フィンテックの転職難易度|転職で押さえるべきポイント

フィンテック・金融IT 転職難易度 更新日 2026/8/11

フィンテックへの転職は「難しい」と言われる一方で、求人自体は継続的に出ています。この矛盾は、難易度が業界単位ではなく職務単位で決まることを見落とすと解けません。この記事では、金融庁が公表する登録業者の規模と、官公庁統計が示す需給をもとに、どこが難しくどこが通りやすいのかを整理します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

難易度は業界ではなく職務で決まる

「フィンテックへの転職難易度」という問いの立て方は、実務的にはやや粗いものです。この領域には、開発、プロダクトマネジメント、営業、カスタマーサクセス、リスク管理、規制対応といった性質の異なる職務が併存しており、それぞれ求められる要件も母集団も違います。

難しさの内訳は、大きく3つに分けられます。第一に、募集ポジションの数が限られていること。第二に、要求される経験の水準が高いこと。第三に、募集のタイミングが読みにくいこと。職務によって、このどれが効いているかが変わります。

たとえば規制対応に近い職務は、そもそも母集団が小さく、経験者が市場に出る頻度も低いため、第一と第二の両方が効きます。一方で開発職は、後述するとおり求人側の需要が継続しており、第一の制約は相対的に緩くなります。

登録業者数から母集団の広さを把握する

応募先がどれだけあるかは、金融庁が公表している登録業者一覧から概算できます。令和8年6月30日現在の資料では以下の規模です。

業種全業者数備考
資金移動業者84第一種・第二種・第三種の区分あり
電子決済等代行業者125
暗号資産交換業者26
電子決済手段等取引業者1令和8年6月24日現在

数字を見ると、業種ごとの規模感がかなり異なることが分かります。暗号資産交換業者は26社、電子決済手段等取引業者に至っては1社です。この領域を志望先の中心に据えると、応募できる会社の数はかなり限られます。

一方、電子決済等代行業者は125社が登録されています。会計・家計サービスと金融機関を接続する事業がここに含まれるため、比較的裾野が広い区分です。

なお、これらの区分は重複します。ひとつの会社が複数の登録を持つ場合があるため、単純な合計が会社数になるわけではありません。それでも、志望する事業領域によって母集団の広さが大きく違うことは読み取れます。

母集団が狭い領域を狙う場合、募集が出るタイミングを待つ必要が出てきます。難易度が高いという実感の一部は、この構造から来ています。

求人側の需給を統計で確認する

職種側の需給は、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト job tag で確認できます。開発職に近い区分の数値を示します。

職種有効求人倍率求人賃金(月額)出典
システムエンジニア(Webサービス開発)2.5735.2万円令和6年度ハローワーク求人統計
プログラマー0.9432.9万円令和6年度ハローワーク求人統計

同じサイトの数値ですが、有効求人倍率に大きな開きがあります。なお両区分は、賃金構造基本統計調査にもとづく平均年収578.5万円、平均年齢37.1歳、就業者数389,760人という数値が一致しており、賃金統計上は同一区分として扱われています。求人統計の側だけが分かれている形です。

この数値から読めるのは、サービス開発を担う人材については募集側が探している状態が続いているということです。開発職に限れば、「求人がない」ことが難易度の主因にはなりにくいと言えます。

組織側の動きも開示資料から確認できます。freee株式会社の有価証券報告書には、連結の従業員数について前事業年度末に比べ179名増加した旨と、その主な理由が持続的な事業成長を見据えた採用増加である旨が記載されています。採用が継続している会社が存在することは、こうした資料からも裏づけられます。

職務ごとの入りやすさの違い

公開情報と募集要項の一般的な書かれ方から、職務ごとの傾向を整理します。以下は業界一般の傾向であり、個社の運用を断定するものではありません。

開発職は、前掲の需給から見て募集自体は動いています。ただしフィンテック特有の要件として、決済や認証まわりの信頼性設計の経験が歓迎要件に挙がることがあります。金融領域の経験がなくても、可用性や整合性を重視するシステムの開発経験があれば接続します。

プロダクトマネジメントは、求められる要件が複合的になります。プロダクトの設計に加えて、制度上の制約を理解したうえで仕様を決める必要があるためです。母集団が小さく、難易度は上がりやすい職務です。

営業・カスタマーサクセスは、顧客側の業務知識が効きます。法人向け事業を持つ会社では、対象となる顧客業種の実務を理解している人材の需要があります。異業種からの参入余地が比較的ある領域です。

リスク管理・規制対応は、金融機関での実務経験が実質的な前提になることが多い職務です。未経験からの参入は難しくなります。

コーポレート系は、上場企業であれば一般的な要件が中心になりますが、規制業種であるがゆえの管理体制への理解が求められる場面があります。

エージェントベストの見解

面接の後半で問われるのは、規制のある環境で働くことへの理解です。ここで止まる方が少なくありません。制約を負担として語ると、なぜこの業界を選ぶのかという問いに戻されます。準備としては、志望先が持つ登録業種を調べ、その登録があることで何が可能になり、何が制限されるのかを一組で言えるようにしておくことです。前掲のとおり業種ごとの登録業者数には大きな差があり、暗号資産交換業者は26社、電子決済等代行業者は125社です。この規模の違いを踏まえて話せるだけで、業界を調べた形跡が伝わります。難易度を下げる打ち手として、これは誰にでもできて効果が読みやすい部類です。

難易度を下げるための打ち手

現時点の経歴で届きにくいと感じる場合でも、打てる手はあります。

接続点を作り直す。 現職の業務のうち、金融や決済に接する部分を洗い出します。経理、請求、与信、不正検知といった業務は、フィンテックのプロダクトが扱う領域と重なります。担当していた業務の中に接点があれば、それが志望動機と職務経歴書の両方の材料になります。

職務を広く見る。 開発職だけを見て難しいと判断する前に、周辺職務の募集要項を確認します。前掲のとおり、営業やカスタマーサクセスでは業種知識が評価される場合があります。入り口を変えて中に入り、社内で異動する道もあります。

母集団の広い区分から見る。 暗号資産のように登録業者が26社の領域と、電子決済等代行業者のように125社の領域では、応募機会の数が違います。関心が特定領域に強く寄っていない場合、広い区分から検討を始めるほうが選択肢が増えます。

要件の書き分けを読む。 募集要項の必須要件と歓迎要件は、実務上の意味が異なります。歓迎要件を満たしていないことを理由に応募を見送るケースを見かけますが、そこは応募可否の判断基準ではないことが一般的です。

未経験から入る場合の現実的な順序

金融領域の実務経験がない場合、順序を設計すると通過率が変わります。

最初に、応募先の事業構成を確認します。株式会社マネーフォワードの有価証券報告書では、セグメント別の連結従業員数がBusiness 1,754名、Home 74名、X 106名、Finance 10名、全社(共通)895名と記載されています。法人向け事業に人員の重心があることが読み取れます。法人向けの職務であれば、前職で法人顧客を相手にしてきた経験が接続します。

次に、自分の経験の中から、扱った数値と判断の記述を抽出します。フィンテックの職務は、正確性と再現性が問われる場面が多い領域です。前職で品質や整合性に関わる判断をした経験があれば、それは要件と接続します。

そのうえで、書類の段階で接続点を明示します。読み手に推測させると通過率が下がります。

業界の全体像はフィンテック業界への転職ガイド、選考の流れはフィンテック業界の主要企業とあわせて確認すると、応募先の絞り込みがしやすくなります。

エージェントベストの見解

この領域で目立つのは、難易度を高く見積もりすぎて応募自体を見送るパターンです。歓迎要件に金融実務が並んでいるのを見て、必須要件を満たしているのに出さないという判断をされる方がいます。実際には、開発職の需給は前掲のとおり緩んでおらず、募集側は要件を全て満たす人を待てない状況にあります。もうひとつ多いのが、志望領域を暗号資産のような狭い区分に固定したまま長期化するケースです。登録業者数で見れば26社と125社の差があり、機会の数が違います。関心の中心が「金融の仕組みを作ること」にあるなら、区分を広げるだけで選択肢は増えます。

まとめ

フィンテックの転職難易度は、業界全体でひとつに定まるものではありません。金融庁の登録業者一覧を見ると、資金移動業者84、電子決済等代行業者125、暗号資産交換業者26と、業種ごとに母集団の規模が大きく異なります。志望領域の選び方によって、応募機会の数が変わります。

職種側では、システムエンジニア(Webサービス開発)の有効求人倍率が2.57と、募集側が人材を探している状態が示されています。開発職に限れば、求人の少なさが難易度の主因になりにくい状況です。

難しさが集中するのは、規制対応やプロダクトマネジメントのように要件が複合的な職務です。入り口を広く取り、現職の業務との接続点を明示することが、現実的な打ち手になります。

よくある質問

Q. 金融業界の経験がないと厳しいですか。

職務によります。リスク管理や規制対応に近い職務では実務経験が前提になることが多い一方、開発職や法人向けの営業職では、金融実務が歓迎要件として記載される例が見られます。必須要件と歓迎要件の書き分けを確認してください。

Q. 求人はどのくらい出ていますか。

業界単位の求人数を示す公的統計はありません。職種側の指標としては、職業情報提供サイト job tag の「システムエンジニア(Webサービス開発)」の有効求人倍率が2.57(令和6年度ハローワーク求人統計)と示されています。個別企業の採用状況は、有価証券報告書の従業員数の増減からも一定程度読み取れます。

Q. どの業種区分から検討を始めるべきですか。

関心が特定領域に強く寄っていない場合は、登録業者数の多い区分から見ると選択肢が増えます。令和8年6月30日現在で電子決済等代行業者は125社、資金移動業者は84社が登録されています。関心が明確な場合は、その領域の母集団の狭さを前提に、募集が出る時期を待つ前提で計画を立てることをおすすめします。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)