ベンチャーキャピタルの年収相場|転職で押さえるべきポイント

ベンチャーキャピタル 年収相場 更新日 2026/8/11

平均1,134.6万円と、求人賃金28.3万円

ベンチャーキャピタルの年収を調べると、高い数字が目に入ります。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「ファンドマネージャー」の区分では、平均年収は1,134.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査)とされています。

同じページに、別の数字も載っています。

項目数値出典
平均年収1,134.6万円令和7年賃金構造基本統計調査
時給(一般労働者)5,497円令和7年賃金構造基本統計調査
求人賃金(月額)28.3万円令和6年度ハローワーク求人統計
平均年齢39.4歳令和7年賃金構造基本統計調査
労働時間月162時間令和7年賃金構造基本統計調査
有効求人倍率0.57令和6年度ハローワーク求人統計
就業者数82,920人令和2年国勢調査

求人賃金の月額28.3万円を12倍すると339.6万円で、平均年収との差は約795万円になります。

募集の時点で提示される固定給と、在籍者が最終的に受け取る報酬が別物である構造が、ここに表れています。この記事では、その差がどう埋まるのかを整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の条件は各社公式サイトでご確認ください。

報酬が3階建てになっている

VCの報酬は、一般的に次の要素で構成されるとされています。

1階:固定給

ファンドの管理報酬(マネジメントフィー)から支払われます。管理報酬はファンド総額に対する一定割合で、運用期間中は安定して発生します。したがって固定給部分は、ファンドの規模が大きいほど厚くなりやすい構造です。

2階:賞与

年次の評価にもとづく支給です。ファンドによって有無と比重が異なります。

3階:キャリー(成功報酬の分配)

投資先が上場や売却でリターンを生んだとき、その一部が運用側に分配されます。これが平均年収と求人賃金の差を作る部分です。

キャリーには3つの特徴があります。ひとつ、発生までの期間が長い。投資から回収まで数年から10年かかります。ふたつ、全員に等しく配分されるわけではない。ファンド内での配分方針は会社ごとに異なります。みっつ、金額が事前に確定しない。投資先の成否に依存します。

平均年収1,134.6万円という数字は、キャリーを受け取った層を含んだ平均だと理解しておく必要があります。

ファンドの型で、報酬の性格が変わる

ファンドの型固定給の傾向キャリーの位置づけ
独立系VCファンド規模に依存比重が大きい。配分方針の確認が要る
金融機関系VC親会社の給与体系に準拠限定的な場合がある
CVC(事業会社系)親会社の給与体系に準拠無い場合が多い
大学系・地域系ファンド公的資金の制約を受ける限定的
海外VCの日本拠点本体の基準に準拠比重が大きい

CVCや金融機関系では、親会社の給与体系が適用されることが多く、キャリーの仕組みがない場合があります。この場合、報酬は在籍する親会社の水準に収れんします。安定する一方、上振れは小さくなります。

独立系や海外系では、キャリーの比重が上がります。上限は高くなりますが、発生までの期間が長く、金額も確定しません。

どちらが有利かではなく、報酬が確定する時期が違うと捉えるのが実務的です。

年収が上がる要因

ファンドの規模が大きくなる

管理報酬はファンド総額に連動するため、規模の拡大は固定給の原資を増やします。新しいファンドを組成できるかどうかが、報酬にも影響します。

投資先がエグジットする

経済産業省が金融庁の「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」に提出した2026年6月18日付の資料では、上場ユニコーンが2021年の18社から現在33社へ1.8倍に増えたとされています。一方、未上場のユニコーン(評価額1,500億円以上)は6社から8社と1.3倍にとどまり、KPIとして設定しているユニコーン数は未達であると明記されています。

同資料は、大規模なエグジットを経てその資金が新たなスタートアップのための資金供給につながる資金循環を生み出していくことが課題である、としています。エグジットの規模がキャリーの原資である以上、この課題はそのまま報酬構造の課題でもあります。

リード投資を担えるようになる

投資を主導する立場になると、担当案件の成果が直接評価に結びつきます。

役職が上がる

ファンド内の職位(アソシエイト、シニアアソシエイト、プリンシパル、パートナー等)が上がると、キャリーの配分比率も変わるのが一般的とされています。

エージェントベストの見解

オファーを受け取ったとき、キャリーの説明を口頭だけで済ませようとするファンドがあります。悪意があるとは限らず、確定していないから説明しにくいという事情もあります。ただ、確認しておきたい点は3つあります。ひとつ、自分が対象になるのは何号ファンドからか。既存ファンドの分は対象外で、次のファンドから、という設計は珍しくありません。ふたつ、ベスティング(権利確定)の期間。在籍何年で何%が確定するのか。みっつ、退職時の扱い。確定分は退職後も受け取れるのか、失効するのか。この3つを聞くと、提示された年収の意味が変わります。答えにくそうにする場合もありますが、その反応自体が情報です。固定給だけで生活が成り立つかを先に確認し、キャリーは上振れとして扱う。この順序で見ると、判断を誤りにくくなります。

時間あたりで換算してみる

job tagの「ファンドマネージャー」の区分では、労働時間は月162時間、時給は5,497円とされています。これは調査区分全体の数字ですが、換算の目安になります。

VCの労働時間は、案件の状況に左右されます。デューデリジェンスの期間、投資委員会の前、支援先が資金調達をする局面。これらに稼働が集中します。統計上の月162時間は、平準化された数字だと理解しておくのが実務的です。

確認しておく項目

最後の項目は見落とされがちです。ファンドの運用期間が終盤に差しかかっている場合、次のファンドが組成できるかどうかが、自分の報酬にも在籍の見通しにも影響します。

隣接する領域と並べて見る

職種としての年収はベンチャーキャピタリストの年収相場、各ファンドの実像はグロービス・キャピタル・パートナーズの評判みずほキャピタルの評判をご覧ください。

エージェントベストの見解

VCに移った方が数年後に振り返って口にするのが、**「キャリーが出る前に判断の局面が来た」**という話です。投資から回収まで数年から10年かかる一方、自分のキャリアの節目はもっと短い周期で訪れます。結婚、住宅の購入、子どもの進学。これらは待ってくれません。だからこの職種を検討するときは、固定給だけを見て「この金額で数年間やっていけるか」を判断することをお勧めします。キャリーを前提に生活設計を組むと、投資先のエグジットが遅れた局面で苦しくなります。逆に、固定給で成り立つと判断できるなら、キャリーは純粋な上振れとして機能します。金融機関系やCVCを選ぶ方の多くは、この計算をしたうえで安定を取っています。それは妥協ではなく、報酬が確定する時期に対する合理的な選択です。

まとめ

ベンチャーキャピタルの年収相場について、押さえるべき点を整理します。

本記事の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。統計の数値は調査区分全体のものであり、特定のファンドの実態を示すものではありません。報酬制度の詳細は各社の募集要項でご確認ください。

よくある質問

Q. 未経験で入った1年目の年収はどのくらいですか。

A. 固定給が収入の大半を占める前提で見積もるのが妥当です。job tagの区分では求人賃金は月額28.3万円(令和6年度)とされており、この局面に近い水準を示しています。キャリーは発生までに数年から10年かかるため、初年度から見込むのは現実的ではありません。

Q. キャリーはどのくらいもらえますか。

A. ファンドごとに配分方針が異なり、公開情報から一律の水準を示すことはできません。確認すべきは金額の目安より、対象となるファンド、ベスティングの期間、退職時の扱いの3点です。この3つが分かると、提示された条件の意味が見えてきます。

Q. CVCと独立系VCでは、どちらが年収は高くなりますか。

A. 一律には言えません。CVCは親会社の給与体系に準拠することが多く、固定給が安定する一方でキャリーがない場合があります。独立系はキャリーの比重が大きく、上限は高くなりますが確定時期が遠くなります。比較すべきは平均額ではなく、報酬が確定する時期です。

Q. 平均年収1,134.6万円は、何年目で届く水準ですか。

A. 年数では言い切れません。この区分の平均年齢は39.4歳で、経験を積んだ層を含んだ平均です。またキャリーを受け取った層を含む数字であるため、固定給だけでこの水準に達するとは限りません。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)