中小企業向けコンサルティングの年収相場|転職で押さえるべきポイント
公的統計の平均額は、そのままでは使えない
中小企業向けコンサルティングの年収を調べると、最初に目に入るのが公的統計の平均額です。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、「中小企業診断士」の区分に次の数値が示されています。
- 平均年収 1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査)
- 平均年齢 39.4歳
- 労働時間 月 162時間
- 時間当たり賃金 5,497円
- 有効求人倍率 0.57(令和6年度)
- 求人賃金 月額 28.3万円(令和6年度)
- 就業者数 82,920人(令和2年国勢調査)
同じサイトの「経営コンサルタント」の区分と、これらの数値は完全に一致します。 賃金統計の上では、ひとつの区分として扱われているためです。
そして、平均年収1,134.6万円と、求人賃金の月額28.3万円(年換算で約340万円)の間には、大きな開きがあります。入口の募集条件と、在職者の平均は別のものを指しています。 この記事では、実際に参照できる数値を積み上げていきます。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。
なぜ、これほど差が開くのか
理由は就業形態にあります。job tagの中小企業診断士の区分では、就業形態の内訳が次のようになっています。
| 就業形態 | 割合 |
|---|---|
| 自営・フリーランス | 57.9% |
| 正規の職員・従業員 | 47.4% |
| 経営層 | 13.2% |
過半数が自営です。(複数回答のため、割合の合計は100を超えます。)経営コンサルタントの区分でも自営・フリーランスが43.4%を占めており、雇用されて働く人だけの統計ではありません。
自営で長く続けている層が平均を押し上げる一方、求人として出るのは経験の浅い層向けのポジションが中心です。この2つを混ぜて見ると、実態から離れます。
独立した場合の売上分布
日本中小企業診断士協会連合会が令和8年5月に公表した調査(調査時点は令和7年11月、回答1,847名)では、診断士業務を年間100日以上行っている方(564名)の年間売上が示されています。
| 年間売上 | 構成比 |
|---|---|
| 300万円以内 | 12.4% |
| 301〜400万円 | 9.9% |
| 401〜500万円 | 9.2% |
| 501〜800万円 | 20.2% |
| 801〜1,000万円 | 16.0% |
| 1,001〜1,500万円 | 16.5% |
| 1,501〜2,000万円 | 8.2% |
| 2,001〜2,500万円 | 3.0% |
| 2,501〜3,000万円 | 0.9% |
| 3,001万円以上 | 2.8% |
最も多いのは501〜800万円の20.2%です。501〜1,500万円までを合わせると52.7%となり、このあたりがボリュームゾーンと読めます。一方で、500万円以下も31.5%を占めています。
注意したいのは、これが売上であって手取りではないことです。経費と社会保険料を差し引く前の金額になります。年間100日以上稼働している方に絞った集計である点も、あわせて押さえてください。
単価は、公的か民間かで決まる
同じ調査から、1日あたりの報酬額を見ると、仕事の性格による差がはっきりします。
| 業務 | 公的業務がかなり高い方 | 民間業務がかなり高い方 |
|---|---|---|
| 診断業務(1日・平均額) | 39.4千円 | 107.2千円 |
| 経営支援業務(1日・平均額) | 43.3千円 | 119.4千円 |
| 調査研究業務(1日・平均額) | 30.5千円 | 92.0千円 |
| 講演・教育訓練業務(1日・平均額) | 43.8千円 | 115.2千円 |
おおよそ3倍近い開きがあります。
もうひとつ、継続収入である顧問料にも差があります。顧問契約を結んでいる割合は、公的業務が中心の方で20.6%、民間業務が中心の方で53.5%。顧問料の月額平均は75.6千円と150.9千円で、顧問先の数も2.4社と6.2社と差が出ています。
エージェントベストの見解
公開されている平均年収1,134.6万円は、自営で長く続けてきた層を含む区分の平均です。転職の目安には使えません。参照すべきは3つあります。ひとつ目は求人賃金の月額28.3万円。これは入口に近い水準です。ふたつ目は、応募先が提示する等級とレンジ。3つ目は、成果報酬や案件連動の手当がどの程度乗るか。この3つを確認すれば、自分の場合の見込みは十分に絞れます。転職の面談で「業界の平均は1,000万円を超えるらしい」という前提のまま話が進むと、後で条件が合わずに終わります。最初に外しておくべき数字です。
企業に勤める場合の年収の決まり方
コンサルティング会社に在籍して中小企業を支援する場合、年収は次の3つで決まります。
1. 等級(グレード) アナリスト、コンサルタント、マネージャーといった等級ごとにレンジが設定されます。年次より、担当できる範囲で決まる会社が多いとされています。
2. 稼働の考え方 支援先の数と訪問頻度で、担当できる件数の上限が決まります。1社あたりの単価が高くない領域では、件数が処理量の上限に当たるため、ここが評価の基準になりやすい構造です。
3. 受注への関与 提案から受注までを担当する会社では、獲得実績が賞与に反映される設計が一般的です。上場しているコンサルティング会社では、有価証券報告書で平均年間給与を確認できます。応募前に一度目を通しておくと、レンジの当たりが付きます。
稼働の内訳から、収入を逆算する
年収を見積もるとき、単価だけを見ても数字は出ません。単価×稼働日数×継続率の3つが揃って初めて金額になります。
同調査では、中小・小規模企業を対象とした診断士業務の年間日数が示されています。
| 業務 | 年間の平均日数 |
|---|---|
| 経営支援業務 | 81.8日 |
| 診断業務 | 41.2日 |
| 調査研究業務 | 31.9日 |
| 執筆業務 | 21.8日 |
| 講演・教育訓練業務 | 19.3日 |
| 合計 | 120.8日 |
合計が各業務の単純合算と一致しないのは、業務ごとに回答者数が異なるためです。押さえたいのは、年間の稼働が120日前後という水準です。
ここに単価を掛けると、おおよその姿が見えます。公的業務が中心で経営支援の日当が43.3千円の場合と、民間業務が中心で119.4千円の場合では、同じ日数でも結果が大きく変わります。さらに顧問契約があれば、訪問日数と別に月額が積み上がります。
年間の稼働日数を増やすには、案件の入口を複数持つ必要があります。単価を上げるには、専門分野と実績が要ります。どちらを先に動かすかで、収入の伸び方の形が変わります。 転職の面接でレンジを確認するときも、この3つのどれで評価されるのかを聞いておくと、入社後のずれが減ります。
年収が上がるのは、どの局面か
- 専門分野が決まったとき — 同調査では専門分野の1位として「経営企画・戦略立案」が28.4%、「財務」12.2%、「販売・マーケティング」12.1%、「情報化・IT化」8.3%と分かれています。指名で相談が来る領域を持つと、単価が動きます
- 民間案件の比率が上がったとき — 単価と顧問契約率の両方が変わります
- 継続契約に転換できたとき — 単発の専門家派遣から顧問契約に移ると、収入が安定します
- 人を使えるようになったとき — 自分の稼働時間が上限になる構造から抜けられます
逆に、公的業務だけで日数を積み上げる働き方は、単価が制度で決まるため上限が見えやすくなります。どちらが良いという話ではなく、収入の設計が違います。
会社ごとの水準を調べるときの順序
上場している会社であれば、有価証券報告書の平均年間給与が第一の手がかりになります。企業別の記事もあわせてご覧ください。
平均年間給与は全社員の平均であり、職種や等級の構成に左右されます。同じ会社でも、支援職と管理部門では水準が異なります。 数字を見たうえで、面接でポジション別のレンジを確認するのが現実的です。
エージェントベストの見解
年収の話で最も多いミスマッチは、独立後の売上を、転職後の年収と同じ物差しで比べてしまうことです。同調査の売上分布は、経費を引く前の金額で、しかも年間100日以上稼働している方に絞った数字です。企業に勤める場合の年収とは、含まれるものが違います。比較するなら、独立側は経費と社会保険料を引いた後の手残りに直し、雇用側は賞与と手当を含めた総額に直す。この作業をしてから並べると、判断が変わる方が少なくありません。特に30代で家族がいる場合、可処分所得と保障の差が効いてきます。
まとめ
- job tagの平均年収1,134.6万円は、経営コンサルタントと同一の区分平均
- 求人賃金は月額28.3万円で、入口の水準はここに近い
- 独立した場合の年間売上は501〜800万円が20.2%で最多。500万円以下も31.5%
- 1日あたりの報酬は、公的業務中心と民間業務中心で3倍近い差
- 顧問契約率は20.6%と53.5%、顧問料の月額平均は75.6千円と150.9千円
よくある質問
Q. 未経験で入社した場合、最初の年収はどのくらいですか。 A. 公開されている求人賃金は月額28.3万円(令和6年度)です。実際の提示額は、前職の年収と等級で決まります。応募前に、想定される等級とそのレンジを確認しておくとずれが減ります。
Q. 中小企業診断士を取ると年収は上がりますか。 A. 同調査では、資格取得時の勤務先の反応として「評価・処遇に変化はなかった」が35.5%で最多でした。「資格手当が支給された」は14.7%、「昇給・昇格した」は4.8%です。資格そのものより、資格を使って何をしたかが処遇に表れる傾向があります。
Q. 副業として始めた場合、どのくらいの収入になりますか。 A. 稼働日数によります。同調査の売上分布は年間100日以上稼働している方の集計であり、休日中心の稼働はこれより少なくなります。1日あたりの報酬額(公的業務中心で39.4千円〜43.8千円)に、現実的な稼働日数を掛けて見積もるほうが実態に近くなります。
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/中小企業診断士
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)/経営コンサルタント
- 日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(令和8年5月)
- 日本中小企業診断士協会連合会 中小企業診断士に関するアンケートデータ
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。