経営企画の転職難易度|転職で押さえるべきポイント
募集が少なく、出るときは条件が具体的
経営企画は、転職市場で人気の高い職種です。会社全体を見る立場であり、経営に近いという理解があるためです。
一方、公開されている数字は厳しめです。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に掲載されている有効求人倍率は、IR広報担当で0.59、企画・調査担当で0.54(いずれも令和6年度)とされています。どちらも1を下回り、募集より求職者が多い状態です。
ただし、この職種の難しさは倍率だけでは説明できません。募集が出るときには、会社側に具体的な事情があり、求める人物像もはっきりしています。噛み合えば通り、外れれば経歴が優れていても進みません。
この記事では、募集が出るタイミングと、噛み合わせ方を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
求人が出るのは、4つの場面
社内で埋められない事情があるときに、外部募集が出ます。
上場準備に入ったとき — 予算管理、開示資料の作成、監査対応など、これまで無かった業務が発生します。経験者を外から採るしかない場面です。この理由による募集が最も多くなります。
組織が急に大きくなったとき — 事業の拡大に管理側が追いつかない状態です。数字を整える人手が足りません。
投資やM&Aを進めるとき — 財務モデルや契約の実務を扱える人が必要になります。専門性が高く、社内では賄えないことが多い領域です。
制度や体制を作り直すとき — 親会社の変更、事業構造の転換、開示制度の変更対応など、既存のやり方を組み替える局面です。
応募先がどれに当たるかで、準備すべき材料が変わります。募集要項に「上場準備」「IPO」「予算制度の構築」といった言葉があれば、手がかりになります。書かれていなければ、面接で聞いて差し支えありません。
難易度を分ける3つの条件
| 条件 | 通りやすい状態 | 厳しくなる状態 |
|---|---|---|
| 数字を作った経験 | 予算を編成し、差異を説明していた | 出てきた数字を集計していた |
| 対外説明の経験 | 取締役会、株主、監査法人に説明した | 社内向けの資料作成にとどまる |
| 制度を作った経験 | 無い状態から仕組みを立ち上げた | 既存の制度に沿って運用していた |
数字を作った経験 が最も見られます。集計と編成は別の仕事です。各部署から出てきた数字をまとめるだけでなく、その数字が妥当かを判断し、必要なら差し戻した経験があるかどうかで評価が変わります。
対外説明の経験 は、上場企業や上場準備中の会社で重視されます。社内の理屈が通じない相手に説明した経験があるかという観点です。
制度を作った経験 は、スタートアップで重視されます。整った環境での運用経験だけだと、何もない状態で立ち上げられるか疑われることがあります。
上場企業と非上場で、見られる点が違う
上場企業 — 期日と精度が中心です。開示のスケジュールが法令と取引所のルールで決まっているため、遅れが許されません。監査法人とのやり取りに耐えられるか、制度の変更に対応できるかが見られます。社内異動で埋まることが多く、外部募集は限られます。
上場準備中の会社 — 最も外部採用が行われる層です。これまで無かった管理体制を作る必要があり、経験者が社内にいません。上場企業での実務経験がそのまま評価されます。
上場予定のない非上場企業 — 開示義務がないため、業務の中心は予算管理と事業支援になります。制度より実務的な柔軟さが求められます。
創業初期のスタートアップ — 経営企画という職種が独立していないことが多く、実質的に管理部門全般を担います。範囲の広さに耐えられるかが見られます。
未経験・異職種から入る経路
経理・財務から
最も多い経路です。数字の作られ方を知っている点が強みになります。補う必要があるのは、確定した数字ではなく、これから作る計画を扱う視点です。予算編成に関与した経験があれば、それを軸にします。財務・経理のキャリアパスが参考になります。
コンサルティングから
分析と資料作成の力は評価されます。一方で、提言で終わらず、社内の当事者として実行まで担えるかを問われます。クライアントの組織を動かした場面を用意しておくと接続します。戦略コンサルタントのキャリアパス、ポストコンサル(事業会社転身)のキャリアパスをご覧ください。
事業側から
現場の実態を知っている点が強みです。全社の数字を扱った経験を補う必要があります。自部門の予算を作り、達成に責任を負った経験があれば軸になります。
監査法人・会計事務所から
制度と会計基準に強く、上場準備中の会社と相性が良くなります。事業側の視点を持っているかを確認されることが多くなります。
IR・広報から
対外説明の経験が土台になります。job tag では、IR広報担当に必要なスキルとして傾聴力と文章力がいずれも5.1と高く示されています。この力は経営企画でも通用します。計画を作る側の経験を補う形になります。
エージェントベストの見解
有効求人倍率が0.54から0.59という水準を見て、応募をためらわれる方がいます。ただ、この数字は市場全体の平均であって、応募先ごとの通りやすさを示すものではありません。実際に起きているのは、上場企業では社内異動で埋まる一方、上場準備中の会社では外から採らざるを得ない、という二極化です。前者だけを見ていれば入口は狭く、後者に絞れば状況が変わります。判断の材料にするなら、倍率よりも、応募先がどの場面で募集しているかを確認するほうが実情に近くなります。上場準備であれば、必要な経験ははっきりしています。予算制度の構築、開示資料の作成、監査法人対応。このどれかを担った経験があれば、経歴の派手さより噛み合わせで決まります。
難易度を下げるためにできること
- 上場準備中の会社に絞る — 外部採用が最も行われる層です
- 編成した経験を前に出す — 集計ではなく、作った側であることを示す
- 社外に説明した場面を用意する — 監査法人、金融機関、株主、取引先のいずれでも
- 制度を立ち上げた経験を書く — 無い状態から作ったものがあれば必ず入れる
- 決算期を確認する — 入社直後が繁忙期に重なると、立ち上がりに使える時間が減ります
5つ目は難易度そのものとは違いますが、入社後の評価に影響します。予算編成や決算の直前に入ると、覚える時間がないまま実務に投入されます。
経験者が次に進むときに問われること
数年の経験を積んだ後、より上位のポジションを目指す場合、次の点が問われます。
- 自分の判断で何が変わったか — 計画を作った実績ではなく、その計画が事業をどう動かしたか
- 反対を押し切った経験 — 事業部門の希望と全社の方針が食い違ったとき、どう調整したか
- 専門機能を持っているか — 予算、開示、投資のいずれかで、深い経験があるか
- 社外との折衝 — 監査法人、証券会社、投資家などとの実務経験
2つ目は、この職種で重く見られます。経営企画は全社の立場から事業部門に注文をつける場面があります。そこで摩擦を避け続けていると、調整役としか見られません。
エージェントベストの見解
書類で落ちる方に共通しているのは、担当業務が名詞で並んでいることです。「予算管理、月次報告、取締役会資料作成」という記述では、どこまで自分が担っていたかが分かりません。通過率が変わるのは、そのうち1つについて、自分が何を判断したかを書けているかどうかです。予算管理であれば、事業部門から上がってきた数字をそのまま通したのか、根拠を確認して差し戻したのか。差し戻した場合、どういう理由で、相手はどう反応したか。ここまで書いてあると、集計する人ではなく判断する人だと伝わります。もう一点、多くの方が書かないのが会社の規模と事業数です。単一事業の会社と、複数事業を持つ会社では、予算編成の難易度がまったく違います。前提が分からないと、読み手は経験の重さを測れません。
隣接職種との関係
- 事業側 — 事業企画の転職難易度、事業開発(BizDev)の転職市場動向
- 数字を扱う側 — 財務・経理の転職市場動向、会計・財務コンサルタントの転職市場動向
- 外部から支援する側 — 戦略コンサルタントの転職市場動向
- 経営層 — CxO候補・経営幹部の転職難易度
- 同職種の一般的な情報 — 経営企画の転職市場動向、経営企画に未経験から挑戦するには
キャリアの進み方と年収は、経営企画のキャリアパス、経営企画の年収相場をご確認ください。
まとめ
経営企画の転職難易度について、押さえるべき点を整理します。
- 有効求人倍率は0.54から0.59。募集より求職者が多い状態
- 募集が出るのは、上場準備、急拡大、投資やM&A、制度の作り直しの4場面
- 上場準備中の会社が、最も外部採用が行われる層
- 分かれ目は、数字を作った経験、対外説明の経験、制度を立ち上げた経験
- 集計と編成は別の仕事。差し戻した経験があるかで評価が変わる
- 書類では業務名を並べず、1つについて自分の判断を書く
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業や業界の実態を示すものではありません。選考の要件は会社と時期により変動しますので、詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 経理から経営企画に移るのは難しいですか。
A. 最も多い経路の一つです。数字の作られ方を知っている点が土台になります。確定した数字を扱う立場から、これから作る計画を扱う立場への切り替えができるかが問われます。
Q. 上場企業の経験がないと不利ですか。
A. 応募先によります。上場準備中の会社では上場企業での実務経験が直接評価されますが、非上場企業では予算管理と事業支援の経験のほうが重視されます。応募先の場面に合わせて経歴の見せ方を変えるほうが効果的です。
Q. 有効求人倍率が1を下回る職種は避けるべきですか。
A. 平均値であり、応募先ごとの状況を示していません。上場準備中の会社や急拡大しているスタートアップでは、外部から採る必要があるため事情が変わります。
本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。