フィールドセールス(SaaS)のキャリアパス|転職で押さえるべきポイント

SaaS営業(フィールドセールス) キャリアパス 更新日 2026/8/10

売り続ける道と、組織を作る道

SaaSのフィールドセールスは、数年経つと進む方向が分かれます。売る力をさらに高めて大型案件を担う道と、チームを持って組織で数字を作る道です。

どちらが上ということはありません。ただ、評価される要素が入れ替わるため、方向が見えないまま数字を追い続けると、次の選択肢が狭まることがあります。個人で成果を出す力と、人に成果を出させる力は別物だからです。

この記事では、この職種の入社後の進み方、分岐の時期、そして隣接職種への移り方を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

SaaSの営業が分業されている理由

キャリアを考える前に、この職種が置かれている構造を押さえておく必要があります。SaaSを提供する会社では、営業の工程が分かれていることが一般的です。

役割担当する範囲主な指標
マーケティング見込み客を集めるリード数、獲得単価
インサイドセールス見込み客を選別し、商談を作る商談化数、質
フィールドセールス商談を進め、契約に至らせる受注額、受注率
カスタマーサクセス導入後の定着と継続、拡張継続率、追加契約

分業されている理由は、契約時点で費用を回収しきらない収益構造にあります。継続して使われて初めて採算が合うため、売った後の定着まで含めて設計する必要があります。

フィールドセールスは、この流れの中間に位置します。前工程から渡された商談を進め、後工程に引き渡す。自分だけで完結しない点が、単独で売り切る営業との大きな違いです。

つまり、この職種のキャリアは「自分がいくら売ったか」だけでは説明しきれません。前後の工程とどう連携したかが、後の選択肢に効いてきます。

入社後の進み方と、分岐の時期

進み方には幅がありますが、おおよそ次のような段階をたどります。年数は目安です。

時期主な状態この時期の分岐
入社〜6か月プロダクトと業界を覚える。同行から始まる立ち上がりの速さ
6か月〜2年自分の商談を持つ。数字の責任を負う安定して達成できるか
2〜4年大型案件や難易度の高い顧客を任される深めるか、広げるか
4年以降領域を持つ、またはチームを持つ個人で進むか、組織側に回るか

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、IT分野のコンサルティング営業について、入職後1年超から2年程度で一般的な就業者と同等になるとされています。立ち上がりに一定の期間を要する職種です。

最初の関門は入社から6か月です。SaaSの営業では、プロダクトの理解と、顧客の業務理解の両方が要ります。どちらかが欠けると商談が浅くなります。

2つ目の関門は2〜4年目です。同じ規模の案件を繰り返す状態から、難易度の高い案件に移れるかどうか。ここを越えられるかで、その後の選択肢が変わります。

売る側で深める道

個人の営業力で進む場合、規模の大きい案件や、意思決定者が多い顧客を担当する方向になります。

評価される要素

在籍中に積むべきもの

  1. 複数部門が関わる案件を通した経験。窓口担当だけでなく、決裁者と経営層に説明した実績
  2. 導入後に継続した顧客を持つ。売った後の状態まで追いかけた経験
  3. 商談の型を言語化した経験。自分のやり方を他の人が再現できる形にしたか

3つ目は、組織側に回る場合にも効いてきます。個人の勘に頼った売り方は、そのままでは引き継げません。

大型案件を扱う方向は、エンタープライズセールスのキャリアパスエンタープライズセールスに求められるスキルが近い領域です。

組織を持つ道

チームを持つ場合、求められるものが入れ替わります。自分が売るのではなく、メンバーが売れる状態を作る仕事になります。

変わること

移行でつまずきやすいのは、自分で売ったほうが速いと感じる場面です。実際、短期では自分が動くほうが数字は出ます。しかし、それを続けるとチームは育ちません。

この道に進む場合、在籍中に商談の型を言語化しておいた経験が効きます。感覚で売ってきた方は、まず自分のやり方を分解する作業から始めることになります。

顧客側・事業側に移る道

営業から離れる、あるいは営業に近い別の役割に移る道もあります。

カスタマーサクセスへ — 売った後の定着と拡張を担います。継続率が指標になるため、短期の受注とは異なる視点が要ります。カスタマーサクセスのキャリアパスをご覧ください。

セールスエンジニア/プリセールスへ — 技術的な提案の比重を高める方向です。プロダクト理解が深い方に向きます。セールスエンジニア/プリセールスのキャリアパスが参考になります。

パートナーセールス/アライアンスへ — 直接販売ではなく、販売代理店や協業先を通じて売る形に移ります。パートナーセールス/アライアンスのキャリアパスが該当します。

事業側へ — 顧客の声を製品や事業戦略に反映する立場です。プロダクトマネージャー(PdM)のキャリアパス事業開発(BizDev)のキャリアパスへの移行例があります。

エージェントベストの見解

この職種で多い転職の失敗は、扱う商材の単価と検討期間の違いを見落とすことです。同じSaaSでも、月額数万円で担当者が決められる製品と、年間数千万円で稟議に数か月かかる製品では、日々の仕事がまったく違います。前者は商談数をこなす動きが中心になり、後者は一件を長く追う動きになります。前職で高速に回してきた方が、決裁に時間のかかる商材に移ると、成果が見えない期間の長さに戸惑うことがあります。逆も同様です。入社前に確認していただきたいのは、平均の受注単価と、商談開始から受注までの平均期間です。この2つを聞けば、日々の時間の使い方がかなり具体的に見えます。求人票の「無形商材」「法人向け」という括りだけでは、この差は読み取れません。

統計から見える、この職種の輪郭

イメージと実態のずれを確認するために、公的なデータを見ておきます。

job tag に掲載されているIT分野のコンサルティング営業の数値では、平均年齢は42.2歳、就業者数は581,280人(令和2年国勢調査)とされています。若手中心の職種という印象を持たれることがありますが、統計上の平均年齢はそれほど低くありません。

また、月間の労働時間は162時間とされています。この区分にはSaaS以外のIT営業も含まれるため、スタートアップに限った数字ではない点に注意が必要です。

就業者数が58万人規模というのは、他の専門職と比べて大きい部類です。母集団が大きいということは、競合する応募者も多いということでもあります。経験年数だけでは差がつきにくく、何を売って何を積んだかの説明が要ります。

隣接職種との行き来

この職種は、周辺の役割との距離が近い点が特徴です。

年収と選考については、フィールドセールス(SaaS)の年収相場フィールドセールス(SaaS)の選考フロー・面接対策で整理しています。

エージェントベストの見解

この職種を検討される方は、エンタープライズ向けの営業職と、カスタマーサクセスを並行して見ているケースが多く見られます。判断が割れるのは、報酬の伸び方と、成果が確定するまでの時間です。フィールドセールスは受注という形で毎月結果が出ます。分かりやすい反面、翌月にはまた積み上げ直しになります。カスタマーサクセスは継続率が指標のため、成果が見えるまで時間がかかる代わりに、積み上がった状態が残ります。どちらが向くかは、短い周期で結果が出ることに張り合いを感じるか、それとも消耗するかで分かれます。実際に迷われている方には、直近1年で最も満足度が高かった仕事を思い出していただくようにしています。受注の瞬間だったのか、顧客が使いこなせるようになった場面だったのか。ここで判断がつくことが多くあります。

まとめ

フィールドセールス(SaaS)のキャリアパスについて、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業や業界の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 有形商材の営業から、SaaSのフィールドセールスに移れますか。

A. 移る方はいます。評価されるのは商材の種類より、意思決定者が複数いる案件を進めた経験です。稟議を通した経験や、決裁者に説明した実績があれば接続します。

Q. 個人で売る道と、マネジメントの道はいつ選ぶのですか。

A. 4年目前後で選択肢が見えてくることが多くなります。ただし、どちらに進む場合も自分の商談の型を言語化しておくことが土台になります。先に決め切る必要はありません。

Q. インサイドセールスから移るのは一般的ですか。

A. 一般的な経路の一つです。商談を作る工程を理解しているため、前工程との連携がしやすくなります。一方で、受注までの合意形成を担った経験は改めて積む必要があります。

出典

本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)