PEファンドの年収相場|転職で押さえるべきポイント
平均と入口の差が、795万円ある
PEファンドの年収を調べると、公的統計の平均額に行き当たります。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「ファンドマネージャー」の区分では、次の数値が示されています。
- 平均年収 1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査)
- 平均年齢 39.4歳
- 労働時間 月 162時間
- 時間当たり賃金 5,497円
- 有効求人倍率 0.57(令和6年度)
- 求人賃金 月額 28.3万円(令和6年度)
- 就業者数 82,920人(令和2年国勢調査)
求人賃金の月額28.3万円を年換算すると約340万円。平均年収との差は795万円になります。当メディアで扱ってきた職業区分のなかでも、大きい部類の開きです。
同じサイトの「M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント/M&Aアドバイザー」の区分と、これらの数値は完全に一致します。投資・M&A系の職種が、賃金統計の上でひとつの区分として扱われているためです。この1,134.6万円はPEだけの数字ではありません。
この記事では、実際に参照できる数値を積み上げていきます。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。
差が開く理由は、報酬の3層構造にある
PEファンドの報酬は、性格の違う3つの層で構成されています。
1. 基本給 月額で固定される部分です。求人票に記載されるのは、主にここになります。
2. 賞与 ファンドの運営状況と個人の評価で決まります。年1回の支給が一般的とされています。
3. 成功報酬(キャリードインタレスト) ファンドが成果を上げた場合に、運用側に配分される部分です。支払われるのはファンドの清算や売却が実現した後であり、数年単位の時間差が生じます。役職によっては配分の対象外となる場合もあります。
求人賃金は1の水準に近く、平均年収は3を受け取った層を含む数字です。 795万円の差は、この構造の差だと読めます。
原資がどこから来るかを知っておく
報酬の原資は、大きく2つに分かれます。
管理報酬 預かっている資金の額に対して、一定の割合で毎年受け取る部分です。ファンドの規模が、そのまま人件費の上限を規定します。 小さいファンドで大人数を抱えられないのは、この構造によります。
成功報酬 投資先を売却して得た利益の一部です。実現するまで受け取れません。
つまり、入社時点で確定しているのは管理報酬から支払われる部分です。面接で「成功報酬を含めると数千万円」という説明を受けた場合、それがいつ、どの条件で実現するのかを確認してください。
市場の規模を、制度から見ておく
金融庁が公表している「適格機関投資家等特例業者等」の届出者一覧(令和8年5月31日現在)では、届出者の合計は4,516者とされています。一方、投資運用業の登録を受けているのは463社(令和8年6月30日現在)です。
母数は多いが、規模の大きいファンドは限られます。 管理報酬の構造を踏まえると、預かり資産の大きさが報酬水準に直結します。応募先のファンドの規模は、報酬を判断するうえで無視できない要素です。
エージェントベストの見解
公開されている平均年収1,134.6万円は、投資・M&A系の職種を広く束ねた区分の平均です。転職の目安には使えません。参照すべきは3つあります。ひとつ目は求人賃金の月額28.3万円。入口に近い水準です。ふたつ目は、応募先が提示する基本給と賞与の内訳。3つ目は、成功報酬の配分対象になるかどうかと、その実現時期です。3つ目を確認せずに入社し、数年後に「対象外だった」と分かる例があります。オファーの段階で聞きにくい項目ではありますが、書面でどう定められているかまで確認しておくべきです。ここを曖昧にしたまま進めると、後から交渉する余地がなくなります。
役割別に、報酬の作られ方が違う
同じファンドのなかでも、役割によって報酬の構成が変わります。ここを理解しておくと、提示された条件の意味が読めます。
アソシエイト 基本給と賞与が中心です。成功報酬の配分対象に含まれない場合があります。確定している部分の割合が大きいため、生活設計は立てやすい立場です。
シニアアソシエイト〜ヴァイスプレジデント 案件を主担当として回すようになり、賞与の比重が上がります。この段階から成功報酬の配分に加わる設計が多いとされていますが、条件は会社ごとに異なります。
ディレクター・プリンシパル 投資判断に責任を持つ立場です。成功報酬の比重が高まり、確定部分と変動部分の比率が逆転していきます。
パートナー ファンドの組成と運営に責任を持ちます。報酬の中心は成功報酬になり、受け取るのは数年先という構造です。
上に行くほど、報酬の実現が先送りになります。逆に言えば、下位の役割では確定部分が生活を支えます。転職の面談では、自分が入る役割で成功報酬の対象になるのかを、書面の定めまで含めて確認してください。 口頭の説明だけで判断すると、後から確認する手段がなくなります。
年収が上がるのは、どの局面か
- 案件を1件、最初から最後まで担当したとき — 評価の土台ができます
- 投資先の価値向上に、具体的な実績を残したとき — 成功報酬の配分に影響します
- ファンドの組成に関わったとき — 出資者との関係は、上位の役割の条件です
- ファンドの規模が大きくなったとき — 管理報酬が増え、人件費の原資が増えます
逆に、検討ばかりで実行に至らない期間が続くと、評価の材料が積み上がりません。 PEは投資できる件数が限られるため、担当した案件が成立するかどうかに運の要素もあります。この点は、面接で評価の考え方を確認しておくと安心です。
労働時間の数字を、そのまま読まない
job tagの区分では、月の労働時間は162時間と示されています。ただしこれは区分全体の平均です。
実際の負荷は、局面によって振れます。入札の直前、デューデリジェンスの期間、投資先で問題が起きたとき。特に投資先の業績が計画から外れた局面では、時間の使い方が読めなくなります。 平均値だけで働き方を判断せず、直近の投資先の状況を面接で確認するほうが実態に近づきます。
投資先に入る場合、報酬はどう変わるか
PEファンドでは、担当者が投資先に常勤で入る場面があります。このとき、報酬の出どころが変わることがあります。
投資先からの支給に切り替わる場合 役員報酬として、投資先の水準で支払われます。ファンド側の水準より下がる例もあれば、上がる例もあります。 事業の規模と役職によって決まります。
ファンド側の在籍を維持する場合 出向という形で、報酬はファンド側から支払われます。成功報酬の配分も、在籍者としての扱いが続きます。
どちらになるかは、事前の取り決め次第です。投資先での成果が、成功報酬の配分にどう反映されるかもあわせて確認しておくべき項目です。
投資先に入る経験は、キャリアの面では価値があります。事業を動かした実績は、ファンド側でも事業会社側でも評価されるためです。ただし、報酬の面では一時的に条件が変わる可能性があります。 打診を受けたときに慌てないよう、入社の段階で仕組みを聞いておくと判断しやすくなります。
会社ごとの水準を調べるときの順序
PEファンドの多くは非上場であり、有価証券報告書による平均年間給与の確認ができません。公開情報が限られる領域です。企業別の記事もあわせてご覧ください。
上場している運用会社の場合は、有価証券報告書の平均年間給与が手がかりになります。ただし全社員の平均であり、投資担当の水準とは離れます。面接で役割別のレンジを確認するのが現実的です。
エージェントベストの見解
年収の相談で最も多いのが、IBDから移るときに一時的に下がるケースです。基本給の水準がIBDより抑えられるファンドは珍しくありません。そのぶん成功報酬に期待する設計になっていますが、実現までに数年かかります。この谷を許容できるかどうかは、家族の状況と生活設計によります。判断の材料として、確定している部分だけで生活が回るかを先に計算してください。回らない場合、成功報酬の実現時期まで持ちこたえられません。逆に、確定部分で足りるのであれば、時間差のある報酬は資産形成の面で有利に働きます。
まとめ
- job tagの平均年収1,134.6万円は、投資・M&A系を束ねた区分の平均
- 求人賃金は月額28.3万円で、平均との差は795万円
- 報酬は基本給・賞与・成功報酬の3層。確定しているのは1層目
- 原資は管理報酬と成功報酬。ファンドの規模が人件費の上限を規定する
- 成功報酬の配分対象になるかと、実現時期は入社前に確認する
よくある質問
Q. 未経験で入る場合、初年度の年収はどのくらいですか。 A. 公開されている求人賃金は月額28.3万円(令和6年度)です。実際の提示額は前職の水準と役割で決まります。IBDや戦略コンサルティングから移る場合、一時的に下がる例があります。
Q. 成功報酬はいつ受け取れますか。 A. ファンドの投資先を売却し、出資者への分配が済んだ後になります。ファンドの期間は10年前後で設計されることが多く、入社から数年で受け取れるとは限りません。配分の条件は書面で確認してください。
Q. 成功報酬の条件は、どこまで確認できますか。 A. 配分の対象となる役職、配分の割合、在籍要件、退職した場合の扱いの4点は、確認しておきたい項目です。書面で定められているかどうかを聞くこと自体は、失礼にあたりません。答えが曖昧な場合、確定している部分だけで判断するほうが安全です。
Q. 投資先に常勤で入った場合、報酬はどうなりますか。 A. 投資先からの報酬に切り替わる場合と、ファンド側の在籍を維持したまま出向する場合があります。前者では、投資先の水準に近づくことがあります。事前に取り決めがあるかどうかを確認してください。
Q. ファンドの規模と年収は関係しますか。 A. 管理報酬が預かり資産に連動するため、規模は人件費の原資に影響します。ただし、少人数で運営するファンドでは1人あたりの配分が大きくなる場合もあります。規模だけで判断せず、体制の人数とあわせて見てください。
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/ファンドマネージャー
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント/M&Aアドバイザー
- 金融庁 適格機関投資家等特例業者等(届出者一覧・令和8年5月31日現在)
- 金融庁 金融商品取引業者登録一覧(令和8年6月30日現在)
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。