よりも「全体設計力」の重視

SNS・SEO・コンテンツ・イベント・インサイドセールス連携など、マーケティングチャネルの多様化が進んだ結果、特定チャネルのスペシャリストよりも、複数チャネルを統合的に設計・管理できるジェネラリストマネージャーへの需要が高まっている。

特にBtoBのSaaS・IT領域では、インバウンド施策とアウトバウンドの接続設計(いわゆるデマンドジェネレーション設計)を経験しているかどうかが、書類選考の段階で差別化要素になりやすい。

シフト3:生成AI活用の「実績」が差別化要素に

2025年以降、生成AIをマーケティング業務に活用している候補者は決して少なくない。しかし「活用経験がある」というレベルでは差別化にならなくなりつつある。採用企業が注目し始めているのは、AIを組み込んだ業務フローの設計・チームへの展開・コスト削減や品質向上の実績を数値で語れるかどうかだ。

「ChatGPTを使ってコンテンツ制作を効率化した」という記述は珍しくなくなっており、それがどの程度の工数削減や成果向上につながったかを示せる候補者が評価されやすい傾向にある。


年収レンジの目安:ポジションと経験年数による分布

転職時の年収は経験・業界・企業フェーズによって幅があるが、以下はIT・SaaS・コンサル領域における一般的な目安として参照いただきたい。

ポジション・経験想定年収レンジの目安
マーケティングマネージャー(メンバー1〜3名管理、経験3〜5年)650〜850万円程度
マーケティングマネージャー(チーム5名以上、経験5〜8年)800〜1,050万円程度
シニアマネージャー・VP相当(組織全体統括、P&L責任あり)1,000〜1,400万円程度
外資系日本法人マーケティングリード900〜1,300万円程度

これらはあくまで転職市場における相場感の目安であり、企業の資金調達状況・ストックオプションの有無・インセンティブ設計によって大きく異なる。特にスタートアップでは固定給とエクイティのバランスで提示条件が変わるため、額面の比較のみで判断するのは適切でない局面も多い。


ケーススタディ:「施策経験豊富だが苦戦」から「内定獲得」への転換

以下は、転職活動における典型的な課題と改善の型を示した例示的なケースである。

プロフィール(架空) BtoBソフトウェア企業のマーケティングマネージャー、経験6年。SEO・コンテンツ・ウェビナー運営・MA(マーケティングオートメーション)ツール管理などを幅広く担当。チームメンバー2名のマネジメント経験あり。

当初の課題 職務経歴書に記載された内容が「実施した施策の羅列」に留まっており、「それによって事業にどのような影響があったか」が読み取れない状態だった。面接でも「リード数が前年比120%になった」という成果を語るが、その後の商談・受注との連関を語れず、採用担当者から「マーケティングの結果を事業貢献で語れる方を探している」というフィードバックを複数社から受けた。

改善のアプローチ 過去2〜3年の主要施策について、リード数だけでなく「SQL(Sales Qualified Lead)転換率」「担当営業とのパイプライン連携の仕組み」「受注貢献施策の内訳」を整理し直した。さらに、AIツールを活用したコンテンツ制作フローの改善事例(制作工数の削減率と公開本数の変化)を定量的に記述した。

結果の型 書類通過率が改善し、最終面接まで進む企業が増加。受注貢献への言語化と、業務効率化の具体的な数値提示が評価される傾向が確認された。


よくある質問

Q1. マーケティングマネージャーとして転職活動を始める適切なタイミングはありますか?

明確な「適切なタイミング」を一律に示すことは難しいですが、一般的には「現職での成果が定量的に語れる状態になったとき」が準備のひとつの目安とされています。施策の結果が数値で出始めた段階や、チームマネジメントの実績が1年以上蓄積された時点で市場に出ると、面接での具体性が増す傾向があります。

Q2. デジタルマーケティング出身とブランドマーケティング出身では評価の差がありますか?

IT・SaaS領域では、デジタルマーケティング(特に需要創出・インバウンド設計)の経験者に対する需要が高い傾向がありますが、ブランドマーケティング出身であっても、データに基づく意思決定の経験や、デジタル施策への関与実績があれば評価されやすい局面は多くあります。一方、コンサル・大手メーカーでは統合的なブランド設計の経験が評価される場合もあり、志望先の業態によって見せ方を変えることが有効です。

Q3. 現職での年収に対して転職後の期待年収を上げるには、どのような準備が有効ですか?

年収交渉において有効なのは、まず「自分の市場価値の根拠」を整理しておくことです。担当した施策の規模(予算・チーム人数・対象市場)、成果の事業貢献度、保有するスキルセットの希少性などを明確に言語化できると、交渉の土台が形成されやすくなります。複数社から選考を受けることで相場感を確認しながら進めることも、条件面でのミスマッチを減らすうえで有効とされています。

Q4. 外資系へのキャリアチェンジを検討しています。国内企業との違いで準備しておくべき点はありますか?

外資系日本法人では、グローバル本社との定期的なコミュニケーションが業務に組み込まれているケースが多く、英語での報告・提案スキルは実務レベルで求められる場合があります。加えて、本社の戦略を日本市場に合わせてローカライズする「翻訳・調整力」が評価されやすい特徴があります。英語力はビジネスレベル(目安としてTOEIC800点台以上、または実際の英語業務経験の記述)があると書類評価に影響しやすい傾向があります。


まとめ

マーケティングマネージャーの転職市場は、採用数の総量より採用の「質と選別」が重要になった局面にある。企業が求めるのは施策の実行者ではなく、収益貢献を言語化し、組織を通じて再現性のある成果を出せる人材へとシフトしている。生成AIの活用実績や、デマンドジェネレーション設計の経験は、書類・面接の双方で差別化要素になりやすい。転職活動の準備として、施策の羅列から事業貢献への「語り直し」が最初の実務的なステップとなる。自身の経験がどの程度の市場価値に相当するかを正確に把握するためには、現在の転職市場を熟知したキャリアの専門家に相談することが、判断の精度を高める有効な選択肢のひとつとなる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)