M&A仲介の選考フロー・面接対策|転職で押さえるべきポイント
選考を読む前に、業界の形を知る
M&A仲介の選考対策を考えるとき、最初に押さえるべきなのは面接の作法ではなく、受けている会社が業界のどこに位置しているかです。同じ「M&A仲介」でも、社員900人規模の上場企業と、専従者が2人の事業者では、選考で確かめられることがまったく違います。
そして後者は例外ではありません。中小企業庁のM&A支援機関登録制度によれば、2026年3月9日時点の登録FA・仲介業者は3,399件(法人2,606件、個人事業主793件)です。同庁が公表した登録状況によると、M&A支援業務の専従者数別では0人が762件、1〜2人が1,736件で、合わせて2,498件が専従2人以下にあたります。100〜499人は7件、500〜999人は1件にとどまります。
本記事では、この業界構造を踏まえて選考の流れと評価の観点を整理します。記載は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
登録3,399件の内訳が示すもの
同じ登録状況には、支援機関の種類別の内訳も示されています。
| 種類 | 登録数 |
|---|---|
| M&A専門業者 - 仲介 | 803件 |
| コンサルティング会社(経営コンサル) | 626件 |
| 士業等専門家 - 税理士 | 507件 |
| M&A専門業者 - FA | 377件 |
| 士業等専門家 - 中小企業診断士 | 327件 |
| 士業等専門家 - 公認会計士 | 288件 |
| 金融機関 - 信金・信組 | 102件 |
| 金融機関 - 地方銀行 | 76件 |
仲介を本業とする専門業者は803件で、全体の4分の1弱です。残りは税理士や中小企業診断士、コンサルティング会社が本業のかたわらで登録している構図になります。設立年代別では2020年代の設立が2,060件と、全体の6割を占めます。
この数字の意味は明快です。M&A仲介は、参入が続いている一方で、社内に経験者が蓄積されている会社は限られています。選考は「教えられる人がいる会社かどうか」を見極める場でもあります。
一般的な選考ステップ
公開されている募集要項では、書類選考、人事面接、現場責任者面接、役員面接という流れが取られていることが多いとされています。適性検査を挟む会社もあります。段階数や順序は会社と時期により変動します。
書類選考では、営業実績の数字が見られます。ただし金額の大きさより、その数字を自分がどう作ったかの記述が重視される傾向があります。
人事面接では、業界理解が確かめられます。仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いを説明できるかは頻出の論点です。前掲の登録区分でも、仲介803件とFA377件は別の類型として分けられています。
現場責任者面接では、案件を取ってくる過程の話になります。M&A仲介の仕事は成約支援だけでなく、譲渡を検討する経営者に出会うところから始まります。ここでの適性が最も重く見られます。
役員面接では、腰を据えて続けられるかが問われます。後述のとおり、上場企業でも平均勤続年数は2〜5年の幅にあり、定着が業界共通の課題になっています。
面接で確かめられている3つのこと
1. 経営者と対等に話せるか。 相手は自分より年上の中小企業経営者で、会社を手放すかどうかという判断に向き合っています。知識量ではなく、相手の言葉を待てるかどうかが見られます。
2. 断られ続けても続けられるか。 譲渡の意思がある経営者に出会うまでには相当の接触が要ります。過去に断られ続けた経験と、そこで何を変えたかを具体的に語れるかが問われます。
3. 利益相反を理解しているか。 仲介は譲渡側と譲受側の双方の間に立ちます。この構造上、どちらの利益を優先するかという緊張が常にあります。この点を「両方にとって良い結果を目指す」で済ませる回答は、理解が浅いと受け取られやすくなります。
上場企業の数字で、会社の規模感をつかむ
選考中に会社の実像を測る材料として、上場している仲介会社の有価証券報告書が使えます。
| 会社 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|
| 日本M&Aセンター(最大人員会社) | 918名 | 34.2歳 | 4.6年 | 13百万円 |
| ストライク | 452名 | 33.2歳 | 2.5年 | 15,210千円 |
| オンデック | 57名 | 36.63歳 | 3.97年 | 7,260千円 |
日本M&Aセンターホールディングスは持株会社のため提出会社の平均年間給与は記載されておらず、上表は従業員数が最も多い株式会社日本M&Aセンターの数値です(2026年3月31日現在、対前事業年度増減率8.7%)。ストライクは事業部門別でM&A仲介事業部門402名、その他50名。オンデックはM&Aアドバイザリー事業40名、全社共通17名という構成です。
規模が10倍以上違えば、選考の設計も入社後の育成も別物になります。会社概要の従業員数を見るとき、そのうち何人が案件に直接関わっているかまで確認しておくと、面接での質問が具体的になります。
エージェントベストの見解
面接の終盤で詰められるのは、「譲渡を決めきれない経営者に、どう向き合いますか」という問いです。ここで「メリットを丁寧に説明します」と答える方が多く、評価は伸びません。この問いが確かめているのは説得の技術ではなく、決めない判断も受け入れられるかどうかです。仲介の成約は、経営者にとって会社と従業員の行き先を決めることです。急がせた結果として後で不信が残れば、紹介も評判も途絶えます。準備としては、前職で顧客が決めなかった案件を1つ選び、そのとき自分が何をやめたかを言語化しておくことです。押した話より、引いた話のほうが通ります。
会社のタイプで、選考の重心が変わる
| タイプ | 特徴 | 選考で重く見られる点 |
|---|---|---|
| 上場の大手仲介 | 案件データベースと分業体制がある | 営業活動量と再現性 |
| 中堅の専業仲介 | 一人あたりの担当範囲が広い | 自走できるか |
| 少人数・新設の事業者 | 専従者が数人にとどまる | 自分で案件を取れるか |
| 士業系・コンサル併営 | 本業の顧客基盤から派生 | 専門知識と業界人脈 |
| プラットフォーム型 | 掲載と成約支援が中心 | 仕組みで動かす発想 |
主要企業の状況は日本M&Aセンターの評判、M&Aキャピタルパートナーズの評判、ストライクの評判、オンデックの評判、fundbookの評判、M&Aベストパートナーズの評判、バトンズの評判、経営承継支援の評判をご覧ください。
見送りにつながりやすい受け答え
- 前職の営業実績を金額だけで語り、どう獲得したかの過程が出てこない
- 仲介とFAの違いを聞かれて、手数料の受け取り方の説明にとどまる
- 「経営者の役に立ちたい」で止まり、譲渡という判断の重さに触れない
- 高い報酬への関心を隠しながら、志望動機が抽象的になる
- 会社の登録状況や体制を調べておらず、規模感の質問に答えられない
4つ目は誤解されやすい点です。報酬への関心そのものは否定されません。むしろ、報酬体系を理解したうえで応募していることは前向きに受け取られます。問題になるのは、関心を隠した結果として動機の説明が薄くなることです。
選考中に確認しておく数字
会社側に聞いておくと判断材料になるのが次の4点です。
- M&A支援業務に専従している人数(会社全体の人数とは別に確認する)
- 直近1年の成約件数と、それを担当した人数
- 入社1年目の社員が成約に至るまでの平均的な期間
- 固定給と成果報酬の比率、および成果報酬が支払われる条件
2つ目と3つ目は、育成の実態を測る指標になります。前述のとおり2020年代設立の事業者が全体の6割を占めるため、社内に指導できる人がいるかどうかは会社によって差があります。
異業種から受けるとき
金融機関、不動産、人材、保険など、法人営業の経験から移る方が多い領域です。翻訳の要点は、扱ってきた商材ではなく意思決定の重さに置くことです。
決裁者と直接話した経験、検討が数か月にわたった案件、社内の反対を越えて進めた提案。これらは商材が違っても評価されます。逆に、短期で完結する取引の実績を量で示すと、案件の時間軸が合わないと判断されることがあります。職種としての詳細はM&A仲介営業の選考フローを、FA側との違いはFASの選考フローをご覧ください。
エージェントベストの見解
この業界を受ける方は、FAS(財務アドバイザリー)と、事業承継支援に力を入れている金融機関のポジションを並べて検討しているケースが多く見られます。判断が割れるのは、案件に入る位置です。仲介は経営者に出会うところから関わるため、営業活動の比重が大きくなります。FASは依頼を受けてから財務の精査に入るため、分析の比重が高くなります。同じM&Aという言葉でも、1日の時間の使い方が異なります。どちらが向くかは、人に会い続けることが負担にならないかどうかで、かなりの部分が決まります。
まとめ
M&A仲介の選考は、会社の位置を理解したうえで臨むと的が絞れます。登録支援機関3,399件のうち専従2人以下が2,498件を占め、2020年代設立が6割という構造は、育成体制に会社差があることを示しています。
面接で問われるのは、経営者と対等に話せるか、断られ続けても続けられるか、利益相反の構造を理解しているかの3点です。押した話より引いた話が評価される場面がある点も押さえておくとよいでしょう。選考の内容や体制は時期により変動しますので、最新の募集要項は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 未経験でも選考に進めますか。
A. 未経験からの採用は広く行われています。ただし会社によって育成体制の厚みが違うため、入社1年目の社員がどう立ち上がっているかを選考中に確認しておくことをおすすめします。詳しくは転職難易度で扱っています。
Q. 資格は選考で有利になりますか。
A. 中小企業診断士や税理士などの資格保有者が登録支援機関の一角を占めていることからも分かるとおり、専門知識は評価されます。ただし仲介の選考では、資格より案件を取ってくる適性が先に見られる傾向があります。
Q. 面接で報酬体系を質問してもよいですか。
A. 問題ありません。固定給と成果報酬の比率、支払いの条件は入社後の生活に直結する項目です。確認しないまま入社して認識のずれが出るほうが、双方にとって負担になります。
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度に係る登録FA及び仲介業者の公表(令和7年度公募2月分・別紙2 登録状況)
- 日本M&Aセンターホールディングス 有価証券報告書 第35期(2026年3月期)
- 株式会社ストライク 有価証券報告書 第29期(2025年9月期)
- 株式会社オンデック 有価証券報告書 第18期(2025年11月期)
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。