カスタマーサクセスの年収相場|転職で押さえるべきポイント

カスタマーサクセス 年収相場 更新日 2026/8/10

サポートと営業の間で、水準が決まる

カスタマーサクセスの年収は、その会社がこの職種をどちら寄りに設計しているかで変わります。問い合わせ対応の比重が高ければサポート寄り、追加契約まで担うなら営業寄りの水準になります。

対応する公的な職業区分は用意されていないため、単一の相場は示せません。ただし、近い2つの区分を並べると、おおよその幅は見えてきます。

この記事では、その幅の読み方と、実際に報酬を決めている要素を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

近い2つの区分を並べる

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)から、この職種に近い2区分の数値を並べます。

項目ヘルプデスク(IT)コンサルティング営業(IT)
年収609.8万円659.4万円
求人賃金(月額)28.3万円29.8万円
平均年齢42.2歳42.2歳
月間労働時間160時間162時間
有効求人倍率1.794.02
就業者数207,400人581,280人

年収・平均年齢・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査、求人賃金と有効求人倍率は令和6年度、就業者数は令和2年国勢調査の数値です。

注目すべきは、年収の差が約50万円にとどまる点です。求人倍率では2倍以上の開きがあるのに、報酬の水準は近い範囲に収まっています。

つまり、この職種の周辺では、営業寄りかサポート寄りかで報酬が大きく変わるわけではありません。振れ幅の小さい領域だと理解しておくと、提示条件を見るときの目安になります。大きく伸ばしたい場合は、職種内での移動より、担う範囲を広げるほうが現実的です。

報酬の構成

この職種は固定給が中心です。インセンティブがある場合も、営業職と比べて比率は小さくなる傾向があります。

理由は指標の性質にあります。継続率や解約率は、自分の働きかけ以外の要素にも左右されます。製品の不具合、顧客側の組織変更、予算の削減。こうした要因が絡むため、成果を個人に紐づけにくい構造です。

変動部分がある場合、成果に応じて支払う仕組みには法律上の定めがあります。厚生労働省の説明によれば、歩合給制で使用する労働者に対しては、労働基準法第27条により、実際に労働した時間に応じて一定の賃金を保障しなければならないとされています。固定給が賃金総額のおおむね6割程度以上を占める者は適用対象から除外されるとされ、保障給の水準は少なくとも平均賃金の6割程度を保障することが妥当とされています。

この職種では固定給の比率が高い設計が多いため、対象外になることが一般的です。ただし、拡張型で追加契約額に連動する設計を提示された場合は、比率を確認しておく価値があります。

継続率が指標になることの意味

評価指標として継続率や解約率が使われる場合、報酬の決まり方に特有の性質が出ます。

成果が遅れて現れる — 今期の働きかけが数字に出るのは、契約更新の時期です。半年から1年遅れることもあります。入社1年目は、前任者が作った状態の影響を受けます。

悪化を防いだ成果が見えにくい — 解約されなかったことは、記録に残りません。放っておけば失っていた顧客を維持した場合、その貢献は数字上「変化なし」として現れます。

自分の制御外の要因が入る — 製品の品質や、顧客側の事情が結果を左右します。

これらの性質があるため、評価の仕組みが整っていない会社では、貢献が報酬に反映されにくくなります。選考時に、何をもって成果とするかを具体的に確認しておく価値があります。

指標特徴注意点
継続率・解約率この職種の標準的な指標定義が会社ごとに違う。制御外要因が入る
追加契約額貢献が金額で見える拡張型でないと機会自体が少ない
利用状況の改善先手の動きが反映される測り方が整っていないと形骸化する
顧客満足度定性面が反映される高い評価が事業成果と一致しないことがある
対応件数・応答速度測りやすい先手の動きが評価されない

労働時間と、報酬の見え方

年収を比較するときは、労働時間も合わせて見る必要があります。job tag に掲載されている月間労働時間は、ヘルプデスク(IT)で160時間、コンサルティング営業(IT)で162時間とされています(いずれも令和7年賃金構造基本統計調査)。区分全体の平均ではありますが、極端に長時間の領域ではないことが読み取れます。

ただし、この職種には時間の使い方に特有の事情があります。

顧客の都合に左右される — 契約更新の時期や、導入直後の立ち上げ期は負荷が集中します。年間を通じて平準化しにくく、繁閑の差が出ます。

一次対応を含むかで変わる — 問い合わせ対応が範囲に入っている場合、自分の予定を組み立てにくくなります。先手の動きに使える時間が削られ、結果として指標も伸びにくくなります。

担当社数が上限を決める — 100社を担当していれば、一社あたりに使える時間は自動的に決まります。丁寧に対応したくてもできない構造があります。

提示された年収を比較するときは、これらを揃えて見る必要があります。同じ金額でも、一次対応を含む100社担当と、含まない20社担当では、一日の密度がまったく違います。求人票の金額だけを並べても、実質的な条件は比べられません。

年収が伸びる要因

3つ目と4つ目が、この職種で現実的な伸ばし方です。1人が担当できる顧客数には上限があるため、個人の対応量では頭打ちになります。

5つ目も見落とされがちです。製品知識は誰でも入社後に身につけますが、顧客側の業務知識は時間がかかります。ここが深いと、提案の説得力が変わり、担当できる顧客の層も上がります。

提示条件を確認するときの観点

  1. 評価指標 — 継続率か、追加契約額か、対応件数か。複数ある場合は比重
  2. 指標の定義 — 継続率を社数で数えるか金額で数えるか。算定期間は
  3. 担当社数 — 10社規模か100社規模かで、働き方が変わる
  4. 入社初年度の扱い — 前任からの引き継ぎ状態が、初年度の数字に影響する
  5. 固定と変動の比率 — 変動が大きい場合は保障の有無
  6. サポート業務の範囲 — 問い合わせ一次対応を含むかどうか

4つ目は、この職種でとくに重要です。引き継いだ顧客の状態が悪ければ、初年度の数字は下がります。その前提が評価に織り込まれているかを確認しておくと、入社後の不利が避けられます。

エージェントベストの見解

近い2区分の年収差が約50万円にとどまる一方、有効求人倍率は1.79と4.02で2倍以上開いています。この組み合わせが示しているのは、募集の多さが報酬に直結していない領域だということです。実務でも、この職種は提示額の幅が比較的狭く、交渉で大きく動かしにくい傾向があります。だからこそ、金額そのものより評価の仕組みを見るほうが、結果的に納得のいく選択になります。とくに確認していただきたいのは、入社初年度の扱いです。前任者から引き継いだ顧客の状態が悪ければ、初年度の継続率は下がります。それが評価にどう反映されるかを聞いておかないと、1年目から不利な位置に立つことになります。この質問は、指標を理解している方だと受け取られるので、切り出しても差し支えありません。

隣接職種との比較

キャリアの進み方と選考は、カスタマーサクセスのキャリアパスカスタマーサクセスの選考フロー・面接対策をご確認ください。

エージェントベストの見解

報酬で行き違いが起きやすいのは、成果が見えないまま1年が過ぎるケースです。この職種は、解約を防いだ貢献が数字の上では「変化なし」として現れます。何も起きなかったように見えるため、評価面談で説明する材料が残りません。防ぐには、在籍中から記録を残しておくことです。危ない状態にあった顧客について、何を察知し、何をして、結果どうなったか。これを都度書き留めておくと、評価の場でも転職の書類でも使えます。多くの方は、うまく収まった案件ほど記録を残しません。印象に残るのはこじれた案件だからです。しかし報酬に効くのは、収まった案件の説明ができるかどうかです。四半期に一度、5行でも残しておく習慣をおすすめしています。

まとめ

カスタマーサクセスの年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、この職種そのものを示すものではありません。労働条件の個別の取扱いについては、事情により判断が変わりますので、専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. カスタマーサクセスの平均年収はいくらですか。

A. この職種に対応する公的な職業区分がないため、単一の数字は示せません。近い2区分では609.8万円と659.4万円で、差は約50万円です。この幅のなかで、担う範囲によって位置づけが変わります。

Q. 営業に移ったほうが年収は上がりますか。

A. 上限は上がりやすくなりますが、振れ幅も大きくなります。近い区分の平均年収で見ると差は約50万円で、大きな開きではありません。安定を重視するか上限を重視するかの選択になります。

Q. 継続率が高いことは、そのまま評価されますか。

A. 定義と前提が伴っていれば評価されます。担当前と担当後の変化、算定の方法を添えると伝わります。もともと安定していた顧客を引き継いだ場合と、悪い状態から改善した場合では意味が違います。

出典

本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)