SIer(システムインテグレーター)の選考フロー・面接対策|転職で押さえるべきポイント
「どの位置にいましたか」が、繰り返し出る
SIerの選考には、他のIT業界と違う特徴があります。契約上の位置が確かめられることです。
「その案件は、元請けでしたか」「顧客とは直接やりとりしましたか」「請負ですか、派遣ですか」。
いずれも技術の質問ではありません。しかし、この答えで積んできた経験が推測できます。
なぜ問われるか
民法第632条は、請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約すること」と定めています。完成の責任を負う立場と、指示された作業をする立場では、身につく技術が違います。
もう一つの論点
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の第40条の2は、派遣先が 派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない と定め、同条第2項で 派遣可能期間は、三年とする としています。
3年ごとの職歴の切り替わりが、この制度によるものかも確認されます。
この記事では、選考の流れと、何が確かめられているのかを整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。
選考の段階と、確認される内容
| 段階 | 会う相手 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 書類選考 | 採用担当 | 契約上の位置、関わった工程、決めた事項 |
| 適性検査 | — | 数的処理、論理、性格傾向 |
| 一次面接 | 現場のメンバー | 前職での役割、技術の水準 |
| 技術面接/実務課題 | エンジニア・責任者 | 設計、実装、トラブル対応 |
| 二次面接 | 部門の責任者 | 顧客との折衝、完成の責任への姿勢 |
| 最終面接 | 役員クラス | 長期の適性、常駐への同意 |
| 条件面談 | 採用担当 | 等級、常駐の有無、契約の型 |
大手元請けSIerは段階数が多くなります。 適性検査が入り、選考の期間も長くなります。
SES・派遣中心の会社は速く進みます。 面接1〜2回で決まることもあります。
技術面接で見られていること
設計の判断
なぜその構成を選んだか。技術の知識より、選択の理由が問われます。
トラブル対応
障害が起きたとき、何をしたか。原因の特定、暫定対応、恒久対策。順序に考え方が表れます。
規模への対応
同時に何人が使うシステムか、データ量はどのくらいか。桁の感覚が確認されます。
既存システムとの接続
SIerの案件では、まっさらな状態から作ることは多くありません。既存のものとどうつなぐかが中心の論点になります。
必要スキルとの接続
job tagの「プログラマー」の区分では、必要スキルの最上位が プログラミング4.9 です。一方、「ITコンサルタント」の区分は 要件分析5.1 が最上位。応募する役割によって、見られる技術が違います。
面接で繰り返される質問
「その案件は、元請けでしたか」
この業界に固有の質問です。位置を明示して答えます。
「顧客とは直接やりとりしましたか」
間に人が入っていた場合、その構造を述べたうえで、自分がどこまで判断に関わったかを話します。
「請負ですか、準委任ですか、派遣ですか」
答えられるだけで、業界の構造を理解していると受け取られます。
「要件を断ったことはありますか」
決める側に回れるかが問われます。
「客先常駐は問題ありませんか」
この業界では常駐が広く行われています。
「3年で職場が変わっていますが、理由は」
派遣であれば、労働者派遣法第40条の2による制度上の制限だと述べます。
「稼働後、そのシステムは使われていますか」
完了までの関与が確かめられます。
契約の型について問われること
条文の暗記は求められません。構造を理解しているかが見られます。
3つの型
- 請負 — 民法第632条。仕事の完成を約束する。指揮命令は自社
- 準委任 — 民法第656条により委任の規定が準用される。事務の遂行を委託される
- 労働者派遣 — 派遣先の指揮命令を受ける。期間に制限がある
派遣の期間
労働者派遣法第40条の2第2項は 派遣可能期間は、三年とする としています。同条第3項は 三年を限り、派遣可能期間を延長することができる とし、第4項・第5項は延長にあたって過半数労働組合等の意見聴取と説明が必要であるとしています。
なお同条第1項には、無期雇用派遣労働者や特定の業務など例外があるとされています。
答え方の要点
「請負は完成を約束し、準委任は事務の遂行を委託される。派遣は指揮命令を受け、期間に制限がある」。この程度で足ります。
なぜ問われるのか
追加の要望が出たときの答え方が、契約の型によって変わるからです。この理解がないと、顧客との交渉で不必要に譲歩します。
評価が下がる受け答え
- 契約の型を答えられない — 業界の基本構造です
- 位置を曖昧にする — 後で判明すると隠していたように見えます
- 「上流だけをやりたい」と言う — 幅広い職務が含まれます
- 客先常駐を避けたい姿勢が強い — この業界では広く行われています
- 決めた事項が出てこない — 「関わった」では判断できません
- 多重下請けへの不満が前に出る — 構造の理解も要ります
2つ目が、意外に多い落ち方です。「大手企業の案件」とだけ述べ、後で二次請けだと分かると、印象が悪くなります。最初から明示するほうが安全です。
会社の型で、選考の重心が変わる
大手元請けSIer — 顧客との折衝と、規模のある案件の経験が問われます。適性検査が入り、段階数も多くなります。
ユーザー系SIer — 親会社の業務への理解と、長期で関わる姿勢が見られます。安定志向でも不利になりません。
独立系の中堅SIer — 幅広く担える適性が中心です。技術面接の比重が高くなります。
特定領域の専門会社 — その領域の深さが問われます。技術面接が最も重くなります。
SES・派遣中心の会社 — 複数の現場への適応力が見られます。選考は速く進みます。
近い領域の選考はITコンサルティングファームの選考フロー・面接対策、金融ITの選考フロー・面接対策もあわせてご覧ください。
エージェントベストの見解
面接で「その案件は元請けでしたか」と聞かれて、言葉を濁す方がいます。二次請け以下であることを不利だと感じるためです。しかし、濁すほうが不利になります。位置は経歴を読めば推測できますし、質問の意図は位置そのものではなく、その位置で何をしたかを聞くことにあります。「二次請けでした。顧客と直接話す機会はありませんでしたが、元請けの担当者を通じて仕様の背景を確認する運用を作り、手戻りを減らしました」。この答え方であれば、位置を正確に認識したうえで動いた人だと伝わります。準備としては、自分の案件の位置と契約の型を、応募前に上長や営業担当に確認しておくことです。この一問で、面接での答え方が変わります。
実務課題では、既存システムとの接続が問われる
技術面接に加えて、実務課題が出ることがあります。SIerに固有の観点があります。
まっさらな設計は出ない
SIerの案件では、何もない状態から作ることは多くありません。既に動いているシステムがあり、それとどうつなぐかが課題になります。
見られている観点
- 移行の設計 — 既存のデータをどう移すか、いつ切り替えるか
- 並行稼働 — 新旧を同時に動かす期間をどう扱うか
- 切り戻し — 問題が起きたとき、元に戻せるか
- 接続の仕様 — 既存システムの制約をどう受け止めるか
3つ目が、この業界の核心です。戻せない移行は、実務では選べません。
書き方の要点
理想的な構成を短く書き、移行と切り戻しに紙面を割きます。「この段階で問題が起きたら、こう戻す」という記述があるかどうかで、経験の有無が分かります。
制約の扱い
既存システムの仕様が古い、ドキュメントがない、担当者が退職している。課題文にこうした制約が含まれていることがあります。 制約を理由に諦めるのではなく、そのなかで進める案を出せるかが見られます。
完成度より、抜けの少なさ
きれいに仕上げることより、考慮漏れがないことが評価されます。時間内に終わらない場合は、「ここまで検討し、残りはこの観点で詰める」と書き添えます。
選考中に確認しておきたいこと
- 会社の契約上の位置(元請け案件の比率)
- 担当する案件の契約の型(請負、準委任、派遣)
- 客先常駐の有無と、その頻度
- 顧客と直接話す機会があるか
- 入社時の等級と、次の等級までの目安年数
- 稼働後まで関与するのか、リリースで離れるのか
1つ目が、積める経験を最も左右します。元請け案件がない会社では、顧客と直接話す機会が限られます。詳しくはSIerの年収相場で構造を整理しています。
3つ目は、生活への影響が大きい項目です。常駐先の場所と、期間を確認します。
4つ目は、上流に進みたい方には決定的です。機会がなければ、経験は積めません。
エージェントベストの見解
「客先常駐は問題ありませんか」という質問への答え方で、この業界への適性が測られます。多くの方は「問題ありません」とだけ答えます。しかし、条件を確認しないまま同意すると、入社後に想定と違うことになります。効くのは、理解を示したうえで条件を確認する答え方です。「請負や準委任でも、顧客の環境で作業する必要がある案件は理解しています。常駐先の場所と、平均的な期間を教えていただけますか」。この答え方であれば、避けているとは受け取られず、条件を確認しているだけだと伝わります。あわせて、派遣の場合は労働者派遣法第40条の2により派遣可能期間が三年とされていることも押さえておくと、期間の話が具体的になります。
まとめ
SIerの選考について、押さえるべき点を整理します。
- 契約上の位置が確かめられる。元請けか、二次請け以下か、派遣か
- 民法第632条の請負は「仕事の完成」を約束する。準委任は事務の遂行
- 労働者派遣法第40条の2により、派遣可能期間は三年。延長は三年を限り可能
- 位置を濁すと、後で判明したときに印象が悪くなる
- 技術面接では、知識より選択の理由と、既存システムとの接続が問われる
- 客先常駐は、避けるのではなく条件を確認する姿勢で答える
選考の進み方や評価の観点は会社と時期によって変わります。詳細は各社公式サイトでご確認ください。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。
よくある質問
Q. 二次請けであることは、面接で不利ですか。
A. 不利にはなりません。濁すほうが不利になります。位置を明示したうえで、その位置での工夫を語るほうが、正確に認識している人だと伝わります。
Q. 契約の型を知らない場合、どうしますか。
A. 応募前に上長や営業担当に聞けば分かります。「この案件は請負ですか、準委任ですか、派遣ですか」という質問には答えてもらえることが多くなります。この一問で、面接での答え方が変わります。
Q. 3年ごとに職場が変わっていることは、説明が要りますか。
A. 派遣であれば、労働者派遣法第40条の2により派遣可能期間が三年とされていることに触れます。制度によるものだと述べれば、自分の意思による離職ではないことが伝わります。
Q. 客先常駐を避けたい場合、応募は難しいですか。
A. 会社によります。自社での開発が中心の会社もあります。ただし、避けたい姿勢を前面に出すと不利になります。理解を示したうえで、頻度と場所を確認する形にしてください。
- e-Gov法令検索 民法 第632条(請負)・第656条(準委任)
- e-Gov法令検索 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第40条の2(派遣可能期間の制限)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/プログラマー
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/ITコンサルタント
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。