SaaSベンダーの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント

SaaS・SaaSスタートアップ 志望動機の書き方 更新日 2026/8/11

SaaSベンダーの志望動機は、プロダクトへの好意から書き始める方が多い領域です。素材としては悪くないのですが、そこで止まると他の応募者と区別がつきません。この記事では、事業構造と開示資料を材料に、好意を出発点にしながら事業の視点まで届く志望動機の組み立て方を整理します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

「このプロダクトが好きだから」の先に何を書くか

利用者としての好意は、志望動機の材料になります。実際に使っている人が入ってくることは、事業側にとっても歓迎されます。

問題は、そこで終わると受け手が判断できないことです。好きだという感情は、その会社を選ぶ理由にはなっても、その会社が自分を選ぶ理由にはなりません。

もうひとつの問題は、利用者の視点と提供者の視点が違うことです。利用者は使いやすさを求めますが、提供者は多数の利用者に共通して使える形を設計します。個別の要望をすべて実装すると、プロダクトは破綻します。この非対称を理解していないと、「こういう機能があればいいのに」という要望の列挙で終わってしまいます。

有効なのは、好意を起点にしながら、なぜその機能が実装されていないのかを考えたところまで書くことです。制約を想像できている応募者は、提供側の視点を持っていると読まれます。

志望理由を3つの層に分解する

志望動機は、次の3つに分けると整理しやすくなります。

第一に、なぜ受託や自社利用ではなく、プロダクトを作って提供する側に立ちたいのか。第二に、なぜ大手のパッケージベンダーではなくSaaSなのか。第三に、なぜその会社なのか。

抜けやすいのは第二の層です。ソフトウェアを作って売る事業は、SaaS以外にも存在します。それでもSaaSを選ぶ理由が示されていないと、業態を区別せずに応募していると読まれます。

第二の層に答える材料としては、改善の反復性が接続しやすくなります。SaaSは提供したあとも継続的に改善でき、その結果が継続率という形で返ってきます。作って終わりではなく、反応を見ながら育てる働き方を選びたい、という筋です。

もうひとつ有効なのが、事業の成長と自分の役割が連動する点に触れることです。組織が拡大している局面では、担当範囲が短期間で広がります。この環境を選ぶ理由を自分の経験と結びつけると具体になります。

事業構成から「その会社である理由」を作る

第三の層を埋める材料は、上場企業であれば有価証券報告書から取れます。同じSaaSでも、事業の構え方はかなり違います。

株式会社マネーフォワードの2025年11月期の有価証券報告書では、連結の従業員数2,839名(424)のうち、Businessが1,754名(196)、Homeが74名(20)、Xが106名(3)、Financeが10名(3)、全社(共通)が895名(202)と記載されています。個人向けサービスの知名度が高い会社ですが、人員の重心は法人向けにあります。

freee株式会社の2025年6月期の有価証券報告書では、プラットフォーム事業の単一セグメントであるとしてセグメント別の記載を省略しており、連結の従業員数は1,901名(156)です。前事業年度末に比べ179名増加した理由として、持続的な事業成長を見据えた採用増加が挙げられています。

サイボウズ株式会社の第29期(2025年12月期)の有価証券報告書では、報告セグメントがソフトウェアの開発・販売のみであるとされ、連結の従業員数は1,356名(138)です。

括弧内はいずれも臨時雇用者数の年間平均人員です。

こうした事実を踏まえると、志望動機の重心が定まります。法人向けと個人向けで人員構成が分かれている会社なら、自分が関わりたいのはどちらかを明示できます。単一セグメントの会社なら、プロダクトそのものへの理解を軸に据えられます。

エージェントベストの見解

この領域で最も多い転職後のずれは、「ユーザーの声を聞いて改善できる」と期待して入り、実際には要望を断る仕事が想像より多い、というものです。SaaSは同じ基盤を全利用者が使う構造なので、個別最適の要望は実装できません。断る判断とその説明が、日々の業務に含まれます。利用者として好きだった方ほど、この立場の転換に戸惑います。志望動機を書く段階でこの構造を理解していることが伝わると、面接での評価が変わります。応募前に、要望をどう優先順位づけしているのかを聞いておくと、入社後の実感とのずれが小さくなります。

よくある弱い志望動機と、その直し方

実際に目にする型と、修正の方向を挙げます。

「プロダクトのファンです」型。 出発点としては有効ですが、これだけだと利用者の立場から出ていません。使っていて気づいた制約と、その背景にある設計上の判断まで想像して書きます。

「成長市場だから」型。 市場の伸びは前提であって志望動機ではありません。伸びる過程で何が不足するのか、そこで自分が担いたい役割まで下ろします。

「裁量が大きいから」型。 受け身に読まれます。拡大局面の裁量とは、決める人がいないので自分で決めるという状態です。その状況で判断した経験があれば、そちらを先に書きます。

「顧客に近いところで働きたい」型。 方向は正しいのですが、SaaSに限りません。継続率という指標で顧客との関係が測られる構造まで触れると具体になります。

「前職のシステムが使いにくかったから」型。 素材としては強いのですが、不満の表明で終わると建設的に見えません。その使いにくさが何に起因していたかまで分析して書きます。

志望動機の骨子を組み立てる

完成した例文をそのまま使うことは避けたほうが無難です。ここでは骨子だけを示します。

冒頭は、前職で観測した具体的な事実から入ります。作ったものがその後どう使われたか分からなかった経験、あるいは業務ソフトの制約に困った経験などが素材になります。

次に、その状況から「使われ続けるものを作りたい」という整理を置きます。ここがSaaSを志望する筋につながります。

続いて、SaaSという業態を選ぶ理由を述べます。改善の反復性、継続率という指標で結果が返ってくる構造といった内容がここに入ります。

最後に、応募先を選ぶ理由を書きます。セグメント構成、組織の局面、プロダクトの対象顧客など、開示資料から取れる事実を使います。

書き上げたら、職務経歴書と並べて矛盾がないか確認します。あわせて、3層のそれぞれを一文で言える状態にしておくと、面接での追加質問にも崩れずに答えられます。

志望動機の材料を集める順序

材料集めには効率のよい順序があります。

第一に、上場企業であれば有価証券報告書のセグメント別従業員数を見ます。人員の重心がどこにあるかで、入社後に関わる領域が推定できます。

第二に、従業員数の増減理由を読みます。採用によるものか、M&Aによるものかまで注記されている場合があります。組織の局面が分かります。

第三に、プロダクトの対象顧客を確認します。中小企業向けか大企業向けかで、営業の進め方も開発の優先順位も変わります。

第四に、カジュアル面談の機会があれば、直近1年で最も時間を使った取り組みを聞きます。公開情報にはない具体が得られます。この順序で集めた事実を織り込むと、応募先ごとに書き分ける手間も小さくなります。

エージェントベストの見解

この領域を検討する方は、受託開発会社、事業会社の情報システム部門、そしてSaaSスタートアップを並行して比較しているケースが多く見られます。判断が割れるのは、組織の成熟度です。上場して数年が経つSaaS企業では制度も進め方も整っている一方、役割は分かれています。より早い段階の企業では、担当範囲が広い代わりに整っていないことも多い。開示されている平均勤続年数を見ると、同じSaaSでも2.9年から6.7年まで幅があります。志望動機を書く段階でこの比較軸を言語化しておくと、なぜこの会社なのかという問いに答えやすくなります。併願は伏せる必要がなく、比較したうえでの結論として語れるほうが説得力が出ます。

面接で口頭に落とすときの注意

書き上げた志望動機は、そのまま読み上げる形では機能しません。この領域の面接は対話の比重が高く、暗記した文章は追加質問で崩れやすくなります。

3層のそれぞれを一文で言える状態にしておき、詳細は問われてから足す形にすると自然です。特に第二の層(なぜSaaSという業態か)は掘り下げられやすいため、根拠になる自分の経験を一つ用意しておきます。

プロダクトへの好意に触れる際も、言い方に注意が要ります。「使っていて好きだった」で止めると利用者の立場から出ていません。「使っていて、この制約はこういう判断の結果だろうと考えた」と続けると、提供側の視点に立っていることが伝わります。

まとめ

SaaSベンダーの志望動機は、なぜ提供する側に立ちたいのか、なぜSaaSという業態なのか、なぜその会社なのかという3層で組み立てます。抜けやすいのは2層目です。

プロダクトへの好意は出発点として有効ですが、利用者の立場から出る必要があります。実装されていない機能について、その背景にある設計上の判断まで想像できると、提供側の視点を持っていると読まれます。

3層目の材料は、有価証券報告書のセグメント別従業員数から取れます。個人向けサービスで知られる会社でも人員の重心が法人向けにある場合があり、応募職種と自分の関心のずれを事前に検出できます。

よくある質問

Q. プロダクトを使ったことがないと不利ですか。

不利になる場合があります。無料プランや試用が可能であれば、応募前に触れておくことをおすすめします。使ったうえで気づいた点を語れると、志望動機の具体性が上がります。

Q. 業務知識がない領域のSaaSでも応募できますか。

応募できます。ただし選考では、対象業務について調べた形跡が確認されます。会計、人事、営業支援など、プロダクトが扱う業務の基本的な流れを把握しておくと、面接での会話が噛み合います。

Q. 前職を辞める理由と志望動機は分けて書くべきですか。

分けて考えたほうが整理しやすくなります。辞める理由は現状の説明、志望動機は次に何をしたいかの説明であり、役割が違います。ただし両者が矛盾しないことは必要です。作ったものがどう使われたか分からなかったという不満だけで終わると、同じ理由で次も辞めると受け取られる可能性があります。前職で得た経験のうち、次の職場で使いたいものを一つ挙げておくと、話が前向きにつながります。

Q. 志望動機はどの職種に寄せて書くべきですか。

募集要項に書かれた役割に合わせることをおすすめします。開発職なら継続的な改善への関心を、営業職なら導入後の定着への視点を前に出します。同じ経歴でも、どちらを前に置くかで読まれ方が変わります。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)