採用担当の働き方のリアル|激務度・残業・リモート事情
採用担当の「働き方のリアル」は、職種・組織規模・採用フェーズによって大きく分岐する。一般的に「人と話す穏やかな仕事」と捉えられやすいが、実態はプロジェクト管理・データ分析・多部門調整が複合する業務であり、時期によっては高い負荷が集中する。本記事では、激務度・残業時間・リモートワーク事情を構造的に整理し、キャリア選択の精度を高めるための情報を提供する。
採用担当の業務構造を理解する
採用担当の業務は、大きく「ソーシング」「選考オペレーション」「候補者コミュニケーション」「採用戦略立案」の四層で構成される。この四層が同時並行で動くため、担当者一人が抱えるタスクの種類は多岐にわたる。
ソーシングは、求人媒体・ダイレクトリクルーティング・エージェント管理を通じて母集団を形成する業務であり、採用目標達成のための根幹を担う。特に中途採用においては、エージェントとの関係構築や求人票のブラッシュアップが継続的に求められる。
選考オペレーションは、書類選考・面接調整・合否通知・内定手続きといった処理業務の集合体である。件数が増えると単純に工数が増大するため、採用規模が拡大している組織では作業量が膨らみやすい。
候補者コミュニケーションは、単なる日程調整にとどまらず、候補者の志向確認・懸念払拭・クロージングといった高度な対人業務を含む。この部分に力量の差が出やすく、経験値が問われる領域でもある。
採用戦略立案は、採用要件の設計・チャネル投資配分・採用KPIの管理などを指し、上位職(リードや採用マネージャー)になるほど比重が高まる。
激務度・残業時間のリアル
激務になりやすい要因
採用担当の繁閑は「採用計画のフェーズ」と「組織規模」に強く規定される。以下の条件が重なる場合、業務負荷は顕著に高まる傾向がある。
- 採用目標の急拡大期(事業成長期・資金調達後のスタートアップなど)
- 採用担当者の人員が採用ニーズに対して不足している状態
- 内定承諾率が低く、母集団形成を繰り返す必要がある状況
- 複数ポジションを同時並行で担当している場合
特に面接調整や候補者対応は「相手の都合」に左右されるため、業務が夕方以降に集中しやすい構造がある。候補者が在職中であれば、面接の実施可能時間が平日夜間・土曜午前に偏ることも少なくない。
残業時間の目安
残業時間は組織の種別と採用フェーズによって大きく異なる。以下は一般的な傾向を示した目安である。
| 組織類型 | 採用フェーズ | 月間残業時間の目安 |
|---|---|---|
| 大手企業(安定期) | 通常採用 | 10〜20時間程度 |
| 大手企業(新卒採用ピーク) | 3〜5月・8〜9月頃 | 30〜50時間程度 |
| メガベンチャー・SaaS企業 | 成長期 | 20〜40時間程度 |
| スタートアップ(少数精鋭体制) | 急拡大期 | 40〜60時間以上になることも |
| 人材紹介・採用コンサル会社 | 通年 | 30〜50時間程度 |
※上記は一般的な相場観であり、個々の組織・担当ポジション・個人の裁量によって差がある。
新卒採用を担当する場合は、採用活動のピーク時期(一般的には春・夏の選考集中期)に業務量が集中する特性がある。一方、中途採用は通年業務のため、特定月に極端に集中する構造ではないが、採用目標が高い組織では常時高い負荷が続く傾向がある。
リモートワーク事情
職種としての特性
採用担当はコミュニケーション業務が多いため、完全リモート化に適しているように見えるが、実態はやや複雑である。以下の業務はオンラインで完結しやすい。
- エージェントとのオンライン面談・要件共有
- 候補者との一次面接(スクリーニング面談)
- 社内採用ミーティング・KPI報告
- ATS(採用管理システム)を使った書類処理・調整業務
一方で、以下はオフライン対応が求められるケースが残る。
- 現場マネージャーへのヒアリング(対面の方がニュアンスを把握しやすい)
- 内定者懇親会・オフィス見学など候補者体験を伴うイベント
- 社内文化・オフィス環境を候補者に伝える必要がある企業
組織別のリモート対応状況
IT・SaaS領域では、採用担当においてもフルリモートまたはハイブリッド勤務を導入している企業が増えている。一方、伝統的な大企業では、採用担当でも週数日の出社が基本とされている場合が多い。
スタートアップは組織によって差が大きく、「完全フルリモート」と「毎日出社必須」が混在する。採用担当がオフィスの”顔”を担う存在として出社を重視する経営者もいれば、採用オペレーション自体をリモートで回すことを標準とする組織もある。
ケーススタディ:SaaS企業の採用担当(在籍3年)の一週間
以下は、従業員数200〜300名規模のSaaS系企業で中途採用を主担当する人材のスケジュールの典型的な型を示す。
月曜日:週次の採用KPI確認・エージェントへの求人状況共有・スカウト文の見直し
火曜日:候補者スクリーニング面談(オンライン3件)・求人票の改訂
水曜日:現場マネージャーとの採用要件すり合わせ(社内)・書類選考20件処理
木曜日:エンジニア職のファイナル面接同席・内定通知・エージェントへのフィードバック
金曜日:採用データ集計・週次レポート作成・次週スカウト候補者リストアップ
残業は週に5〜10時間程度が常態化しており、採用目標の未達が続く時期には夕方以降の候補者対応が増え、20時台まで対応が続くこともある。フレックスタイム制を活用し、午前中にアウトプットを集中させる工夫をしているという。リモートは週2〜3日が基本で、現場との信頼関係構築のため月曜は出社を基本としている。
採用担当のキャリアと働き方の関係
採用担当として働き方を設計する上で重要なのは、「担当する採用の種別」「組織のフェーズ」「役割の定義」の三変数をセットで考えることである。
役職が上がると、個別の選考対応から採用戦略・組織設計の領域に移行するため、突発的な業務への依存度が下がる傾向がある。裁量が増える反面、採用成果への責任も重くなるため、働き方の「安定感」とは別軸の負荷が発生する。
採用担当からHRBP(HRビジネスパートナー)・採用マネージャー・HRディレクターへとキャリアを広げる場合、戦略立案・データ活用・ステークホルダーマネジメントのスキルが求められる。こうした上位職では、年収レンジも幅広くなり、ポジションによっては専門職として相当水準の処遇が期待できる。
よくある質問
Q1. 採用担当は土日に仕事が発生することはありますか?
組織や担当の採用種別によって異なりますが、候補者が在職中である場合、土曜午前に面接や面談を設定するケースは一定数存在します。ただし、多くの企業では代休取得や振替対応が制度化されており、常態的に土日稼働が続く環境は採用担当として異常な状態と捉えられる傾向があります。入社前に「面接対応の時間帯ルール」を確認することが有効です。
Q2. リモートワーク希望が強い場合、採用担当として働ける企業はありますか?
IT・SaaS・ネット系企業を中心に、採用担当もハイブリッドまたはフルリモートを可としている企業は一定数存在します。ただし、採用担当の役割上、内定者イベントや現場との連携でオフィス対応が必要になる場面はゼロにはなりにくい傾向があります。「週何日出社が必要か」「リモートでの業務完結率はどの程度か」を選考過程で具体的に確認することが重要です。
Q3. 採用担当は精神的なきつさはありますか?
候補者からの辞退・オファー辞退・採用目標未達など、自分のコントロール外の要因で成果が左右されることが多い職種です。現場部門からの採用プレッシャーを受けながらも、候補者体験を損なわないよう配慮する二重のストレス構造を持つことがあります。一方で、採用成功・組織拡大への貢献が実感できる機会も多く、達成感とストレスが表裏をなす職種といえます。
Q4. 採用担当からキャリアアップするにはどのような経験が有利ですか?
採用戦略の立案経験(チャネル設計・採用コスト管理など)、ハイレイヤーポジションの採用実績、ATSやデータを活用した分析経験が評価される傾向があります。特にエンジニア・ビジネス職など複数職種を横断して担当した経験は、キャリアの幅を広げる上で有利に働くことが多いとされています。
まとめ
採用担当の働き方は、「穏やかな対人業務」という印象と実態の間にギャップがある職種である。業務負荷は採用フェーズと組織規模に強く依存し、成長期の組織においては相当な業務量が発生しやすい。リモートワークの柔軟性はIT・SaaS系企業を中心に高まっているものの、役割の特性上、完全な非対面化には一定の限界がある。スキルと経験を積み上げることで採用戦略・HRBPといった上位職への移行も現実的な選択肢となり、市場価値は継続的に高められる職種でもある。自身の経験が外部市場でどのように評価されるかを客観的に把握したい場合は、専門のキャリアアドバイザーとの対話が一つの有効な手段となる。