SIer(システムインテグレーター)の年収相場|転職で押さえるべきポイント
年齢がほぼ同じで、310.5万円の差
SIerの年収を考えるとき、業界内の階層を理解することが出発点になります。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の数値です。
| 区分 | 平均年収 | 平均年齢 | 労働時間 | 時間当たり賃金 | 有効求人倍率 | 就業者数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プログラマー | 578.5万円 | 37.1歳 | 月159時間 | 2,819円 | 0.94 | 389,760人 |
| ITコンサルタント | 889万円 | 38.3歳 | 月173時間 | 4,026円 | 0.89 | 656,770人 |
平均年齢は1.2歳差
37.1歳と38.3歳。年齢では説明がつかない差です。
年収では310.5万円
時給では1,207円。労働時間はITコンサルタントのほうが14時間長くなっています。
求人倍率はほぼ同じ
0.94と0.89。どちらも1を下回り、募集より求職者が多い状態です。需給の差でもありません。
残る説明
契約上の位置です。民法第632条は、請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約すること」と定めています。
完成の責任を負う側と、指示された作業をする側で、単価が違います。
この記事では、その構造を分解します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。
契約の位置が、単価を規定する
SIerの業界では、元請けから二次請け、三次請けへと仕事が流れます。
各段階で利益が乗る
元請けが顧客から受けた金額から、自社の利益を確保し、残りを二次請けに支払います。二次請けも同様です。下流に行くほど、1人あたりの単価は下がります。
この構造が個人の年収に及ぶ経路
会社が受け取る単価が、そのまま人件費の原資になります。同じ技術を持っていても、契約上の位置が違えば水準が変わります。
プログラマーの578.5万円という数字
就業者数389,760人の平均です。この区分には、元請けで働く人も、三次請け以下で働く人も含まれます。
判断の要点
転職を考えるとき、応募先が契約上どの位置にいるかが、水準を大きく左右します。技術の水準だけでは決まりません。
会社の型で、乗る水準が変わる
| 会社の型 | 水準の傾向 | 補足 |
|---|---|---|
| 大手元請けSIer | 高め | 顧客と直接契約。大企業の給与テーブル |
| ユーザー系SIer | 中〜高 | 親会社の水準に準じることがあります |
| 独立系の中堅SIer | 中程度 | 元請け案件の比率で変わります |
| 二次請け以下の開発会社 | 中〜低 | 単価が上流に規定されます |
| SES・派遣中心の会社 | 低め | 稼働時間が単価の基礎になります |
| 特定領域の専門会社 | 幅が大きい | 指名される領域があれば高くなります |
1つ目と4つ目の差
同じ技術者でも、元請けと二次請け以下では水準が違います。顧客から受け取る単価が違うためです。
2つ目の特徴
ユーザー系SIerは、親会社の給与テーブルに準じることがあります。安定する一方、上限も組織の枠に規定されます。
6つ目の可能性
特定領域で指名される会社は、契約上の位置に関わらず単価が高くなることがあります。代替が効かないためです。
確認すべき点 — 応募先の売上に占める元請け案件の比率。公表されていない場合も、「顧客と直接契約する案件はどの程度ありますか」と聞けます。
派遣という契約が、単価に与える影響
SES・派遣が中心の会社では、報酬の構造が違います。
時間が単価の基礎になる
派遣では、稼働時間に対して対価が支払われます。成果ではなく時間が基礎です。
期間の制限
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の第40条の2は、派遣先が 派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない と定め、同条第2項で 派遣可能期間は、三年とする としています。
同条第3項は、三年を限り、派遣可能期間を延長することができる としており、第4項・第5項は延長にあたって過半数労働組合等の意見聴取と説明が必要であるとしています。
なお同条第1項には、無期雇用派遣労働者や特定の業務など例外があるとされています。
年収への含意
3年で客先が変わると、その現場で築いた業務知識が単価に反映されにくくなります。 新しい客先では、また一から始まります。
逆に言えば
無期雇用の形で働く場合、期間の制限の扱いが変わります。自分の雇用形態を確認する価値があります。
水準を上げる3つの経路
578.5万円という数字は、39万人の平均です。この平均から離れる方法を整理します。
経路1:契約上の位置を上げる
二次請けから元請けへ、あるいは元請けの会社へ。顧客から受け取る単価が変わります。
経路2:決める仕事に移る
要件定義、完成の定義、投資の判断。民法第632条の請負では、何をもって完成とするかが報酬の前提です。ここを決める立場は代替が効きません。
経路3:指名される領域を持つ
基盤、セキュリティ、性能、特定のパッケージ。技術で指名される状態になれば、契約上の位置に関わらず単価が上がります。
現実的な順序 — 2つ目を満たしたうえで1つ目を狙います。決める経験がないまま元請けの会社に移っても、下流の役割に配属されることがあります。
近い水準はITコンサルティングファームの年収相場、金融ITの年収相場もあわせてご覧ください。
エージェントベストの見解
オファーを比較するとき、会社の契約上の位置を確認することをお勧めしています。求人票には「大手企業のシステム開発」と書かれていても、その会社が元請けなのか二次請け以下なのかは書かれていません。しかし、この違いが水準を大きく左右します。確認のしかたとしては、「顧客と直接契約する案件は、全体のどの程度ですか」と聞くのが分かりやすくなります。答えが具体的に返ってくる会社は、自社の位置を把握しています。あわせて、公表されている実績に顧客名が出ているかも手がかりになります。元請けであれば、顧客の了解を得て実績として公表できることが多くなります。job tagのプログラマーの区分が平均578.5万円、時給2,819円であることを踏まえ、提示額が妥当かを判断してください。
資格手当が、額として見えやすい業界
SIerでは、資格に対する手当が制度化されていることが多くあります。年収を判断するうえで、無視できない要素です。
対象になりやすい資格
情報処理技術者試験の各区分、ベンダー各社の認定資格、プロジェクトマネジメントの資格。会社によって対象と金額が違います。
2つの設計
月額の固定手当 — 毎月加算されます。金額は明確ですが、上限があります。
一時金 — 合格時に支給されます。継続的な収入にはなりません。
等級への反映
手当とは別に、資格が等級の判断材料になる会社もあります。この場合、額は見えにくい一方、長期的な影響が大きくなります。
なぜ制度化されているか
SIerでは、顧客への提案や入札の際に、有資格者の人数が要件になることがあります。会社にとって、資格保有者を増やす動機があります。
判断のしかた
提示年収に手当が含まれているのか、別に支給されるのかを確認します。含まれている場合、資格を取っても総額は変わりません。
取得を検討している場合
応募先の対象資格と金額を、入社前に確認しておくと、学習の優先順位が決まります。会社によって評価される資格が違うためです。
オファーで確認すること
- 会社の契約上の位置(元請け案件の比率)
- 担当する案件の契約の型(請負、準委任、派遣)
- 入社時の等級と、その等級のレンジ
- 客先常駐の有無と、その頻度
- みなし残業代の有無と時間数
- 決める会議に出る役割かどうか
1つ目が、水準を最も左右します。技術の水準だけでは決まりません。
2つ目は、働き方と評価軸を決めます。派遣であれば稼働時間、請負であれば案件の採算が基礎になります。
6つ目は、数年後の水準に関わります。job tagの区分では、決める側の時給が4,026円、実装中心が2,819円です。
エージェントベストの見解
時給で比べる習慣をお勧めしています。job tagの区分では、プログラマーが月159時間で時給2,819円、ITコンサルタントが月173時間で時給4,026円。年収では310.5万円の差ですが、ITコンサルタントのほうが14時間長く働いています。それでも時給で1,207円の差があるということは、単価そのものが違うということです。SIerの現場では、繁忙期に月200時間を超えることがあります。この場合、年収が同じでも時給は大きく下がります。オファーを受けたら、提示年収を想定される稼働時間で割ってみてください。前職より年収が上がっていても、時給では下がっていることがあります。みなし残業代の時間数と、それを超えた分の扱いは、必ず確認しておく項目です。
まとめ
SIerの年収相場について、押さえるべき点を整理します。
- プログラマー578.5万円、ITコンサルタント889万円。差は310.5万円
- 平均年齢は37.1歳と38.3歳で1.2歳差。年齢では説明がつかない
- 有効求人倍率も0.94と0.89でほぼ同じ。需給の差でもない
- 差の説明は契約上の位置。完成の責任を負う側と、指示された作業をする側
- 労働者派遣法第40条の2により、派遣可能期間は三年。業務知識が単価に反映されにくい
- 水準を上げるのは、位置を上げる、決める仕事に移る、指名される領域を持つの3つ
本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。
よくある質問
Q. 会社が元請けかどうか、どう調べますか。
A. 「顧客と直接契約する案件は、全体のどの程度ですか」と聞くのが分かりやすくなります。公表されている実績に顧客名が出ているかも手がかりです。元請けであれば、了解を得て実績として公表できることが多くなります。
Q. 技術を磨けば年収は上がりますか。
A. プログラマーの区分の水準の枠内では上がりますが、区分を超えるには別の条件が要ります。決める仕事に移るか、特定領域で指名される状態になるか。技術の深さだけでは、310.5万円の差は埋まりません。
Q. SESから請負の会社に移ると、年収は上がりますか。
A. 上がる可能性があります。派遣では稼働時間が単価の基礎ですが、請負では案件の採算が基礎になります。ただし、完成の責任を負う立場になるため、求められるものも変わります。
Q. 年収が上がっても、時給が下がることはありますか。
A. あります。SIerの現場では繁忙期に稼働が伸びます。提示年収を想定される稼働時間で割ってみると、実質が見えます。みなし残業代の時間数と超過分の扱いを確認してください。
- e-Gov法令検索 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第40条の2(派遣可能期間の制限)
- e-Gov法令検索 民法 第632条(請負)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/プログラマー
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/ITコンサルタント
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。