20代でSaaS営業に転職する|ポテンシャル採用の実態と狙い目企業

職種:SaaS営業(フィールドセールス) |更新日 2026/7/3

20代でSaaS営業への転職を検討する際、まず押さえておくべきは「ポテンシャル採用」と「即戦力採用」の境界線がどこにあるか、という点だ。SaaS業界は経験者の絶対数が少なく、20代に対しては素地と成長性を重視する採用が広く行われている。ただし「未経験でも受け入れる」ことと「誰でも採用する」ことは異なる。企業が何を見ているかを正確に理解したうえで準備を進めることが、転職成功の前提条件となる。

本記事では、SaaS営業(フィールドセールス)のポテンシャル採用の実態、企業が評価するスキルセット、ターゲット企業の選び方、そして転職後のキャリアパスまでを、実務的な観点から整理する。


SaaS営業のポテンシャル採用が成立する構造的理由

SaaS企業がポテンシャル採用を行う背景には、業界固有の人材構造がある。

SaaS型のビジネスモデルが国内に本格普及したのは2010年代後半であり、業界経験10年以上の人材はまだ希少だ。加えて、成長フェーズにある企業は採用ペースが速く、経験者だけでヘッドカウントを充足できない実態がある。結果として、「SaaS営業未経験だが法人営業や顧客折衝の経験がある20代」は、多くの企業にとって現実的な採用ターゲットとなっている。

ただし、ここで言う「ポテンシャル採用」は新卒採用とは異なる。企業が期待するのは、SaaS固有の知識ではなく、法人営業のプロセスや顧客との信頼構築において一定の実績がある人材だ。「営業職から未経験でSaaS」という移行は現実的だが、「営業未経験でSaaS」という転職は一部の職種(SDR、カスタマーサクセス等)を除き難易度が高い傾向にある。


SaaS営業に求められるスキルと、経験の読み替え方

SaaS営業のフィールドセールスは、主に「商談推進」「提案設計」「クロージング」の三領域で構成される。これらは一般的な法人営業と重なる部分も多いが、SaaSならではの特徴が加わる。

主な特徴は以下のとおりだ。

この構造に照らすと、前職の経験を以下のように読み替えられる可能性がある。

前職での経験SaaS営業への読み替え
無形商材(広告・HR・コンサル)の法人営業ROI訴求・提案型営業の素地として評価されやすい
SIer・ITベンダーの営業技術理解・IT部門との対話経験として評価されやすい
有形商材のルート営業顧客関係構築力は評価されるが、提案力の補完が必要になるケースが多い
新規開拓中心の営業(保険・不動産等)量的アクティビティ・メンタリティは評価される。一方で商談の質・深度を問われやすい
人材紹介・派遣の営業課題ヒアリング・短期クロージングの経験として評価されやすい

読み替えが有効に機能するには、単に「法人営業経験があります」と伝えるだけでは不十分だ。「何件の商談を推進し、どの段階で失注しやすく、その改善をどう行ったか」という具体的なプロセスを語れる準備が必要となる。


狙い目企業の選び方:フェーズ・組織規模・プロダクト領域

SaaS企業は一括りにできない。採用の実態は企業のフェーズと組織設計によって大きく異なる。

採用フェーズ別の受け入れ態勢

フェーズ規模感の目安ポテンシャル採用の受け入れ特徴
シード〜アーリー社員数十名以下限定的一人が担う範囲が広く、ロールの明確化が緩い
シリーズB〜C社員数十〜数百名積極的な傾向組織化が進む。セールスプロセスが整備され始める
グロース〜レイター社員数百名以上選別が厳しくなる傾向役割分担が進み、即戦力への期待が高まる
上場後・大企業数百〜数千名中途即戦力が中心評価制度・研修制度が整備されている反面、未経験枠は絞られやすい

20代のポテンシャル採用を狙うなら、シリーズBからCにかけての成長フェーズにある企業が受け入れ態勢・育成環境の両面でバランスが取れているケースが多い。この時期の企業は、組織化を急ぐ中でマネージャーや先輩社員によるOJTの仕組みが整いつつあるため、未経験者でも成長しやすい環境が確保されやすい。

プロダクト領域の選択基準

プロダクト領域の選択は、転職後の学習コストと市場での再現性に影響する。

いずれの領域も、自身の前職との接点を意識した選択が有効だ。「前職では広告営業でマーケ担当と接点があった」という背景があれば、マーケ系SaaSへの転換は説明がしやすくなる。


ケーススタディ:前職・人材紹介営業→SaaS営業への転換

以下は転職事例の典型的な型として参考にされたい。

プロフィール:25歳、人材紹介会社での法人営業(企業側の求人開拓)を2年経験。担当領域はIT・スタートアップ企業。新規開拓から受注管理まで一貫して担当。

課題認識:商品が「人」であるため、提案の再現性が低い。また、採用充足後に関係が途切れやすい構造に違和感を持っていた。SaaSの「課題解決×継続関係」という構造に関心を持ち始める。

評価されたポイント

準備したこと


転職後のキャリアパスと年収の目安

SaaS営業から展開できるキャリアは複数ある。フィールドセールスの経験を軸に、マネジメント・エンタープライズ特化・CSへの移行・PMへの転換など、選択肢は相対的に広い。

入社後3〜5年でマネージャー職に就くケースも珍しくなく、20代でのSaaS転職は中長期的な職位形成においても意味を持ちやすい。

年収の目安(あくまで一般的な相場観として)は以下のとおりだ。

キャリアフェーズ年収レンジの目安(基本給+固定インセンティブ)
入社1〜2年目(フィールドセールス)450〜600万円前後
入社3〜4年目(シニア〜スペシャリスト)600〜800万円前後
マネージャー職700〜1,000万円前後
エンタープライズ特化・大手担当800〜1,200万円前後

インセンティブの設計は企業によって大きく異なるため、固定給とインセンティブの割合は必ず事前に確認したい。特にアーリーフェーズの企業では、インセンティブ比率が高い代わりに固定給が低めに設定されているケースもある。


よくある質問

Q1. SaaS営業への転職に必要な資格・知識はありますか?

特定の資格が採用要件になることは稀だ。ただし、ITパスポートや基本情報技術者のような資格は「自発的に技術領域を学ぼうとする姿勢」の証左として機能することがある。より実践的には、転職先のプロダクトが属する業界のビジネス構造を理解していること、そしてSaaSのビジネスモデル(ARR・チャーン・NRR等の指標)に一定の理解があることが面接での印象に影響しやすい。

Q2. 営業成績のデータを出せない場合、どう伝えればいいですか?

数値が開示できない場合は、「チーム内での相対的な立ち位置」や「担当した商談数・商談フェーズの管理方法」で代替できる。「チーム10名中、新規受注件数で上位3名以内を継続していた」といった表現や、「月次で30件の商談を管理し、そのうちXXXのフェーズまで進めた割合が全社平均を上回っていた」という語り方は、数値の代替として機能しやすい。

Q3. 大手SaaS企業と中堅・スタートアップのどちらを選ぶべきですか?

一概にどちらが優れているとは言えない。大手企業は研修制度・評価制度が整備されている反面、担当領域が細分化されており、総合的なセールス経験が積みにくい場合もある。中堅・スタートアップは役割の幅が広く、プロセス設計から関われるケースもある一方、制度が未整備で属人化しやすい。20代前半で「型を学ぶ」ならメソドロジーが確立した企業を、20代後半で「自律的に動ける環境」を求めるなら成長フェーズの企業を選ぶという考え方が、一つの目安として有効だ。

Q4. SaaS営業への転職はエージェントを使うべきですか?

公開求人だけでは掴みにくいフェーズ・組織設計の情報(採用背景・評価構造・離職率の傾向など)は、エージェント経由で得られることがある。SaaS・IT領域に特化した担当者を持つエージェントを選ぶことで、求人票に記載されない定性的な情報を踏まえた意思決定がしやすくなる。


まとめ

SaaS営業の20代ポテンシャル採用は、「業界未経験」と「営業未経験」を混同せずに理解することが出発点となる。前職の法人営業経験を、SaaSの商談構造にどう読み替え

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)