SaaSベンダーの転職難易度|転職で押さえるべきポイント

SaaS・SaaSスタートアップ 転職難易度 更新日 2026/8/11

SaaSベンダーへの転職は、職種によって難易度が正反対になります。同じ会社の同じ時期の募集でも、通りやすい職種と厳しい職種が同居します。この記事では、公開されている統計と開示資料から、その構造を分解します。2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

同じ統計区分でも、募集の文脈で需給が反転する

まず需給を確認します。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト job tag では、以下の数値が示されています。

職種平均年収就業者数有効求人倍率求人賃金(月額)
システムエンジニア(Webサービス開発)578.5万円389,760人2.5735.2万円
プログラマー578.5万円389,760人0.9432.9万円

平均年収と就業者数は令和7年賃金構造基本統計調査および令和2年国勢調査、有効求人倍率と求人賃金は令和6年度ハローワーク求人統計にもとづく数値です。

注目したいのは、両区分の賃金構造基本統計調査の数値が完全に一致している点です。統計上は同一の職業分類として集計されています。それにもかかわらず、ハローワーク求人統計にもとづく有効求人倍率は2.57と0.94に分かれます。

つまり、同じ人材が「サービス開発を担う人」として募集されるか「実装を担う人」として募集されるかで、競争環境が反転します。応募する求人の書かれ方によって、通過しやすさが変わるということです。

この構造を知っていると、応募戦略が変わります。実装経験しか書いていない書類は、後者の文脈で読まれます。設計や仕様の判断に関与した部分を前に出すだけで、前者の文脈に載ります。

職種によって難易度が正反対になる

この領域の職種別の難易度を整理します。以下は業界一般の傾向であり、個社の運用を断定するものではありません。

開発職。 前掲のとおり需給は緩んでいます。ただしSaaS特有の要件として、同じ基盤を多数の利用者が使う前提での設計経験が歓迎されます。受託開発の経験でも接続しますが、運用まで見た経験の有無が効きます。

プロダクトマネジメント。 母集団が小さく、難易度は高くなります。プロダクトの意思決定に関わった経験が求められるためです。開発や営業から社内で移る経路のほうが一般的です。

カスタマーサクセス。 職種としての歴史が浅く、経験者の絶対数が限られます。そのため異業種からの参入余地が比較的あります。既存顧客との関係構築や、利用状況を見て提案した経験が接続します。

フィールドセールス。 無形商材の法人営業経験があれば接続しやすい職種です。ただし受注額だけでなく導入後の定着まで見ていたかが問われます。

コーポレート系。 上場企業であれば一般的な要件が中心ですが、事業の成長速度に制度が追いつかない局面での対応経験が評価されます。

つまり「SaaSへの転職は難しいか」という問いは、職種を特定しないと答えが出ません。

組織の拡大局面が入り口を作る

この領域の採用は、組織の局面に強く連動します。開示資料から局面を読み取れます。

会社対象事業年度提出会社の平均勤続年数従業員数の動き
freee株式会社2025年6月期2.2年連結で前事業年度末比179名増(採用増加が理由と記載)
株式会社マネーフォワード2025年11月期2.9年連結2,839名(424)
サイボウズ株式会社第29期(2025年12月期)6.7年連結1,356名(138)

括弧内は臨時雇用者数の年間平均人員です。

平均勤続年数が2年台の会社は、採用によって組織が拡大している局面にあります。この局面では募集の絶対数が多く、要件の運用にも幅が生まれやすくなります。

一方、勤続年数が長い会社は組織が安定しており、募集は計画的な補充が中心になります。求人の数は限られますが、制度は整っています。

したがって、入りやすさを優先するなら拡大局面の会社を、制度の整い方を優先するなら安定した会社を選ぶという判断ができます。有価証券報告書の平均勤続年数と従業員数の増減理由は、この判断の材料になります。

エージェントベストの見解

この領域で最も多いのは、職種を絞らずに「SaaSに行きたい」と応募して、どこにも刺さらないというパターンです。前掲のとおり、同じ会社でも職種によって母集団の大きさがまるで違います。プロダクトマネジメントは経験者が少なく難易度が高い一方、カスタマーサクセスは職種の歴史が浅いぶん異業種からの参入余地があります。相談を受けるときにまず一緒にやるのは、これまでの経験を職種の要件に照らして並べ直す作業です。同じ経歴でも、どの職種で応募するかを変えただけで通過した方が何人もいます。業界を決めたら、次は職種を決めることです。

未経験・異業種から入る経路

SaaSでの実務経験がない場合でも、接続する経路はあります。

受託開発やSIerから開発職へ。 技術面の実務は共通します。運用や保守まで担当した経験があれば、継続的な改善という働き方に接続します。

無形商材の法人営業からフィールドセールスへ。 提案型の営業経験は直接評価されます。導入後の定着まで見ていた経験があると強くなります。

業界知識を持つ職種からカスタマーサクセスへ。 プロダクトが対象とする業務を知っていることが価値になります。会計SaaSなら経理経験、人事SaaSなら人事経験が接続します。

事業会社の情報システム部門から。 導入する側の視点を持っていることが、提供側でも活きます。

サポート職からの社内移行。 カスタマーサクセスやセールスへ移る経路が制度として用意されている会社があります。

いずれの場合も、書類の段階で接続点を明示する必要があります。読み手に推測させると通過率が下がります。

難易度を下げるための打ち手

現時点の経歴で届きにくいと感じる場合でも、手はあります。

職種を先に決める。 前述のとおり、職種によって母集団の大きさが違います。自分の経験が最も接続する職種を特定してから応募先を選びます。

求人の文脈を見る。 同じ経験でも、サービス開発として応募するか実装担当として応募するかで有効求人倍率が2.57と0.94に分かれます。募集要項の書かれ方を確認します。

運用と継続の経験を前に出す。 作った、売ったで終わらず、その後どうなったかまで書きます。この領域の事業構造に直結する情報です。

拡大局面の会社を見る。 開示資料の平均勤続年数と従業員数の増減理由から、採用に積極的な局面かどうかを推し量れます。

指標を書く。 この領域は数値で管理する文化が強く、自分が追っていた指標を書けるかどうかで読まれ方が変わります。

年代別に見た通りやすさの違い

年齢によって見られる観点が変わります。

20代では、素養と学習速度が中心に見られます。異業種からの参入余地も比較的あります。

30代前半では、担当した領域の深さが問われます。前掲3社の提出会社の平均年齢が33.1歳から36.4歳であることを踏まえると、この年代は組織の中心層にあたります。

30代後半以降では、チームを動かした経験や、事業の数値に責任を持った経験が求められる傾向があります。職種によっては管理職としての募集が中心になります。

報酬の構造についてはSaaSベンダーの年収相場、選考の流れはSaaSベンダーの選考フロー・面接対策で整理しています。

エージェントベストの見解

面接の後半で問われるのは、「あなたが関わったものは、その後どうなりましたか」です。ここに答えを持たずに来る方が多く、通過率を下げています。技術や実績の話は前半で終わり、後半は継続の話に移ります。この領域は契約が続くことで収益が積み上がる構造なので、作った時点や売った時点ではなく、その後が評価の対象になります。準備としては、担当した案件やプロダクトを2件選び、半年後・1年後にどうなったかを書き出しておくことです。うまくいかなかったものでも構いません。その理由を分析できている方のほうが、事業を見ていると評価されます。

応募のタイミングをどう作るか

この領域の採用は、事業計画や資金調達の局面に連動して動きます。上場企業であれば、決算資料や有価証券報告書から従業員数の推移が読み取れます。

採用を強化している時期には、要件の運用にも幅が生まれやすくなります。逆に、組織を絞る局面では要件が厳しくなります。応募の時期を選べる状況であれば、この動きを見ておく価値があります。

現実的な進め方としては、志望先を複数リストアップし、求人が出た時点ですぐ応募できるよう職務経歴書を整えておく形です。この領域は募集から締め切りまでが短いことがあります。

まとめ

SaaSベンダーの転職難易度は、業界単位ではなく職種単位で考える必要があります。プロダクトマネジメントは経験者の母集団が小さく難易度が高い一方、カスタマーサクセスは職種の歴史が浅いぶん異業種からの参入余地があります。

需給についても、同じ統計区分でありながらサービス開発として2.57、実装担当として0.94と有効求人倍率が反転します。応募する求人の文脈によって競争環境が変わります。

組織の局面も入り口を左右します。平均勤続年数が2年台の会社は採用による拡大局面にあり、募集の絶対数が多くなります。開示資料の平均勤続年数と従業員数の増減理由が、その判断材料になります。

よくある質問

Q. SaaS未経験でも入れますか。

職種によります。開発職は受託開発の経験から、フィールドセールスは無形商材の法人営業から、カスタマーサクセスは対象業務の実務経験から接続する経路があります。書類の段階で、その経験と募集要件の接点を明示することが要点です。

Q. どの職種が最も入りやすいですか。

一律には言えませんが、カスタマーサクセスは職種としての歴史が浅く経験者の絶対数が限られるため、異業種からの参入余地が比較的あります。ただし対象業務の知識や、既存顧客との関係構築の経験が求められます。

Q. 年齢が上がると難しくなりますか。

年齢そのものより、求められる経験の種類が変わります。30代後半以降は、チームを動かした経験や事業の数値に責任を持った経験が問われる場面が増えます。前掲3社の提出会社の平均年齢は33.1歳から36.4歳で、組織の中心層はこの年代です。

Q. 求人はどのくらい出ていますか。

業界単位の求人数を示す公的統計はありません。職種側では、システムエンジニア(Webサービス開発)の有効求人倍率が2.57(令和6年度ハローワーク求人統計)と示されています。個別企業の採用状況は、有価証券報告書の従業員数の増減からも一定程度読み取れます。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)