M&A仲介の年収相場|転職で押さえるべきポイント

M&A仲介 年収相場 更新日 2026/8/11

同じ業界で、平均年収が3倍以上開いている

M&A仲介の年収について語られる数字は、たいてい上振れしています。理由は単純で、目立つ会社の数字だけが引用されるためです。

上場している仲介会社の有価証券報告書を並べると、実態が見えてきます。いずれも提出会社または最大人員会社の数値です。

会社従業員数平均年齢平均勤続年数平均年間給与
M&Aキャピタルパートナーズ296名32.4歳3.30年22,658千円
ストライク452名33.2歳2.5年15,210千円
日本M&Aセンター(最大人員会社)918名34.2歳4.6年13百万円
オンデック57名36.63歳3.97年7,260千円

最上位のM&Aキャピタルパートナーズと最下位のオンデックで3.1倍の開きがあります。平均年齢は32.4歳から36.63歳の範囲に収まっており、年齢差では説明がつきません。

以下、この差がどこから生まれるかを分解します。記載は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。

平均値の背後にある人員構成

年収を読むうえで見落とせないのが、各社が同時に開示している人員の内訳です。

M&Aキャピタルパートナーズは従業員296名のうち、M&Aコンサルタント部門が231名、管理部門及び非コンサルタント部門が65名。ストライクは452名のうちM&A仲介事業部門402名、その他50名。オンデックは57名のうちM&Aアドバイザリー事業40名、全社共通17名です。

平均年間給与はいずれも全従業員の平均であり、管理部門を含みます。コンサルタント部門の比率が高い会社ほど、平均値が現場の水準に近づきます。逆に管理部門の比率が高い会社では、現場の水準は平均より上に位置している可能性があります。

なお日本M&Aセンターホールディングスは持株会社のため提出会社では平均年間給与を記載しておらず、上表は従業員数が最も多い株式会社日本M&Aセンターの数値です(対前事業年度増減率8.7%)。

上場4社は、業界のごく一部にすぎない

より重要な前提があります。上表の4社は、業界の代表ではなく上位の一部です。

中小企業庁のM&A支援機関登録制度によれば、2026年3月9日時点の登録FA・仲介業者は3,399件。M&A支援業務の専従者数別に見ると、0人が762件、1〜2人が1,736件で、専従2人以下が2,498件を占めます。100〜499人は7件、500〜999人は1件です。

つまり登録事業者の大半は、数名で運営されています。上表の水準は、全体の分布の右端にある会社の数値と考えるのが正確です。「M&A仲介の平均年収は2,000万円」という言い方は、この分布を無視しています。

年収を決めている4つの要素

1. 会社が受け取る手数料の規模。 仲介の報酬は成約した案件の規模に連動する設計が一般的です。扱う企業規模が大きい会社ほど、1件あたりの収入が大きくなります。

2. 固定給と成果報酬の比率。 固定給を厚くする会社と、固定給を抑えて成果配分を厚くする会社があります。同じ想定年収でも、成約が出なかった年の手取りが大きく変わります。

3. 成約までの期間。 譲渡を検討する経営者に出会い、相手を探し、条件を詰めて成約に至るまでには相当の時間がかかります。この期間の生活は固定給が支えます。

4. 会社の分業体制。 案件の紹介元を会社が持っているか、個人が開拓するかで、成果の出やすさが変わります。上場企業は前者の仕組みを持つことが多く、その分だけ成果配分の比率が調整されている場合があります。

エージェントベストの見解

公開されている2,265万円という数字は、そのまま自分の想定年収として受け取らないほうが安全です。これは全従業員の平均であり、賞与と基準外賃金を含む金額です。中央値ではありません。成果報酬型の報酬設計では、上位の一部が平均を強く押し上げます。自分の場合いくらになるかを決めるのは、会社の平均ではなく、固定給の額と、成約1件あたりに配分される割合です。オファー面談では、提示された想定年収の内訳——固定部分がいくらで、想定年収に到達するには年間何件の成約が前提になっているか——を確認してください。この2つが分かれば、平均値に頼らずに判断できます。

平均勤続年数が示していること

上表の平均勤続年数は2.5年から4.6年の範囲にあります。上場して長い会社でもこの水準です。

この数字は2通りに読めます。ひとつは定着の難しさ。もうひとつは採用の拡大です。人員が急速に増えている会社では、新しく入った人が平均を押し下げます。どちらの要因が大きいかは、従業員数の推移と併せて見なければ判断できません。

いずれにせよ、年収を長期の視点で考えるなら、平均年収より平均勤続年数のほうが実務的な指標になります。高い水準が示されていても、その水準に到達する前に離れる人が多ければ、期待値としては下がるためです。

会社のタイプで、報酬設計が変わる

タイプ報酬設計の傾向確認しておく点
上場の大手仲介固定給が一定の水準にある成果配分の算定基準
中堅・専業の仲介成果配分の比率が高め未成約期間の支給額
少人数・新設の事業者会社の資金余力に左右される固定給の継続性
士業系・コンサル併営本業の給与体系に乗るM&A案件の評価方法
プラットフォーム型掲載・成約手数料に連動個人への配分の有無

各社の状況はM&Aキャピタルパートナーズの評判日本M&Aセンターの評判ストライクの評判オンデックの評判fundbookの評判バトンズの評判M&Aベストパートナーズの評判をご覧ください。

求人票の想定年収レンジをどう読むか

M&A仲介の求人票には、「500万円〜2,000万円」のように幅の広い想定年収が示されていることがあります。この幅は、等級の違いではなく成果の振れ幅を表している場合が多く、他業界の求人票とは読み方が変わります。

確認しておきたいのは次の3点です。

  1. 下限が固定給なのか、最低保証なのか。 最低保証は期間が限られることがあります
  2. 上限に到達している人が、社内に何人いるのか。 実在する水準か、制度上の上限かで意味が変わります
  3. 入社1年目の実績分布。 平均ではなく、最も多い層がどこかを聞きます

3つ目に答えられる会社は、中途採用の実績が蓄積されています。答えが出てこない場合、未経験入社の前例が少ない可能性があります。

現金以外の条件も並べて比べる

年収の比較では、現金以外の条件が抜けやすくなります。M&A仲介では、案件獲得のための交通費や交際費の扱い、譲渡候補企業のデータベースへのアクセス可否、案件を進める際の実務支援の有無が、実質的な働きやすさに影響します。

とくにデータベースと実務支援は、成約までの期間を左右します。同じ成果配分でも、支援がある会社とない会社では年間の成約可能件数が変わるため、結果として年収が変わります。提示額だけを並べて比べると、この差が見えません。

年収が上がる局面、下がる局面

上がるのは、担当できる案件の規模が上がったときです。同じ手数料率でも、扱う企業規模が変われば1件あたりの金額が変わります。もうひとつは、紹介が循環し始めたときです。成約した経営者から次の紹介が来るようになると、案件獲得にかかる時間が短縮されます。

下がりやすいのは、成約が年をまたいだときです。案件の進行と決算期のずれで、実績があっても支給が翌期にずれ込むことがあります。この扱いは会社ごとに違うため、入社前に確認しておく項目のひとつです。

未経験から入るときの見立て

未経験入社の初年度は、固定給が中心になります。前職より下がる提示になることもあります。判断材料は初年度の金額ではなく、成約に至るまでの期間と、その間の支給がどうなるかです。

前掲のとおり平均勤続年数は2.5〜4.6年です。最初の成約までに時間がかかる商売である以上、その期間を支える固定給の水準が、実際には最も重要な条件になります。難易度は転職難易度、選考の進み方は選考フロー・面接対策で扱っています。

エージェントベストの見解

この業界を検討する方は、FASと投資銀行のポジションを並べて比較しているケースが多く見られます。判断が割れるのは、収入の形です。仲介は成約連動の比重が大きく、当たった年と外れた年の差が大きくなります。FASはフィーが工数に紐づくため、収入の振れ幅は小さくなります。どちらが得かは一概に言えませんが、住宅ローンや家族の状況など、収入の安定が要る局面にいる方は、振れ幅の小ささを軽視しないほうがよいと考えています。年収の期待値だけで比べると、この観点が抜けがちです。

まとめ

M&A仲介の年収は、同じ業界の上場企業間でも726万円から2,265万円まで3.1倍の開きがあります。平均年齢はいずれも32〜36歳台で、差は年齢ではなく会社の位置と報酬設計から生まれています。

さらに、登録事業者3,399件のうち専従2人以下が2,498件を占めるという分布を踏まえると、上場企業の水準は右端の一部です。自分の想定年収を測るには、平均値ではなく固定給の額と成果配分の条件を確認するほうが実務的です。数値は各社の開示にもとづく事実であり、個人の提示条件は募集要項でご確認ください。

よくある質問

Q. 1年目から1,000万円を超えることはありますか。

A. 会社の報酬設計と成約状況によります。ただし成約までの期間を考えると、初年度から高額に到達する前提で生活設計を組むのは慎重に検討したほうがよいでしょう。

Q. 平均年収の高い会社を選べばよいのでしょうか。

A. 平均値は全従業員のもので、中央値ではありません。同じ会社でも成果によって幅が出ます。固定給と成果配分の条件を比べるほうが判断に使えます。

Q. 成果報酬の支払い時期はいつですか。

A. 会社によって異なります。成約時点か、入金時点か、決算期をまたいだ場合の扱いはどうなるか。この3点は入社前に確認しておくことをおすすめします。

出典

本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)