事業承継支援の年収相場|転職で押さえるべきポイント

事業承継支援 年収相場 更新日 2026/8/11

参照できる区分と、その読み方

事業承継支援には、独立した統計区分がありません。関連する区分を並べるのが実務的です。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の数値です。

区分平均年収平均年齢労働時間時間当たり賃金有効求人倍率就業者数
M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント・M&Aアドバイザー1,134.6万円39.4歳月162時間5,497円0.5782,920人
公認会計士810.8万円42.2歳月150時間4,304円0.3221,850人
証券外務員664.5万円2.79

M&A区分の1,134.6万円

この数字は、成約に連動する報酬を含む平均です。第三者承継(M&A)を扱う場合、この水準が参照点になります。

公認会計士の810.8万円

労働時間が月 150時間 と短く、時給では 4,304円。有効求人倍率は 0.32 で、資格保有者そのものが限られます。

証券外務員の2.79

有効求人倍率が高く、金融営業の入口の広さを示します。事業承継の相談は、金融機関の法人担当が受けることが多い領域です。

注意点

いずれも事業承継支援だけの数字ではありません。この領域の報酬は、どの型の承継を、どの立場で扱うかで変わります。

この記事では、その構造を分解します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

案件が長いことが、報酬設計を規定する

この領域の報酬を考えるとき、案件が数年に及ぶことが前提になります。

なぜ長いか

経営承継円滑化法第4条の特例は、旧代表者の推定相続人及び会社事業後継者の全員の合意 を要件としています。同条第3項は個人事業についても同様に全員の合意を求め、第4項・第5項は処分等の場合の措置についても全員の合意をもって定めなければならないとしています。

関係者が多く、1人でも反対すれば成立しません。

報酬への影響

成功報酬だけの設計では、数年間まったく収入が発生しません。したがって、この領域では 固定給の比重が高い設計が一般的になります。

第三者承継の場合は別

M&Aとして成立すれば、成功報酬が発生します。この場合、M&A仲介営業の年収相場M&Aアドバイザーの年収相場の構造に近づきます。

判断の要点

応募先が、親族内・従業員承継を中心に扱うのか、第三者承継が主軸なのか。ここで報酬の設計が変わります。

会社の型で、乗る水準が変わる

会社の型水準の傾向報酬の設計
金融機関(銀行・信用金庫)その金融機関の水準固定給中心。全社の給与テーブル
M&A仲介会社の承継部門幅が大きい成功報酬の比重が高い
税理士法人・会計事務所中程度固定給中心。資格手当がある場合も
事業承継専門のコンサルティング中〜高固定給と成果の組み合わせ
公的機関の支援窓口公務員・団体職員の水準固定給。成果連動は小さい

1つ目の注意点

金融機関では、事業承継の担当も全社の給与テーブルに乗ります。専門職として別建てになることは通常ありません。

2つ目の幅の大きさ

M&A仲介系では、成約に連動した報酬が大きくなります。ただし、成約までの期間が長いため、初年度は固定給が中心になります。

5つ目の位置づけ

公的機関では、成果連動の要素が小さくなります。相談を受ける経験を積む場としては有効ですが、報酬の伸びは限定的です。

確認すべき点 — 固定給と成果連動の比率、そして成果の定義(成約か、面談件数か、認定の取得か)。

資格が、報酬にどう効くか

この領域には、士業しかできない工程があります。

制度上の限定

経営承継円滑化法第4条第1項第二号は、遺留分算定財産に算入すべき価額の証明について、弁護士、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人がその時における相当な価額として証明をしたもの と定めています。

同条第2項は、旧代表者、会社事業後継者、業務停止中の者、およびこれらの者が半数以上を占める法人は、この証明ができないとしています。

報酬への含意

資格保有者は、この工程を自分で担えます。その分、案件に占める役割が大きくなります。

統計から見た希少性

job tagの「公認会計士」の区分では、就業者数が 21,850人、有効求人倍率が 0.32。人数が限られる一方、求人も多くはありません。

資格手当の実態

会社によって扱いが違います。月額の固定手当がある場合と、等級の判断に組み込まれる場合があります。

資格がない場合

相談の入口、推進・調整、資金の設計といった工程を担います。これらは資格では代替できない領域であり、そこでの価値を示せれば水準は上がります。

従業員承継の資金設計が、評価される理由

この領域で見落とされやすい役割です。

何が問題か

従業員や役員が会社を継ぐ場合、株式を買い取る資金がありません。 オーナーから譲り受けるには、相応の金額が必要です。

加えて個人保証

金融機関からの借入に、経営者個人の保証が求められることがあります。後継者にとって、これは大きな負担です。

求められる技術

なぜ評価されるか

親族内承継では相続の制度が使えますが、従業員承継には遺留分の問題がない代わりに、資金の問題が残ります。 制度で解けない部分です。

報酬への含意

金融機関出身で融資の経験がある方は、この領域で直接の価値を出せます。制度の知識だけの人には解けない部分だからです。

エージェントベストの見解

この領域のオファーを検討される方に、成果の定義を確認することをお勧めしています。事業承継支援では、何をもって成果とするかが会社によって違います。M&Aとして成約したときだけを成果とする会社もあれば、認定の取得や、承継計画の策定を成果とする会社もあります。経営承継円滑化法第4条が推定相続人の全員の合意を要件としているように、この領域の案件は数年かかります。成約だけを成果とする設計では、入社から2〜3年は評価されにくくなります。確認していただきたいのは、直近1年で成果として認定された案件の内訳です。成約が何件、それ以外が何件か。この比率が分かると、自分がどう評価されるかの見当がつきます。答えにくそうにする会社もありますが、それ自体が情報になります。

案件の単価は、会社の規模で決まる

この領域の報酬を考えるとき、扱う企業の規模が単価を規定します。

小規模な企業

従業員数名から数十名の会社では、株式の評価額も、支援の対価も小さくなります。件数を積む構造になります。

中規模な企業

株式の評価額が大きくなり、税負担も重くなります。制度の活用による効果が大きく、対価も上がります。

なぜ規模で変わるか

制度の検討にかかる工数は、会社の規模に完全には比例しません。従業員10名の会社でも100名の会社でも、経営承継円滑化法の要件を確認する工程は同じです。 しかし、支払える金額は規模に応じて変わります。

第三者承継の場合

M&Aとして成立すれば、譲渡額に連動した報酬が発生します。この場合、規模の影響がさらに大きくなります。

確認のしかた

「主な顧客の従業員規模はどのあたりですか」という質問は、この領域では自然です。あわせて、1件あたりの平均的な期間を聞くと、案件の性質が読めます。

判断のしかた — 規模の大きい企業を扱う会社のほうが、単価は上がりやすくなります。ただし、小規模な企業では制度の全体を一人で見られるため、経験の幅は広がります。どちらを取るかの選択です。

オファーで確認すること

2つ目と3つ目が、この領域では最も重要です。案件が長いため、成果の定義が収入に直結します。

4つ目は、報酬の設計を左右します。第三者承継が主軸であれば成功報酬の比重が高く、親族内承継が中心なら固定給中心になります。

6つ目は、金融機関や税理士法人では確認する価値があります。専門職として別建ての体系があるかどうかで、上限が変わります。

エージェントベストの見解

年収を判断するとき、この領域では紹介の構造を織り込む価値があります。事業承継の相談は広告では取れません。経営者が誰に相談するかは信頼で決まり、税理士、金融機関の担当者、取引先の社長からの紹介が案件の入口になります。つまり、紹介元との関係が案件量を規定し、案件量が報酬に反映されます。ここで重要なのは、その関係が会社に帰属するのか、個人に帰属するのかという点です。金融機関では、取引先との関係は会社のものです。独立系のコンサルティングでは、個人の関係が案件を作ります。前者では組織の力で案件が回り、後者では自分の力が直接効きます。どちらが有利かではなく、自分がどちらの働き方に向くかの問題です。この見極めを先にすると、会社の選び方が変わります。

まとめ

事業承継支援の年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定の企業の実態を示すものではありません。制度の解釈や個別の判断は事情により変わりますので、専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. M&A仲介と比べて、年収は低いですか。

A. 扱う型によります。第三者承継が主軸であれば、成功報酬の構造はM&A仲介に近づきます。親族内承継や従業員承継が中心の場合、案件が長いため固定給の比重が高くなり、上振れは小さくなります。

Q. 資格があると、年収は上がりますか。

A. 経営承継円滑化法第4条第1項第二号のように、証明を士業に限定している工程があります。資格保有者は案件に占める役割が大きくなります。ただし、手当の扱いは会社によって違います。

Q. 金融機関の事業承継担当は、専門職手当がありますか。

A. 会社によります。多くの金融機関では、全社の給与テーブルに乗ります。専門職として別建ての体系があるかを確認する価値があります。

Q. 成果が出るまで、どのくらいかかりますか。

A. 案件によりますが、数年に及ぶことがあります。全員の合意という要件があるためです。成果の定義が成約だけの会社では、入社から2〜3年は評価されにくくなります。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)