サステナビリティコンサルタントの年収相場|転職で押さえるべきポイント
1,134.6万円は、コンサル区分全体の数字
サステナビリティコンサルタントの年収を調べると、コンサルティング職の平均額に行き当たります。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「経営コンサルタント」の区分では、平均年収は 1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査)です。
ここで押さえておきたいのが、この数字はサステナビリティ領域の数字ではないということです。同じ1,134.6万円は「人事コンサルタント」の区分でも示されており、就業者数も同じ82,920人です。コンサルティング職が統計上ひとつの区分として扱われているため、領域ごとの差は見えません。
つまり、この平均額を自分の転職の目安に使うことはできません。参照すべきは、応募先が提示する等級とレンジです。
同じ区分の他の数値も置いておきます。平均年齢 39.4歳、労働時間は月 162時間、有効求人倍率 0.57(令和6年度)、求人賃金は月額 28.3万円(令和6年度)、時間当たり賃金 5,497円。
この記事では、統計に表れない部分をどう見積もるかを整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の条件は各社公式サイトをご確認ください。
報酬を決めているのは、3つの要素
| 要素 | 内容 | 効き方 |
|---|---|---|
| ファームの等級 | ファーム共通の等級体系のどこに入るか | 水準の大部分を決める |
| 案件の型 | 開示支援か、削減施策か、戦略か | 稼働単価と評価のされ方が変わる |
| 領域の希少性 | Scope3、シナリオ分析、保証対応など | 等級の枠内で加算されることがある |
1つ目が土台です。多くのファームでは、サステナビリティ部門だけ別の給与体系ということはありません。同じ等級のコンサルタントと同じ水準から始まります。
3つ目は、思ったほど効かないことが多い部分です。「サステナビリティに詳しい」ことで加算されるのは、等級の枠内での調整に留まります。等級そのものが上がるわけではありません。
確認しておくこと — 入社時の等級、その等級のレンジ、次の等級までの目安年数。この3つで数年後の見通しが立ちます。
「サステナ枠」で入ると、何が起きるか
この領域には、専門枠として採用されるケースがあります。等級の判断が難しくなる場面です。
低めの等級を提示されやすい状況
前職がコンサルティングではない場合、コンサルタントとしての経験年数がゼロと見なされることがあります。事業会社で10年サステナビリティを担当していても、入社時の等級は若手相当になることがあります。
それでも受ける価値がある場合
等級が上がる速度が速い設計であれば、数年で追いつきます。確認すべきは、入口の金額ではなく上がるまでの年数です。
交渉の材料になるもの
- 開示文書の作成を主導した経験(有価証券報告書、統合報告書)
- 保証や第三者検証への対応経験
- Scope3の算定を組み立てた経験
- 複数拠点・複数社からのデータ収集を設計した経験
2つ目と3つ目が、いま最も評価されやすい領域です。経験者が少ないためです。
開示支援と戦略支援で、評価のされ方が違う
同じサステナビリティ領域でも、案件の型によって報酬への効き方が変わります。
開示支援の案件
基準への対応、算定、開示文書の作成。期日が決まっており、工数が読めます。ファームにとっては安定した収益源ですが、単価は工数に紐づきます。
担当者としては、稼働が評価に直結します。多くの案件を回せる人が評価される構造です。
削減施策・移行計画の案件
排出量を減らす具体的な打ち手を設計します。設備投資、調達の見直し、製品設計の変更。事業に踏み込むため、工数以上の価値が認められやすくなります。
戦略・ポートフォリオの案件
事業の組み替えや投資判断に関わります。単価は最も高くなりますが、案件数は限られます。
報酬への含意 — 開示支援だけを続けると、稼働の上限が収入の上限になります。等級を上げるには、上の2つに関わる機会を取りにいく必要があります。入社時に「どの型の案件に入れるか」を確認する意味は、ここにあります。
保証の義務化が、人材の需要を動かす
年収の見通しを考えるうえで、制度のロードマップを押さえておく価値があります。
金融審議会のワーキング・グループが示したロードマップでは、開示基準の適用開始時期の翌年から保証を義務付ける とされています。保証水準は 限定的保証(合理的保証への移行の検討は行わない)、保証範囲は 当初2年間はScope1・2、ガバナンス及びリスク管理(3年目以降は国際動向等を踏まえ今後検討)とされています。
人材需要への影響
保証が入ると、企業側は証跡の整備を求められます。算定の前提、データの出どころ、集計の過程。これらを第三者に説明できる形で残す作業が必要になります。
この作業は、算定そのものより工数がかかります。監査対応の経験がある人材への需要が、この局面で高まる構造です。
適用のスケジュール
SSBJ基準の適用は、時価総額3兆円以上の企業が2027年3月期、3兆円未満1兆円以上が2028年3月期 からの開始が基本とされています。1兆円未満5,000億円以上については2029年3月期からを基本とし、国内外の動向等を注視しつつ引き続き検討するとされています。
対象社数は 3兆円以上が68社(54.1%)、1兆円以上が171社(72.5%)、5,000億円以上が284社(80.8%)(2025年3月末時点の情報から作成)。
報酬への含意 — 案件が増える局面では、経験者の採用競争が起きます。転職の条件が良くなるタイミングは、対象範囲が広がる直前です。ただし、5,000億円以上への適用は確定していません。
事業会社に移ったときの水準
この職種のキャリアでは、事業会社のサステナビリティ部門への移動が主要な選択肢のひとつです。年収の見え方が変わります。
下がることが多い
コンサルティングファームの等級に紐づく水準と、事業会社の給与テーブルでは、後者のほうが抑えられることが一般的です。
下がらない場合もある
開示の責任者として採用される場合、管理職相当の処遇になることがあります。有価証券報告書に記載される情報の担当者は、責任の範囲が明確です。
労働時間との関係
job tagの区分では労働時間が月162時間とされていますが、これは区分全体の数字です。コンサルティングの実務では、開示の期日前に稼働が集中します。事業会社側は年間を通じて平準化されやすくなります。時間あたりで換算すると、印象が変わることがあります。
近い職種の水準は事業再生コンサルタントの年収相場、経営企画の年収相場、DX推進担当の年収相場もあわせてご覧ください。
エージェントベストの見解
この領域の求人で気をつけていただきたいのが、「成長領域につき高待遇」という表現です。実際に確認すると、ファーム共通の等級体系に沿った提示であることがほとんどです。領域が伸びていることと、その領域の担当者の報酬が高いことは別の話です。むしろ、新しい領域では等級の判断基準が定まっておらず、低めに置かれることがあります。確認していただきたいのは、同じ等級で他領域のコンサルタントと差があるかどうかです。差がないのが通常で、それは悪いことではありません。差がある場合は、その理由を聞いてください。加算がある場合は継続の条件を、減算がある場合は等級が上がる基準を確認します。この質問は、部門の位置づけを知る手がかりにもなります。
オファーで確認すること
- 入社時の等級と、その等級のレンジ
- 次の等級までの目安年数と、上がる条件
- 他領域のコンサルタントと等級体系が同じか
- 直近1年の案件構成(開示支援と削減施策・戦略の比率)
- 1人あたりの担当クライアント数
- みなし残業代の有無と時間数
- 繁忙期の稼働の実態(開示の期日前)
4つ目が、数年後の等級を左右します。開示支援だけを担当し続けると、稼働の量が評価軸になります。事業に踏み込む案件に入る機会があるかどうかで、上がる速度が変わります。
3つ目は聞きにくい質問ですが、この領域では聞く価値があります。等級体系が別になっている場合、部門の位置づけが本流と異なる可能性があります。
エージェントベストの見解
年収の見通しを立てるとき、この領域では制度の確定範囲を織り込んでおくことをお勧めします。決まっているのは平均時価総額1兆円以上の会社への適用までです。5,000億円以上については引き続き検討、5,000億円未満は今後検討とされています。対象が284社まで広がる前提で数年後を描くと、想定が外れる可能性があります。一方で、開示の要求とは別に、取引先や調達先から排出量の報告を求められる流れは進んでいます。上場していない企業にも実務は及びます。つまり、制度の対象社数だけで需要を測ると、実態を見誤ります。年収を判断するときは、応募先が上場会社の開示支援に依存しているのか、それとも取引先対応やサプライチェーン全体の支援まで手掛けているのかを見ると、事業の安定性が読めます。
まとめ
サステナビリティコンサルタントの年収相場について、押さえるべき点を整理します。
- job tagの1,134.6万円は経営コンサル区分全体の数字。人事コンサル区分と同一で、領域差は見えない
- 報酬はファームの等級で大部分が決まる。領域の希少性は等級の枠内での調整に留まりやすい
- 事業会社出身で「サステナ枠」入社の場合、等級が低めに置かれることがある
- 開示支援は工数、削減施策・戦略は事業への踏み込みで評価される
- 保証は適用開始の翌年から義務化。限定的保証で、当初2年間はScope1・2が範囲
- 対象は68社→171社→284社。ただし5,000億円以上への適用は確定していない
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 平均1,134.6万円は、この職種の実態を示していますか。
A. 示していません。経営コンサルタント区分全体の数字で、人事コンサルタント区分でも同じ1,134.6万円・82,920人が示されています。コンサルティング職が統計上ひとつの区分にまとめられているためです。応募先の等級とレンジを確認する必要があります。
Q. 事業会社の環境部門から移ると、年収は上がりますか。
A. 上がる場合も、入社時は下がる場合もあります。コンサルタントとしての経験年数がゼロと見なされ、若手相当の等級を提示されることがあるためです。入口の金額より、等級が上がるまでの年数を確認するほうが実態に近づきます。
Q. 保証対応の経験があると、加算されますか。
A. 経験者が少ない領域のため、等級の判断で有利に働くことがあります。ただし別枠の手当がつくというより、等級の中で上寄りに置かれる形が一般的です。制度上、保証は開示基準の適用開始の翌年から義務化されるため、今後さらに評価される可能性があります。
Q. 開示支援ばかりだと、年収は頭打ちになりますか。
A. 稼働の量が評価軸になるため、上限が見えやすくなります。等級を上げるには、削減施策や事業の判断に関わる案件に入る必要があります。入社時に案件構成を確認しておくと、数年後の見通しが立ちます。
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/経営コンサルタント
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/人事コンサルタント
- 金融庁 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 報告(ロードマップ)
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。