ITコンサルタントの年収相場|転職で押さえるべきポイント
889万円と1,134.6万円、245.6万円の差
ITコンサルタントの年収を調べると、コンサルティング職としては控えめな数字に行き当たります。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「ITコンサルタント」の区分では、平均年収は 889万円(令和7年賃金構造基本統計調査)です。同じサイトの「経営コンサルタント」の区分は 1,134.6万円。差は 245.6万円 あります。
時間当たり賃金でも差が出ます。ITコンサルタントが 4,026円、経営コンサルタントが 5,497円。1,471円 の開きです。労働時間はITコンサルタントが月 173時間、経営コンサルタントが月 162時間 で、ITコンサルタントのほうが11時間長くなっています。
なぜ差があるのか
最大の理由は、就業者数です。ITコンサルタントの区分は 656,770人(令和2年国勢調査)、経営コンサルタントの区分は 82,920人。約8倍の開きがあります。
人数が多い職種は、代替が効きやすく、単価が抑えられます。この構造を理解しないと、年収の見通しを誤ります。
この記事では、この構造のなかで自分の年収がどう決まるのかを分解します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の条件は各社公式サイトをご確認ください。
数字を並べて見る
| 項目 | ITコンサルタント | 経営コンサルタント |
|---|---|---|
| 平均年収 | 889万円 | 1,134.6万円 |
| 求人賃金(月額) | 35.4万円 | 28.3万円 |
| 平均年齢 | 38.3歳 | 39.4歳 |
| 労働時間 | 月173時間 | 月162時間 |
| 時間当たり賃金 | 4,026円 | 5,497円 |
| 有効求人倍率 | 0.89 | 0.57 |
| 就業者数 | 656,770人 | 82,920人 |
注目したいのは求人賃金
平均年収は経営コンサルタントのほうが高いのに、求人賃金はITコンサルタントのほうが7.1万円高くなっています(35.4万円対28.3万円)。
これは、入口の水準がITコンサルタントのほうが高いことを示します。一方で、平均年収は逆転しています。つまり、経営コンサルタント側のほうが、年次を重ねたときの上がり幅が大きいと読めます。
転職の観点
入社直後の水準を重視するならITコンサルタント、数年後の上限を重視するなら経営コンサルタントという整理ができます。ただし、経営コンサルタントの区分は有効求人倍率0.57で、席が限られます。
65万人の平均から離れる3つの方法
889万円という数字は、65万人の平均です。この平均から離れるには、代替されにくい位置に移る必要があります。
方法1:意思決定に関わる
パッケージの設定作業や、決められた手順に沿った導入支援は、人数が多く単価が上がりにくい領域です。一方、要件を削る判断や、投資の可否に関わる提案は代替が効きません。
判断の目安は、決める会議に出ているかです。出ていない場合、その案件では単価が上がりにくくなります。
方法2:特定領域の専門性を持つ
基幹システム、データ基盤、セキュリティ、業界特化の業務知識。特定領域で指名される状態になると、単価が変わります。
ただし、領域選びには注意が要ります。技術の入れ替わりが速い領域では、専門性の寿命が短くなります。
方法3:会社の型を変える
同じ仕事でも、会社によって単価が違います。外資系ファーム、総合系ファーム、SIerのコンサル部門、事業会社の社内部門。それぞれ給与テーブルの前提が異なります。
現実的な順序 — 1つ目を満たしたうえで3つ目を検討すると、転職時の交渉材料が揃います。1つ目がないまま会社だけ変えると、等級が上がりません。
会社のタイプで、水準が変わる
| 会社のタイプ | 水準の傾向 | 補足 |
|---|---|---|
| 外資系ITコンサルティング | 高め | 等級ごとの水準が明確。稼働も重くなります |
| 総合系コンサルティングファーム | 中〜高 | 等級体系が整備されています |
| SIerのコンサルティング部門 | 中程度 | 全社の給与テーブルに乗ります |
| 独立系のITコンサルティング | 幅が大きい | 特定領域の専門性で決まります |
| 事業会社の社内コンサル・DX部門 | その企業の水準 | 業界によって差があります |
3つ目が見落とされやすい部分です。SIerのコンサルティング部門は、その会社の給与テーブルに乗ります。コンサル部門だけ別基準ということは通常ありません。
5つ目は幅が最も大きい領域です。同じ社内DX部門でも、金融と小売では水準が異なります。
大学院卒が45%を超える区分
job tagのITコンサルタントの区分では、学歴の分布に特徴があります。
大卒75.0%、修士課程卒34.1%、博士課程卒11.4%、高卒13.6%、専門学校卒9.1%。
修士と博士を合わせると45%を超えます。経営コンサルタントの区分(修士28.3%、博士5.7%)より高い比率です。
年収への影響
学歴そのものが年収を決めるわけではありません。ただし、大学院卒の比率が高い区分では、初任の等級が高めに設定されることがあります。
中途採用の場合
学歴より、前職での役割が問われます。要件定義を主導したか、プロジェクトを完了させたか。この2点が等級の判断材料になります。
入職後訓練の期間
同じ区分では、入職後訓練は「6か月超〜1年以下」が最多(20.5%)、入職前実務経験は「特に必要ない」が31.8%とされています。育てる前提がある職種であり、未経験からの参入も想定されています。ただし、その分だけ入口の等級は抑えられます。
エージェントベストの見解
オファーを比較するとき、稼働時間を織り込んでいない方が多くいます。job tagの区分では労働時間が月173時間、時間当たり賃金が4,026円とされていますが、これは調査区分全体の数字です。外資系ファームや大規模なシステム刷新の案件では、これを大きく上回る稼働になることがあります。確認していただきたいのは、みなし残業代の時間数と、それを超えた分の扱いです。年収1,000万円でも、月200時間を超える稼働が常態であれば、時給換算では前職と変わらないことがあります。逆に、同じ900万円でも稼働が160時間台に収まる職場なら、時給は大きく違います。年収の額だけで比べると、この差が見えません。提示された年収を、想定される稼働時間で割ってみる。この一手間で、判断が変わることがあります。
年齢と等級のずれが、この職種では起きやすい
job tagの区分では平均年齢が 38.3歳 とされています。経営コンサルタントの39.4歳とほぼ同じですが、この職種には固有の事情があります。
エンジニアからの転職で起きること
実装の経験が10年あっても、コンサルタントとしての経験年数はゼロと見なされることがあります。30代後半で転職して、20代のメンバーと同じ等級から始まる場合があります。
それでも移る価値がある場合
上がる速度が速い設計であれば、数年で追いつきます。job tagの区分では入職後訓練が「6か月超〜1年以下」が最多(20.5%)とされており、立ち上がりの期間は比較的短くなっています。
確認すべき点
- 前職の経験年数が、等級の判断にどこまで反映されるか
- 同じ出身の人が、何年で次の等級に上がっているか
- 等級が据え置かれた場合、いつ見直されるか
交渉の材料
要件を決めた経験、顧客と直接やりとりした経験、プロジェクトを完了まで見届けた経験。この3つは、実装の年数とは別に評価されます。エンジニア出身でもこれらを持っていれば、一段上の提示につながることがあります。
逆に効きにくいもの
使用した言語やフレームワークの一覧、担当したシステムの規模。これらは実装者としての評価につながり、コンサルタントの等級判断には直接効きにくくなります。
オファーで確認すること
- 入社時の等級と、その等級のレンジ
- 次の等級までの目安年数と、上がる条件
- みなし残業代の有無と時間数、超過分の扱い
- 担当する案件の型(上流の企画か、導入支援か、PMOか)
- 決める会議に出る役割かどうか
- 常駐の有無と、客先の場所
4つ目と5つ目が、数年後の年収を左右します。導入支援や設定作業を続けると、稼働の量が評価軸になり、上限が見えます。
6つ目も確認する価値があります。客先常駐の案件では、通勤と生活の制約が生じます。手当の有無も会社によって違います。
近い職種の水準はITアーキテクトの年収相場、DX推進担当の年収相場、プロジェクトマネージャーの年収相場もあわせてご覧ください。
エージェントベストの見解
有効求人倍率0.89という数字は、この職種の交渉環境を示しています。1を下回っており、募集より求職者のほうが多い状態です。就業者数65万人という規模と合わせると、代替が効きやすい構造が見えます。この環境で条件を上げるには、平均から離れていることを具体的に示す必要があります。効くのは、要件を削った経験です。「顧客から出た要望128件のうち、初期リリースに含めるものを47件に絞り、除外の理由を部門長会議で説明した」といった記述があれば、意思決定に関わっていたことが伝わります。要望を漏らさず拾った話ではなく、削った話。この違いが、65万人のなかでの位置を示します。多くの応募者は前者を書くため、後者を書ける人は書類の段階で区別されます。
まとめ
ITコンサルタントの年収相場について、押さえるべき点を整理します。
- 平均889万円は経営コンサルタント1,134.6万円より245.6万円低い
- 時給は4,026円対5,497円。労働時間はITコンサルタントのほうが11時間長い
- 差の背景は就業者数。656,770人対82,920人で約8倍
- 求人賃金は逆にITコンサルタントが高い(35.4万円対28.3万円)。入口は高く、伸びは緩やか
- 平均から離れる方法は、意思決定に関わる、専門性を持つ、会社の型を変える
- 有効求人倍率0.89。交渉には、要件を削った経験など具体的な材料が要る
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. なぜ経営コンサルタントより年収が低いのですか。
A. 最大の要因は就業者数です。656,770人対82,920人で約8倍の開きがあります。人数が多い職種は代替が効きやすく、単価が抑えられます。仕事の難易度の差というより、市場の構造の差です。
Q. 求人賃金がITコンサルタントのほうが高いのは、なぜですか。
A. 入口の水準が高いことを示しています。平均年収は逆転しているため、経営コンサルタント側のほうが年次を重ねたときの上がり幅が大きいと読めます。ただし、経営コンサルタントの区分は有効求人倍率0.57で席が限られます。
Q. SIerからコンサルティングファームに移ると、年収は上がりますか。
A. 上がる場合が多いものの、等級の判断次第です。要件定義を主導した経験と、プロジェクトを完了させた経験があるかが問われます。実装中心の経歴だと、等級が低めに置かれることがあります。
Q. 未経験から入ると、年収はどのくらいですか。
A. job tagの区分では求人賃金が月額35.4万円とされており、入口の水準はこれに近くなります。入職前実務経験は「特に必要ない」が31.8%で未経験の参入も想定されていますが、その分だけ入口の等級は抑えられます。
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。