経営企画の転職市場動向【2026年】|求人数・採用ニーズの変化

職種:経営企画 |更新日 2026/7/4

経営企画職の転職市場は、2025年から2026年にかけて構造的な変化の局面にある。求人数の増減といった表面的な数字だけでなく、採用企業が何を求め、どのような人材に市場価値が集まっているかを把握することが、転職活動の精度を高めるうえで欠かせない。本稿では、経営企画の転職市場を多角的に整理し、ポジション獲得に向けた実務的な示唆を提示する。


経営企画の採用ニーズが変化している背景

経営企画は従来、「社長室付き」や「戦略立案補佐」として捉えられることが多く、採用規模が小さく、ポジション自体が希少な職種とされてきた。しかし近年、その位置づけは変容しつつある。

背景の一つは、事業環境の複雑化だ。中期経営計画の策定・管理に加え、M&Aの検討、資本効率の改善、ESG対応、新規事業の収益化といった課題が並列で進む企業が増え、経営企画の担当領域が拡張している。これに伴い、少数精鋭でオールラウンドに動く従来型から、専門領域を持ちながら経営に近い文脈で機能する人材への需要にシフトしている。

もう一つは、人事・評価制度の変化だ。ジョブ型採用を導入する大企業やスタートアップでは、「経営企画マネージャー(事業計画担当)」「経営企画スペシャリスト(M&A・PMI)」のように役割を明確化した採用が増えている。ポジションが細分化されたことで求人の絶対数が増加している面もある。

求人数・難易度のレンジ感

以下は経営企画関連ポジションの大まかな分類と難易度の目安である。数値は特定の調査データではなく、転職市場全体の傾向を踏まえた相場観として参照されたい。

ポジション区分年収レンジの目安求人の流通量競争倍率の傾向
事業会社・経営企画スタッフ(〜5年目相当)500〜750万円前後やや多い中〜高
事業会社・経営企画マネージャー750〜1,100万円前後限定的
スタートアップ経営企画(シリーズB〜C)600〜900万円前後増加傾向
PE/VC傘下企業の経営企画(PMI含む)800〜1,300万円前後限定的
上場準備(IPO担当)700〜1,000万円前後限定的中〜高

競争倍率が「高」のポジションは、求人数が少ないうえに応募者の質も高い。コンサルや投資銀行出身者と同一選考に乗るケースも多く、差別化の論点を明確にしておく必要がある。


採用企業別・採用ニーズの実態

大企業・上場企業

伝統的な大企業は、経営企画の機能を厚くする方向にある。ただし採用スタンスは保守的で、業界知識や社内調整能力を重視する傾向がある。外部からの採用では「即戦力として動けるか」よりも「組織になじみながら改革を推進できるか」が問われやすい。

具体的な採用ニーズとして多いのは、以下のようなテーマを担える人材だ。

戦略コンサルや会計事務所(FAS部門)出身者への需要は引き続き高い一方、「コンサル経験はあるが事業会社経験がない」という候補者は、事業会社側の採用基準に合わせた訴求の工夫が求められる。

スタートアップ・メガベンチャー

シリーズB以降のスタートアップや、急成長フェーズのメガベンチャーにおける経営企画ニーズは拡大している。資金調達・投資家対応・KPI管理・組織設計といった経営直結の課題を少人数でこなす必要があるため、汎用性と推進力の両方が問われる。

このカテゴリでは、年収よりもストックオプションを含めた総報酬での提示が多い。市場価値を「現年収との比較」だけで測ることが難しいポジションであるため、上場時の希薄化率や行使価格の水準を含めた評価が必要になる。

PEファンド傘下・PMI案件

プライベートエクイティファンドが投資先企業に送り込む、または投資先企業が自社で採用する経営企画人材の需要は、一つの独立したセグメントとして機能している。財務モデリング・予算管理・KPI設計の経験を持つ人材が選好される傾向があり、コンサル・FAS・事業会社の経営管理部門出身者が候補になりやすい。

ただし案件の特性上、求人が公開市場に出ないケースが多く、専門のエージェントや業界ネットワーク経由での情報収集が実態に即している。


市場価値が高まりやすい人材の要件

経営企画の転職市場において、複数のオファーを受けやすい候補者には共通した要件が見られる。

定量的な仕事の実績があること:「中期経営計画の策定に携わった」という記述は多いが、「売上計画の前提ロジックを再構築し、〇億円規模のポートフォリオ組み替えの意思決定プロセスを支援した」という粒度の説明ができると訴求力が大きく異なる。

経営層への直接的な関与経験:役員・CFO・CEOとの直接のやり取りや、取締役会・投資家向け資料の作成経験は、採用企業が重視する要素である。

財務・会計のリテラシー:戦略立案だけでなく、PLやBSの構造を理解したうえで事業判断に関与できるかは、採用基準の分水嶺になりやすい。

越境経験:事業会社出身者がM&A案件に関わった経験、コンサル出身者が事業会社でPDCAを回した経験など、「軸が一本あったうえでの越境」は差別化になりやすい。


ケーススタディ:コンサル出身者の事業会社経営企画への転職

背景と課題

戦略コンサルティングファームに5年在籍し、製造業・ヘルスケア領域のプロジェクトを複数経験してきた30代前半のビジネスパーソンが、事業会社の経営企画ポジションへの転職を検討したケース。志望理由は「戦略の実行まで責任を持ちたい」というものだったが、書類選考の通過率が想定より低い段階で見直しを行った。

問題の所在

職務経歴書において、コンサルプロジェクト単位での記述が中心になっていた。採用企業が求める「自社の意思決定に継続的に関与できる人材像」と、「プロジェクト型で動いてきた人材像」の間にギャップが生じていた。

改善のアプローチ

プロジェクトの成果記述を、クライアント企業の経営上の課題→自分が担った意思決定プロセスへの貢献→定量的なアウトプット、という順序で組み直した。また、クライアント企業の経営企画部門との連携経験を「事業会社サイドの視点で動いた経験」として補足説明した。

結果の傾向

このような整理を経ることで、書類通過率が改善し、年収750〜850万円レンジの事業会社経営企画ポジションの複数内定を得るケースは珍しくない。ポイントは「経験量」ではなく「採用企業の課題文脈に合わせた経験の翻訳」である。


よくある質問

Q1. 経営企画への転職は何歳まで現実的ですか?

年齢自体が直接的な採用基準になるケースは少ない。ただし、スタッフ職での採用は20代後半〜30代前半が多く、マネージャー以上のポジションには30代が中心的な応募層になる傾向がある。40代以降は、CFO候補や上場準備責任者といった特定の機能を担うポジションが現実的な選択肢になりやすい。

Q2. 未経験から経営企画に転職できますか?

完全な未経験からの直接転職は難易度が高い。ただし、経営管理・FP&A・事業企画・コンサル・投資銀行といった隣接領域からの転換は一般的なルートであり、「経験の翻訳」によって実現しやすい。また、スタートアップにおける経営企画は間口が相対的に広い傾向があるため、キャリアの入口として活用する候補者も多い。

Q3. 経営企画の転職で重要視されるスキルは何ですか?

財務モデリングや事業計画の策定経験が基本として求められる。それに加え、論点整理・経営者との対話・プロジェクトマネジメントの実績が差別化になりやすい。近年は、データ分析やBIツールの活用経験を評価軸に含める企業も増えている。

Q4. 経営企画の求人はどのように探すべきですか?

公開求人として出てくるポジションは全体の一部にとどまる傾向がある。特に上場企業の管理職ポジションやPEファンド関連案件は、エージェント経由の非公開求人として流通するケースが多い。経営企画に特化した実績を持つエージェントへの相談が情報収集の精度を上げる手段の一つとなる。


まとめ

経営企画の転職市場は、求人数の増加と同時に採用ニーズの専門化・細分化が進んでいる。採用企業ごとに「求めている機能」が異なるため、一般的な経験の列挙ではなく、採用側の課題文脈に合わせた経験の翻訳が選考通過の鍵になりやすい。財務リテラシー・経営層との関与経験・定量的な成果の説明という三点が、候補者の評価軸として機能しやすい。市場全体の需要は底堅く推移しているが、上位ポジションの競争は激化しており、求人情報の取得チャネルも戦略的に選ぶ必要がある。現在の自身の経験が経営企画市場でどのように評価されるかを確認するうえで、専門領域に精通したキャリアアドバイザーへの相談は有効な選択肢の一つとなる。

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)