SaaS営業に英語は必要か|英語力で広がる求人と年収

職種:SaaS営業(フィールドセールス) |更新日 2026/7/3

SaaS営業において英語力は必須条件ではない。ただし、英語力の有無によって選択できるポジションの幅、年収レンジの上限、キャリアの伸びしろが明確に変わってくる構造がある。本記事では「英語力が求められる場面」「英語力で変わる求人・年収の実態」「英語力のレベル別にどう戦略を立てるか」を実務的な観点から整理する。


SaaS営業で英語力が問われる3つの場面

1. 外資系SaaSベンダーへの転職

グローバル本社を持つ外資系SaaSベンダーの日本法人では、英語力の要求水準が職種・ポジションによって大きく異なる。

インサイドセールスやフィールドセールス(SMB担当)であれば、日常業務は日本語が中心になることが多い。一方で、エンタープライズ担当やアカウントエグゼクティブと呼ばれる大手顧客担当のポジションでは、本社との定期レポート共有・グローバルチームとのSlack・メールでの文書コミュニケーションが発生しやすい。さらに上位のSales Manager・Regional Directorポジションになると、本社の意思決定者やグローバルのSales Leadershipとの会議が英語で行われるため、ビジネス会話レベルの英語が実質的な参加条件となる傾向がある。

2. グローバル展開を進める国内SaaS企業

国内発のSaaS企業が海外市場(北米・東南アジア等)に進出する際、現地の顧客・パートナーへの営業活動を担うポジションが生まれる。この場合、英語は業務の中核スキルとして位置づけられ、実際に英語でのクロージングや交渉が求められる。

また海外展開に至っていない段階でも、グローバルパートナーシップ担当や、海外ベンダーとのアライアンス担当として英語力を必要とするポジションを設ける企業は増えている。

3. プロダクトの顧客が外資系企業である場合

国内SaaS企業であっても、顧客ターゲットに外資系企業・グローバル企業の日本拠点が多い場合、担当者がドキュメントを英語でやり取りしたり、キーパーソンが日本語に不自由な外国籍の方であったりするケースがある。こうした環境では、英語を「使える状態」にしておくことが受注機会の損失を防ぐ実務的な理由になる。


英語力レベル別:求人の広がりと年収目安

英語力を便宜上4段階に整理し、SaaS営業の求人・年収への影響を示す。年収は業界経験・スキル・企業規模・役職等によって大きく変動するため、あくまで市場の傾向を示す目安として参照されたい。

英語力レベル目安の状態アクセスしやすい求人年収レンジ目安(ミドル層)
日常会話未満読み書きは可、会話に不安国内SaaS・日本語完結ポジション500〜700万円
ビジネス基礎(TOEIC 700〜800点相当)メール・文書は対応可、会議は部分的外資系SMBセールス、国内グローバル展開企業600〜900万円
ビジネス実務(TOEIC 800〜900点相当)会議・交渉にも参加できるレベル外資系エンタープライズ、グローバルAE800〜1,200万円
ネイティブ同等またはバイリンガル交渉・プレゼンを英語で完結できる外資系Sales Manager、グローバル統括1,000〜1,500万円以上

TOEIC等の資格スコアはあくまで参考基準に過ぎず、実際の選考では「どのような英語業務経験があるか」が重視される傾向がある。スコアより実務での使用歴の方が採用担当に刺さりやすい点は、転職活動において重要な認識となる。


ケーススタディ:英語力を活かしたキャリアアップの型

以下は実際の転職市場で見られるキャリアパスの典型的な型を示したものであり、特定個人の事例ではない。

【ケース:国内SaaS → 外資系エンタープライズセールス】

国内SaaS企業でフィールドセールスを3〜4年経験し、主に中堅・大手向けの商談を担当してきたAさん(28歳)のケース。英語力はTOEIC800点台、学生時代の留学経験があり、実務での使用は限定的だった。

転職活動にあたり意識したのは「英語を使った実績」の棚卸しだった。社内でのグローバルチームとのメール対応、外資系顧客とのやり取りの経験を具体的なエピソードとして整理し、英語スキルを「実務で検証済みである」という形で提示した。

外資系SaaS企業のエンタープライズセールスポジションへの転職に成功し、年収は前職比で約200万円増加。英語は当初週1〜2回の本社ブリーフィングへの参加が主な用途だったが、1年後にはAPAC(アジア太平洋)のレポーティングに関与する役割へと広がった。

このケースが示すのは、英語力は「入口の条件」であると同時に、入社後のスコープ拡大においても機能するという点だ。英語ができることで、国内の商談サイクルに限定されず、グローバルの知見・人脈・案件に触れる機会が自然と増える。


英語力がなくてもSaaS営業で成功できるか

結論として、英語力がなくても国内SaaS市場では十分に高いキャリアを築くことが可能だ。国内向けのSaaSプロダクトの市場はまだ成熟段階にあり、エンタープライズ領域や特定業界向けの垂直SaaSでは、業界知識・業務理解・顧客折衝力の方が英語よりはるかに評価される場面が多い。

ただし、次の2点は留意しておく価値がある。

キャリアの上限が構造的に制約されることがある:グローバルSaaS企業の日本法人においては、Sales Manager以上のポジションになるほど英語が実質的な参加条件になりやすい。日本語完結で実力があっても、英語力がないことでグローバルのリーダーシップ層との接点が限られ、昇格の速度が落ちるケースがある。

中長期的な市場変化:グローバルSaaS企業の日本市場参入が継続する中、競合環境の激しいポジションでは英語力が「差別化要素」として機能しやすい。今は必須でなくても、3〜5年後のポジショニングを考えると投資する価値は高い。


よくある質問

Q1. SaaS営業の転職で英語力はTOEICスコアで判断されますか?

採用選考においてTOEICスコアが一定の参考情報として扱われる企業はあるが、多くの外資系SaaSでは実際に英語でのコミュニケーション体験があるかどうかを重視する傾向がある。書類選考でスコアが確認されるケースもあるが、面接では「どのような場面で英語を使ってきたか」「本社との英語会議に参加した経験はあるか」といった実務ベースの質問が中心になりやすい。スコアの取得よりも、実際に使う機会を意図的に作ることが有効な準備となる。

Q2. 英語力をこれから伸ばすとしたら、SaaS営業として何を優先すべきですか?

SaaS営業の実務に照らすと、優先順位は「読む・書く」→「聴く」→「話す」の順に整備しやすい。本社からの英語メールやSlackのスレッドを読んで内容を把握し、簡潔に英語で返信する力は比較的短期間で実践できる。会議での発言は準備・練習で補いやすいため、日常的に英語インプットを増やしながら、社内での英語使用機会を意図的に増やすことが効率的だ。

Q3. 外資系SaaS企業の日本法人では、日々の営業活動は本当に英語で行われますか?

企業・ポジションによって異なる。エンタープライズセールス担当であっても、顧客との商談は基本的に日本語で行われることがほとんどだ。英語が必要になるのは、主に本社やAPAC本部とのコミュニケーション、グローバルのレポーティング、プロダクトロードマップに関する情報収集・フィードバック共有などの文脈に限られるケースも多い。「社内英語、顧客は日本語」という分業構造になっていることが一般的だ。

Q4. 英語力があると、SaaS営業のどのような選考で有利になりますか?

外資系SaaS企業では、応募段階での書類の際立ちもさることながら、面接プロセスにおいて本社のHiringマネージャーが加わるケースで差が出やすい。APAC統括のSales DirectorやGlobal Recruitingチームとのパネル面接が英語で行われる場面では、英語力が直接評価される。また、転職後の早期成果という観点からも、英語でのオンボーディング資料・研修コンテンツを迅速にキャッチアップできる力は実務上の優位性につながりやすい。


まとめ

SaaS営業において英語力は絶対要件ではないが、英語力の有無はアクセスできるポジションの幅と年収上限に構造的な影響を及ぼす。特に外資系SaaSのミドル〜シニア職や、グローバル展開中の国内SaaS企業においては、英語力が実質的な参加条件となる場面が増える傾向がある。一方、国内市場を対象とするSaaS営業では、業界知識・顧客理解・商談設計力の方が短期的な評価に直結しやすい。英語は「あれば確実に選択肢が広がるスキル」として中長期的に整備する投資価値があると言える。自身の現在地と目指すポジションとのギャップを正確に把握するには、市場を熟知したキャリアの専門家への相談が有効な手段となる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)