戦略コンサルティングファームの年収相場|転職で押さえるべきポイント

コンサルティング業界 年収相場 更新日 2026/8/3

戦略コンサルティングファームの年収は、転職検討時に最も情報が錯綜する項目です。転職メディアには「平均年収1,500万円」といった数字が並びますが、算出根拠が示されていないものが大半です。一方で、上場しているファームであれば有価証券報告書に平均年間給与が開示され、職種全体の水準は官公庁統計で確認できます。この記事では、出典が明示できる数値だけを使って報酬の構造を整理し、自分の場合いくらになるのかを見積もるための読み方を解説します。

戦略コンサルの報酬は何で決まるか

前提として押さえておきたいのは、この業界の報酬が「会社」ではなく「職位」で決まる設計だという点です。

コンサルティング業界では一般的に、アナリスト、コンサルタント、シニアコンサルタント、マネージャー、シニアマネージャー、パートナーといった階層が置かれ、階層ごとに報酬レンジが設定されます。レンジ内の位置は評価によって動き、階層をまたぐごとに段階的に上がります。つまり同じ会社に入っても、入社時にどの職位で評価されるかによって年収は大きく変わります。

転職サイトに掲載されている「年収レンジ600万円〜1,800万円」といった表記は、複数の職位を束ねた幅であることが通例です。この幅の中で自分がどこに位置するのかは、職位が決まるまで確定しません。年収を比較する際に、会社単位で並べても意味のある比較にならないのはこのためです。

もうひとつの要素が、固定部分と変動部分の比率です。多くのファームで賞与や業績連動報酬が組み込まれており、その比重は職位が上がるほど大きくなる設計が見られます。この構造は、後述するとおり平均年収の年次変動として実際に表れます。

公的統計が示す水準と、その注意点

職種全体の水準は、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト job tag で確認できます。「経営コンサルタント」の項目には、令和7年賃金構造基本統計調査にもとづく数値が掲載されています。

項目数値出典
平均年収1,134.6万円令和7年賃金構造基本統計調査
平均年齢39.4歳令和7年賃金構造基本統計調査
月間労働時間162時間令和7年賃金構造基本統計調査
就業者数82,920人令和2年国勢調査
有効求人倍率0.57令和6年度(ハローワーク)
求人賃金(月額)28.3万円令和6年度(ハローワーク)

ここで注意が要るのは、同じページに載っている平均年収1,134.6万円と、求人賃金の月額28.3万円が大きく食い違って見える点です。これは矛盾ではなく、母集団が違います。前者は賃金構造基本統計調査における「経営コンサルタント」全体の平均であり、後者はハローワークに出ている求人の提示額です。戦略ファームの中途採用はハローワーク経由で行われることがほとんどないため、後者の数字を戦略コンサルの相場として読むのは適切ではありません。

平均年齢39.4歳という点も重要です。年収の平均値は年齢構成に強く影響されます。20代でこの水準に届くという意味ではありません。

上場ファームの有価証券報告書で見る実額

より実態に近い数字は、上場しているファームの有価証券報告書で確認できます。以下はいずれも各社が提出した有価証券報告書の記載です。

会社対象従業員数平均年齢平均勤続年数平均年間給与
株式会社シグマクシス(シグマクシス・ホールディングスの最大人員会社)第18期(2026年3月期)708名34.5歳5.0年10,673,114円
株式会社エル・ティー・エス(提出会社)第24期(2025年12月期)456名34.8歳4年11ヶ月6,711千円

この2社を並べると、報酬水準の差だけでなく、数値の読み方そのものが見えてきます。

まず平均年齢がいずれも34歳台である点です。job tag の平均年齢39.4歳と比べると若く、平均勤続年数も5年前後です。長期在籍を前提とした組織構成ではないことが、複数社に共通して表れています。

次に、シグマクシスの数値には重要な注記が付いています。有価証券報告書には、平均年間給与が前事業年度から16.0%減少したこと、その理由が事業運営責任を担う上位クラスを対象とするパフォーマンスボーナスおよび株式報酬の大幅な減額であることが明記されています。同社の持株会社側(提出会社、92名、平均年齢45.4歳)でも、平均年間給与10,329,422円で前事業年度から14.5%の減少です。つまり平均年間給与は固定的な水準ではなく、業績連動部分を含んだ結果として年ごとに動きます。

この事実は、複数年の数字を並べて初めて見えるものです。単年の平均年収だけを切り出して他社と比較すると、判断を誤ります。

エージェントベストの見解

公開されている平均年収を並べて優劣を判断する方が多いのですが、比較の前提が揃っていないことがほとんどです。前提を揃えるための確認項目は3つあります。第一に、その数字が連結なのか単体なのか。上場ファームの開示は提出会社または最大人員会社の数値であることが多く、グループ全体の平均ではありません。第二に、平均年齢です。平均年齢34歳の会社と40歳の会社の平均年収を並べても、水準の比較にはなりません。第三に、業績連動部分を含むかどうかです。前年比で二桁動く数字は、固定給ではなく賞与や株式報酬の増減を映しています。この3点を確認するだけで、見え方はかなり変わります。そして最終的に効くのは平均ではなく、自分が就く職位のレンジです。

職位別レンジの構造と、年次ごとの上がり方

具体的な職位別レンジを公表しているファームは多くありませんが、入り口の水準については公開情報があります。シグマクシスの新卒採用募集要項では、コンサルタント職の初任給として年俸基準額650万円が公開されています。新卒でこの水準であることを踏まえると、中途入社時の提示額は経験と職位に応じてこれを上回る設計になると読めます。

年次ごとの上がり方については、業界一般の傾向として次の構造があります。アナリストからコンサルタントへの昇格は比較的短期間で起こりやすく、この段階では年収の伸びも読みやすい。一方、マネージャーへの昇格は、案件を単独で回し切れるか、クライアントとの関係を維持できるかが問われるため、ここで滞留する人が出ます。そして報酬が大きく跳ねるのはマネージャー以降です。

この構造から導かれる実務的な示唆があります。オファーの金額そのものより、次の職位に上がる条件が明確かどうかのほうが、数年単位の年収に効きます。入社時に1段低い職位で入っても、昇格の要件が明確で運用されている会社であれば、数年後の到達点は変わります。

年収が上がる要因・上がらない要因

上がる要因として業界一般に挙げられるのは、次の3つです。ひとつは職位の上昇。前述のとおり、これが最も大きく効きます。ふたつめは会社業績で、業績連動部分の比重が高い設計では全社の結果が個人の実額に反映されます。みっつめは市場価値の上昇に伴う転職で、同職位でもファームを移ることで水準が変わる場合があります。

上がらない要因も明確です。稼働時間を増やしても、原則として報酬は増えません。この業界の報酬は時間ではなく職位と評価で決まるためです。また、特定領域の知見が深くても、それを案件の獲得や遂行に接続できていなければ職位は上がりません。

シグマクシスの有価証券報告書には、評価の考え方も記載されています。求められる能力を「能力開発フレームワーク(CDF)」として定義し、社員が領域ごとのレベル基準に照らして自らチャレンジする領域とレベルを指定し、実証した事実をもとに認定を受ける。認定された領域とレベルの組み合わせでクラスが決まり、報酬も決まる、という設計です。加えて上位クラスの評価では、売上貢献や稼働率といった直接的な業績貢献だけでなく、専門知識のナレッジ化、後進の育成、組織運営への貢献といった中長期の寄与度も評価する仕組みだと説明されています。報酬を上げる打ち手が、案件の遂行だけではないことが読み取れます。

ファームによる報酬設計の違い

報酬の水準と設計は、ファームの類型によって傾向が分かれます。非上場のファームは平均年収の公式な開示がないため、業界一般の構造から読むほかありません。各社の詳細は個別の記事にまとめています。

未経験入社時の年収をどう見積もるか

事業会社からの転職では、現職年収からの増減が最大の関心事になります。見積もりの手順は3段階です。

第一に、応募先で自分がどの職位に該当するかの当たりを付けます。実務経験年数だけでなく、部門をまたいで意思決定に関わった経験の有無が判断材料になります。第二に、その職位のレンジを確認します。求人票の年収レンジは複数職位を束ねているため、面接の過程で自分の想定職位を確認するのが確実です。第三に、固定部分と変動部分の比率を確認します。提示額の内訳を把握しないまま現職と比較すると、実額の見通しを誤ります。

なお業界一般の傾向として、未経験入社では1段低い職位から入る場合があります。この場合、初年度は現職とほぼ同水準か、やや下がることもあります。判断のポイントは初年度の額ではなく、2〜3年後にどこまで到達し得るかです。前述のとおり、この業界では職位の上昇が報酬に最も強く効きます。

エージェントベストの見解

面談でよく伺うのが「今より下がるなら転職しない」という基準です。判断としては筋が通っていますが、比較する期間の取り方だけは見直したほうがよいと考えています。この業界は職位で報酬が決まり、職位は数年単位で動きます。初年度の提示額だけで比べると、伸びしろの大きい選択肢を機械的に外すことになります。実務的には、初年度の額、3年後に到達し得る職位、その職位のレンジという3点をセットで確認してください。逆に、初年度の提示額が高くても昇格要件が曖昧な場合は、数年後に頭打ちになることがあります。金額の高低より、上がる仕組みが明文化され運用されているかを見るほうが、結果的に読みが当たります。

年収を読むときの要点

戦略コンサルティングファームの年収は、会社ではなく職位で決まります。官公庁統計では経営コンサルタントの平均年収が1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査、平均年齢39.4歳)と示されていますが、これは職種全体の平均です。上場ファームの有価証券報告書を見ると、平均年齢34歳台・平均勤続5年前後という構成での実額が確認でき、業績連動部分の増減によって前年比で二桁動く例もあります。平均値を比較する際は、連結か単体か、平均年齢が揃っているか、業績連動を含むかの3点を確認してください。そして最終的に効くのは、自分が就く職位のレンジと、次の職位に上がる条件です。報酬制度や水準は各社・時期によって変わるため、最新の条件は募集要項とオファー内容でご確認ください。

よくある質問

Q. 戦略コンサルの平均年収はいくらですか。

A. 職種全体の水準としては、厚生労働省の job tag に掲載されている経営コンサルタントの平均年収1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査)が公的な参考値になります。ただし平均年齢39.4歳での数値です。個社では、上場ファームの有価証券報告書で実額を確認できます。たとえば株式会社シグマクシスは平均年間給与10,673,114円(平均年齢34.5歳、第18期)、株式会社エル・ティー・エスは6,711千円(平均年齢34.8歳、第24期)です。いずれも会社ごとの職位構成と年齢構成が異なるため、単純比較はできません。

Q. 未経験からの転職で年収は下がりますか。

A. 場合によります。業界一般の傾向として、未経験入社では実務経験を踏まえた職位が設定されるため、現職より1段低い職位から入る例が見られます。この場合、初年度は現職と同水準か、やや下がることもあります。一方で、この業界は職位の上昇が報酬に最も強く効く構造のため、2〜3年後の到達点は現職の延長線とは異なります。判断する際は初年度の提示額だけでなく、昇格の要件が明確かどうかを確認することをおすすめします。

Q. 平均年収が前年より下がっている会社は避けるべきですか。

A. 数字の中身を確認してから判断してください。たとえばシグマクシスの有価証券報告書では、平均年間給与が前事業年度から16.0%減少した理由として、上位クラスを対象とするパフォーマンスボーナスおよび株式報酬の大幅な減額が明記されています。固定給が下がったわけではなく、業績連動部分の変動です。業績連動の比重が高い設計では、こうした変動は構造上起こり得ます。避けるべきかどうかではなく、自分が就く職位で変動部分がどの程度の比率になるのかを確認するほうが実用的です。

本記事は2026年8月時点で公開されている情報にもとづいています。最新の募集要項や選考プロセスは、各社の公式サイトでご確認ください。

出典

本記事は 2026/8/3 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)