PMPとプロジェクトマネージャ試験、転職で効くのはどちらか
2つの資格は、そもそも別のものを証明している
PMPと情報処理技術者試験のプロジェクトマネージャ試験(PM試験)は、どちらも「PMの資格」として並べられます。ただ、設計思想が違います。
PMPは、経験を第三者が確認する仕組みです。学歴に応じて2〜5年のプロジェクト指揮経験が受験の前提で、申請時にその経験を記述します。試験に受かる前に、経験の審査を通る必要があります。
PM試験は、経験がなくても受けられる試験です。IPAの対象者像には「システム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトの目的の実現に向けて責任をもってプロジェクトマネジメント業務を単独で又はチームの一員として担う者」とありますが、受験資格に実務経験の要件はありません。そのかわり、論述式で自分の経験を書かせることで実務性を測る構造になっています。
この違いが、そのまま「どちらが効くか」の答えにつながります。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の試験制度は各公式サイトをご確認ください。
数字で見る2つの試験
| PMP | プロジェクトマネージャ試験 | |
|---|---|---|
| 認定元 | PMI(米国) | IPA(独立行政法人 情報処理推進機構) |
| 受験資格 | 学歴に応じ2〜5年の指揮経験+35時間の研修 | なし |
| 出題形式 | 選択式180問・4時間 | 多肢選択式+記述式+論述式 |
| 合格率 | 非公表 | 14.3%(令和7年度) |
| 有効期間 | 3年(60PDUで更新) | 期限なし |
| 通用する範囲 | 国際的に通用 | 日本国内 |
IPAの発表によれば、令和7年度のプロジェクトマネージャ試験は応募者13,540名、受験者8,511名、合格者1,219名で、合格率は14.3%、合格者の平均年齢は37.7歳でした。高度試験のなかでも合格率が低い区分です。
試験の中身を並べてみる
出題形式の違いは、準備の仕方に直結します。
プロジェクトマネージャ試験は、IPAの試験区分の案内によると、次の4科目で構成されています。
| 科目 | 時間 | 形式 | 出題数 |
|---|---|---|---|
| A-1 | 50分 | 多肢選択式(四肢択一) | 30問 |
| A-2 | 40分 | 多肢選択式(四肢択一) | 25問 |
| B-1 | 90分 | 記述式 | 3問中2問解答 |
| B-2 | 120分 | 論述式 | 2問中1問解答 |
選択式で基礎知識を確認し、記述式で読解と説明力を見て、最後に論述式で自分の経験を書かせる構造です。段階的に「知っているか」から「やったことがあるか」へ寄っていく設計になっています。
対してPMPは、PMI公式の案内では180問・4時間の選択式で、途中に10分の休憩が2回入ります。出題比率はPeople 33%、Process 41%、Business Environment 26%とされています。経験の審査は申請段階で済んでいるため、試験そのものは知識と判断を問う形式に絞られています。
論述が苦手ならPMP、選択式の詰め込みが苦手ならPM試験、という選び方も現実的です。
応募先で選ぶ
どちらが効くかは、応募先で決まります。
PM試験が効きやすい先
国内SIer、官公庁案件を扱う企業、ユーザー系の情報システム子会社では、PM試験の評価が安定しています。
理由は2つあります。ひとつは、国家試験として社内の等級制度や資格手当に組み込まれている企業が多いこと。もうひとつは、公共調達の場面で情報処理技術者試験の区分が技術者の要件として扱われることがあるためです。
社内制度に組み込まれているということは、採用側が資格を換算する仕組みを持っているということです。加点の根拠が用意されているので、書類段階で効きます。
PMPが効きやすい先
外資系企業、グローバル案件を持つ企業、日本法人の人事権が海外本社にある会社では、PMPのほうが通じます。
PM試験は日本国内の制度なので、海外の採用担当者には内容が伝わりません。同じ「PMの資格」でも、相手が読める資格かどうかで差が出ます。
また、コンサルティングファームでは提案書に載せる資格としてPMPを重視することがあります。国際的な認知度が、そのまま対外的な説明力になるためです。
どちらもあまり効かない先
事業会社の内製開発組織、スタートアップでは、どちらの資格も決め手になりにくい傾向があります。この領域で問われるのは「何を作るかを決めた経験」で、資格が証明する範囲とずれるためです。応募先による違いは「PMPは意味ない」と言われる理由で詳しく整理しています。
エージェントベストの見解
「どちらか一方を取るなら」という相談では、現職の業界ではなく、次に行きたい先で選んでくださいとお伝えしています。SIerからSIerへ移るならPM試験、SIerから外資系やコンサルへ移るならPMP、というのが基本の考え方です。よくあるのは、現職で評価される資格を取ってから転職活動を始めて、応募先では換算されないと分かるパターンです。資格は取得に半年から1年かかります。その時間を投じる前に、応募先の求人票で資格要件がどう書かれているかを5〜10件見ておくと、判断がぶれません。求人票に資格名が一切出てこない領域なら、資格より経験の言語化に時間を使ったほうが早く進みます。
学習の負荷と、得られる副産物が違う
同じ資格でも、準備の過程で得られるものが違います。
PM試験の論述式は、自分が担当したプロジェクトについて、設問の観点に沿って2時間で書き切る形式です。IPAの試験区分の案内では、論述式は2問中1問を解答するとされています。この訓練は、面接で経験を構造的に話す力に直結します。書けない箇所は、そのまま面接で答えられない箇所でもあります。
PMPの申請準備は、プロジェクトごとに役割と成果を書き出す作業です。こちらは職務経歴書の材料づくりと重なります。数え方の詳細はPMPの受験資格を満たしているかで整理しています。
どちらも、資格そのものより準備の過程が転職活動に効く、という点は共通しています。
維持の負荷を比べる
見落とされやすいのが、取得後の負担です。
PM試験は合格すれば期限がありません。合格証書は残り続けます。
PMPは3年ごとの更新があり、PMI日本支部の説明ではCCRサイクルの3年間に最低60PDUの取得と報告が求められます。期限までに満たせない場合は翌1年間サスペンドとなり、その間にも達成できなければ資格を喪失します。
転職を機に業務内容が変わり、PDUを積む機会が減ることがあります。取得時点だけでなく、3年後の自分の働き方まで想像して選ぶと、あとから困りません。
費用と時間の見積もり方
金額は改定されることがあるため、公式サイトで最新の受験料を確認したうえで、次の3つを足して比べてください。
- 直接費用:受験料。PMPは研修35時間ぶんの費用が別に必要になります
- 学習時間:どちらも数百時間規模になります。仕事と並行する前提なら、月あたり何時間を何か月確保できるかで逆算します
- 維持費用:PMPは3年ごとの更新に関わる費用と、60PDUを積むための時間が続きます。PM試験は合格後の費用が発生しません
会社に資格取得の補助制度がある場合は、対象になっているかを先に確認しておくと判断が変わることがあります。制度の対象が国家資格に限られていて、PMPは対象外という運用も見かけます。
なお、費用補助に一定期間の在籍を条件とする規定を置いている企業もあります。転職を視野に入れているなら、社内規定の条件も合わせて確認しておくと安全です。
試験制度の変更が控えている点にも注意する
IPAは情報処理技術者試験の見直しを進めており、2027年度から新試験制度に移行する予定であることを公表しています。2026年度の高度試験はCBT方式で実施され、プロジェクトマネージャ試験は後期の実施区分に置かれています。
現行制度で受けるつもりなら、実施時期と申込期間を早めに確認しておく必要があります。年1回の試験なので、時期を逃すと次の機会まで間が空きます。
エージェントベストの見解
両方持っている方を見かけますが、転職市場での上積みは、2つ目のほうが小さくなる傾向があります。1つ目は「PMとしての基礎がある」ことを示しますが、2つ目が示すのは「もう1つ取った」ことだけだからです。時間を投じるなら、2つ目の資格より、担当できる案件の幅を広げるほうが評価に返ってきやすくなります。具体的には、契約形態が違う案件(請負と準委任)、規模が1桁違う案件、社外ベンダーを複数束ねる案件のいずれかを経験すると、職務経歴書の説明力が変わります。資格欄が2行になることより、こちらのほうが選考で効きます。
まとめ
- PMPは経験を第三者が確認する資格、PM試験は経験がなくても受けられる試験
- 国内SIer・官公庁案件ならPM試験、外資系・グローバル案件ならPMPが通じやすい
- 事業会社の内製開発やスタートアップでは、どちらも決め手になりにくい
- PM試験は期限なし、PMPは3年ごとに60PDUの更新が必要
- 現職ではなく、次に行きたい先の求人票を見てから選ぶ
よくある質問
Q. 両方取る意味はありますか。 A. 応募先が国内SIerと外資系の両方にまたがる場合は意味があります。ただし2つ目の上積みは1つ目より小さくなる傾向があるため、時間の使い先としては案件の幅を広げるほうが効くことも多くあります。
Q. プロジェクトマネージャ試験は未経験でも受かりますか。 A. 受験資格に実務経験の要件はありません。ただし論述式で自分の経験を書く必要があるため、書く材料がない状態では苦しくなります。合格者の平均年齢が令和7年度で37.7歳という数字も、実務経験を持つ層が中心であることを示しています。
Q. 資格を取ってから転職活動を始めたほうがよいですか。 A. 応募先次第です。資格要件が求人票に明記される領域なら効果は出ますが、そうでない領域では、取得を待つ期間の機会損失のほうが大きくなることがあります。志望先の求人票を先に確認することをおすすめします。
Q. 応用情報技術者試験からステップアップするなら、どちらに進むべきですか。 A. 情報処理技術者試験の枠内で進むならプロジェクトマネージャ試験が地続きです。試験の運営元も出題の作法も同じなので、学習の勝手が分かっている利点があります。一方、PMPは受験資格に指揮経験が必要なため、経験が積み上がるまで選べません。先にPM試験、指揮経験がたまってからPMPを検討するという順序は現実的です。
Q. 学習期間中に転職の話が来たら、どうすればよいですか。 A. 資格の取得見込みを選考でどう扱うかは、応募先によって差があります。資格要件が明記されている求人では「受験予定」を伝える意味がありますが、そうでない場合は、学習中であることより、その学習で整理できた経験のほうを話したほうが評価につながります。
- IPA「プロジェクトマネージャ試験」試験区分(対象者像・試験時間区分・出題形式)
- IPA「令和7年度秋期情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」(応募者数・合格率・合格者平均年齢)
- PMI「Project Management Professional (PMP)® Certification/How to Apply」(受験資格・試験形式)
- PMI日本支部「資格の更新について」(CCRサイクル3年・60PDU)
本記事は 2026/8/14 時点の公開情報にもとづいて作成しています。