FASアナリストの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント

FAS・会計財務コンサルタント 志望動機の書き方 更新日 2026/8/10

志望動機は「なぜM&Aか」で止めない

FASアナリストの志望動機で最も多いのが、「M&Aに興味がある」で終わってしまう形です。これは動機のきっかけであって、志望動機にはなりません。M&Aに関わる仕事は、仲介、アドバイザリー、投資と複数あります。そのなかでなぜFASなのか、そしてなぜこの会社なのかまで進めて、初めて志望動機になります。

FASは、M&Aや事業再生の場面で財務の面から助言する仕事です。アナリストは、企業価値の評価や財務の精査といった、案件の土台を担います。この地道な実務に取り組む理由を語れるかどうかが、志望動機の説得力を分けます。

この記事では、志望動機の分解の仕方、説得力を生む材料、弱い志望動機の直し方、そして例文の骨子を整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

FASアナリストの志望動機を3つに分解する

説得力のある志望動機は、次の3つの問いに答えています。

問い答えるべきこと
なぜM&Aかこの領域に関わりたいと思った、自分の経験に根ざした理由
なぜFASか仲介・投資ではなく、財務の面から支える立場を選ぶ理由
なぜこの会社か数あるFASのなかで、その会社を選ぶ理由

多くの人が1つ目までは語れます。差がつくのは2つ目です。M&Aに関わりたいだけなら、仲介でも投資でもよいことになります。財務の精査や企業価値の評価という、FASの中心にある仕事に惹かれる理由を、自分の言葉で示せるかが問われます。

3つ目は、会社ごとの違いを踏まえて書きます。案件の領域、規模、育て方は各社で異なります。FASコンサルタントの会社規模による違いを押さえておくと、この部分に厚みが出ます。

説得力を生む材料はどこにあるか

志望動機の説得力は、意欲の強さではなく、経験との接続から生まれます。

過去の経験から探す

この仕事の実態と結ぶ

FASアナリストの仕事は、財務諸表の読み込み、企業価値の評価、報告書の作成が中心です。上の経験のどれかを、この実態とつなげます。「細かい数字を粘り強く扱うのが自分に合っている」という接続は、地道な実務が中心のこの職種では効きます。

将来の方向と結ぶ

数年後にどうなりたいかも、材料になります。財務の専門性を深めたいのか、いずれディールをまとめる側に回りたいのか。方向が定まっていると、なぜ今この入口なのかが自然につながります。詳しくはFASアナリストのキャリアパスを参考にしてください。

よくある弱い志望動機と、その直し方

弱い例:「M&Aは企業の成長に関わる、社会的意義の大きい仕事だから」

意義の説明にとどまり、なぜ自分がFASなのかが抜けています。→ 自分の経験のどこがこの仕事につながるかを足します。意義ではなく接続を語ります。

弱い例:「専門性を身につけて成長したいから」

どの職種でも言える表現です。→ どんな専門性を、なぜFASで身につけたいのかまで具体化します。財務の精査なのか、企業価値の評価なのか、対象を絞ります。

弱い例:「御社の実績が豊富で、幅広い案件に携われるから」

会社案内の言い換えになっています。→ その幅広さが、自分の何とつながるのかを書きます。会社の特徴ではなく、自分との関係を語ります。

共通する直し方は、主語を会社や業界から自分に戻すことです。立派な理由を並べるより、自分の経験と結んだ具体的な理由のほうが伝わります。

エージェントベストの見解

書類で見られるのは、志望動機の立派さではなく、経験と職種のつながりが具体的に書けているかどうかです。ここを数字で書けているかで、通過率が変わります。「財務に興味がある」ではなく、「前職で月次の予実差異を分析し、原因を特定して報告していた。この、数字のずれから実態を読む作業が、FASの財務精査に近いと考えている」。このように、過去の具体的な行動と、この仕事の中身を結ぶと、志望動機が一気に具体になります。抽象的な意欲は誰でも書けるため、書類では埋もれます。逆に、地味でも自分にしか書けない接続があると、面接で深掘りしても崩れません。志望動機を書き終えたら、同じ文章が他のM&A関連職や、他社にもそのまま使えないかを確認してください。使い回せる志望動機は、まだ自分のものになっていません。

例文の骨子(丸写しはしない)

以下は完成文ではなく、組み立ての型です。自分の経験に置き換えて使ってください。

骨子1:経理・財務出身の場合

前職で〔扱った数字と、そこで気づいた実態〕を経験した。この、数字から実態を読む作業を、より大きな判断につなげたいと考え、M&Aの財務精査を担うFASを志望する。数ある選択肢のなかでFASを選ぶのは〔財務の面から支える立場への理由〕。御社を選ぶのは〔案件領域・育て方など自分との接続〕。

骨子2:異業種・事業側出身の場合

前職で〔無形の課題を数字で整理し、人を動かした経験〕をした。この経験を、企業の重要な意思決定である M&A の場面で活かしたい。仲介や投資ではなくFASを選ぶのは〔財務という切り口への理由〕。御社を志望するのは〔具体的な接続〕。

いずれも、〔 〕を自分の言葉で埋めることが前提です。埋められない項目があれば、その部分はまだ動機が固まっていないサインです。

この職種を採用している会社のタイプ

志望動機の材料をさらに集めるには、FASコンサルタントの志望動機M&Aアドバイザーの志望動機も役立ちます。仲介側との違いはM&A仲介営業のキャリアパスで確認できます。

経験別・志望動機の組み立て方

会計士・監査法人出身 — 監査で培った財務を読む力を、助言する側で活かす方向に結びます。監査とFASの違い(第三者としての検証か、依頼者への助言か)を理解していることを示すと、志望の解像度が上がります。

金融機関出身 — 融資や審査で数字を扱った経験を、企業価値の評価につなげます。参考までに、job tagでは公認会計士の平均年収810.8万円、M&Aアドバイザー区分の平均年収1,134.6万円(いずれも令和7年賃金構造基本統計調査)とされています。報酬だけでなく、なぜその仕事に移るのかを語ることが大切です。

事業会社出身 — 予実管理や経営企画で数字に関わった経験を、外部から企業を評価する立場に置き換えます。当事者として動かした経験を、助言する側の視点でどう活かすかを示します。

併願先ごとに、志望動機の軸をずらす

FASを受ける方は、M&A仲介や事業会社の財務、監査法人の残留と並行して動いていることが多くあります。同じ経験でも、応募先によって前面に出す軸を変えると、志望動機が締まります。仲介には案件獲得への適性を、事業会社には当事者としての推進力を、FASには財務を精査し評価する分析への適性を、それぞれ前に出します。軸をずらすことは、動機を作り変えることではありません。自分の経験のどの面が、その仕事で最も活きるかを選ぶ作業です。

エージェントベストの見解

志望動機を検討される方は、FASと並行してM&A仲介や事業会社の経営企画を受けていることが多くあります。判断が割れるのは、財務を精査し評価する分析が好きなのか、案件を獲得し前に進める推進が好きなのか、という点です。ここが自分のなかで整理できていないと、どの応募先でも志望動機が薄くなります。おすすめしているのは、過去に時間を忘れて取り組めた作業を一つ思い出すことです。数字の矛盾を突き詰めるのが好きだった方は、FASの財務精査で強みが出ます。人を巻き込んで案件を動かすのが好きだった方は、仲介のソーシングで活きます。志望動機は、なりたい自分を語る場ではなく、これまでの自分の得意を、その仕事の中身と結ぶ場です。得意と仕事が噛み合っている志望動機は、面接官にも自然に伝わります。

まとめ

FASアナリストの志望動機について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業や業界の実態を示すものではありません。詳細は各社公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. M&Aへの興味だけでは、志望動機として弱いですか。

A. きっかけとしては問題ありませんが、それだけでは仲介や投資でもよいことになります。財務の面から支えるFASを選ぶ理由と、その会社を選ぶ理由まで進めることをおすすめします。

Q. 未経験ですが、経験との接続をどう作ればよいですか。

A. 直接の財務経験がなくても、無形の課題を数字で整理した経験や、細かい数字を粘り強く扱った経験が接続の材料になります。役割の説明ではなく、どう考えて動いたかを書くと結びやすくなります。

Q. 志望動機は会社ごとに変えるべきですか。

A. なぜM&Aか・なぜFASかの部分は共通で構いませんが、なぜこの会社かは会社ごとに書き分けます。同じ文章が他社にそのまま使えるなら、その会社を選ぶ理由がまだ言語化されていません。

Q. 年収や待遇を志望動機に入れてよいですか。

A. 主たる理由に据えると、他社でも条件が良ければよいことになり、志望の軸が弱く見えます。待遇は動機のきっかけとしては自然ですが、書類や面接では、経験とこの仕事の中身をつなぐ理由を前に出すほうが伝わります。

Q. 志望動機がどうしても抽象的になってしまいます。

A. 主語が会社や業界になっているサインです。「M&Aは意義がある」ではなく、「自分は前職で数字のずれを追う作業に時間を忘れて取り組めた」のように、過去の具体的な行動から書き始めると、抽象を抜けやすくなります。

出典

本記事は 2026/8/10 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)