フィンテックの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント

フィンテック・金融IT 志望動機の書き方 更新日 2026/8/11

フィンテックの志望動機は、書き手が思っているほど差がつきません。「金融とITの掛け算に可能性を感じた」という趣旨の文章が、応募者の多くから提出されるためです。この記事では、公開されている制度資料と各社の開示資料を材料にして、他の応募者と重ならない志望動機を組み立てる手順を整理します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

「金融×IT」が志望動機として弱くなる理由

まず、なぜこの型が弱いのかを整理します。

理由は単純で、志望先を入れ替えても文章が成立してしまうからです。金融とITの交差点に関心がある、という説明は、決済の会社にも、会計ソフトの会社にも、暗号資産の会社にも当てはまります。読み手の立場からすると、その会社である理由が読み取れません。

もうひとつの弱点は、業界の現状認識が伴っていないことです。フィンテックという言葉が使われ始めた時期と比べると、この領域はすでに制度が整備され、参入企業も定まりつつあります。「これから伸びる領域だから」という認識のまま書かれた志望動機は、業界を調べていない印象を与えます。

志望動機に具体性を持たせる材料は、公開情報の中に十分あります。以下、順に見ていきます。

志望理由を3つの層に分解する

志望動機は、3つの問いに分けて考えると組み立てやすくなります。

第一に、なぜこの課題を解きたいのか。第二に、なぜその課題は金融の仕組みの中にあるのか。第三に、なぜその会社なのか。

多くの志望動機は、第一と第三は書かれているのに、第二が抜けています。この層が抜けると、「その課題は他業界でも解けるのでは」という問いに耐えられません。

第二の層を埋めるには、金融の仕組みが持つ制約を理解する必要があります。そしてその制約は、制度の資料から具体的に確認できます。

登録制度を踏まえると志望動機の具体度が上がる

フィンテックの主要な事業は、金融庁への登録を受けて営まれています。金融庁は業種ごとに登録業者の一覧を公表しており、令和8年6月30日現在の資料では以下の規模が確認できます。

業種全業者数
資金移動業者84
電子決済等代行業者125
暗号資産交換業者26

資金移動業者の一覧には、第一種・第二種・第三種という区分が設けられています。同じ「送金ができるサービス」でも、扱える金額や求められる体制が区分によって変わる設計です。

この事実は、志望動機の第二の層を埋める材料になります。たとえば送金体験を良くしたいという課題意識があるとき、なぜそれが金融の仕組みの中にあるのかは、「送金は登録を受けた事業者しか業として行えず、区分ごとに制約が異なるため、体験の設計は制度の理解と切り離せない」という形で説明できます。ここまで書けると、他業界でも解けるのではという問いは出にくくなります。

登録一覧には登録年月日も記載されているため、志望先がいつこの領域に参入したのかも確認できます。制度の立ち上がり期から関わっている会社と、後発で参入した会社では、事業の重心が異なる場合があります。

事業構成を調べると「その会社である理由」が書ける

第三の層、なぜその会社なのかを埋める材料は、上場企業であれば有価証券報告書から取れます。セグメント別の従業員数を見ると、その会社がどこに人を割いているかが分かります。

会社対象事業年度セグメント従業員数
株式会社マネーフォワード2025年11月期Business1,754
株式会社マネーフォワード2025年11月期Home74
株式会社マネーフォワード2025年11月期X106
株式会社マネーフォワード2025年11月期Finance10
GMOペイメントゲートウェイ株式会社2025年9月期決済代行事業564
GMOペイメントゲートウェイ株式会社2025年9月期金融関連事業132
GMOペイメントゲートウェイ株式会社2025年9月期決済活性化事業56

いずれも連結会社の状況として記載されている数値で、臨時雇用者数を除いています。

この表から読めるのは、個人向けサービスの知名度が高い会社であっても、人員の重心が法人向けにある場合があるということです。マネーフォワードの場合、個人向けのHomeが74名であるのに対し、法人向けのBusinessは1,754名です。

利用者としての体験から志望動機を書き始めると、この重心を外す可能性があります。個人向けサービスへの共感を語ったのに、募集職種は法人向け事業だった、という食い違いは避けたいところです。

よくある弱い志望動機と、その直し方

実際に相談を受ける中で目にする型と、修正の方向を挙げます。

「成長市場だから」型。 市場の伸びは志望動機ではなく前提です。直すには、その成長の中で自分が担いたい工程まで下ろします。市場が伸びると何が起きるのか、そのとき人手が足りなくなるのはどこか、という順で書くと具体になります。

「利用者として好きだから」型。 出発点としては有効ですが、これだけだと事業側の視点が伴いません。直すには、利用者として気づいた不便を一つ挙げ、それが技術的な制約なのか制度的な制約なのかを考えたうえで書きます。

「社会貢献性に共感した」型。 各社のミッションに共感を示す書き方です。共感の対象を具体化しないと、どの会社にも当てはまります。たとえばfreee株式会社は「スモールビジネスから、もっと社会をおもしろくする」というミッションを掲げ、「だれもが自由に経営できる社会へ」という方向性を採用サイトで示しています。この場合、自分の経験の中で小規模事業者と接した具体的な場面まで下ろせるかが分かれ目になります。

「前職の課題から」型。 前職で感じた不便を出発点にする型で、素材としては強いものです。ただし前職批判に読めると印象が変わります。事実の記述にとどめ、その課題を解く側に回りたいという展開に接続します。

エージェントベストの見解

この業界で最も多い転職後のずれは、「新しい金融の仕組みを作る仕事」を期待して入り、実際には既存の金融機関や決済ネットワークとの調整に時間の大半を使う、というものです。規制業種である以上、外部との接続点は制度に規定されます。前掲のとおり事業の人員も法人向けに厚く配置されている会社があり、日々の相手は個人利用者ではなく企業の担当者になります。志望動機を書く前に、応募職種が誰と話す仕事なのかを確認しておくと、書く内容も入社後の納得感も変わります。ここを確認せずに書かれた志望動機は、面接で具体を問われた時点で止まります。

説得力が出る材料をどこから集めるか

志望動機の材料は、次の順で集めると効率がよくなります。

第一に、金融庁の登録業者一覧で志望先の登録業種を確認します。どの制度の下で事業を行っているかが分かります。

第二に、上場企業であれば有価証券報告書でセグメントと人員構成を確認します。事業の重心と、直近の従業員数の増減が読めます。

第三に、カジュアル面談などの機会があれば、配属予定のチームが直近1年で何に時間を使ったかを聞きます。ここで得た情報は公開情報にはないため、志望動機の具体性が一段上がります。

業界全体の構造はフィンテック業界への転職ガイド、主要プレイヤーの類型はフィンテック業界の主要企業でも整理しています。

志望動機の骨子を組み立てる

完成した例文をそのまま使うことは避けたほうが無難です。同じ文章が複数の応募者から提出される可能性があるためです。ここでは骨子だけを示します。

冒頭は、解きたい課題から入ります。前職や生活の中で観測した具体的な事実を一つ置きます。

次に、その課題が金融の仕組みのどこに由来するかを説明します。ここで登録制度や既存の商慣行に触れると、業界を調べた形跡が伝わります。

続いて、その課題に対して志望先がどの位置から取り組んでいるかを述べます。セグメント構成や登録業種など、開示資料から取れる事実を使います。

最後に、自分の経験のどの部分がその工程に接続するかを書きます。ここは職務経歴書と整合させます。

この4つの要素が揃っていれば、文章の巧拙にかかわらず、読み手には論理が伝わります。

書き上げたら、職務経歴書と並べて矛盾がないかを確認します。志望動機で法人向け事業への関心を述べているのに、職務経歴書では個人向けサービスの実績だけが並んでいる、といった食い違いは面接で指摘されます。両方の書類を通して読んだときに、同じ人物像が浮かぶかどうかが基準になります。

あわせて、面接で口頭で話す形に直しておくと安全です。書き言葉のまま暗記して話すと、追加質問で崩れやすくなります。3層のそれぞれを一文で言える状態にしておき、詳細は問われてから足す形にすると、対話として成立します。

エージェントベストの見解

この領域を検討する方は、事業会社の情報システム部門や、金融機関のデジタル部門と並行して比較しているケースが多く見られます。判断が割れるのは、意思決定までの距離です。フィンテックの事業会社では、プロダクトの仕様に関する判断が近い距離にある一方、扱える範囲は登録業種に規定されます。金融機関側は扱える範囲が広い代わりに、意思決定の階層が増えます。どちらが良いかは志向によりますが、志望動機を書く段階でこの比較軸を自分の中で言語化しておくと、なぜこちらを選ぶのかという問いに答えやすくなります。併願先を隠す必要はなく、比較したうえでの結論として語れるほうが説得力が出ます。

まとめ

フィンテックの志望動機は、課題意識、その課題が金融の仕組みに由来する理由、その会社を選ぶ理由という3層で組み立てます。抜けやすいのは2層目で、ここは金融庁が公表する登録業者一覧などの制度資料から材料が取れます。

3層目については、上場企業であれば有価証券報告書のセグメント別従業員数が有効な材料になります。個人向けサービスで知られる会社でも人員の重心が法人向けにある場合があり、応募職種と自分の関心のずれを事前に検出できます。

例文をそのまま使うのではなく、骨子に自分が観測した事実を入れる形で書くことをおすすめします。

よくある質問

Q. 金融の知識がないと志望動機は書けませんか。

前提知識がなくても書けます。金融庁が公表している登録業者一覧などの資料は誰でも閲覧でき、志望先がどの制度の下にあるかはそこから確認できます。専門知識の有無より、調べたうえで書いているかどうかが読み手に伝わります。

Q. 複数社に応募する場合、志望動機は使い回してよいですか。

課題意識の部分は共通で構いませんが、その会社を選ぶ理由の部分は個別に書く必要があります。セグメント構成や登録業種は会社ごとに異なるため、開示資料を見れば書き分ける材料は得られます。

Q. 未経験からの応募でも志望動機で挽回できますか。

志望動機だけで経験要件を埋めることは難しいのが実情です。ただし、前職の業務知識が志望先の顧客層と接続する場合、その接点を志望動機の中で示すことは有効です。募集要項の歓迎要件に自分の経験が該当しないかを確認してみてください。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)