金融ITの年収相場|転職で押さえるべきポイント

フィンテック・金融IT 年収相場 更新日 2026/8/11

入口の水準が、17万円違う

金融ITの年収を考えるとき、金融側とIT側の水準を並べる必要があります。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の数値です。

区分平均年収求人賃金(月額)平均年齢労働時間時間当たり賃金有効求人倍率
銀行等窓口事務512.2万円18.4万円44歳月159時間2,556円3.76
ITコンサルタント889万円35.4万円38.3歳月173時間4,026円0.89
プログラマー578.5万円32.9万円37.1歳月159時間2,819円0.94

求人賃金の差が大きい

18.4万円と35.4万円。入口の水準で17万円の開きがあります。この差は、他の業界の比較ではあまり見られない大きさです。

平均年収では376.8万円

512.2万円と889万円。ただし、平均年齢は44歳と38.3歳で、金融側のほうが5.7歳高くなっています。年齢の差を考えると、実質の開きはさらに大きくなります。

時給では1,470円

2,556円と4,026円。労働時間は159時間と173時間で、金融側のほうが14時間短くなっています。

プログラマーとの比較

銀行等窓口事務の512.2万円は、プログラマーの578.5万円を下回ります。時給でも263円低くなっています。

この記事では、この構造のなかで自分の年収がどう決まるのかを分解します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

金融機関の給与テーブルに乗る、という前提

金融ITの多くは、金融機関の社内組織や、そのシステム子会社で行われます。

全社共通のテーブル

IT部門だけ別の給与体系ということは、通常ありません。営業や事務と同じテーブルに乗ります。

この構造の利点

大手金融機関であれば、水準は安定します。福利厚生も整い、雇用も安定しやすくなります。

この構造の制約

IT業界の相場が上がっても、追随しにくくなります。外部の市場水準と乖離することがあります。

システム子会社の場合

親会社より水準が抑えられることがあります。同じグループでも、法人が違えばテーブルも別です。

確認すべき点

1つ目が最も重要です。求人票では判別しにくいことがあります。

会社の型で、乗る水準が変わる

会社の型水準の傾向補足
銀行・証券・保険の本体IT部門中〜高全社の給与テーブルに乗ります
金融機関のシステム子会社中程度親会社より抑えられることがあります
決済事業者・資金移動業者幅が大きい事業の規模に左右されます
フィンテックのスタートアップ幅が大きい株式報酬を含む提示になることがあります
金融機関向けベンダー・SIer中程度IT業界の水準です
外資系の金融機関・金融IT高め外資の水準です

2つ目の注意点

システム子会社は、親会社の水準とは別です。同じグループの看板でも、テーブルが違います。

4つ目の注意点

フィンテックのスタートアップでは、現金部分が抑えられ、株式報酬が組み込まれることがあります。詳しくはSaaSスタートアップの年収相場で、株式報酬の見積もり方を整理しています。

事業の類型が、会社の体力を規定する

決済事業者やフィンテックを検討する場合、事業の類型が水準に影響します。

類型の区分

資金決済に関する法律第36条の2は、資金移動業を次のように区分しています。

同法施行令第12条の2により、第二種は 100万円に相当する額、第三種は 5万円に相当する額 が上限です。

報酬への含意

第三種の枠組みで事業を行う会社は、1回あたりの取扱額が5万円までに制限されます。手数料収入の規模も、この枠に規定されます。

一方、第一種や、銀行としての免許を前提とした事業では、扱える金額が変わります。

確認のしかた

事業者の登録の状況は、監督官庁が公表しています。応募先がどの類型で事業を行っているかは、事前に調べられます。

判断のしかた — 類型が上位であるほど体力があるとは限りませんが、扱える事業の幅は変わります。 数年後の成長余地を見るうえで、確認する価値があります。

水準を上げる3つの経路

512.2万円という数字は、152万人の平均です。この平均から離れる方法を整理します。

経路1:制度と技術の両方を持つ

この領域で代替が効かないのは、制度を理解し、技術も分かる人です。片方だけなら、他業界の候補者と競合します。

経路2:ベンダー側に回る

金融機関向けのベンダーやSIerでは、IT業界の水準が適用されます。ただし、案件を取る力が求められます。

経路3:企画・当局対応に移る

サービスの類型を選び、登録や届出を扱う役割。人数が少なく、社内での登用が中心です。

現実的な順序 — 1つ目を満たしたうえで、2つ目か3つ目を選びます。

エージェントベストの見解

金融ITのオファーを検討される方に、雇用契約の相手方を確認することをお勧めしています。この領域では、本体、システム子会社、業務委託先という3つの層が同じ現場に混在することがあります。同じ執務室で同じシステムを扱っていても、所属によって給与テーブルも評価制度も別です。求人票では「大手金融機関のシステム部門」と書かれていても、実際の雇用主がシステム子会社であることがあります。確認のしかたは単純で、「雇用契約を結ぶ法人名を教えてください」と聞くだけです。システム子会社であること自体は問題ではありません。大規模な基幹システムに関われる環境は限られており、そこでの経験は他では得にくいものです。問題は、本体の水準を想定したまま子会社に入ることです。job tagの銀行等窓口事務の区分が平均512.2万円であることを踏まえ、提示額が妥当かを判断してください。

夜間・休日の対応が、実質の時給を変える

金融のシステムは営業時間中に止められません。この制約が、働き方と実質の報酬に影響します。

なぜ夜間になるか

日中に止めれば、顧客が資金を動かせなくなります。リリース、システムの更改、データの移行。影響を最小化するための時間帯として、夜間や休日が選ばれます。

障害時の対応

計画的な作業だけではありません。障害が起きれば、時間を問わず対応が求められます。当番制の会社もあれば、担当者が呼ばれる会社もあります。

手当の扱い

深夜・休日の割増、代休、待機手当。会社によって設計が違います。提示年収に含まれているのか、別に支給されるのかを確認する必要があります。

時給への影響

job tagの「銀行等窓口事務」の区分では労働時間が月159時間とされていますが、これは事務職の数字です。IT側でリリースや障害対応が重なる時期は、これを大きく上回ることがあります。

確認すべき点

判断のしかた — 提示額が同じ2社なら、夜間作業の頻度が低いほうが実質は高くなります。オファーの段階で、直近1年の実績を聞いてみる価値があります。

オファーで確認すること

3つ目が、IT業界から移る方にとって重要です。金融機関では新卒からの年次を基準にした等級運用が残っていることがあります。

6つ目も確認する価値があります。金融のシステムは止められないため、リリースや障害対応が夜間や休日に行われることがあります。

近い領域の水準はITコンサルティングファームの年収相場もあわせてご覧ください。

エージェントベストの見解

求人賃金18.4万円という数字を見て、この領域は低いと判断される方がいます。しかし、この数字の読み方には注意が要ります。銀行等窓口事務の区分は就業者数152万人、平均年齢44歳、平均年収512.2万円。入口が18.4万円で平均が512.2万円ということは、年次を重ねることで上がる設計が残っていることを示します。入職後訓練が2〜3年以下で最多という数字も、長く勤めることを前提とした構造を示唆します。IT業界の「入口が高く、その後は個人の力量次第」という構造とは逆です。したがって、短期で転職を繰り返す前提なら不利、10年単位で腰を据える前提なら有利になります。どちらの働き方を選ぶかで、この数字の意味が変わります。

まとめ

金融ITの年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 求人賃金18.4万円は、実際の提示額ですか。

A. 銀行等窓口事務の区分の数字であり、IT側の役割とは別です。ただし、金融機関の社内組織では全社共通のテーブルに乗るため、IT業界の相場より抑えられることがあります。

Q. システム子会社は、本体より低いですか。

A. 抑えられることがあります。同じグループでも法人が違えばテーブルも別です。ただし、大規模な基幹システムに関われる環境は限られており、そこでの経験は他では得にくいものです。

Q. IT業界から移ると、年収は下がりますか。

A. 下がる場合があります。金融機関の給与テーブルに乗るため、IT業界の相場に追随しにくくなります。一方、労働時間は月159時間と短く、時給で見ると差が縮まります。

Q. フィンテックのスタートアップは、年収が高いですか。

A. 幅が大きくなります。現金部分が抑えられ、株式報酬が組み込まれることがあります。あわせて、事業の類型(第二種か第三種か)によって扱える金額が変わり、事業の規模も規定されます。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)