M&A仲介の転職難易度|転職で押さえるべきポイント
入るのが難しいのか、続けるのが難しいのか
M&A仲介の転職難易度を語るとき、「入りやすい」と「難しい」の両方の評価が並びます。どちらも正しく、指しているものが違います。入口の難易度と、入った後に立ち上がる難易度を分けて考える必要があります。
判断材料になるのが、中小企業庁のM&A支援機関登録制度のデータです。2026年3月9日時点で登録FA・仲介業者は3,399件(法人2,606件、個人事業主793件)。設立年代別では2020年代の設立が2,060件で6割を占めます。事業者の数は、この数年で急速に増えました。
本記事では、この構造から難易度を分解します。記載は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。最新の募集要項は各社公式サイトをご確認ください。
難易度を作っている4つの要素
要素1:受け皿は増えたが、教えられる会社は限られる
同じ登録状況によれば、M&A支援業務の専従者数別の登録件数は、0人が762件、1〜2人が1,736件、3〜4人が462件、5〜9人が284件、10〜19人が103件、20〜49人が33件、50〜99人が11件、100〜499人が7件、500〜999人が1件です。
専従2人以下が2,498件で全体の7割を超えます。応募先の候補は多くても、体系立った育成を受けられる会社は限られます。入口の広さと、入った後の環境の質は別問題です。
要素2:入口の基準が「経験」ではなく「適性」に置かれている
M&A仲介の中途採用は、金融・不動産・人材・保険など、法人営業の経験者を広く対象としています。M&Aの実務経験を必須としない募集も多く見られます。
一方で、選考では譲渡を検討する経営者に出会えるかという適性が重く見られます。この基準は経歴書からは測りにくく、面接での掘り下げに依存します。結果として、経歴の見栄えがよくても通らない、逆に経歴が地味でも通るという現象が起こります。
要素3:立ち上がりに時間がかかる
成約までの過程は長く、入社してすぐに成果が出る仕事ではありません。上場企業の平均勤続年数は、日本M&Aセンター(最大人員会社)4.6年、オンデック3.97年、M&Aキャピタルパートナーズ3.30年、ストライク2.5年です。
この水準は、業界として人の入れ替わりが一定程度あることを示しています。採用の拡大による押し下げも含まれるため、そのまま離職率とは読めませんが、長く続く人ばかりではないという前提は持っておくべきです。
要素4:会社ごとに扱う企業規模が違う
同じ仲介でも、対象とする譲渡企業の規模が違えば、必要な知識も接触の仕方も変わります。年商数億円の企業と数十億円の企業では、経営者の層も、関与する金融機関も異なります。応募先が扱う規模帯を把握しないまま受けると、面接の話が噛み合いません。
出身別に見た通りやすさ
| 出身 | 通りやすさ | 補うべき点 |
|---|---|---|
| 金融機関の法人営業 | 通りやすい | 提案から関与へ立場が変わる点 |
| 不動産の法人・投資営業 | 通りやすい | 対象が資産から会社に変わる点 |
| 人材・広告などの無形商材営業 | 経路として現実的 | 決裁者との対話経験 |
| 税理士・会計事務所 | 専門性は評価される | 案件を取ってくる適性 |
| 事業会社の経営企画 | 案件理解は早い | 営業活動そのものへの適性 |
税理士・会計事務所出身の方は、登録支援機関の内訳でも税理士507件、公認会計士288件が名を連ねているとおり、業界と接点があります。ただし助言する立場と、間に立って案件を進める立場は別です。この違いに自分で答えを持っているかが、選考の分かれ目になります。
難易度を下げる打ち手
1. 応募先の専従者数を確認する。 会社全体の人数ではなく、M&A支援業務に専従している人数です。ここが数名であれば、育成より即戦力性が求められます。
2. 断られた経験を材料として整理する。 面接で問われるのは成功事例だけではありません。長期間の接触の末に断られた案件について、何を変えたかを語れると、続けられる人だと判断されやすくなります。
3. 対象企業の規模帯を合わせる。 前職で扱った顧客規模と、応募先が扱う譲渡企業の規模が近いほど、経験の接続が説明しやすくなります。
4. 仲介とFAの違いに答えを持つ。 どちらを選ぶかは適性の問題であり、優劣ではありません。仲介を選ぶ理由を自分の言葉で言えると、志望度の高さとして受け取られます。FA側の実情はFASの転職難易度で扱っています。
5. 固定給の水準を判断軸に入れる。 立ち上がりに時間がかかる以上、その期間を支える条件が続けやすさを決めます。年収の構造は年収相場をご覧ください。
エージェントベストの見解
この業界で最も多い転職の失敗は、入社の難易度が低かったことをそのまま「自分に向いている」と受け取ってしまうパターンです。M&A仲介の中途採用は門戸が広く、法人営業の経験があれば内定に至ることは珍しくありません。難しいのはその先で、最初の成約までに1年以上かかることもあります。この期間に耐えられるかどうかは、意欲ではなく生活の条件で決まる部分が大きい。入社前に確認すべきは、固定給の額、成果報酬の支払い条件、そして直近1年に入社した中途社員のうち何人が成約に至っているかです。3つ目を答えられない会社は、育成の実績がまだ積み上がっていない可能性があります。
年代による違い
20代後半は、法人営業の経験を土台に未経験から入る層として最も採用されやすい年代です。育成前提の枠が残ります。
30代前半は、前職での実績が問われます。この年代では、扱った顧客規模と検討期間の長さが説明の中心になります。
30代後半以降は、実績に加えて、自分で案件を取ってこられるかが確かめられます。人脈や業界での接点があると評価が変わります。育成を受ける立場ではなく、初年度から動ける前提で見られることが増えます。
会社のタイプで、入りやすさが変わる
- 上場の大手仲介は、応募が集まるため選考は相対的に厳しくなります。日本M&Aセンターの評判、M&Aキャピタルパートナーズの評判、ストライクの評判をご覧ください
- 中堅・専業の仲介は、即戦力性が重く見られます。オンデックの評判、M&Aベストパートナーズの評判、経営承継支援の評判が参考になります
- プラットフォーム型は、営業以外の職種の枠もあります。バトンズの評判、fundbookの評判をご覧ください
- 士業系・コンサル併営は、専門資格があると入りやすくなります。山田コンサルティンググループの評判、インテグループの評判が該当します
応募の進め方で、結果が変わる部分
同じ経歴でも、応募の順序で結果が変わることがあります。M&A仲介は会社ごとに扱う企業規模と育成体制が違うため、最初に受けた会社の面接で業界理解が固まっていないと、その後の会社にも同じ答え方をしてしまうためです。
実務的な進め方は、規模帯の違う会社を2〜3社、時期をずらして受けることです。最初の面接で仲介とFAの違いや利益相反について問われると、自分の理解の粗さが分かります。そこを整えてから本命に臨むと、同じ準備量でも結果が変わります。
また、選考期間は他業界より長くなることがあります。現場責任者との面談が複数回入る会社もあるためです。在職中に受ける場合は、この期間を見込んで計画を立てておくとよいでしょう。
入社後に離れやすい時期
ひとつは入社から半年前後です。接触を重ねても案件が動かず、活動量だけが積み上がる時期にあたります。もうひとつは2年目に入る頃で、同期の中で成約の有無が分かれ始める時期です。
いずれの時期も、能力の差というより、活動の型が固まっているかどうかで分かれる傾向があります。選考中に、入社1年目の社員がどう案件を作っているかを聞いておくと、入社後の見通しが立てやすくなります。
エージェントベストの見解
書類で見られているのは、担当した顧客の役職です。職務経歴書に「法人営業として新規開拓を担当」と書かれているだけでは、この業界では差がつきません。読み手が知りたいのは、誰に会ってきたかです。担当窓口が購買部門だったのか、部長だったのか、代表取締役だったのか。そして、その相手が決めるまでにどれくらいの期間がかかったのか。この2点が書かれていると、経営者と向き合う仕事への接続が読み手の側で成立します。売上額を並べるより、この記述のほうが通過率を動かします。
まとめ
M&A仲介の難易度は、入口と立ち上がりで性質が異なります。登録事業者は3,399件に増え、2020年代設立が6割を占める一方、専従2人以下が7割を超えており、育成体制には会社差があります。
入口の基準は経験より適性に置かれるため、経歴の見栄えでは測れません。続けやすさを左右するのは、最初の成約までの期間を支える条件です。選考基準や体制は会社と時期により変動しますので、最新の募集要項は各社公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 営業未経験でも入れますか。
A. 会社によります。営業経験を必須としない募集もありますが、案件を取ってくる過程が仕事の中心にあるため、営業活動そのものへの適性は確認されます。
Q. 何社くらい受けるものですか。
A. 一概には言えません。ただし会社ごとに扱う企業規模と育成体制が大きく違うため、応募数を増やすより、専従者数と直近の採用実績を確認して絞るほうが結果につながりやすい傾向があります。
Q. 未経験で入って、何年で一人前になりますか。
A. 会社と本人の状況によって幅があります。上場企業の平均勤続年数が2.5〜4.6年であることを踏まえると、立ち上がりに数年かかる前提で計画を立てるのが現実的です。
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度に係る登録FA及び仲介業者の公表(令和7年度公募2月分・別紙2 登録状況)
- 株式会社ストライク 有価証券報告書 第29期(2025年9月期)
- 日本M&Aセンターホールディングス 有価証券報告書 第35期(2026年3月期)
- M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 有価証券報告書 第20期(2025年9月期)
本記事は 2026/8/11 時点の公開情報にもとづいて作成しています。