ベンチャーキャピタルの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント

ベンチャーキャピタル 志望動機の書き方 更新日 2026/8/11

「支援したい」だけでは、なぜ資本なのかが抜ける

ベンチャーキャピタルの志望動機で最も多いのが、スタートアップの成長を支援したい、という形です。誤りではありません。ただ、支援する手段は資本以外にもあります。事業会社の新規事業、コンサルティング、行政の支援機関、そして自分で創業すること。

なぜ資本を通じた支援なのか。 ここが書けているかどうかで、書類の読まれ方が変わります。

この記事では、志望動機を分解し、公開情報から材料を集める手順を整理します。完成した例文は載せません。丸写しできる文章は、書いた本人の言葉にならないためです。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトでご確認ください。

政府資料が示す、業界の課題

金融庁の「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」に経済産業省が提出した2026年6月18日付の資料に、スタートアップ育成5か年計画の進捗が整理されています。

区分2021年現在倍率
スタートアップ約16,100約25,0001.5倍
ユニコーン予備軍(評価額500〜1,500億円)12312.6倍
上場ユニコーン18331.8倍
ユニコーン(評価額1,500億円〜)681.3倍

同資料はKPIとして設定しているユニコーン数は未達な状況であるとし、今後は規模の大きいスタートアップの創出や、大規模なエグジットを経てその資金が新たなスタートアップのための資金供給につながる資金循環を生み出していくことが課題である、としています。

この構造は、志望動機の骨格になります。 予備軍は2.6倍に増えたのに、その先に進んだ企業は1.3倍。増えた予備軍をどう押し上げるかが、いまキャピタリストに求められている仕事です。ここに自分の経験を接続できると、他の応募者と差が出ます。

3つに分解して書く

分解問われていること材料になるもの
なぜVCか資本を通じた支援を選ぶ理由前職での意思決定、リスクの取り方
なぜこのファンドか投資領域・ステージへの理解公表されている投資方針、ポートフォリオ
なぜ自分か提供できるものの具体性業界知見、財務、事業構築のいずれか

抜けやすいのは1つ目です。VCへの関心とファンドへの関心は書けても、なぜ支援する側に回るのかが書かれていない書類が多く見られます。

「なぜVCか」に説得力を出す材料

前職で投資に近い判断をした経験

事業への投資判断、予算配分、撤退の決定。金額の大小は問いません。不確実な状況で資源を配分した経験があれば、それが接点になります。

失敗を織り込んだ経験

VCの投資は、多くが期待どおりにならない前提で組み立てられます。前職で「一定割合は失敗する」という前提のもとに動いた経験があれば、書く価値があります。新規事業、研究開発、営業の新規開拓。いずれも当てはまります。

他者を通じて成果を出した経験

キャピタリストは自分で事業を動かしません。支援先の経営者が動きます。前職でも、自分の手を動かさずに他者を通じて成果を出した経験があれば、そこを軸にします。

特定領域の知見

投資領域が定まっているファンドでは、その領域の知見が直接の武器になります。医療、製造、物流、SaaS。自分が理解している市場を明示します。

ファンドの型ごとに書き分ける

独立系VC

案件を自分で取ってくる比重が高くなります。前職で関係を作って情報を得た経験を前に出します。

金融機関系VC

組織内での合意形成と、リスク管理の枠組みへの理解が問われます。大きな組織で意思決定を通した経験が活きます。

CVC(事業会社系)

親会社の事業戦略との接続が中心の論点です。経済産業省の同資料には、自社にとって戦略的に重要な新規の領域を定め、スタートアップの買収をインオーガニックな成長手段として位置づける考え方が示されています。事業会社出身であれば、この文脈で書けます。

海外LPを持つファンド

同資料では、PE課税特例(外国組合員に対する課税の特例)について、日本にGP(無限責任組合員)がいるファンドに海外投資家がLP(有限責任組合員)として出資する場合の非課税特例の持分割合要件を、25%未満から50%未満へ引き上げる方向が示されています。海外資金の受け入れが進む文脈を理解していると、話が深まります。

大学系・地域系ファンド

技術の目利きと、地域や大学との関係構築が中心になります。研究開発の経験や、地域での事業経験が評価されます。

エージェントベストの見解

書類で読み手が探しているのは、志望の強さではなく**「この人は何を持ち込むか」**です。キャピタリストの仕事は、案件を見つけ、判断し、支援することの3つに分かれます。この3つのどこで貢献できるかを明示している書類は、通過率が上がります。案件を見つける段階で貢献するなら、前職で築いた人脈と情報の入り口を書く。判断で貢献するなら、財務分析や市場評価の実績を書く。支援で貢献するなら、事業を伸ばした具体的な経験を書く。全部できると書く必要はありません。むしろ1つに絞ったほうが読まれます。ファンドは少人数の組織が多く、既存メンバーに足りない部分を採用で埋めます。自分が埋める穴を特定できているかどうかが、書類の説得力を決めます。

よくある弱い志望動機と、その直し方

「日本のスタートアップエコシステムに貢献したい」

政府資料でも使われる表現ですが、これだけでは何をするかが見えません。エコシステムのどの部分に、どう関わるかまで書きます。

「起業を考えているので、まずVCで学びたい」

正直ではありますが、採用側からすると数年での退出を前提とした応募に見えます。ファンドの投資期間は長く、担当した案件を最後まで見届ける前提で採用されます。

「成長産業に身を置きたい」

前述のとおり、ユニコーンは6社から8社と1.3倍にとどまっています。業界全体が順調に伸びているという前提で書くと、実態を見ていないと受け取られます。

「経営者と近い距離で仕事がしたい」

距離の近さは手段であって目的ではありません。近い距離で何をするかまで書きます。

ポートフォリオ企業を1社も挙げていない

各ファンドは投資先を公表しています。1社でも具体的に言及すると、調べたことが伝わります。

構成の骨子

  1. 結論 — VCを志望する理由を1文で
  2. 接続 — 前職の経験のうち、意思決定・失敗の織り込み・他者を通じた成果のいずれかに接する部分
  3. ファンドの特定 — 投資領域とステージ、公表されているポートフォリオへの言及
  4. 貢献の明示 — 案件の獲得・判断・支援のどこで貢献するか
  5. 入社後 — 最初に取り組みたい領域

2と4に厚みを持たせます。

併願先ごとに書き分ける

VCを検討する方は、隣接する領域も並行して受けることが多くなります。

各ファンドの実像はグロービス・キャピタル・パートナーズの評判ジェネシア・ベンチャーズの評判グローバル・ブレインの評判などをご覧ください。

エージェントベストの見解

この職種を検討する方が、面談でほぼ例外なく口にするのが「起業家を支えたい」という言葉です。気持ちとしては本物です。ただ、それを志望動機の中心に置くと弱くなります。理由は単純で、支えるだけならVCである必要がないからです。書き換えの手順をお伝えすると、まず「支えたい」の中身を分解します。資金を渡したいのか、経営の相談相手になりたいのか、人や取引先を紹介したいのか。次に、そのうち自分が実際にできることを選びます。前職の人脈が特定の業界に厚いなら紹介が武器になりますし、財務が得意なら資本政策の相談相手になれます。「支えたい」を「これができる」に翻訳する。 この作業を済ませてから書くと、同じ志望動機がまったく違う文章になります。

まとめ

ベンチャーキャピタルの志望動機について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は政府資料に記載されたものであり、特定のファンドの実態を示すものではありません。

よくある質問

Q. 投資経験がなくても志望動機は書けますか。

A. 書けます。軸になるのは投資経験ではなく、不確実な状況で資源を配分した経験、失敗を織り込んで動いた経験、他者を通じて成果を出した経験のいずれかです。前職の業務をこの観点で棚卸しすると、接続点が見つかります。

Q. 起業志望であることは伏せるべきですか。

A. 伏せる必要はありませんが、志望動機の中心には置かないほうが安全です。ファンドの投資期間は長く、担当案件を見届ける前提で採用されます。数年で退出する前提に見えると、選考で不利になります。

Q. 複数のファンドに応募する場合、志望動機は分けるべきですか。

A. 「なぜVCか」の部分は共通で構いません。「なぜこのファンドか」は分けます。投資領域とステージはファンドごとに公表されており、書き分ける材料は揃っています。

Q. CVCと独立系VCでは、書き方をどう変えますか。

A. CVCでは親会社の事業戦略との接続が中心の論点になります。経済産業省の資料でも、自社にとって戦略的に重要な新規領域を定めスタートアップの買収を成長手段に位置づける考え方が示されています。独立系では、案件を自分で取ってくる力と投資判断の再現性が問われます。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)