M&Aアドバイザーの志望動機の書き方|転職で押さえるべきポイント

M&Aアドバイザー・仲介営業 志望動機の書き方 更新日 2026/8/11

「M&Aに関わりたい」では区別されない

M&Aアドバイザー(FA)の志望動機で最も多いのは、「企業の重要な意思決定に関わりたい」「専門性の高い領域で力をつけたい」という書き方です。

意欲としては妥当です。ただし、選考では区別がつきません。この職種に応募する方は、ほぼ全員が同じことを書きます。

読み手が知りたいのは、もっと限定的なことです。なぜ仲介ではなくFAなのか。そして、片側についたときに何ができるのか。この2点に触れていない志望動機は、業界への憧れとして処理されます。

job tagの「M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント・M&Aアドバイザー」の区分では、必要なスキルとして 交渉力4.7 が高く示されています。この職種の中心が交渉にあることは、公開データからも読み取れます。

この記事では、志望動機に何を入れれば噛み合うのかを整理します。本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。

FAを選ぶ理由を、構造から書く

FAと仲介の違いは、立ち位置にあります。

FA は、譲り渡し側か譲り受け側の一方とだけ契約し、その一方から手数料を受け取ります。依頼者の意向を踏まえ、依頼者にとって有利な条件での成立を目指します。

仲介 は、双方と契約し、双方から手数料を受け取ることが通常です。いずれか一方の利益のみを優先的に扱うことはできず、双方の共通の目的である成立を目指します。

この違いを志望動機に使う

「依頼者の立場に立ち切って条件を作る仕事を選んだ」という説明ができます。中立の立場で合意を作る仕事ではなく、片側の代理人として交渉する仕事を選んだ、という表明です。

前職で、自社または顧客の利益を代表して交渉した経験があれば、ここに接続します。取引条件の交渉、契約の巻き直し、社内の予算配分。形式は問いません。誰かの代理として、相手と対峙した経験があるかどうかです。

避けたい書き方 — 「仲介は利益相反があるからFAを選んだ」という説明は、業界への批判に読まれることがあります。構造の違いを述べるに留め、自分がどちらに適性があるかという話に着地させるほうが安全です。

前職の経験を、片側支援の言葉に翻訳する

銀行の法人営業から

融資の審査で財務を読んだ経験、経営者と資本政策を話した経験を前に出します。翻訳の要点は、リレーションではなく判断です。「どの数字を見て、何を懸念し、どう条件を組んだか」を書きます。

証券会社から

引受や資本市場の経験は、そのまま接続します。上場会社が絡む案件を扱うファームでは、公開買付けや資本政策の実務が評価されます。

コンサルティングファームから

論点を立てる力と、資料の構成力を書きます。翻訳の要点は、提言と実行の距離です。「提案で終わらず、実行の条件まで詰めた」経験があれば、それを軸にします。

会計事務所・FASから

バリュエーションやデュー・ディリジェンスの経験を書きます。翻訳の要点は、数字を作る側から使う側への移行です。「その数字を使って、誰に何を説明したか」まで書くと、FAの仕事に近づきます。

M&A仲介から

案件を動かした実績と、経営者との対話力を書きます。翻訳の要点は、片側についたときの振る舞いです。仲介ではバリュエーションの確定的な実施が制限されるため、自分で組んだモデルがあるかを補足します。

事業会社の経営企画から

当事者として判断した経験を書きます。翻訳の要点は、助言する側に回る理由です。「判断する側で見えた、助言の質の差」を語れると噛み合います。

制度への理解を、どう匂わせるか

志望動機に制度の解説を書き込む必要はありません。ただ、業界の現在地を把握していることが伝わると、調べたうえで応募していると読まれます。

2026年は、この職種にとって制度の切り替わりの年でした。「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」が2024年5月22日に公布され、関係政府令等の改正が2025年7月4日に公布・公表され、本改正は 2026年5月1日に施行 されています。

変わった点

公開買付けが義務付けられる閾値が 3分の1超から30%超に引き下げられ、あわせて 市場内取引(立会内)も適用対象 となりました。改正前は、市場内取引(立会内)はこのルールの対象外でした。

志望動機への入れ方

「制度の前提が変わる領域であり、常に確認しながら進める仕事だと理解しています」という一文で足ります。詳細を書き連ねると、知識の披露に見えます。

面接で深掘りされたときに、閾値が30%になったこと、市場内取引が対象に入ったことを説明できれば十分です。個別の判断は弁護士等に確認する前提だという姿勢もあわせて示します。

弱い志望動機と、その直し方

「専門性を高めたい」

学ぶ側の視点です。直すには、既に持っている技術で何ができるかを先に置きます。

「企業の重要な意思決定に関わりたい」

多くの応募者が書きます。直すには、前職で意思決定に関与した具体例を出します。

「若いうちから裁量のある環境で働きたい」

環境への要求に読まれます。直すには、裁量を与えられたときに何をしたかを書きます。

「M&A市場の拡大に将来性を感じた」

市場環境の説明に留まります。直すには、その市場で自分が何を担うのかを書きます。

「グローバルな案件に携わりたい」

願望です。直すには、語学と実務をどこまで持っているかを示します。

現職への不満が透けている

処遇や評価への言及は、志望動機に混ぜないほうが安全です。条件の話は条件面談の場で足ります。

エージェントベストの見解

書類で通過率が変わるのは、成立しなかった案件について書けているかどうかです。この職種では、動き出した案件のうち成立に至るのは一部です。読み手はそれを知っています。成立した案件だけを並べた経歴は、都合のよい部分だけを切り出したように見えることがあります。むしろ、止まった案件について「相手方が提示した条件のどこが依頼者にとって不利だったか」「その局面で何を組み替えようとしたか」を書けると、実務の解像度が伝わります。成立は相手方や市場環境にも左右されますが、局面での判断は自分の能力です。読み手が評価したいのは後者です。書きにくいと感じる方が多い部分ですが、ここを書ける方は書類の段階で明確に区別されます。

職務経歴書に書くこと

職務経歴書 は事実を並べる書類です。この職種では、次を添えると読み手が判断しやすくなります。

4つ目と6つ目が、この職種で最初に見られます。ここが書かれていないと、後方支援の役割だったと推測されます。

書かないこと — 当事者が特定できる記述は避けます。業種と規模の帯までに留めます。守秘の意識は、この職種で最も重く扱われる資質のひとつです。

転職理由 は、次に何を積みたいかという整理にします。前職の何が不足していたかを中心に置くと、次も同じ理由で辞めると読まれます。

ファーム別に、どこを変えるか

外資系投資銀行 — 上場会社が絡む大型案件が中心です。モデルの精度と英語での実務を前に出します。

国内証券会社 — 事業法人とのリレーションが土台です。企業との関係構築の経験を軸にします。

独立系ブティック — 幅広い工程を一人で担います。案件を最初から最後まで見た経験が効きます。

FAS(会計系) — バリュエーションやDDとの連続性があります。会計の専門性を前に出します。

中小企業向けのFA — 事業承継案件も扱います。経営者との対話の経験が効きます。M&A仲介営業の志望動機の書き方も比較材料になります。

書き方の型はM&Aアドバイザーの志望動機M&Aアドバイザーの職務経歴書FASアナリストの志望動機の書き方もあわせてご覧ください。

エージェントベストの見解

面接の終盤で問われるのは、この職種を何年続けるつもりかという点です。job tagの区分では一人前になるまで5〜8年とされています。採用する側は、その期間を投資として見ています。一方で、3年ほどで事業会社や投資側に移る方が一定数いることも知っています。ここで「長く続けます」とだけ答えるのは、かえって不自然に映ります。求められているのは、在籍期間中に何を返せるかという説明です。準備としては、自分が積みたいものと、その過程でファームに返せるものを対にして言語化しておくことです。たとえば「特定の業界に詳しくなり、その領域の案件の起点を作れるようになる」といった形です。学ばせてもらう姿勢だけを示すと、消費する側の人だと受け取られます。

まとめ

M&Aアドバイザーの志望動機について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。選考で重視される点は会社によって異なりますので、詳細は各社公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 財務モデルを組んだ経験がない場合、志望動機に何を書きますか。

A. 数字を作って判断に使った経験を探します。事業計画の策定、投資判断の資料、価格の設計。前提を置いて数字を組んだ経験があれば材料になります。あわせて、独学で組んでみた事実を添えると、着手していることが伝わります。

Q. 「仲介より条件面で貢献したい」と書いてよいですか。

A. 書き方に注意が要ります。仲介の否定に読まれると、業界理解が浅いと受け取られます。立ち位置の違いを述べ、自分は片側の代理人として動くほうが力を発揮できる、という整理にすると安全です。

Q. 制度改正について、どこまで書くべきですか。

A. 志望動機では一文で足ります。詳細を書き連ねると知識の披露に見えます。面接で深掘りされたときに、閾値が30%に下がり市場内取引も対象になったことを説明できれば十分です。

Q. 案件の件数は、少ないと不利ですか。

A. 件数より、1件あたりの関与の深さが見られます。全工程を見た案件が1つあるほうが、部分的に関わった10件より評価されることがあります。工程ごとに自分の役割を分解して書くことをお勧めします。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)