M&Aアドバイザーの選考フロー・面接対策|転職で押さえるべきポイント

M&Aアドバイザー・仲介営業 選考フロー・面接対策 更新日 2026/8/11

選考の中心は、手を動かせるかどうか

M&Aアドバイザー(FA)の選考は、経歴の確認だけでは終わりません。実際に手を動かす工程が入るのが特徴です。

財務モデルの作成課題、企業価値算定の演習、その場での質疑。形式はファームによって変わりますが、技術を直接確かめる工程が組み込まれていることが少なくありません。

理由は、この職種の業務が具体的だからです。数字を組み、条件を設計し、相手方と詰める。できるかどうかは、話を聞くより見たほうが早く分かります。

もう一つの特徴は、制度の前提を押さえているかが問われることです。2026年5月1日に公開買付制度の改正が施行され、実務の前提が変わりました。詳細を暗記している必要はありませんが、変わったこと自体を把握しているかは見られます。

この記事では、選考がどう進み、何が確かめられているのかを整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。選考の内容は会社と時期によって変わりますので、最新の情報は各社公式サイトをご確認ください。

段階ごとに、何が確かめられるか

段階会う相手主な確認内容
書類選考採用担当モデルを組んだか、片側か、完了まで見たか
一次面接現場のメンバー案件での役割、工程ごとの関与
技術面接中堅・シニア企業価値評価、前提の置き方、論点の立て方
モデル課題財務モデルの作成、または算定資料の提出
二次面接部門の責任者交渉の経験、依頼者への説明のしかた
最終面接役員クラス長期の適性、価値観の合致
条件面談採用担当職位、固定部分と変動部分、入社時期

4段階目が、この職種を象徴する工程です。持ち帰りで数日、または面接内で数十分という形式があります。

課題が出ない場合もある — 会計士や既にFA経験がある方の選考では、技術面接の質疑に置き換えられることがあります。

モデル課題で見られていること

前提を置けるか

情報が不足している状態で、仮定を明示して先に進めるか。この職種では、完全な情報が揃うことはありません。前提を置き、その根拠を示せるかが最初に見られます。

根拠の出どころ

成長率をどこから取ったか。業界統計か、過去の実績の延長か、経営計画か。数字そのものより、なぜその数字を選んだかが問われます。

感応度の設計

前提が変わったときに結論がどう動くかを示せるか。1本のモデルで結論を出す人と、幅で示せる人では、実務での使われ方が違います。

桁と整合

概算の規模感が合っているか。計算の途中で整合が崩れていないか。細かい精度より、大枠を外さないことが見られます。

説明の順序

作った資料を口頭で説明する場面が続くことがあります。結論から述べ、前提と根拠を続けられるか。job tagの区分では必要スキルとして交渉力4.7が高く示されており、説明の構成力はその土台になります。

面接で繰り返し戻ってくる論点

「その案件で、あなたは何をしましたか」

工程ごとに分解して答えます。「支援した」では材料になりません。

「モデルは自分で組みましたか」

この職種で最初に確かめられます。既存のものを更新した場合は、どこを自分で判断したかを話します。

「相手方と直接やりとりしましたか」

片側支援での実務経験があるかの確認です。相手方FAや弁護士との具体的な場面を用意しておきます。

「成立しなかった案件について教えてください」

止まった原因と、その局面での判断が問われます。ここで答えが薄い方は多くいます。

「依頼者の取締役会に、どう説明しましたか」

FAの相手は経営者だけではありません。稟議に耐える説明を組んだ経験が見られます。

「相手方の提案の、どこを問題だと考えましたか」

条件を読む力の確認です。数字で示せると強くなります。

「なぜ仲介ではなくFAですか」

立ち位置の違いを理解しているかが問われます。

制度について問われること

近年、この領域の質問が増えています。2026年に施行された改正が背景にあります。

改正の経緯

「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」が2024年5月22日に公布されました。関係政府令等の改正が2025年7月4日に公布・公表され、本改正は 2026年5月1日に施行 されています。

変わった点

改正前は、市場外取引または市場内取引(立会外)による買付け等の後の株券等所有割合が3分の1超となる場合に、公開買付けによることが義務付けられていました。本改正では、閾値が30%に引き下げられ、市場内取引(立会内)も適用対象 となりました。

金融庁の担当者解説によれば、30%という水準は、外国の公開買付制度において閾値を30%としている例が多いことや、30%の議決権があれば多くの上場会社において株主総会の特別決議を阻止でき、普通決議にも重大な影響を及ぼし得ることを踏まえたものとされています。

あわせて変わった点

いわゆる「急速な買付け等」の規制(改正前の法27条の2第1項4号)は削除されました。市場内取引(立会内)が30%ルールの対象となることで、この規制が主眼としていた脱法的な態様の取引が30%ルールの適用を受けることになるためです。

また、既に30%超を保有する者が行う僅少な買付け等には適用除外が設けられています。買付け等により増加する株券等所有割合が 0.5%未満 であることを含む複数の要件をすべて満たす場合に限られます。

面接での答え方

条文を挙げる必要はありません。閾値が30%に下がり市場内取引も対象になったこと、それによって取得の順序と時間軸の設計が変わることを述べられれば足ります。個別の判断は弁護士等に確認するという姿勢もあわせて示します。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

見送りになる典型

5つ目は、この職種で最も重く扱われます。選考の場で案件の当事者が推測できる話をする人は、入社後も同様だと判断されます。業種と規模の帯までに留めます。

ファームの型で、選考の重心が変わる

外資系投資銀行 — 技術面接の比重が高くなります。英語での面接が入ることもあります。モデル課題の難度も上がります。

国内証券会社 — 組織としての選考手続が整っています。長く働けるかという観点も見られます。適性検査が入ることがあります。

独立系ブティック — 面接の回数は少なく、代表やパートナーとの相性が結果を左右します。全工程を見た経験が効きます。

FAS(会計系) — 会計の専門性が問われます。資格保有者は技術面接が軽くなる場合があります。

中小企業向けのFA — 経営者との対話力も見られます。M&A仲介営業の選考フロー・面接対策M&Aアドバイザーの面接対策FASアナリストの選考フロー・面接対策もあわせてご覧ください。

エージェントベストの見解

モデル課題で差がつくのは、精度ではなく前提の示し方です。多くの方は、計算の正確さに時間を使います。しかし評価する側が見ているのは、どの前提を置き、なぜそれを選んだかという部分です。準備としてお勧めしたいのは、提出物に前提の一覧を1枚つけることです。成長率、割引率、期間、除外した項目。それぞれについて、根拠を一行ずつ添えます。この1枚があるだけで、議論の土台ができます。逆に、数字だけが並んだ資料は、質疑が「これはどこから来た数字ですか」から始まり、本題に入る前に時間が終わります。実務でも同じです。前提を明示する習慣は、相手方との交渉でそのまま武器になります。

選考中に確認しておきたいこと

面接は評価される場であると同時に、確認する場でもあります。

  1. 入社時の職位と、次の職位までの目安年数
  2. 1人あたりの同時担当案件数
  3. 直近1年で成立に至った案件の割合
  4. 上場会社が絡む案件の比率
  5. 固定部分と変動部分の内訳、変動の算定根拠
  6. 繁忙期の稼働の実態

1つ目が最も重要です。この職種は職位が報酬水準の大部分を決めるため、入口の一段が数年分の差になります。詳しくはM&Aアドバイザーの年収相場で構造を整理しています。

4つ目は、積める経験を左右します。上場案件が中心のファームでは、公開買付けや適時開示の実務に触れる機会が増えます。非上場中心のファームでは、事業承継やオーナーとの折衝が中心になります。どちらを積みたいかで選ぶと、入社後のずれが小さくなります。

エージェントベストの見解

技術面接で答えに詰まったときの振る舞いが、評価を分けます。この職種の面接では、答えられない論点が出てくることがあります。制度の細部、扱ったことのない業界の慣行、特殊なスキーム。多くの方は、そこで推測をつなごうとします。しかしFAの実務で最も避けたいのは、確信のないまま数字や条件を出すことです。依頼者はその情報をもとに判断します。評価する側は、知識の量より、知らないことを知らないと言えるかを見ています。答え方の型を決めておくと安定します。「その論点は経験がありません。ただ、近い場面では◯◯という考え方で整理しました。実務では弁護士に確認する前提で進めます」と続けられれば、対応力として評価されます。すべてに答えようとする人ほど、危うく見えます。

まとめ

M&Aアドバイザーの選考について、押さえるべき点を整理します。

選考の進み方や評価の観点は会社と時期によって変わります。詳細は各社公式サイトでご確認ください。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. モデル課題は、どのくらいの分量ですか。

A. ファームによって幅があります。持ち帰りで数日かける形式と、面接内で数十分という形式があります。共通しているのは、完成度より前提の示し方が見られる点です。提出物に前提の一覧を添えることをお勧めします。

Q. 会計士の資格があれば、技術面接は免除されますか。

A. 軽くなる場合はありますが、免除されるとは限りません。資格が示すのは会計の知識であり、企業価値評価や条件設計の経験とは別だからです。数字を使って何を判断したかは、あらためて問われます。

Q. 制度改正について、どこまで説明できれば足りますか。

A. 閾値が3分の1超から30%超に下がったこと、市場内取引(立会内)も対象になったこと。この2点を述べ、取得の順序と時間軸の設計に影響すると付け加えられれば十分です。細部は弁護士に確認する前提で構いません。

Q. 成立しなかった案件の話は、不利になりませんか。

A. 不利にはなりません。この職種では成立しない案件のほうが多く、採用側もそれを知っています。原因と、その局面での判断を語れるほうが、実務の解像度が高いと評価されます。成立案件だけを並べると、かえって浅く見えることがあります。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)