プロジェクトマネージャ試験の論文が書けない人へ|経験の棚卸しは職務経歴書にも効く

プロジェクトマネージャー(PM・PjM) 資格 更新日 2026/8/15

手が止まる原因は3種類に分かれる

プロジェクトマネージャ試験の論述式(B-2)は、IPAの試験区分の案内によると120分・2問中1問を解答する形式です。選択式や記述式と違い、正解を覚えて臨む対策が効きません。ここで手が止まる方は多く、学習が長期化する原因にもなっています。

ただ、「書けない」と一言で言っても、中身は3つに分かれます。

症状対処の方向
材料不足型そもそも書く題材が出てこない経験の棚卸しから始める
粒度不一致型題材はあるが、設問の求める深さに合わない1件を深く掘る練習に切り替える
時間不足型内容は書けるが120分で終わらない構成と配分の訓練に絞る

対処が違うので、まず自分がどれかを見極めてください。3つのうち、学習量で解決するのは3つめだけです。1つめと2つめは、参考書を追加しても改善しません。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の試験制度や実施時期はIPAの公式サイトでご確認ください。

材料はあるのに書けないときは、粒度がずれている

相談を受けていて多いのは2つめの粒度不一致型です。担当したプロジェクトは複数あるのに、書き始めると2〜3行で終わってしまう。この状態は、経験が足りないのではなく、経験を分解する単位が大きすぎることが原因です。

たとえば「要件が膨らんで納期が厳しくなったので、優先度を整理して対応した」という一文があるとします。事実としては正しくても、これでは中身が読めません。分解すると次の要素に分かれます。

書けないのは、この分解を頭のなかだけでやろうとしているためです。**紙に分けて書き出すと、1件のプロジェクトから2時間ぶんの材料が出てきます。**逆に、分解しても要素が埋まらないなら、その案件は題材に向いていません。別の案件に替えたほうが早く進みます。

120分の使い方を先に決めておく

時間不足型の方に効くのは、書く前の配分を固定してしまうことです。試験当日に考えると、構成に時間を取られて後半が破綻します。

現実的な組み立ては次のとおりです。

最初の10〜15分は、構成に使う。 設問を読み、どの案件を題材にするかを決め、各段落に何を書くかを箇条書きにします。ここを飛ばして書き始めると、途中で辻褄が合わなくなり、書き直しで時間を失います。

残りの大半を、書く時間に充てる。 手書きは想像以上に時間がかかります。1分あたりに書ける文字数は人によって差があるため、練習の段階で自分の速度を測っておきます。

終了前の5〜10分は、見直しに残す。 設問で問われた要素が全部入っているかを確認します。内容の書き直しではなく、抜けの確認に使う時間です。

練習でこの配分を体に入れておくと、当日の判断が減ります。時間が足りない人の多くは、書く速度ではなく、構成の決断に時間を使いすぎています。

エージェントベストの見解

面接でも同じ現象が起きます。「一番大変だったプロジェクトを教えてください」と聞かれて、状況説明に3分使ってしまい、自分が何を決めたかにたどり着かないまま話が終わる。論述で構成に手間取る方は、面接でも同じ順序でつまずいていることが多くあります。対策は共通していて、先に結論を置く順序に組み替えることです。「納期を2週間延ばす代わりに、初期リリースの範囲を絞る判断をしました。背景は…」と始めれば、聞き手は残りを理解しやすくなります。試験の論述は制限時間があるぶん、この訓練になります。書く練習をしている期間は、面接の答え方も同時に整っていると考えてよいと思います。

設問は、後ろから読む

もうひとつ、当日の事故を減らす読み方があります。設問を最初から順に読むのではなく、問われている要素を先に抜き出してから、冒頭に戻るやり方です。

設問文には、書くべき要素が指定されています。状況の説明、自分が下した判断、その理由、結果と評価。どこまで書けば設問に答えたことになるかは、設問文が決めています。ここを読み落としたまま書き始めると、内容は充実しているのに設問に答えていない解答ができあがります。

実務的な手順は次のとおりです。

  1. 設問文から、書くよう指示されている要素に印を付ける
  2. 印を付けた要素を、そのまま構成の見出しにする
  3. 各見出しに、自分の案件のどの部分を割り当てるかを決める
  4. 割り当てられない要素があれば、そこで題材を替える判断をする

4つ目が重要です。書き始めてから題材が合わないと気づくと、残り時間で立て直すのは難しくなります。構成の段階で気づけば、まだ替えられます。

2問のうちどちらを選ぶかも、この時点で決まります。得意な領域かどうかより、自分の案件を割り当てられる要素が多いほうを選ぶのが安全です。

主語が消えると、評価される要素も消える

論述で読まれているのは、担当者としての判断です。ところが、書き慣れていない方の文章は主語が抜けます。

どちらも、誰が決めたのかが読めません。実務ではチームで動くのが普通なので、こう書きたくなる気持ちは自然です。ただ、この形式で問われているのは自分が担った役割です。

書き直すと次のようになります。

事実は変わっていません。変わったのは、自分が動かした部分が見えるかどうかです。「私が」と書くのが気恥ずかしい場合でも、動詞を自分の行動に寄せれば主語は伝わります。

失敗と残課題を書いたほうが、実務の文章になる

うまくいかなかった話を書くことに抵抗を感じる方がいます。ただ、すべて順調に進んだという文章は、実務を担った人の記述としてはかえって不自然に映ります。

書いてよいのは、経緯と対処が説明できる失敗です。

「諦めたこと」が書いてある文章は強い傾向があります。プロジェクトマネジメントは、限られた資源のなかで何を優先するかを決める仕事だからです。全部やり切ったという記述は、優先順位を決めた形跡が見えません。

書き上がった解答を、自分で点検する観点

練習で書いた文章は、書きっぱなしにすると次に活きません。点検の観点を決めておくと、1本ごとに改善点が残ります。

観点確認すること
設問への対応設問文で指示された要素が、すべて本文に入っているか
具体性数量・期間・人数が入っているか。「多くの」「大幅に」で済ませていないか
判断の所在自分が決めた箇所と、他者が決めた箇所が読み分けられるか
因果判断とその結果が、理由でつながっているか
評価結果に対する自己評価と、残った課題が書かれているか
時間制限時間内に書き切れたか。どこで詰まったか

この6点のうち、最初につまずくのは具体性です。書き慣れないうちは修飾語で量を稼いでしまい、読み返すと事実がほとんど入っていないことがあります。

数量を入れると文章は締まります。「メンバーが増えた」ではなく「協力会社2社から6名が加わり、体制が11名になった」と書くだけで、状況の解像度が変わります。数字が思い出せない箇所は、そもそも自分が管理していなかった領域である可能性もあります。そこが分かるのも点検の効用です。

書いた材料は、そのまま職務経歴書に移せる

論述の準備がもったいないのは、試験が終わると使われなくなることです。実際には、書き出した材料の大半は職務経歴書に移せます。

論述で書いた要素職務経歴書での置き場所
案件の概要・期間・目的案件見出しの1行説明
体制と自分の担当範囲「役割」欄。直接見ていた人数と社外ベンダーの有無
直面した問題「課題」欄。1案件につき1つに絞る
自分の判断と提案「取り組み」欄。誰の合意を取ったかまで書く
結果「成果」欄。納期・コスト・品質のどれが動いたかを数値で
残った課題面接での回答に回す。書類には書かなくてよい

移すときの注意は1点です。論述の文体のまま貼り付けないこと。職務経歴書は読み飛ばされる前提の書類なので、段落ではなく箇条書きに分解します。1項目は2行までに収めます。

資格そのものより準備の過程が転職活動に効く、という点はPM転職で資格が効かない3つの場面でも触れています。

試験そのものの位置づけも押さえておく

IPAの発表によれば、令和7年度のプロジェクトマネージャ試験は応募者13,540名、受験者8,511名、合格者1,219名で、合格率は14.3%、合格者の平均年齢は37.7歳でした。応募と受験の差から、申し込んだあとに受けない層が一定数いることも読み取れます。

また、IPAは情報処理技術者試験の見直しを進めており、2027年度から新試験制度へ移行する予定であることを公表しています。2026年度はCBT方式で実施され、プロジェクトマネージャ試験は後期の実施区分に置かれています。年1回の試験なので、**申込期間を逃すと次の機会まで間が空きます。**合格率や学習の組み立て方はプロジェクトマネージャ試験は働きながら受かるかで扱っています。

エージェントベストの見解

論述の練習を始めた方から「自分の経験が思ったより薄いと分かった」という感想をいただくことがあります。これは悪い発見ではありません。書けない領域が特定できたということだからです。よくあるのは、進捗管理と報告の記述は出てくるのに、コストと要員の判断が出てこないパターンです。この場合、次に取りに行くべきなのは資格ではなく、見積もりや要員計画に関われる案件です。書けない箇所が分かったら、そこを埋められる仕事を社内で取りに行く。その1年のほうが、資格の勉強を続けるより職務経歴書は厚くなります。試験は経験の健康診断のように使えます。

まとめ

よくある質問

Q. 小規模な案件しか担当していませんが、題材になりますか。 A. 規模より、判断の中身が書けるかどうかが問われます。数名のチームでも、優先順位を決め、誰かの合意を取り、結果が説明できるなら題材として成立します。大規模案件の一部を担当した経験より、小規模でも全体を見た経験のほうが書きやすいことも多くあります。

Q. 発注側(ユーザー企業)の立場でも書けますか。 A. 書けます。むしろ発注側は、予算の確保やベンダーの選定など、判断の場面が明確に残っていることが多くあります。立場を明示したうえで、自分の権限の範囲で何を決めたかを書けば問題ありません。

Q. 論述の練習は、どのくらいの本数を書けばよいですか。 A. 本数より、時間を計って最後まで書き切った回数が重要です。途中で止めた練習は、時間配分の訓練になりません。まず1本を通しで書き、そこで見えた課題を潰してから次に進む形をおすすめします。

Q. 試験の準備と転職活動は、並行してよいですか。 A. 並行できます。論述の材料づくりは職務経歴書の作成とほぼ同じ作業なので、二度手間になりません。ただし試験直前期は書く練習にまとまった時間が要るため、面接が立て込む時期と重なると両方が中途半端になることがあります。時期の重なりは事前に見ておいてください。

出典

本記事は 2026/8/15 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)